158 / 207
世界の真実編 後編 突撃!魔王城
幹部たちの帰還
しおりを挟む
分身体たちの相手をしつつ何とか隙を見てそちらに目をやると、魔王軍幹部たちがわいわいと部屋に入ってくるところだった。
緑色の髪をしたメデューサが驚いたような表情で言う。
「何が始まっておるのじゃ……って、勇者パーティーではないか!」
「あらぁ、あれはこの前の。でも、肝心の女勇者がいないわね」
「もう魔王様のとこにいっちまったんじゃねーの?」
アッチノ山で遭遇したファリスとかいうやつの部下たちもいた。
くっ、この状況でこいつらまで戦闘に参加されるとさすがにまずい。俺は何とかなるにしてもラッドとロザリアが危険だ。あいつらは今も分身体の相手をするのに必死でこの危機を理解できてないはず。
奥の方から分身体を生み続けるヌチャが叫ぶ。
「いいところに来たなお前たち! 少しばかり手こずっていたところよ! 全員で協力してこいつらを亡き者にし、魔王様に加勢しようではないか!」
「おう、そうするか~よっこらせっと」
「ヒヒィン」
恐らくは例のデュラハンが馬に乗って戦闘態勢になったのだろう。
「ふふ、あっちのやつは私に任せてちょうだいな。アッチノ山での借りを返してあげたいから」
「シルビア一人じゃ負けるから私も行くぜ!」
「いやいや俺一人に任せとけって」
「えっと、ぼ、僕は……」
ムガルもいるのか。そういえばあいつも幹部だって言ってたな。
そうして今にも幹部たちがこっちに襲いかかる為の準備をしていると。
轟音。
幹部たちがいる部屋の入り口を後ろ、魔王の部屋へと繋がる扉を前とするなら、左側から強烈な破砕音がすると同時に震動が空間を揺らした。
「なんだなんだ!? 俺、地震とか苦手なんだけど!」
「ああ、ファリス様が到着したんじゃねーのかな」
「勇者パーティーを倒す為に『嵐竜』を連れて来るとか言ってたわね。魔王様のために頑張るファリス様、可愛いわぁ」
「ということはあやつ、壁を壊してここに入ってくるつもりかの?」
「いやいや、いくらあいつでもそこまで馬鹿じゃないだろ」
分身体はこの誰もが動揺する状況の中でも変わらずに攻撃を仕掛けてくる。おかげで、俺は未だに周りを充分に見渡す余裕がない。そして。
轟音。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
俺より壁に近い方にいたラッドとロザリアから悲鳴があがる。
恐らくは壁が壊れたのだろう。大きな岩の破片が視界の外から飛んできて、いくつかは俺を直撃し、またいくつかは分身体を吹き飛ばしながらまた視界の外へと消えていった。
いくらか余裕が出来たので、ラッドとロザリアに向かって叫ぶ。
「おい、ラッド、ロザリア! お前らは大丈夫か!?」
「当然じゃないか! ロザリアと一緒ならいつまでも戦っていられるさ!」
「全然だめですわ! 一杯一杯です!」
何とか生きてくれているだけでもよかった。そう心の中で独り言ちていると、崩壊したらしい壁の方から聞き覚えのある声が届く。
そちらに視線をやれば、いつかアッチノ山で会ったファリスとかいうやつが全身を翡翠の鱗に包まれた竜に乗って、壁に空けた穴からこちらを窺っていた。
「あら、みんな揃って……えっ、勇者パーティーもいるじゃない! ていうかあいつはこの前の……ふふっ、今こそあの時の借りを返してやるわ! ルドラちゃん、まずは『テンペストブレス』よ!」
すると「嵐竜」ルドラは、大きく首を持ち上げて息を吸い込んだ。まずい!
「ロザリア、自分に防壁魔法を張れ! 魔法の方だ!」
「えっ!?」
ロザリアは動揺しながらも何とか指示通りに防壁魔法を展開してくれた。
一方で、焦ったのは俺だけじゃなかったらしい。デュラハンが馬に支援魔法をかけながらファリスに呼びかける。
「待て待てファリス、俺らもここに居っ」
その言葉は最後まで紡がれることはない。
次の瞬間ルドラの口から発生した暴風は、渦を巻いて土埃を巻き起こしながらこちらに迫ってきた。それに成すすべもなく呑まれた瞬間に視界は土と煙に奪われ、身体は凄まじい勢いで後方に吹き飛ばされる。
気付けば俺たちは魔王軍幹部と一緒になって壁に叩きつけられていた。
「ぐっ!」
凄まじい衝撃に思わずうめき声が漏れ出てしまう。身体を起こして周囲を確認すると、ラッドとロザリアがすぐ横に転がっていた。
寝そべったままの状態で二人に声をかける。
「おい、ラッド、ロザリア! 大丈夫か!」
「うぅ……」
わずかに声が聞こえた。どうやら死んではいないらしい。
だけど勝機が見えてきたな。悪いけど二人が意識を失ってしまった今ならこの状況をどうにだって出来る。
「チェンバレン! 大丈夫かチェンバレン! ……良かった。よ~しいい子だ。おいファリス、お前俺たちを巻き込むなよ! お前の部下だっているんだぞ!」
「全くじゃな。何を考えておるのじゃ、あの阿呆は」
幹部たちも身体を起こして愚痴を垂れ流し始める中、俺は「テレパシー」をムガルだけに向けて発動した。
(おい、ムガル聞こえるか?)
(あ、はい。ジンさんこんにちは)
試練の迷宮で一緒に過ごした時の感じからしてムガルには俺たち、少なくとも俺と戦う意思はないはずだ。
そんな期待があって、俺はムガルにある頼みごとをすることにした。
(この人間二人、ラッドとロザリアを守って欲しい)
(えっ!?)
(お前の立場上それがまずいのはわかる。でも、そこは何とか「こいつは俺の獲物だから触れるな」的なこと言って誤魔化してくれ)
(出来るかなぁ……)
(お前にしか頼めないんだ)
(わっ、わかりました。僕も部下を助けていただいたことですし……必ず!)
何とか引き受けてもらえて安心した俺は呼吸を整えて立ち上がる。
こちらに気付いたデュラハンが剣を抜き、それで俺の方を指し示しながらさっきまでとは違う、厳かな口調で言った。
「クックック……ジンとか言ったか。ツギノ町では世話になったな。ここで会ったが百年目、あの時の借りを今ここで返してきゅれよう」
「無理をするでない。お主は真面目な台詞を口にしようとするとすぐ噛むんじゃからな……あ、わしはメデューサのティノールじゃ、人間よ」
ティノールと名乗ったやつがデュラハンに並びながらそう言うと、サキュバス二人もその後ろからこちらに顔を覗かせる。
「別にあなたたちに恨みはないのだけれど……これも仕事なのよねぇ」
「そこの人間たちもまとめて倒しとかねーと、後で魔王様に怒られんだよな~」
「ちょっと、私もいるわよ! あんたらだけで始めようとしないでよ!」
遠くからはファリスの声。幹部たちそれぞれの口上を耳に入れながら、その更に後ろにいるムガルに目配せをした。するとムガルは軽やかな跳躍で一気に俺の背後に回ると、ラッドとロザリアの前で口を開く。
「こ、この二人は僕の獲物なので……くっくっく……えと、その強そうなやつは皆さんにお譲りします」
そんな無理していかにもな台詞にしなくても良かった気もするけど、ムガルが何とか依頼をこなしてくれた。これで俺は気兼ねなくこいつらと戦える。
俺は側にあった大剣を拾って、幹部たちの癇にさわるよう、わざと挑発的な声音を作ったつもりで言った。
「さっきから黙って聞いてれば、ほとんどのやつが俺に一撃で倒されたくせに何言ってんだよ。まあいい、ティナが魔王とかいう雑魚を倒すまでの間、暇だから相手してやるよ。全員まとめてかかってこい」
「何だとぉ……? このっ、このっばーか! ほんとばーか! もうほんっとお前……ばーか!」
「ウォードよ、お主それしか言えぬのか」
呆れた顔でため息をついてからティノールは続ける。
「しかし、言うたな人間よ。わしらとて魔王軍の幹部じゃ……そう簡単にはいかぬやもしれぬぞ?」
「それに、我の存在も忘れたとは言わせんぞ」
その声に振り返れば、背後には「テンペストブレス」で消滅した分身体を作り直したヌチャが立っている。もちろん存在すら忘れていた。
俺はそのままの調子で返す。
「そうだな、さすがにこれだけの数に囲まれると俺だってきつい……だから切り札を使わせてもらうぜ?」
「きっ、切り札? こいつの切り札とかまじやばそうじゃん! ちょっと俺もう実家帰るわ!」
「お前動揺しすぎだろ。めちゃめちゃ敵の術中にはまってんじゃねーか」
「それに実家には帰ってきたばかりなのではなかったのかしら?」
サキュバス二人が何か言うのを聞きながら、俺はスキル名を宣言した。
「『スモーク』」
敵味方を巻き込んでの目くらましにしか使えない、初級中の初級魔法。もちろんこいつらにこんなものは通用しない。
ただ一瞬でも驚かせることが出来たら儲けものだと思っただけだ。
「うわーやべーやべー! この煙吸い込んだらすげーダメージ入って死ぬとかじゃねえの!? ティノール助けて~!」
「やかましいわ!」
……何だかデュラハンに対して予想外に効果を発揮しているみたいで何よりだ。それはともかくとして「スモーク」を発動した瞬間、俺は部屋の入り口へと全力で走った。
「え、逃げるの!? ちょっと待ちなさいよ!」
「ファリス、お主は城の入り口に回れ! どちらにしろここには入れんじゃろう」
それは外れだ。なぜなら俺が目指すのは屋上だから。
ラッドとロザリアの安全を確保するために、今はとにかくこいつらをこの部屋から離す必要がある。ここで戦闘が行われる限り二人を巻き込む危険性が常にあるからだ。特にまた「テンペストブレス」を撃たれたら目も当てられない。
それに、思う存分にスキルを使うには屋内もなるべくなら避けたい。あまり建物を破壊してティナのいる奥の部屋に影響を及ぼしたくないからだ。
外ではなく屋上なのは、単純に一階を通ってないので、罠とかの余計なトラブルに巻き込まれることを考慮してのこと。
俺は頭の中に地図を思い浮かべながら、屋上に向けてひたすらに走った。
緑色の髪をしたメデューサが驚いたような表情で言う。
「何が始まっておるのじゃ……って、勇者パーティーではないか!」
「あらぁ、あれはこの前の。でも、肝心の女勇者がいないわね」
「もう魔王様のとこにいっちまったんじゃねーの?」
アッチノ山で遭遇したファリスとかいうやつの部下たちもいた。
くっ、この状況でこいつらまで戦闘に参加されるとさすがにまずい。俺は何とかなるにしてもラッドとロザリアが危険だ。あいつらは今も分身体の相手をするのに必死でこの危機を理解できてないはず。
奥の方から分身体を生み続けるヌチャが叫ぶ。
「いいところに来たなお前たち! 少しばかり手こずっていたところよ! 全員で協力してこいつらを亡き者にし、魔王様に加勢しようではないか!」
「おう、そうするか~よっこらせっと」
「ヒヒィン」
恐らくは例のデュラハンが馬に乗って戦闘態勢になったのだろう。
「ふふ、あっちのやつは私に任せてちょうだいな。アッチノ山での借りを返してあげたいから」
「シルビア一人じゃ負けるから私も行くぜ!」
「いやいや俺一人に任せとけって」
「えっと、ぼ、僕は……」
ムガルもいるのか。そういえばあいつも幹部だって言ってたな。
そうして今にも幹部たちがこっちに襲いかかる為の準備をしていると。
轟音。
幹部たちがいる部屋の入り口を後ろ、魔王の部屋へと繋がる扉を前とするなら、左側から強烈な破砕音がすると同時に震動が空間を揺らした。
「なんだなんだ!? 俺、地震とか苦手なんだけど!」
「ああ、ファリス様が到着したんじゃねーのかな」
「勇者パーティーを倒す為に『嵐竜』を連れて来るとか言ってたわね。魔王様のために頑張るファリス様、可愛いわぁ」
「ということはあやつ、壁を壊してここに入ってくるつもりかの?」
「いやいや、いくらあいつでもそこまで馬鹿じゃないだろ」
分身体はこの誰もが動揺する状況の中でも変わらずに攻撃を仕掛けてくる。おかげで、俺は未だに周りを充分に見渡す余裕がない。そして。
轟音。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
俺より壁に近い方にいたラッドとロザリアから悲鳴があがる。
恐らくは壁が壊れたのだろう。大きな岩の破片が視界の外から飛んできて、いくつかは俺を直撃し、またいくつかは分身体を吹き飛ばしながらまた視界の外へと消えていった。
いくらか余裕が出来たので、ラッドとロザリアに向かって叫ぶ。
「おい、ラッド、ロザリア! お前らは大丈夫か!?」
「当然じゃないか! ロザリアと一緒ならいつまでも戦っていられるさ!」
「全然だめですわ! 一杯一杯です!」
何とか生きてくれているだけでもよかった。そう心の中で独り言ちていると、崩壊したらしい壁の方から聞き覚えのある声が届く。
そちらに視線をやれば、いつかアッチノ山で会ったファリスとかいうやつが全身を翡翠の鱗に包まれた竜に乗って、壁に空けた穴からこちらを窺っていた。
「あら、みんな揃って……えっ、勇者パーティーもいるじゃない! ていうかあいつはこの前の……ふふっ、今こそあの時の借りを返してやるわ! ルドラちゃん、まずは『テンペストブレス』よ!」
すると「嵐竜」ルドラは、大きく首を持ち上げて息を吸い込んだ。まずい!
「ロザリア、自分に防壁魔法を張れ! 魔法の方だ!」
「えっ!?」
ロザリアは動揺しながらも何とか指示通りに防壁魔法を展開してくれた。
一方で、焦ったのは俺だけじゃなかったらしい。デュラハンが馬に支援魔法をかけながらファリスに呼びかける。
「待て待てファリス、俺らもここに居っ」
その言葉は最後まで紡がれることはない。
次の瞬間ルドラの口から発生した暴風は、渦を巻いて土埃を巻き起こしながらこちらに迫ってきた。それに成すすべもなく呑まれた瞬間に視界は土と煙に奪われ、身体は凄まじい勢いで後方に吹き飛ばされる。
気付けば俺たちは魔王軍幹部と一緒になって壁に叩きつけられていた。
「ぐっ!」
凄まじい衝撃に思わずうめき声が漏れ出てしまう。身体を起こして周囲を確認すると、ラッドとロザリアがすぐ横に転がっていた。
寝そべったままの状態で二人に声をかける。
「おい、ラッド、ロザリア! 大丈夫か!」
「うぅ……」
わずかに声が聞こえた。どうやら死んではいないらしい。
だけど勝機が見えてきたな。悪いけど二人が意識を失ってしまった今ならこの状況をどうにだって出来る。
「チェンバレン! 大丈夫かチェンバレン! ……良かった。よ~しいい子だ。おいファリス、お前俺たちを巻き込むなよ! お前の部下だっているんだぞ!」
「全くじゃな。何を考えておるのじゃ、あの阿呆は」
幹部たちも身体を起こして愚痴を垂れ流し始める中、俺は「テレパシー」をムガルだけに向けて発動した。
(おい、ムガル聞こえるか?)
(あ、はい。ジンさんこんにちは)
試練の迷宮で一緒に過ごした時の感じからしてムガルには俺たち、少なくとも俺と戦う意思はないはずだ。
そんな期待があって、俺はムガルにある頼みごとをすることにした。
(この人間二人、ラッドとロザリアを守って欲しい)
(えっ!?)
(お前の立場上それがまずいのはわかる。でも、そこは何とか「こいつは俺の獲物だから触れるな」的なこと言って誤魔化してくれ)
(出来るかなぁ……)
(お前にしか頼めないんだ)
(わっ、わかりました。僕も部下を助けていただいたことですし……必ず!)
何とか引き受けてもらえて安心した俺は呼吸を整えて立ち上がる。
こちらに気付いたデュラハンが剣を抜き、それで俺の方を指し示しながらさっきまでとは違う、厳かな口調で言った。
「クックック……ジンとか言ったか。ツギノ町では世話になったな。ここで会ったが百年目、あの時の借りを今ここで返してきゅれよう」
「無理をするでない。お主は真面目な台詞を口にしようとするとすぐ噛むんじゃからな……あ、わしはメデューサのティノールじゃ、人間よ」
ティノールと名乗ったやつがデュラハンに並びながらそう言うと、サキュバス二人もその後ろからこちらに顔を覗かせる。
「別にあなたたちに恨みはないのだけれど……これも仕事なのよねぇ」
「そこの人間たちもまとめて倒しとかねーと、後で魔王様に怒られんだよな~」
「ちょっと、私もいるわよ! あんたらだけで始めようとしないでよ!」
遠くからはファリスの声。幹部たちそれぞれの口上を耳に入れながら、その更に後ろにいるムガルに目配せをした。するとムガルは軽やかな跳躍で一気に俺の背後に回ると、ラッドとロザリアの前で口を開く。
「こ、この二人は僕の獲物なので……くっくっく……えと、その強そうなやつは皆さんにお譲りします」
そんな無理していかにもな台詞にしなくても良かった気もするけど、ムガルが何とか依頼をこなしてくれた。これで俺は気兼ねなくこいつらと戦える。
俺は側にあった大剣を拾って、幹部たちの癇にさわるよう、わざと挑発的な声音を作ったつもりで言った。
「さっきから黙って聞いてれば、ほとんどのやつが俺に一撃で倒されたくせに何言ってんだよ。まあいい、ティナが魔王とかいう雑魚を倒すまでの間、暇だから相手してやるよ。全員まとめてかかってこい」
「何だとぉ……? このっ、このっばーか! ほんとばーか! もうほんっとお前……ばーか!」
「ウォードよ、お主それしか言えぬのか」
呆れた顔でため息をついてからティノールは続ける。
「しかし、言うたな人間よ。わしらとて魔王軍の幹部じゃ……そう簡単にはいかぬやもしれぬぞ?」
「それに、我の存在も忘れたとは言わせんぞ」
その声に振り返れば、背後には「テンペストブレス」で消滅した分身体を作り直したヌチャが立っている。もちろん存在すら忘れていた。
俺はそのままの調子で返す。
「そうだな、さすがにこれだけの数に囲まれると俺だってきつい……だから切り札を使わせてもらうぜ?」
「きっ、切り札? こいつの切り札とかまじやばそうじゃん! ちょっと俺もう実家帰るわ!」
「お前動揺しすぎだろ。めちゃめちゃ敵の術中にはまってんじゃねーか」
「それに実家には帰ってきたばかりなのではなかったのかしら?」
サキュバス二人が何か言うのを聞きながら、俺はスキル名を宣言した。
「『スモーク』」
敵味方を巻き込んでの目くらましにしか使えない、初級中の初級魔法。もちろんこいつらにこんなものは通用しない。
ただ一瞬でも驚かせることが出来たら儲けものだと思っただけだ。
「うわーやべーやべー! この煙吸い込んだらすげーダメージ入って死ぬとかじゃねえの!? ティノール助けて~!」
「やかましいわ!」
……何だかデュラハンに対して予想外に効果を発揮しているみたいで何よりだ。それはともかくとして「スモーク」を発動した瞬間、俺は部屋の入り口へと全力で走った。
「え、逃げるの!? ちょっと待ちなさいよ!」
「ファリス、お主は城の入り口に回れ! どちらにしろここには入れんじゃろう」
それは外れだ。なぜなら俺が目指すのは屋上だから。
ラッドとロザリアの安全を確保するために、今はとにかくこいつらをこの部屋から離す必要がある。ここで戦闘が行われる限り二人を巻き込む危険性が常にあるからだ。特にまた「テンペストブレス」を撃たれたら目も当てられない。
それに、思う存分にスキルを使うには屋内もなるべくなら避けたい。あまり建物を破壊してティナのいる奥の部屋に影響を及ぼしたくないからだ。
外ではなく屋上なのは、単純に一階を通ってないので、罠とかの余計なトラブルに巻き込まれることを考慮してのこと。
俺は頭の中に地図を思い浮かべながら、屋上に向けてひたすらに走った。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる