女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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世界の真実編 後編 突撃!魔王城

vs 魔王軍幹部たち 終

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 高度を保ったままこちらに近付いてくるファリス。立ち上がってそちらを見上げながら、ウォードが叫んだ。

「おぉ~い、ちょっと待てファリス! 今みんなも屋上に転がってるし、竜で思いっきり暴れるのはまずいって!」
「はぁ!? っていうかあんたはそんなとこで何やってんのよ!」
「何って、兄弟とマブダチになってたんだよ!」
「意味わかんないんだけど!」

 緊張感のないお調子者なウォードに、半目で睨むジン。

「おい、仲間が来たけどお前もやんのか?」
「えっ……」

 問われてウォードは考えてみた。
 二人なら確かにジンに勝てなくもないかもしれない。何せファリスが連れて来ているのは上級冒険者が寄ってたかってバカスカ叩かないと勝てないあの「イベントモンスター」の頂点に立つ竜種だ。
 だが、ファリスは以前に「炎竜」を引き連れてジンと戦ったにも関わらず敗北を喫したのもまた事実。言ってて悲しくなるが自分が時間稼ぎになるかどうかすら怪しい以上、勝てない可能性の方が高いだろう。
 
 となれば自分が取るべき手段は一つしかない。

「いやいや、まさか兄弟と戦うわけないだろ。その辺でチェンバレンと見てるわ」
「おう、そうか」

 いやいや、の部分で手をひょこひょこと横に振ってそう言ったウォードはチェンバレンにまたがり、本当に屋上の隅へと移動してしまう。
 そんな一応仲間だと思っていた者の裏切りにファリスが怒りの声を飛ばした。

「ちょっと何やってんのよ! せめてあんたも戦いなさいよ!」
「無理無理~! 俺もう兄弟と兄弟だからさ~!」
「後で覚えておきなさいよ!」

 ウォードとのやり取りを終えたファリスは、呆れ顔でため息をついてからジンの方へと注意を戻してつぶやく。

「さて、と」

 そして真っすぐに伸ばした人差し指でジンを差して叫んだ。

「さあ行くわよ! ルドラちゃん、『テンペストブレス』!」

 ルドラは深く息を吸い込みながら首を持ち上げ、天を仰いだ。
 その予備動作を見て取ったジンが勢いよく地面を蹴って駆け出した数瞬後に、嵐竜の口からブレスが放たれる。

 ルドラのこうげき。テンペストブレス!

 渦巻く嵐は一瞬にしてジンが元いた場所へと到達し、そこからルドラを中心にして彼を追いかけるよう、反時計回りの軌道で回転していく。
 これに巻き込まれて吹き飛んでいく魔王軍幹部たちを見ながら、ウォードが悲鳴にも似た叫び声をあげる。

「おおおいファリス何やってんだよ! みんなを巻き込んでんじゃねえか!」

 やがて半円を描いたかというところでブレスが途切れると、その頃合いを推し測っていたジンが、ルドラとファリスの方向目掛けて剣を横なぎに振った。

 ジンのこうげき。爆裂剣!

「『マジックウォール』」

 しかし、さすがに学習したファリスである。前回同じ手でHPを削られたことを思い出して、すかさず自分の背後に魔法用の防壁魔法を張った。
 爆風は防壁にぶつかって拡散し、ルドラとファリスの元へは到達しない。

「ま、そりゃそうだよな」

 走りながらルドラのいる方角を見上げてそうつぶやくジン。
 実を言えば今の「爆裂剣」には、防がれることを想定していたことと、これまで魔法を使い過ぎていたためにMPを温存することという二つの理由から、爆裂魔法の最上級ではない「エクスプロージョン」を乗せていた。
 相手は仮にも魔王軍幹部である。防壁魔法を張られてしまえば、最上級の「ハイエクスプロージョン」を乗せて防壁を貫通出来たところで、与えることの出来るダメージはそう多くはない。
 連発出来れば話は別だが、常に走り回ってブレスを避けながら戦わなければならないこの状況ではそれも無理な話だ。

 そう言ったこともあっての様子見を兼ねた「爆裂剣」だったが、やはり防壁に阻まれて効果は薄い。
 相手は飛行をしているから「炎刃剣」や「地裂剣」は効果がないし、風属性の竜だから「風刃剣」も同様である。「雷刃剣」を直接当てられればいいが、前回の戦いで学習したのか高度を落とす気配はない。
 なお「雷刃剣」は飛び道具としての使い方を出来なくもないが、その場合は「爆裂剣」よりも効果は薄くなってしまう。

 やはりどうにかして地上まで引きずり降ろすのが現実的か、とジンは思い至る。しかしどうやって……。
 ジンがあれこれと考えている間にも、ファリスの攻撃が止むことはない。

「『テンペスト・ブレス』!……『ヘルファイア』!」

 先程までと同様にジンを追いかける形でブレスが発生し、挟み込むようにして灼熱の炎柱が燃え上がる。しかし頃合いを間違えたのか、炎柱がジンの随分前方に出現したため、余裕を持って進路を変更することで対応されてしまう。
 ルドラの背中で舌打ちをするファリス。

「ぐぐっ……あいつ足速いからタイミングが難しいのよね」

 一方屋上をひた走るジンは、ある打開策を発見した。これは失敗する可能性も随分と高い賭けだが、それでも現時点で何とかなりそうな可能性がこれしかない以上は腹を括って挑むしかない。
 そう考えて、ジンは懐からあるものを取り出してルドラのいる方に掲げた。

「おい! これ、もしかしてお前のぱんつじゃないのか!?」

 そう、それは魔王城の一室にて発見した女性ものの下着であった。
 ファリスはこんなところで出てくるとは思わなかった「お前のぱんつ」という言葉に驚き、ルドラの背中から身を乗り出してそれを確認する。が、人間並みの視力しかないファリスには本当に自分の下着かどうかの判別が出来ない。

 この状況にはあまり関係のない話だが、ジンはまるで虫でもつまむように下着を持っていた。
 彼はとてつもなくウブではあるが、気になる女性以外にはあまり興味を持たず、またデリカシーも全くないという一面もある。その為、ティナやソフィアのものならいざ知らず、そうでないこの下着の扱いは非常にぞんざいであった。

 閑話休題。

 どうする、地上に降りて確認すべきか……しかしそこでふと冷静になったファリスは思った。
 どうしてあの男がそんなものを持っているのか、と。
 もしあれが自分の下着ではないとしても、女性ものの下着を持っていたのであればただの変態である可能性が高い。
 いつしか戦うことも忘れて、ファリスは叫んだ。

「あんた、どうしてそんなもん持ってんのよ!」
「女の子の部屋っぽいところで拾ったんだよ!」
「拾ったって盗んだんじゃないの、変態! どんな部屋よ!」
「扉にぺたぺた色んなもんが貼り付けてあったな! ぴかぴかしてて、ティナが可愛いって褒めてたぜ!」

 途端にファリスは怒りと羞恥から頭に血が上り、顔を紅に染めた。
 魔王城で扉にそんな装飾を施している部屋と言えば自分のところしかない。前回の戦いから近寄らずに遠距離攻撃だけを仕掛けつつも、相手の繰り出す爆発魔法らしきものを防げば少なくとも負けることはないだろうと踏んでいたファリス。
 しかし、ここに来て冷静さを失ってしまった。もはや彼女の頭の中には「とにかく下着を取り戻さなければ」という念しか浮かんで来ていない。

「ルドラちゃん、あの変態目掛けて突撃よ! 私の下着を取り戻してっ!」

 ファリスの命を受け、ジン目掛けて一直線に飛行を開始するルドラ。
 ジンはそれを確認して口の端を吊り上げる。やり方は割と最低だったと思わなくもないが、狙い通りだ。しかしティナには絶対に言うことは出来ない。武器を構えると、ジンもルドラを目掛けて駆け出していった。
 
 月下の魔王城で二つの影が踊る。
 背中に小さなものを背負う巨大な影と、大剣を手にそれを迎え撃つ小さな影。
 両者の距離が無くなろうかという瞬間、巨大な影は夜空を目掛けて真っすぐに飛び立っていく。
 やがて月と重なろうかと言う頃、打ちあがった巨大な影はまるで星空に咲いた一輪の花のように翡翠の翼を拡げ、またゆっくりと降下していくのであった。
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