女勇者が可愛すぎて、それだけで世界を救える気がしてきた。

偽モスコ先生

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英雄たちの選択 後編 そして、世界の行く末は

ティナの心配事

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「ジンのやつ、積極的になったなあ」
「そうねえ。親としてはどこまでいったのかが気になるわ」
「ティナちゃんは清純派の美少女ですから、いってもまだチューまでに違いありません、きっとそうです」

 男性と女性のテーブルを挟んで向かい側、キースの胸辺りの高さを滞空しつつ、ソフィアが腕を組んでうんうんと真剣な面持ちで頷く。その姿に気付いた二人のうち男性の方が問いかけた。

「その妖精風のお姿。まさかあなたはソフィア様では?」
「そうです、私がソフィアです! 初めまして!」
「ジンがいつもお世話になっております」
「こちらこそお世話になっております」

 女性に続いて男性が座ったままお辞儀をしたので、ソフィアもかしこまってから丁寧に一礼を返す。そこで黙って会話を聞いていたキースが、名乗りをあげない二人に業を煮やしたのか、それぞれを手で示しながら口を開いた。

「ソフィア様、遅くなりましたがこの二人が私たちの両親です。こちらが母のナーシア、こちらが父のガストン」
「やや、何とっ! やはりご両親でしたか!」

 状況からしてほとんどそうだとわかってはいたものの、せっかく紹介してくれたのだからと、わざとらしく大袈裟な反応をするソフィア。
 そんな女神を特に表情も変えずに見つめながら、ガストンが言った。

「ふむ。女神様には全てお見通しでしたか」
「でも、知られたからには生きて返すわけにもいきませんねえ」

 ナーシアが少し困ったように放った言葉で場には不穏な空気が漂い始めたが、緊張感はなくキースは呆れ顔になっている。そこで不意に扉が開き、のんびりとした感じでジン、後に続いて何やら顔が少し赤いティナが入ってきた。

「ただいま~」
「…………」
「あら、ここにも目撃者が増えてしまいましたか。どうします? お父さん」
「まさか一日に三人も消さなければならないとはな……」
「お前らソフィア様の前で変なことしてんじゃねえよ」

 慣れているジンはすぐにおおよその事情を察し、呆れながらも両親を注意しつつキースを睨む。

「お前がいるんだから止めろよ」
「私にどうにか出来るものでないことはジンも知っているだろう」

 どうやらキースは日頃、両親に対して「我関せず」の姿勢を貫いているようだ。態度を見るに別に嫌ってはいないようだが、変なことをし出したら自分が止めることは出来ないと考えているらしい。
 注意を受けた母ナーシアはいたずらがばれた子供のような顔をした。

「ふふっ、ソフィア様、大変失礼を致しました」
「いえいえ」

 そしてそのまま視線をティナへと向ける。

「ティナちゃんといったかしら? 何もないところだけど、どうかゆっくりしていってくださいね」
「は、はいっ。ありがとうございます」

 その後全員で席に着いて雑談をする時間となった。簡単にそれぞれの自己紹介がなされてからは和やかな時間が過ぎていく。
 テーブルを挟んでジンとティナ、母と父が向かい合うように座っていて、その間にキースが陣取っている。ソフィアはジンとティナの間から少し後ろにいるが、たまに部屋を飛び回って家具などを観察していた。
 なお、フェニックスは暴れ疲れてテーブルの上で気絶中だ。

「で、少し聞きたいことがあるのだが……」
「はい。何でも聞いてくださいっ」

 ガストンが今しがた用意された紅茶を口に含んでから話を切り出すと、ティナはそれに笑顔で対応する。

「二人はどこまでいってるのかね?」
「ええっ!?」

 しかしその笑顔が途端に崩れて頬が紅潮する。途端にジンが拳を振り回しながら声を少しばかり荒げた。

「おいっ、だから変なこと聞くなって言ってんだろうが!」
「あらあら、親としてはとても重要なことよ?」
「二人とも若いのだし、もういくところまでいってしまったのかな?」

 するとソフィアが目を輝かせながら、急にテーブルのところまでぎゅんと戻ってくる。

「私も気になります! 教えてください!」
「うぅ……」

 俯いて黙り込んでしまったティナに、追い打ちをかけるのかのように父の質問攻めは続いた。

「もうキッッッスくらいはしただろう? キッッッスくらいは」
「やあねえお父さんったら、それくらいしてないわけないじゃないですか」
「してるわけねえだろ!」

 ジンが椅子から立ち上がってそう叫ぶと、ソフィアは「あらまあ」といった感じで開いた口を手で覆い、両親はこの世の終わりを迎えたような表情で固まった。

「な、なんと……」
「私たちの息子ともあろうものが、そこまで奥手だったなんて」

 よよよ、と母親が泣き真似を披露すると、父親はこれから最後の戦いに向かう兵士たちを指揮する司令官のような表情で命令を下す。

「なら遠慮はいらん。これからジンの部屋で色々と済ませて来なさい。母さん、至急用意を頼む」
「腕がなるわね……!」
「ならせんな、っていうかまず俺の部屋に入るな!」
「もういやあっ!」
「あっ、おい!」

 ティナは両手で顔を覆い隠しながらどこかへ走り去っていった。ジンも慌ててそれを追いかけ、部屋を出ていく。キースとソフィアはともかく、ティナをあまり知らない両親は予想外の事態に困惑している様子だ。

「あらまあ」
「純粋な子なんだねえ。ちょっとやり過ぎてしまったかな」

 相変わらず変化のない表情でガストンが部屋の出入り口を見つめる中、ソフィアは恥ずかしがるティナに思いを馳せて悶えるのであった。

 ジンがひどく疲れた様子でティナを連れ戻してくると、再度雑談の時間となる。しばらくはティナに警戒されていた両親だったが、ひとまず恋愛に関する話はせずにジンの昔話などをすることで興味をひくことにしたらしい。
 話題が話題なのでキースも大いに盛り上がり、生贄となったジンもティナが喜んでいたので悪い気はしなかったようだ。
 ようやくティナの信頼を得ると、ガストンが本日初となる改まった態度で彼女に向き直り口を開いた。

「からかったりもしてしまったが、ティナちゃん。私たちが本当に言いたいことは一つだけだ」

 その言葉につられるように、ナーシアも態度を改める。そして両親は顔を見合わせて腰を折ってから言った。

「「ジンを、よろしくお願いします」」
「こっ、こちらこそ、ふつつかものですがよろしくお願いしますっ」

 ティナも驚き慌てて礼をする。ジンはその様子を見て、視線を逸らしつつ照れくさそうに頬をかいていた。
 それで話は終わりのような雰囲気が漂っていたが、意外にも次に話を切り出したのは顔をあげたばかりのティナだった。

「あの。それで、皆さんにお聞きしたいことがあるんですけど」
「何かね?」

 両親ではなく「皆さん」というところに全員が疑問を覚えつつも、ガストンはまず続きを促した。ティナは少し躊躇していた様子だったが、やがて意を決したように口を開く。

「人間と精霊って結婚できるんですか?」

 魔王城でジンから自分が人間ではなく精霊だという説明を受けた際、彼女が最初に心配したのは、実を言えばこれに関してだった。だがその時はまだ想いが完全には通じ合っているとは言えなかった為、恥ずかしすぎて自身の口からは聞けなかったらしい。今でも、この場でなければ出来なかった質問だろう。
 ジン一家とソフィアが視線を交錯させ合う。そしてキース以外は皆一様にほっこりとした顔をする中、ガストンが代表してその問いに答えた。

「出来るよ。何も問題はない」
「そうなんですか!?」
「ああ。というか、追放処分というのは実質的にその為に存在するんだ。禁忌を犯して天界に戻れなくなった精霊というのは、ほとんどが何らかの偶然で人間の異性と恋に落ち、そのまま下界に消えていった者たちでね」
「そうだったんですね……」

 ティナは目を輝かせて頬を上気させ、安堵と幸福の入り混じった表情で俯きながらそうつぶやいた。しかしそこでガストンは、何か言いにくいことを言おうとしているのか、少しためらいがちに補足をした。

「まあその、結婚というか。要は子供が出来る……ということだね」

 ティナの顔がまるで赤い塗料でもぶちまけたように赤く染まる。しかしどういった経緯で子供が出来るのかを知らないジンは、まるで簡単な料理のレシピでも確認するかのように尋ねた。

「えっ、子供って結婚したらその内鳥とかが運んでくるんじゃねえの?」

 全員がジンの方を振り向くと、それらの瞳は世界に一頭しかいないと言われる伝説の竜をみた者のそれに変わる。
 キースが感動に涙を流しながら歩み寄り、ジンの手を両手で丁寧に取りながら言った。

「ありがとう、ジン、その愛しいほどの純粋さをありがとう……」
「馬鹿にしてんのか?」

 そんな二人を全員が苦笑しながら見守っていた。
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