194 / 207
英雄たちの選択 後編 そして、世界の行く末は
決戦へ
しおりを挟む
「ジン、最高に似合ってるぞ」
「何かお前に褒められると気持ち悪いんだよな」
「でもでもジン君、本当にいいと思う」
「私もそう思います!」
「ジンがこれを着るのは久しぶりに見るなぁ」
「あんた正装は嫌いだったからねえ」
話がまとまったところでジンはこの家に置きっぱなしにしていた、精霊部隊の正装を入手することにした。実を言えば、彼がここに寄ろうと思った最大の動機はこれだ。
下界に降りてからというもの、ジンはまともな防具を身に着けていなかったし、それでどうにかなってしまっていたのもまた事実。しかしキースの口から実家に寄るという話が出た際に正装の存在を思い出したのだ。
「天国への回廊」であれだけの精霊と戦ったというのに、結局リッジやミカエルという向こう側の最大戦力たちは姿を現さなかった。となれば、アカシックレコードの前で待ち構えている可能性が高い。
ジンは強敵と、最悪の場合一対一での戦闘になることを考慮して少しでもいい防具が欲しいと考えたようだ。その点精霊部隊の正装はしっかりとした造りで、下界で言えば裕福な中級冒険者たちが着ている防具くらいの性能はある。
ジンが慣れない肌の感触にわずかに顔をしかめながら口を開く。
「やっぱ鬱陶しいな、これ。まあしょうがねえか」
「しかしお前が正装をするなんてなぁ。これから戦いにでもいくのか?」
基本的に細かいことを気にしないガストンだが、ジンが滅多にしない正装をしたとなると戦いに赴く可能性が高い。息子の身に危険が及ぶかもしれないとあって少しばかり心配している様子だ。
「ああ。そういや話してなかったけど、実はな……」
そこでジンはソフィアから許可を得て、今回の戦いに関することを出来るだけ簡潔に説明した。
アカシックレコードの存在。それを利用したゼウスの野望。
全ての真実を知った上での自分たちの選択と、これからの戦いについて。だが。
「ふ~ん、まあ適当に頑張りなさい」
「夕飯までには帰ってくるのよ」
「いやいやお前ら何でそんな興味なさそうなんだよ」
両親の反応が薄いので思わずジンがそう言うと、ガストンは突然にやや真面目な声音になった。
「ジンがそうしたいと言うなら止めないよ。昔からそうだろう?」
「お父さんとお母さんはね、あなたたちが元気に生きているならそれでいい。かといって、危険なことをしようとしていても、本気でしたいと思っていることなら静かにそれを見守るのも親の務めだと思っているの」
「二人ともそんな風に思ってたのか……」
ジンは唖然としている。
たしかにナーシアの言う通りで、自分が本気でしようとしていることを止められたことはない。でもそれは両親が放任主義であるということと、あとは単純に頭がおかしいという事実からくる行動だと思っていた。
例えばゼウスを初めて「爆裂剣」で吹っ飛ばした話を聞かせた時には、普通の両親なら顔面蒼白で創世の神殿へと謝罪をしに急行するところを、どれくらい吹っ飛んだんだ? とか、その程度の距離ならまだまだね、とか言うばかりで、むしろ自分たちまで楽しんでいる気配があったものだ。
かといって腰痛に効きそうだからと、ゼウスに「雷神剣」をかました話を聞かせた時には、そもそもゼウス様は神様だから常時健康体だ、とか、仮に腰痛持ちだとしても「雷神剣」はないわね、とかある意味では怒られる始末だった。
そんな両親が突然このようなちょっとばかりいい話をしてきたのでは、ジンがこのような反応をするのも当然と言える。
少しの間があってから、ガストンがゆっくりと口を開き、
「だから今回も私たちは静かに応援することにしておくよ。ただし……」
そのままジンの正面に立ち、両手を肩の上に置いた。
「絶対にティナちゃんのお尻だけは守り抜きなさい」
「ああ。俺の命に代えてもそれだけは守ってみせる」
「ジン。女のお尻を守るのは男の役目よ?」
「わかってる」
「しかしゼウス様もよりにもよってティナちゃんのお尻をねら」
「もうやめて!!!!!!!!」
ガストンの声は、羞恥に顔を赤く染めたティナの叫びによってかき消された。
「絶対にわざとやってるでしょ! ジン君もそんなに私をいじめて楽しいの!?」
「い、いや、別にいじめてはないだろ」
「じゃあ何よ! 俺の命に代えても守ってみせるって!」
「それは本気だ。俺はティナを命に代えても守りたいっておも」
「私じゃなくて私のお尻って言ったじゃん!!!!」
「ティナちゃん、私もティナちゃんのお尻は守り抜きたいです!」
「ソフィア様は黙っててください!」
「ええっ……」
ティナをからかって遊べば勢いで罵ってもらえるかもしれないし一石二鳥だと考えて参戦したソフィアは、一撃で場外に飛ばされたことでひどくショックを受けた様子だ。まさかそう来るとは、みたいな顔をしている。
キースが呆れ顔でため息をつきつつ見守る中、ティナの憤怒はその後もしばらく続いたのであった。
「またいつでも遊びに来なさい」
「子供は五人くらい産むのよ」
「微妙に実現できそうな数字だな」
「行ってきます」
最後まで変わらずなガストンとナーシアの挨拶にジンは普通に対応し、ティナは笑顔で無視を決め込みながら返した。少しの時間を共にしただけにも関わらず、随分とあの二人に慣れたようだ。
踵を返しジンたちの実家を後にしてからしばらく歩くと、ソフィアが笑顔で話を切り出した。
「とっても素敵なご両親でしたね!」
「どこがですか……」
「ふふっ、そうですね」
あからさまにうんざりしたような表情をしているジンとは違って、ティナの感情のこもっていない笑顔には妙に迫力がある。
その背後で、左右に視線を巡らせながらキースが口を開いた。
「しかし、どうしますか? このまま大通りを行くのも危険な気がしますが。ゼウス様の手の者がどこかで見張っていないとも限らないですし」
「う~ん、そうですね」
ソフィアは飛びながら顎に手を当てて考え込む。しかし真っ先に返答をしたのはジンだった。
「急に襲われるかもとかそういう心配をするなら、変な裏道とかを通っていく方がよっぽど危険じゃねえか? 人目にもつかないし、挟まれたら厄介だぞ」
「む。さすがジンだな。ソフィア様のお考えでは、ゼウス様は一般の精霊に今回のことを知られるのを忌避しておられるということだしな」
ゼウスがどう出てくるかがわからない以上、様々な可能性を考える必要がある。
ソフィアの読み通りなら街中で精霊が襲ってくることは考えにくいが、全く無いとは言い切れない。
そうなれば、仮に攻撃を仕掛けてくるなら人気のない細い路地で、ということになるだろう。相手も潜みやすいし、一般の精霊の目にもつきにくいからだ。
ソフィアも納得したように腕を組み、数回首を縦に振った。
「たしかに……創世の神殿周辺には高い建物も多いですし、オブザーバーズの皆さんのスキルが使えなくとも、監視にはうってつけです」
「まあ、創世の神殿にはあえて真正面から行った方がいいでしょうね」
そんなジンの一言で、小会議はすんなりと終わりを告げた。
大通り経由で創世の神殿へ行くことを決定した一行は、まず東大通りを中央広場方向へと引き返していく。神殿は北地区にあって、中央を経由せずにそちらに近付こうとした場合、必ず細い路地を通らなければならないからだ。
見た目が賑やかな風景から、和やかで優しい風景へ。騒がしすぎず静かすぎずなほどよい喧騒をくぐりながら中央広場の中を歩く。
ティナは大層中央広場が気に入った様子だ。この戦いが終わったらここをのんびりと二人で歩くのも悪くないかな。
二度目だというのに、目を輝かせながらきょろきょろと周囲を見渡すティナの横顔を見つめながら、ジンはそんなことを考えていた。
北地区はシナリオの進行に関係する建物が集中している。その目玉は何といっても創世の神殿フォークロアー支部で、無駄に高さがあるおかげで中央広場からでも視認出来てしまう。
他にも各精霊部隊の訓練所や宿舎、ゼウス以外の神々がフォークロアーを訪れた際に寝泊まりをする施設などがある。ソフィアもこの世界を訪れた時にはそこに泊まっていた。
ソフィアが先ほども言っていたように全体的に建物が高く、普段は何気なく建っている時計台なども、今の一行には敵の住処として映る。
北大通りへと差し掛かったところで、ジンが創世の神殿を指差しながらティナに話しかけた。
「ほら、無駄に偉そうな感じの神殿が見えるだろ。あれがゼウスんちだ」
「へえ~下界の神殿をそのまますごく大きくしたような感じなんだね」
神々を崇め奉る教会よりも本格的な場所として、下界にも神殿というものは存在する。もちろん、天界と違って本当に神が住んでいるわけではないが。
北大通りは高さがばらばらな建物群で構成されていて、でこぼこ通りだとか訓練通りだとかいった風に呼ばれている。訓練所での戦闘に飽きた精霊たちが、アトラクションのような北の市街地を飛び交って訓練をすることがあるからだ。
もちろん、それが終わった後には各隊長や副隊長、もしくはゼウスによるお説教が待っている。
「そういや俺もここで遊んでよくゼウスに怒られたっけな」
中央広場と創世の神殿のちょうど中間辺りにて、ジンが頭の後ろで腕を組んでのんびりと昔を懐かしんでいた、その時だった。
「ジン!」
「ん?」
キースの声に背後を振り返るも、そこにはもう彼の姿はなかった。そして次の瞬間ジンの頭上から、耳に入れた者の身体を奥底から冷やすような声が響く。
「真・精霊剣技――――『地裂剣』」
ジンはとっさにティナの前に立つと、声のした方に向けて大剣を引き抜いて構える。キースの身体を凄まじい勢いで地面に叩きつけたそれは、そのままの勢いでジンに降り注いだ。
北大通りの街並みが揺れる。地面はジンたちのいる部分を残して半球状に陥没し周囲からは悲鳴があがった。
攻撃ののち、軽やかなステップで自らの前に降り立ったその人物を不敵な笑みとともに見つめながらジンは言った。
「聞いてはいたけど、やっぱムコウノ山でのあれはお前がやったんだな。リッジ」
「挨拶はいらん。ゼウス様の為に、貴様らを排除する」
「何かお前に褒められると気持ち悪いんだよな」
「でもでもジン君、本当にいいと思う」
「私もそう思います!」
「ジンがこれを着るのは久しぶりに見るなぁ」
「あんた正装は嫌いだったからねえ」
話がまとまったところでジンはこの家に置きっぱなしにしていた、精霊部隊の正装を入手することにした。実を言えば、彼がここに寄ろうと思った最大の動機はこれだ。
下界に降りてからというもの、ジンはまともな防具を身に着けていなかったし、それでどうにかなってしまっていたのもまた事実。しかしキースの口から実家に寄るという話が出た際に正装の存在を思い出したのだ。
「天国への回廊」であれだけの精霊と戦ったというのに、結局リッジやミカエルという向こう側の最大戦力たちは姿を現さなかった。となれば、アカシックレコードの前で待ち構えている可能性が高い。
ジンは強敵と、最悪の場合一対一での戦闘になることを考慮して少しでもいい防具が欲しいと考えたようだ。その点精霊部隊の正装はしっかりとした造りで、下界で言えば裕福な中級冒険者たちが着ている防具くらいの性能はある。
ジンが慣れない肌の感触にわずかに顔をしかめながら口を開く。
「やっぱ鬱陶しいな、これ。まあしょうがねえか」
「しかしお前が正装をするなんてなぁ。これから戦いにでもいくのか?」
基本的に細かいことを気にしないガストンだが、ジンが滅多にしない正装をしたとなると戦いに赴く可能性が高い。息子の身に危険が及ぶかもしれないとあって少しばかり心配している様子だ。
「ああ。そういや話してなかったけど、実はな……」
そこでジンはソフィアから許可を得て、今回の戦いに関することを出来るだけ簡潔に説明した。
アカシックレコードの存在。それを利用したゼウスの野望。
全ての真実を知った上での自分たちの選択と、これからの戦いについて。だが。
「ふ~ん、まあ適当に頑張りなさい」
「夕飯までには帰ってくるのよ」
「いやいやお前ら何でそんな興味なさそうなんだよ」
両親の反応が薄いので思わずジンがそう言うと、ガストンは突然にやや真面目な声音になった。
「ジンがそうしたいと言うなら止めないよ。昔からそうだろう?」
「お父さんとお母さんはね、あなたたちが元気に生きているならそれでいい。かといって、危険なことをしようとしていても、本気でしたいと思っていることなら静かにそれを見守るのも親の務めだと思っているの」
「二人ともそんな風に思ってたのか……」
ジンは唖然としている。
たしかにナーシアの言う通りで、自分が本気でしようとしていることを止められたことはない。でもそれは両親が放任主義であるということと、あとは単純に頭がおかしいという事実からくる行動だと思っていた。
例えばゼウスを初めて「爆裂剣」で吹っ飛ばした話を聞かせた時には、普通の両親なら顔面蒼白で創世の神殿へと謝罪をしに急行するところを、どれくらい吹っ飛んだんだ? とか、その程度の距離ならまだまだね、とか言うばかりで、むしろ自分たちまで楽しんでいる気配があったものだ。
かといって腰痛に効きそうだからと、ゼウスに「雷神剣」をかました話を聞かせた時には、そもそもゼウス様は神様だから常時健康体だ、とか、仮に腰痛持ちだとしても「雷神剣」はないわね、とかある意味では怒られる始末だった。
そんな両親が突然このようなちょっとばかりいい話をしてきたのでは、ジンがこのような反応をするのも当然と言える。
少しの間があってから、ガストンがゆっくりと口を開き、
「だから今回も私たちは静かに応援することにしておくよ。ただし……」
そのままジンの正面に立ち、両手を肩の上に置いた。
「絶対にティナちゃんのお尻だけは守り抜きなさい」
「ああ。俺の命に代えてもそれだけは守ってみせる」
「ジン。女のお尻を守るのは男の役目よ?」
「わかってる」
「しかしゼウス様もよりにもよってティナちゃんのお尻をねら」
「もうやめて!!!!!!!!」
ガストンの声は、羞恥に顔を赤く染めたティナの叫びによってかき消された。
「絶対にわざとやってるでしょ! ジン君もそんなに私をいじめて楽しいの!?」
「い、いや、別にいじめてはないだろ」
「じゃあ何よ! 俺の命に代えても守ってみせるって!」
「それは本気だ。俺はティナを命に代えても守りたいっておも」
「私じゃなくて私のお尻って言ったじゃん!!!!」
「ティナちゃん、私もティナちゃんのお尻は守り抜きたいです!」
「ソフィア様は黙っててください!」
「ええっ……」
ティナをからかって遊べば勢いで罵ってもらえるかもしれないし一石二鳥だと考えて参戦したソフィアは、一撃で場外に飛ばされたことでひどくショックを受けた様子だ。まさかそう来るとは、みたいな顔をしている。
キースが呆れ顔でため息をつきつつ見守る中、ティナの憤怒はその後もしばらく続いたのであった。
「またいつでも遊びに来なさい」
「子供は五人くらい産むのよ」
「微妙に実現できそうな数字だな」
「行ってきます」
最後まで変わらずなガストンとナーシアの挨拶にジンは普通に対応し、ティナは笑顔で無視を決め込みながら返した。少しの時間を共にしただけにも関わらず、随分とあの二人に慣れたようだ。
踵を返しジンたちの実家を後にしてからしばらく歩くと、ソフィアが笑顔で話を切り出した。
「とっても素敵なご両親でしたね!」
「どこがですか……」
「ふふっ、そうですね」
あからさまにうんざりしたような表情をしているジンとは違って、ティナの感情のこもっていない笑顔には妙に迫力がある。
その背後で、左右に視線を巡らせながらキースが口を開いた。
「しかし、どうしますか? このまま大通りを行くのも危険な気がしますが。ゼウス様の手の者がどこかで見張っていないとも限らないですし」
「う~ん、そうですね」
ソフィアは飛びながら顎に手を当てて考え込む。しかし真っ先に返答をしたのはジンだった。
「急に襲われるかもとかそういう心配をするなら、変な裏道とかを通っていく方がよっぽど危険じゃねえか? 人目にもつかないし、挟まれたら厄介だぞ」
「む。さすがジンだな。ソフィア様のお考えでは、ゼウス様は一般の精霊に今回のことを知られるのを忌避しておられるということだしな」
ゼウスがどう出てくるかがわからない以上、様々な可能性を考える必要がある。
ソフィアの読み通りなら街中で精霊が襲ってくることは考えにくいが、全く無いとは言い切れない。
そうなれば、仮に攻撃を仕掛けてくるなら人気のない細い路地で、ということになるだろう。相手も潜みやすいし、一般の精霊の目にもつきにくいからだ。
ソフィアも納得したように腕を組み、数回首を縦に振った。
「たしかに……創世の神殿周辺には高い建物も多いですし、オブザーバーズの皆さんのスキルが使えなくとも、監視にはうってつけです」
「まあ、創世の神殿にはあえて真正面から行った方がいいでしょうね」
そんなジンの一言で、小会議はすんなりと終わりを告げた。
大通り経由で創世の神殿へ行くことを決定した一行は、まず東大通りを中央広場方向へと引き返していく。神殿は北地区にあって、中央を経由せずにそちらに近付こうとした場合、必ず細い路地を通らなければならないからだ。
見た目が賑やかな風景から、和やかで優しい風景へ。騒がしすぎず静かすぎずなほどよい喧騒をくぐりながら中央広場の中を歩く。
ティナは大層中央広場が気に入った様子だ。この戦いが終わったらここをのんびりと二人で歩くのも悪くないかな。
二度目だというのに、目を輝かせながらきょろきょろと周囲を見渡すティナの横顔を見つめながら、ジンはそんなことを考えていた。
北地区はシナリオの進行に関係する建物が集中している。その目玉は何といっても創世の神殿フォークロアー支部で、無駄に高さがあるおかげで中央広場からでも視認出来てしまう。
他にも各精霊部隊の訓練所や宿舎、ゼウス以外の神々がフォークロアーを訪れた際に寝泊まりをする施設などがある。ソフィアもこの世界を訪れた時にはそこに泊まっていた。
ソフィアが先ほども言っていたように全体的に建物が高く、普段は何気なく建っている時計台なども、今の一行には敵の住処として映る。
北大通りへと差し掛かったところで、ジンが創世の神殿を指差しながらティナに話しかけた。
「ほら、無駄に偉そうな感じの神殿が見えるだろ。あれがゼウスんちだ」
「へえ~下界の神殿をそのまますごく大きくしたような感じなんだね」
神々を崇め奉る教会よりも本格的な場所として、下界にも神殿というものは存在する。もちろん、天界と違って本当に神が住んでいるわけではないが。
北大通りは高さがばらばらな建物群で構成されていて、でこぼこ通りだとか訓練通りだとかいった風に呼ばれている。訓練所での戦闘に飽きた精霊たちが、アトラクションのような北の市街地を飛び交って訓練をすることがあるからだ。
もちろん、それが終わった後には各隊長や副隊長、もしくはゼウスによるお説教が待っている。
「そういや俺もここで遊んでよくゼウスに怒られたっけな」
中央広場と創世の神殿のちょうど中間辺りにて、ジンが頭の後ろで腕を組んでのんびりと昔を懐かしんでいた、その時だった。
「ジン!」
「ん?」
キースの声に背後を振り返るも、そこにはもう彼の姿はなかった。そして次の瞬間ジンの頭上から、耳に入れた者の身体を奥底から冷やすような声が響く。
「真・精霊剣技――――『地裂剣』」
ジンはとっさにティナの前に立つと、声のした方に向けて大剣を引き抜いて構える。キースの身体を凄まじい勢いで地面に叩きつけたそれは、そのままの勢いでジンに降り注いだ。
北大通りの街並みが揺れる。地面はジンたちのいる部分を残して半球状に陥没し周囲からは悲鳴があがった。
攻撃ののち、軽やかなステップで自らの前に降り立ったその人物を不敵な笑みとともに見つめながらジンは言った。
「聞いてはいたけど、やっぱムコウノ山でのあれはお前がやったんだな。リッジ」
「挨拶はいらん。ゼウス様の為に、貴様らを排除する」
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。
秋田ノ介
ファンタジー
88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。
異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。
その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。
飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。
完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。
『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~
鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。
そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。
母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。
双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた──
前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)
たぬころまんじゅう
ファンタジー
小国の第四王子アルス。魔素による身体強化が当たり前の時代に、王族で唯一魔素が無い王子として生まれた彼は、蔑まれる毎日だった。
しかしある日、ひょんなことから無限に湧き出る魔素を身体に取り込んでしまった。その日を境に彼の人生は劇的に変わっていく。
士官学校に入り「戦略」「戦術」「武術」を学び、仲間を集めたアルスは隊を結成。アルス隊が功績を挙げ、軍の中で大きな存在になっていくと様々なことに巻き込まれていく。
領地経営、隣国との戦争、反乱、策略、ガーネット教や3大ギルドによる陰謀にちらつく大国の影。様々な経験を経て「最強部隊」と呼ばれたアルス隊は遂に新王国樹立へ。
異能バトル×神算鬼謀の戦略・戦術バトル!
圧倒的不利な状況を武と知略で切り抜ける!
☆史実に基づいた戦史、宗教史、過去から現代の政治や思想、経済を取り入れて書いた大河ドラマをお楽しみください☆
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる