奴隷を買うぞ・・異世界煩悩記

切粉立方体

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6 墓地

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翌朝、這うように箱を出て粥を食った。
食欲は全然無くて、胃が縮み上がって痛んだが、体力の衰えと食欲の減退が悪循環になりそうな気がして無理やり食った。
午後には普通に起き上がれるようになり、息切れしながら、箱の中で死んでいた連中の運び出しを手伝った。
この宿だけでも、宿泊客の三割近い冒険者達が死んでいた。

「オーク、死体の埋葬に付き合ってくれよ」

宿の娘だ、三十前後なので僕の守備範囲外だ。

「病み上がりで力仕事は無理だが、構わんか」
「助かるよ、あんたと一緒にいると悪霊が逃げてく気がするんだ」
「親父さんは大丈夫なのか」

彼女の父親も流行病で倒れている。

「殺しても死なない様な奴だから大丈夫なんじゃねーか。アタイが側に付いてても死ぬときは死ぬしさ」

死が身近で常に横たわっている世界の所為か、父親が生死の境を彷徨っていても、やけにあっ気らかんとしている。

「それより、こいつらがゾンビになる方がおっかないしさ。死体にチンポ突っ込まれるなんてぞっとしないだろ」

異世界だからゾンビもいるのだろうか。
股間を勃起させたゾンビを想像するのは難しいが、確かに、死体になった連中の中には、何人かこの娘に言い寄っている奴もいた。
僕だって、もし死んでいたら、ゾンビになって市へ奴隷を買いに行ったかもしれない。
賞味期限が切れた宿屋の娘の身体に、未練を残していている奴がいても不思議じゃない。
死体を乗せた荷車の御者席に娘と並んで座り、神殿裏の墓地へと向かう。

「此奴なんか良い男だったから、死ぬ前に一発やらせてあげりゃ良かったかな。こいつはまだ処女じゃねーかな、オーク、今からでも突っ込んでやれよ」
「死体には興味が無い。どうせ天国で良い男を見つけるさ、これだけ相棒が大勢いれば、相手には不足しないだろうしよ」
「はっ、はっ、はっ。違げーねー」

墓地へ向かう通りを進むと、周囲の路地から死体を乗せた荷車が集まって来る。
墓地前の通りは渋滞しており、荷車が長蛇の列を作っていた。
そんな荷車の列を、見回っている女性の神官がいた。

「あなた、そこのあなた」

僕に向かって手招きしている。

「僕ですか」
「はい、あなたです。あなたには悪霊払いの才能があります。祈祷を手伝って下さい」

何かの危ない勧誘の様な気がして身構えたが、正式な神官服を着ている。
それに、似たような台詞をさっきも聞いた様な気がする。
僕の顔は怖いので、祈祷を手伝って欲しいと言うことらしい。

「僕は祈祷なんて知りませんよ」
「大丈夫です、私が教えます。それに多少間違えても亡くなった方には判りません」

何か、酷い説明だ。

「あたいはここで待ってるだけだから、構わないよ。手伝ってやんなよ、墓堀りを手伝えと言われるより楽だと思うよ」
「はい、お手伝いします」

神官服を手渡され、歩きながら着替えた後、説明を聞いた。

「額に指を二本立て、”ゲリト、メルト、ノリト”と三回唱え、空に縦三本、横三本の線を引いて下さい。それだけです、子供でも出来ます」

墓地に入ると、本当に人手不足なのが良くわかる。
無数の墓穴が延々と掘られているのだ。

「あなた右側ね、左側は私が担当するわ」

不安だったが、取り敢えず怖い顔をして威厳を取り繕う。
墓穴の中の遺体の胸には刻印が描かれた紙が乗せてあり、僕が祈祷を唱え終わると刻印は燃え上がってくれた。
その火が消えぬ内に墓の横に控えていた男達が土を被せて行き、刻印の力を土に移すのだ。
土を被せ終わると隣の墓穴の移動して同じ事を繰り返す。

うん、ただで飯は喰わせて貰えたし、仮眠も三時間程取らせて貰えた。
僕に祈祷を頼んだ神官さんも同じ様に忙しかった。
でも一週間以上も墓地に拘束されるとは聞いてなかった。
墓地の前の通りは、夜中も含めて万年渋滞できりがないのだ。

墓地に運ばれて来る死体は圧倒的に大人が多く、子供は数える程しかいなかった。
回復力が優れた子供の方が生き残った確率が高かったのだろう。

数千人を超える埋葬を行っていると、知っている顔も混じって来る。
浴場で良く見かけた夫婦、懇意にしていた露店の旦那や良く声を掛けて来た店の売り子。
丸太運びで顔を合わせていた冒険者や競りで良く顔を見かけた奴隷商人。
それでも流行病のピークは通り過ぎた様で、二週目に入ると運び込まれる死体がぐんと減り、週半ばにやっと墓地から解放された。

体力は完全に回復していたのでギルドへ仕事を捜しに行くと、下水道の鼠討伐の報酬が三倍に跳ね上がっていた。
鼠討伐を行った冒険者が最初に流行病に倒れたらしく、流行病の原因は地下道の鼠と町は考えているようなのだが、流行病を恐れて討伐を引き受ける冒険者が集まらず、この報酬になったらしい。
一度流行病に罹れば、二度と流行病に罹る事はないと言われている。
再び二日ほど鼠退治の依頼を受け、その週の祈曜日、股間をたぎらせて市へ向かった。

流行病の影響で市は二週ほど中止になっていたらしい。
奴隷の競りが始まると、そこには流行病で親を失った子が大量に出品されていた。
その中には、浴場で寄って来る女の子が三人混じっていた。
知っている子が、首輪を付けて局所を僅かに隠して競り台に立っていると、浴場で見る裸より数倍興奮する。
僕は競りに参加した。
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