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34 祝典2
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僕の紹介がアナウンスされると、会場にどよめきが広がり、階段の下に人が集まり始めた。
会場を見回すと、男性は銀か金の服、女性は濃色のシンプルなチュールスカート姿が多い。
黒服も白服も皆無なので、大失敗かと心配したが、少なくとも四人のドレス姿には称賛の眼差しが向けられていたので安心した。
「何か僕達受けてるみたいだよ」
「オークのセンス心配したけど大丈夫みたいね」
「ええ、同じ服はいないから目立ってるわよ。胸を張って行きましょう」
「撲はやっぱり恥ずかしいです。男の服が良かったです」
「僕達のテーブルは一番奥だ。僕は少し挨拶してから行く、先に行ってくれ」
「先に食べてて良いのよね」
「ああ、構わんだろ」
『わーい』
招待者の子供だろうか、四人と同い年くらいの子供も混じっているので何か安心だ。
階段の下が黒山の人だかりなっている。
四人を先に行かせる為に、通路を作って貰ったら、そこへ人が転がり出て来た。
頭から床に突っ込みそうだったので、咄嗟に抱き上げた。
ピンク色のドレスを着た、胸の慎ましい女性だった。
何かこの抱き心地には覚えがある。
「ミントさん」
「あっ、あっ、あっ。ご、ごめんなさい、オークさん。後ろから押されて」
ーーーーー
聖神殿主任神官カシス
ちっ、失敗しました。
ミントの後ろに忍び寄って、背中を突き飛ばしたのですがタイミングが早過ぎました。
オークさんに踏み付けて貰う積りだったのに、抱き上げられてしまいました。
畜生、嬉しそうに頬を赤く染めています。
これだったら、私が飛び込めば良かったです、私だって御姫様抱っこして欲しいのに。
目の前に転がっているミントの靴を拾いあげます。
「オークさん、ミントの靴です。この子昔からドジなんです。さっ、ミント、とっとと降りなさい。迷惑でしょ」
「あっ、ごっ、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ、別に迷惑じゃありませんよ」
「それじゃオークさん、私も抱っこして下さい」
「えっ、カシスさん?」
「それじゃ僕も、二人だけ狡いよ」
「ノートは便乗しないでよ」
「別に構わないですよね、オークさん」
「それじゃ、一回だけですよ」
ーーーーー
妙な具合になってしまった。
何故か行列が出来ている。
キャッキャと嬉しそうに席へ戻って行くので、喜んで貰えてはいるのだろう。
なんか公園の遊具になった気分だ。
一緒にチームを組んだ兵士達も招待者として呼ばれていたので、全員が手伝ってくれた。
ここへ呼ばれた御令嬢達は、筋骨隆々とした男が珍しいのだろう、頬を染めて喜んでいる。
遠巻きにして眺めている着飾った男達は、苦虫を噛んだような表情で睨み付けているが、確かにここに集まっている兵士達と体格差は歴然としている。
僕が思っている以上に、レベルアップが身体に与える影響は大きいらしい。
皇帝の到着を知らせるファンファーレが響き渡った。
招待客は席に戻り、僕達主役は皇帝専用の階段の前に並ぶ。
僕達兵士組は、十二名が横三列に並んで片膝を付いて皇帝を出迎える。
その後ろには、八名の神官組が横二列になって頭を下げて立ち、その後ろに魔術師四名が並ぶ。
ミューアとファーレは僕の脇に並んでいる。
皇帝が階段の最後の一段に足を降ろした時だった、耳元にテオの声が響く。
「オーク、後ろの花を飾ったテーブルの上に変な紫色のもやもや出来てるよ」
頭に浮かんだのはゲート、研究所に穴を開けた連中が、テーブルにでも魔法陣を仕掛けて刺客を送り込んで来たのだろう。
「敵だ!」
僕の声に反応して楔形の陣形が直ぐに出来上がる、魚の化け物を千匹以上屠ってきた陣形なので頭より身体が先に動く。
ゲートから大勢の黒装束を纏った刺客が飛び出して来た。
敵は大きな勘違いをしていた、一つは祝典で武器を持たない僕らが無力だと思ったこと、もう一つは皇帝の前で控えていたのが、たぶんこの国で最強の軍団であったこと。
勝負は一瞬で終わった、会場の守備兵が駆け付けた時には、百を超える刺客が床の上で痙攣していた。
魚の化け物の咢に比べれば、刺客の刃は止まっている様に見えた。
全員が拳の一撃で刺客を無力化していた。
神官組と魔術師組も素早くゲートを閉じる。
壺が灰になって崩れたので、テーブルではなく壺が魔道具だった様だ。
後から聞いた話では、直前に壺を割ってしまい、急遽運び込まれたものだという。
刺客が運び出されて再び僕達が整列すると、息を詰めて見詰めていた招待者達から拍手が捲起った。
腕組みして見詰めている一団は隣国からの招待者だろう。
皇帝が片手を上げると会場が静まり返った。
「童はそなた達に二度命を救われた。その働きに報いる為に、そなたらに爵位を送ろうと思う。貴族院議長、宰相、異論は無かろう」
『御意に』
そして僕は貴族になった。
「これでメリッサを嫁にできるぞ」
シュタイゲルが大喜びしている。
「これで日陰者から解放されるぞ」
シトラスは公爵家の二男なので喜ばないと思っていたが、それぞれの事情を抱えているらしい。
涙を零さんばかりに喜んでいる。
他の兵士達も地方領主の三男やら男爵家の二男やらで苦労人が多いので大喜びしている。
貰えるのは領地の無い子爵位らしいのだが、それでも生活には十分な報酬が国から支給されるらしく、父や兄からの小遣いに頼らなくて済む境遇は嬉しいらしい。
神官組、魔術師組は女性が多いので、全員が嬉しくて泣き崩れている。
「うー、これで婚活しなくて済むわ」
「よし!よし!よし!神殿なんか絶対に辞めてやるわ」
「あー、これで実家に帰っても邪険にされないわ」
「あーん、これで禿げの爺さんと結婚しないですむわ」
女性の方がなんか切実な事情を抱えていたようだ。
「オークさんは余り喜ばないんですね」
「メリットが良く解らないからね」
「だって貴族の身分になるんですよ」
「うーん、僕の世界じゃ身分って感覚無かったからね」
「えっ、・・・・・」
会場を見回すと、男性は銀か金の服、女性は濃色のシンプルなチュールスカート姿が多い。
黒服も白服も皆無なので、大失敗かと心配したが、少なくとも四人のドレス姿には称賛の眼差しが向けられていたので安心した。
「何か僕達受けてるみたいだよ」
「オークのセンス心配したけど大丈夫みたいね」
「ええ、同じ服はいないから目立ってるわよ。胸を張って行きましょう」
「撲はやっぱり恥ずかしいです。男の服が良かったです」
「僕達のテーブルは一番奥だ。僕は少し挨拶してから行く、先に行ってくれ」
「先に食べてて良いのよね」
「ああ、構わんだろ」
『わーい』
招待者の子供だろうか、四人と同い年くらいの子供も混じっているので何か安心だ。
階段の下が黒山の人だかりなっている。
四人を先に行かせる為に、通路を作って貰ったら、そこへ人が転がり出て来た。
頭から床に突っ込みそうだったので、咄嗟に抱き上げた。
ピンク色のドレスを着た、胸の慎ましい女性だった。
何かこの抱き心地には覚えがある。
「ミントさん」
「あっ、あっ、あっ。ご、ごめんなさい、オークさん。後ろから押されて」
ーーーーー
聖神殿主任神官カシス
ちっ、失敗しました。
ミントの後ろに忍び寄って、背中を突き飛ばしたのですがタイミングが早過ぎました。
オークさんに踏み付けて貰う積りだったのに、抱き上げられてしまいました。
畜生、嬉しそうに頬を赤く染めています。
これだったら、私が飛び込めば良かったです、私だって御姫様抱っこして欲しいのに。
目の前に転がっているミントの靴を拾いあげます。
「オークさん、ミントの靴です。この子昔からドジなんです。さっ、ミント、とっとと降りなさい。迷惑でしょ」
「あっ、ごっ、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ、別に迷惑じゃありませんよ」
「それじゃオークさん、私も抱っこして下さい」
「えっ、カシスさん?」
「それじゃ僕も、二人だけ狡いよ」
「ノートは便乗しないでよ」
「別に構わないですよね、オークさん」
「それじゃ、一回だけですよ」
ーーーーー
妙な具合になってしまった。
何故か行列が出来ている。
キャッキャと嬉しそうに席へ戻って行くので、喜んで貰えてはいるのだろう。
なんか公園の遊具になった気分だ。
一緒にチームを組んだ兵士達も招待者として呼ばれていたので、全員が手伝ってくれた。
ここへ呼ばれた御令嬢達は、筋骨隆々とした男が珍しいのだろう、頬を染めて喜んでいる。
遠巻きにして眺めている着飾った男達は、苦虫を噛んだような表情で睨み付けているが、確かにここに集まっている兵士達と体格差は歴然としている。
僕が思っている以上に、レベルアップが身体に与える影響は大きいらしい。
皇帝の到着を知らせるファンファーレが響き渡った。
招待客は席に戻り、僕達主役は皇帝専用の階段の前に並ぶ。
僕達兵士組は、十二名が横三列に並んで片膝を付いて皇帝を出迎える。
その後ろには、八名の神官組が横二列になって頭を下げて立ち、その後ろに魔術師四名が並ぶ。
ミューアとファーレは僕の脇に並んでいる。
皇帝が階段の最後の一段に足を降ろした時だった、耳元にテオの声が響く。
「オーク、後ろの花を飾ったテーブルの上に変な紫色のもやもや出来てるよ」
頭に浮かんだのはゲート、研究所に穴を開けた連中が、テーブルにでも魔法陣を仕掛けて刺客を送り込んで来たのだろう。
「敵だ!」
僕の声に反応して楔形の陣形が直ぐに出来上がる、魚の化け物を千匹以上屠ってきた陣形なので頭より身体が先に動く。
ゲートから大勢の黒装束を纏った刺客が飛び出して来た。
敵は大きな勘違いをしていた、一つは祝典で武器を持たない僕らが無力だと思ったこと、もう一つは皇帝の前で控えていたのが、たぶんこの国で最強の軍団であったこと。
勝負は一瞬で終わった、会場の守備兵が駆け付けた時には、百を超える刺客が床の上で痙攣していた。
魚の化け物の咢に比べれば、刺客の刃は止まっている様に見えた。
全員が拳の一撃で刺客を無力化していた。
神官組と魔術師組も素早くゲートを閉じる。
壺が灰になって崩れたので、テーブルではなく壺が魔道具だった様だ。
後から聞いた話では、直前に壺を割ってしまい、急遽運び込まれたものだという。
刺客が運び出されて再び僕達が整列すると、息を詰めて見詰めていた招待者達から拍手が捲起った。
腕組みして見詰めている一団は隣国からの招待者だろう。
皇帝が片手を上げると会場が静まり返った。
「童はそなた達に二度命を救われた。その働きに報いる為に、そなたらに爵位を送ろうと思う。貴族院議長、宰相、異論は無かろう」
『御意に』
そして僕は貴族になった。
「これでメリッサを嫁にできるぞ」
シュタイゲルが大喜びしている。
「これで日陰者から解放されるぞ」
シトラスは公爵家の二男なので喜ばないと思っていたが、それぞれの事情を抱えているらしい。
涙を零さんばかりに喜んでいる。
他の兵士達も地方領主の三男やら男爵家の二男やらで苦労人が多いので大喜びしている。
貰えるのは領地の無い子爵位らしいのだが、それでも生活には十分な報酬が国から支給されるらしく、父や兄からの小遣いに頼らなくて済む境遇は嬉しいらしい。
神官組、魔術師組は女性が多いので、全員が嬉しくて泣き崩れている。
「うー、これで婚活しなくて済むわ」
「よし!よし!よし!神殿なんか絶対に辞めてやるわ」
「あー、これで実家に帰っても邪険にされないわ」
「あーん、これで禿げの爺さんと結婚しないですむわ」
女性の方がなんか切実な事情を抱えていたようだ。
「オークさんは余り喜ばないんですね」
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