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41 躾
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今夜帰るつもりなので暇を請うと、アリサとミルサに引き留められたので、直ぐに遊びに来ることを約束する。
二人はすっかりカムに懐いている。
部屋に戻るとサラが待っていた。
広い部屋を見回してからカムを睨みつける。
一言も喋らないで、サラは荷物を持って部屋を出る。
慌ててカムも荷物を持って追い駆ける。
明日は休日なので、馬車を手配し、家に荷物を放り込んでから商業区の甘味処へサラを連れて行く。
サラが多少頬を緩めながら平原牛のクリームに赤豆を砂糖で煮込んだ餡と果物を乗せた甘味を美味しそうに無言で食べる姿を見て多少安心する。
家までの帰路も無言であったが、家に入ると背中にしがみついて頬ずりしてくる。
結局堰を切った様に喋り出したのは、二人で寝床に入った後であった。
「あの暴力女に尻を叩かれた。普通じゃないぞ、あの女は。なんかこー、目が逝っちゃってるの」
サラの説明によると、酔った翌日の朝、無理やり寝床から引きずり出されて水を頭から掛けられ、そのまま抱え上げられると尻を平手でたたかれて起こされたらしい。
「それがね、背骨から脳髄まで響くような叩き方で、体の芯に衝撃が走ってね。身体から空気が絞出されるようで、呼吸が苦しくなって」
怖くなって直に降参したが、その恐怖が治まらない内に、目の前に立たされて頭の芯から眩暈がするような大声で延々と怒鳴られ、陰湿な苛めは経験していても、お嬢様育ちの性でサラは正面から強く叱られた経験が少なく、多少ショックを受けたらしい。
後にカムが研修に参加した見習いの娘から聞いた話では、部屋の外でサラが叱責されるのを聞いていた彼女達も、あまりの叱責の激しさに震えて泣き出したそうである。
部屋の扉が開き呼び入れられた時は、地獄の門に招かれるようで、屠殺場に向かう家畜の気分であったと語っていた。
躾の熟達者としてエリスはサラに対しても手腕を存分に発揮したらしい。
「その後もな、事有る毎に怒られてな、態度が悪いとか誠意が無いとかな、、、」
除々に声が小さくなり寝息に変わる。
手がカムの上着の胸を固く握りしめて離さない。
知らなかったサラの繊細な心の一面を見せられたようで、少々後ろめたい気分になる。
罪滅ぼしにサラの頭を胸に引き寄せてやる。
サラが無意識に頬ずりして幸せそうな顔になる。
翌日はサラの行きたい場所へ一日付き合ってやる。
料理屋、甘味処、魔法用品屋、筆屋などを巡り、懇意の店で高級食材を分けて貰う。
港の騒動のお礼としてカル夫婦とダル夫婦に夕食を振舞うことにしていた。
素材の良さを引き出すために肉と野菜と茸を紙に包んで鍋で蒸し焼きにする。
白身の魚の切り身に胡椒と塩を振り、タム麦の粉をまぶしてから山牛のバターで炒める。
平原猪のベーコンとルムの葉で薄味のスープを作り、白ワインを部屋の外で冷やしておく。
デザートも甘味処で買って揃えてある。
古物屋で買い求めた中央大陸産の白い陶磁器類に料理を並べ終わった頃に、カルとアナ、ダルとカヤが集まって来た。
「ほんとにお前ら、こんな良い物食ってよ。早死にするぞ」
ダルのいつもの一言から食事が始まる。
座る位置は港の甘味処でお預けを食っていらい、左側に女性陣、右側に男性陣の配置が定席となっている。
サラもさすがに今日は酒を多少抑えている。
ホグ宮での儀式の様子を聞かれたが、話は次第に王族に関するものとなる。
「宮廷魔道士と宮廷薬師が独身なのは、王様の恋人だからって噂を聞いたんだけどほんとなの」
アナの質問にカムが噴き出しそうになる。
多分パン屋のお客からの噂話だろう。
「あの二人は単なる行き遅れだよ。色気も気配も何にもないよ」
「でも御綺麗なんでしょ」
「まあ、十人並みだけどね。本人達に結婚する意志が無いと思うよ。男性に対して異性を意識している様子が無いもの。仕事が恋人って感じかな」
横からサラが口を挟む。
「宮廷魔道士は乳の大きい女でね。カムに興味が有るみたいなの。祝宴の間中カムを追っかけ回していた」
思い出したらしく、カムを睨む。
「彼女からすれば、僕は子供の年齢だからね」
「そうよサラ。二十歳以上年上なんだからあんたの勝ちよ」
微笑ましい子供らしく的外れな嫉妬と思ってカヤがサラを慰める。
それでもサラは睨んでいたが、アナの質問に助けられた。
「ねえ、大后様ってどんな感じの方なの」
カナも食いついてきた。
「あ、それ私も聞きたかった。中央大陸の貴族様なんでしょ」
「うん、メル国のアルス伯爵家の出身だよ。以前は侯爵家だったから、血筋的には王家も近い伝統のある家系なんだ。そこの直系の長女だよ」
「メル国って中央大陸の大国でしょ。メル国の伯爵家で王家に近い血筋だから、タナス国の王家より格上なんじゃない」
これはアナの発言。
王族として各国の序列は頭に入っている。
勿論アナの出身国の王も中央大陸の伯爵家よりも格下である。
「子供の頃に戦争がらみでアルス家にトラブルが有ったらしくてね。父上が亡くなられて、母上が倒れられてから大后様がそのトラブルを抱えたアルス家を切り盛りしていたらしいんだ。それで弟が一人前になった時はすでに行き遅れていて嫁ぎ先も無かったらしいよ。だけど、その話を聞いたタナス国王から猛烈な求婚があってね、大后様もタナス国王の誠実さに引かれて嫁いで来たらしいよ」
「へー、詳しいな。知らなかった。カムどこでその話聞いたのさ」
これはカナ、ロイヤルな話に目を輝かせている。
生粋のタナス人にとって大后の人気はまだ高いらしい。
「直接御本人からよねー、カム様。三日間も美味しい夕食を御一緒に召し上がっていらっしゃったもんね」
サラが腕を組んでカムを睨みつける。
「えー羨ましい。サラも一緒だったの」
サラが指を振りながら舌打ちする。
「ところがね、酷い話があるの。聞いてよ、酷いんだよこいつは」
サラがカムを指差して睨む。
「私は三日間便所掃除と風呂掃除と給仕と洗濯と客室掃除と皿洗いと床磨きで忙しかったの。しかもとても怖い監視付きで」
「あー、それお客さんが噂してた。鬼のような侍女長が居るって。知り合いの娘さんに荷物届けたら泣き出したって。涙ぽろぽろ落として震えながら泣いていたって」
アナが直ぐに食いつく、今流行りのホグ宮に関する噂らしい。
「うん、そいつよ、怖いの何のって。手を抜こうとすると雷みたいに怒るの。私でも足が震えちゃった」
震える前に、そもそもエリサ相手に手抜きをしようとしたらしい、良い根性である。
昨日同情したことをカムは少し後悔する。
「私が震えている時にこいつはね、会議テーブル付きのひろーい部屋で一人で優雅に寛いでいたのよ特別待遇で。私が泣いて震えているのに私の心配もしないで。従者の寝床付きの広い部屋よ。信じられる。私はこいつの部屋の風呂位の大きさの4人部屋に押し込まれたのに」
「あ、それはカムが悪い。薄情すぎるよ。その人怖かったらしいよ。サラと一緒にいた娘は家に帰ったら寝込んじゃったらしいわよ。さっき八百屋さんで話題になっていたわよ」
カムがその鬼に頼んだとは口が裂けても言えない。
すでに女性陣のカムを見る目が厳しい。
「それだけじゃないのよ、こいつは。私を心配して見に来ないだけじゃなくてね、その間、プラチナブロンドの公爵家のご令嬢といちゃついていたの」
「あっ、あのお人形さんみたいに綺麗な子よね」
アナもカナも港で見ている。
「そーそいつ」
「あれは、アリサとミルナがローマン語喋れないから、大后様に頼まれて相手をしていたんだよ。いちゃいちゃしていた訳じゃないよ」
「へー、あの子アリサって名前なんだ。白状しろカム。ネタは上がってるぞ」
「あー、あの噂の男の子ってカムだったの。酷い」
「アナ、私も聞いた伯爵家令嬢の恋人の噂。こいつが・・・、サラが居ながら・・・、この浮気者」
「ホグ宮でも噂になっていたわよ。ご令嬢が恋人と抱き合っていたって」
サラがカムを指差して睨む。
「いやあれは抱き合ったんじゃなくて・・・」
ここでカムが凍りつく。女性陣の雰囲気が変わった。
「カム」
「酷いわ」
「これは許せないな」
カナは完全に戦闘モードに入っているし、アナの身体の周りで余った電気が火花を散らしている。
サラも背後に怒りのオーラが渦巻いている。
カルとダルが腰を浮かせるが、二人は重要な盾である。
カムがベルトを握って逃がさないようにしている。
最近カルのフットワークが良くなっている。
逃げることに躊躇が無くなった。
カムは取って置きの1回しか利かない魔法を発動し逃亡を計る。
今が正に絶好の使い時で惜しくない。
突然テーブルに数匹の掌大のゴル虫が現れる。
台所で時々見かける女性の天敵である。
ゴル虫が羽を広げて女性陣に飛掛る。
「キャー」
三人の女性の悲鳴に併せて男三人が逃げ出す。
ダルは元々素早かったが、カルも惚れ惚れする逃げっぷりである。
カムの盾替りに使われて学習したらしい。
石畳を走りながら、視界の片隅に賢者の杖をアナに渡すサラを視認する。
本能的に言葉が出る。
「右」
カムの声で全員が石畳の脇に積もった雪に躊躇なく頭から突っ込む。
今まで立っていた場所に特大の雷球が現れ弾ける。
雪の壁を追撃の雷球が切り崩すが、カルが魔法で雪の中に氷のトンネルを作り、物凄い速さで滑り下りる。
トンネルを雷撃が襲うが滑り落ちる速度に間に合っていない。
木柵を飛び越えて港まで逃げ切る。
さすがに、港まではアナの魔法も届かない。
それでも距離と精度が飛躍的に向上している。
直に港も射程距離に入るかもしれない。
肩で息をしながらダルがこぼす。
「カムよ。なんで俺達まで逃げなきゃならないんだ」
「成り行きですよ。成り行き。俺だって濡れ衣なんですから」
「ほんとか、良い思いしたんじゃないか」
「いいですか。秘密厳守ですよ」
カムが事情を説明する。
「なるほどそれで感謝されたって訳か。女共の勘違いだな」
ダルは納得するが、カルは複雑な表情をする。
「カムな、おまえが単なる感謝と思っても相手が惚れるかもしれんぞ。気を付けてくれよ。気が付いたと思うがアナの魔法が半端じゃ無くなってるんだよ」
「はい気を付けますよ。俺も死にたくないですから。じゃ、食事の続きをしましょう。そこに知り合いの事務所が有りますから」
二人はカムが大きなバスケットを持っていることに初めて気付く。
カムが得意そうに中身を見せる。ワインを含めた先ほどの食事が綺麗に詰まっている。
二人は天を仰ぐ。デザート6人分も綺麗に並べられて入っていた。
二人はすっかりカムに懐いている。
部屋に戻るとサラが待っていた。
広い部屋を見回してからカムを睨みつける。
一言も喋らないで、サラは荷物を持って部屋を出る。
慌ててカムも荷物を持って追い駆ける。
明日は休日なので、馬車を手配し、家に荷物を放り込んでから商業区の甘味処へサラを連れて行く。
サラが多少頬を緩めながら平原牛のクリームに赤豆を砂糖で煮込んだ餡と果物を乗せた甘味を美味しそうに無言で食べる姿を見て多少安心する。
家までの帰路も無言であったが、家に入ると背中にしがみついて頬ずりしてくる。
結局堰を切った様に喋り出したのは、二人で寝床に入った後であった。
「あの暴力女に尻を叩かれた。普通じゃないぞ、あの女は。なんかこー、目が逝っちゃってるの」
サラの説明によると、酔った翌日の朝、無理やり寝床から引きずり出されて水を頭から掛けられ、そのまま抱え上げられると尻を平手でたたかれて起こされたらしい。
「それがね、背骨から脳髄まで響くような叩き方で、体の芯に衝撃が走ってね。身体から空気が絞出されるようで、呼吸が苦しくなって」
怖くなって直に降参したが、その恐怖が治まらない内に、目の前に立たされて頭の芯から眩暈がするような大声で延々と怒鳴られ、陰湿な苛めは経験していても、お嬢様育ちの性でサラは正面から強く叱られた経験が少なく、多少ショックを受けたらしい。
後にカムが研修に参加した見習いの娘から聞いた話では、部屋の外でサラが叱責されるのを聞いていた彼女達も、あまりの叱責の激しさに震えて泣き出したそうである。
部屋の扉が開き呼び入れられた時は、地獄の門に招かれるようで、屠殺場に向かう家畜の気分であったと語っていた。
躾の熟達者としてエリスはサラに対しても手腕を存分に発揮したらしい。
「その後もな、事有る毎に怒られてな、態度が悪いとか誠意が無いとかな、、、」
除々に声が小さくなり寝息に変わる。
手がカムの上着の胸を固く握りしめて離さない。
知らなかったサラの繊細な心の一面を見せられたようで、少々後ろめたい気分になる。
罪滅ぼしにサラの頭を胸に引き寄せてやる。
サラが無意識に頬ずりして幸せそうな顔になる。
翌日はサラの行きたい場所へ一日付き合ってやる。
料理屋、甘味処、魔法用品屋、筆屋などを巡り、懇意の店で高級食材を分けて貰う。
港の騒動のお礼としてカル夫婦とダル夫婦に夕食を振舞うことにしていた。
素材の良さを引き出すために肉と野菜と茸を紙に包んで鍋で蒸し焼きにする。
白身の魚の切り身に胡椒と塩を振り、タム麦の粉をまぶしてから山牛のバターで炒める。
平原猪のベーコンとルムの葉で薄味のスープを作り、白ワインを部屋の外で冷やしておく。
デザートも甘味処で買って揃えてある。
古物屋で買い求めた中央大陸産の白い陶磁器類に料理を並べ終わった頃に、カルとアナ、ダルとカヤが集まって来た。
「ほんとにお前ら、こんな良い物食ってよ。早死にするぞ」
ダルのいつもの一言から食事が始まる。
座る位置は港の甘味処でお預けを食っていらい、左側に女性陣、右側に男性陣の配置が定席となっている。
サラもさすがに今日は酒を多少抑えている。
ホグ宮での儀式の様子を聞かれたが、話は次第に王族に関するものとなる。
「宮廷魔道士と宮廷薬師が独身なのは、王様の恋人だからって噂を聞いたんだけどほんとなの」
アナの質問にカムが噴き出しそうになる。
多分パン屋のお客からの噂話だろう。
「あの二人は単なる行き遅れだよ。色気も気配も何にもないよ」
「でも御綺麗なんでしょ」
「まあ、十人並みだけどね。本人達に結婚する意志が無いと思うよ。男性に対して異性を意識している様子が無いもの。仕事が恋人って感じかな」
横からサラが口を挟む。
「宮廷魔道士は乳の大きい女でね。カムに興味が有るみたいなの。祝宴の間中カムを追っかけ回していた」
思い出したらしく、カムを睨む。
「彼女からすれば、僕は子供の年齢だからね」
「そうよサラ。二十歳以上年上なんだからあんたの勝ちよ」
微笑ましい子供らしく的外れな嫉妬と思ってカヤがサラを慰める。
それでもサラは睨んでいたが、アナの質問に助けられた。
「ねえ、大后様ってどんな感じの方なの」
カナも食いついてきた。
「あ、それ私も聞きたかった。中央大陸の貴族様なんでしょ」
「うん、メル国のアルス伯爵家の出身だよ。以前は侯爵家だったから、血筋的には王家も近い伝統のある家系なんだ。そこの直系の長女だよ」
「メル国って中央大陸の大国でしょ。メル国の伯爵家で王家に近い血筋だから、タナス国の王家より格上なんじゃない」
これはアナの発言。
王族として各国の序列は頭に入っている。
勿論アナの出身国の王も中央大陸の伯爵家よりも格下である。
「子供の頃に戦争がらみでアルス家にトラブルが有ったらしくてね。父上が亡くなられて、母上が倒れられてから大后様がそのトラブルを抱えたアルス家を切り盛りしていたらしいんだ。それで弟が一人前になった時はすでに行き遅れていて嫁ぎ先も無かったらしいよ。だけど、その話を聞いたタナス国王から猛烈な求婚があってね、大后様もタナス国王の誠実さに引かれて嫁いで来たらしいよ」
「へー、詳しいな。知らなかった。カムどこでその話聞いたのさ」
これはカナ、ロイヤルな話に目を輝かせている。
生粋のタナス人にとって大后の人気はまだ高いらしい。
「直接御本人からよねー、カム様。三日間も美味しい夕食を御一緒に召し上がっていらっしゃったもんね」
サラが腕を組んでカムを睨みつける。
「えー羨ましい。サラも一緒だったの」
サラが指を振りながら舌打ちする。
「ところがね、酷い話があるの。聞いてよ、酷いんだよこいつは」
サラがカムを指差して睨む。
「私は三日間便所掃除と風呂掃除と給仕と洗濯と客室掃除と皿洗いと床磨きで忙しかったの。しかもとても怖い監視付きで」
「あー、それお客さんが噂してた。鬼のような侍女長が居るって。知り合いの娘さんに荷物届けたら泣き出したって。涙ぽろぽろ落として震えながら泣いていたって」
アナが直ぐに食いつく、今流行りのホグ宮に関する噂らしい。
「うん、そいつよ、怖いの何のって。手を抜こうとすると雷みたいに怒るの。私でも足が震えちゃった」
震える前に、そもそもエリサ相手に手抜きをしようとしたらしい、良い根性である。
昨日同情したことをカムは少し後悔する。
「私が震えている時にこいつはね、会議テーブル付きのひろーい部屋で一人で優雅に寛いでいたのよ特別待遇で。私が泣いて震えているのに私の心配もしないで。従者の寝床付きの広い部屋よ。信じられる。私はこいつの部屋の風呂位の大きさの4人部屋に押し込まれたのに」
「あ、それはカムが悪い。薄情すぎるよ。その人怖かったらしいよ。サラと一緒にいた娘は家に帰ったら寝込んじゃったらしいわよ。さっき八百屋さんで話題になっていたわよ」
カムがその鬼に頼んだとは口が裂けても言えない。
すでに女性陣のカムを見る目が厳しい。
「それだけじゃないのよ、こいつは。私を心配して見に来ないだけじゃなくてね、その間、プラチナブロンドの公爵家のご令嬢といちゃついていたの」
「あっ、あのお人形さんみたいに綺麗な子よね」
アナもカナも港で見ている。
「そーそいつ」
「あれは、アリサとミルナがローマン語喋れないから、大后様に頼まれて相手をしていたんだよ。いちゃいちゃしていた訳じゃないよ」
「へー、あの子アリサって名前なんだ。白状しろカム。ネタは上がってるぞ」
「あー、あの噂の男の子ってカムだったの。酷い」
「アナ、私も聞いた伯爵家令嬢の恋人の噂。こいつが・・・、サラが居ながら・・・、この浮気者」
「ホグ宮でも噂になっていたわよ。ご令嬢が恋人と抱き合っていたって」
サラがカムを指差して睨む。
「いやあれは抱き合ったんじゃなくて・・・」
ここでカムが凍りつく。女性陣の雰囲気が変わった。
「カム」
「酷いわ」
「これは許せないな」
カナは完全に戦闘モードに入っているし、アナの身体の周りで余った電気が火花を散らしている。
サラも背後に怒りのオーラが渦巻いている。
カルとダルが腰を浮かせるが、二人は重要な盾である。
カムがベルトを握って逃がさないようにしている。
最近カルのフットワークが良くなっている。
逃げることに躊躇が無くなった。
カムは取って置きの1回しか利かない魔法を発動し逃亡を計る。
今が正に絶好の使い時で惜しくない。
突然テーブルに数匹の掌大のゴル虫が現れる。
台所で時々見かける女性の天敵である。
ゴル虫が羽を広げて女性陣に飛掛る。
「キャー」
三人の女性の悲鳴に併せて男三人が逃げ出す。
ダルは元々素早かったが、カルも惚れ惚れする逃げっぷりである。
カムの盾替りに使われて学習したらしい。
石畳を走りながら、視界の片隅に賢者の杖をアナに渡すサラを視認する。
本能的に言葉が出る。
「右」
カムの声で全員が石畳の脇に積もった雪に躊躇なく頭から突っ込む。
今まで立っていた場所に特大の雷球が現れ弾ける。
雪の壁を追撃の雷球が切り崩すが、カルが魔法で雪の中に氷のトンネルを作り、物凄い速さで滑り下りる。
トンネルを雷撃が襲うが滑り落ちる速度に間に合っていない。
木柵を飛び越えて港まで逃げ切る。
さすがに、港まではアナの魔法も届かない。
それでも距離と精度が飛躍的に向上している。
直に港も射程距離に入るかもしれない。
肩で息をしながらダルがこぼす。
「カムよ。なんで俺達まで逃げなきゃならないんだ」
「成り行きですよ。成り行き。俺だって濡れ衣なんですから」
「ほんとか、良い思いしたんじゃないか」
「いいですか。秘密厳守ですよ」
カムが事情を説明する。
「なるほどそれで感謝されたって訳か。女共の勘違いだな」
ダルは納得するが、カルは複雑な表情をする。
「カムな、おまえが単なる感謝と思っても相手が惚れるかもしれんぞ。気を付けてくれよ。気が付いたと思うがアナの魔法が半端じゃ無くなってるんだよ」
「はい気を付けますよ。俺も死にたくないですから。じゃ、食事の続きをしましょう。そこに知り合いの事務所が有りますから」
二人はカムが大きなバスケットを持っていることに初めて気付く。
カムが得意そうに中身を見せる。ワインを含めた先ほどの食事が綺麗に詰まっている。
二人は天を仰ぐ。デザート6人分も綺麗に並べられて入っていた。
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