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9 新たな流れ
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翌朝、俺達は迷宮に潜る前に防具屋へ向かった。
空白地帯のネズミは今までのネズミと攻撃方法が異なっており、だいぶ足を囓られたので、脛当てを買おうと思ったのだ。
今までのネズミは集団でひたすら急所を狙う短期決戦型だったのだが、空白地帯のネズミは個で相手の戦闘力奪って行く、毛皮が厚い持久戦型なのだ。
俺は銀貨三枚で簾の様に木の板を繋ぎ合わせた脛当てを買った。
表面に金属板を貼り合わせたブーツが欲しかったのだが、金が足りなくて買えなかった。
アムに高級な岩蜥蜴のブーツを買われてしまったのだ。
銅とガラスの合金の薄板を挟んで縫い合わせてある、軽くて丈夫なブーツだ。
脇に赤や青や黄色の花模様が描かれており、どう見ても儀礼用なのだが欲しい欲しいの一点張りだったのだ。
以前ならば頭を一発張り飛ばしてお終いだったのだが、今はどうしても、犬歯を剥かれると此奴に甘くなってしまう。
食料を少し多めに買ってから、転送石を潜る。
懐が寒くなったので今日は少々気合いが入る。
今回は降り立った途端に脛をネズミに襲われた、脛当てを買っておいて正解だった。
噛まれても大丈夫と思うと攻撃に集中できる。
昨日よりも冷静にネズミを捌けているのだが、相手のネズミは昨日より強くなっている気がする。
昼飯を食った後、その日三十三枚目の扉を開けて飛び込んだらネズミが居なかった。
昨日通った部屋と考え他の二枚の扉を開けて確認する。
正解だった、両方ネズミは居なかった。
ならば左の壁沿いに進めば出口に辿り着ける筈である。
数部屋進んでパターンから現在位置を確認し、昨日までの地図に今日記録したマップを描き入れる。
出口近くに降りながら、逆方向に向かっていた自分に苦笑する。
ネズミが居なければ迷路内はスムーズに進める、リポップしないことも解っているので開けた扉は閉めないで開け放ったままにした。
階段の部屋へと一旦向かい、再び出口へと向かう。
出口に通じる扉を開けると、扉の向こうでは人が行き交っていた。
此方からは見えるが向こうからは見えないのだろう、なんか不思議な感じだ。
自分の場所が解っていると安心感が違う。
その日は出口近くの地図を少し広げておいた。
ーーーーー
「あーん、寝不足はお肌に悪いのよね」
今私はニーサと西出の転送石を監視している。
本国と繋がりのある商店の狭い屋根裏に寝泊まりしてだ。
姫があの男と転送石に飛び込んでから、すでに十日が経っている。
二人は迷宮に食われたと皆考えているのだが、証拠を持ち帰らないと国には帰れない。
昨日から方針を、出口監視から遺留品探しに切り替えて、西出の広場の監視に三人、東出の広場の監視に三人、そしてそれぞれの場所にある神殿の遺留品届出所の監視に三人残し、残りは全員迷宮に潜って遺留品を探している。
全員と言っても十六人、たったの二組のパーティーだ、今度も砂浜に落とした砂を探し求める様な厳しい作業だ。
「あたし計算してみたんだけどさ、この迷宮を縦横256マスの網目とすると全部で65536個の網目が出来るの。空白地帯が縦横64マスの網目だから4096個引くでしょ、すると残りは61440個所。二班が頑張って毎日三十個所づつ調べるでしょ、仮によ、仮に、同じ場所が重ならない前提でよ。それでも三年も掛かるのよ」
うん、判ってる、昨日帰って来た捜索隊の探索済み区域を見て二人で絶句してた。
二組入ったのに地図に書いてあるのはほぼ一本の線、ほぼ同じ所に飛ばされて同じ経路で前後して帰って来たのだ。
隊長が謝ってたから自覚が有るんだと思うけど、もの凄く優秀な人なんだけどこか運から見放されているのよね。
一昨日までの出口の監視でも、この町は大きな男と小さな女のアベックが特異的多くて大変だった、この町はロリコン連中の総本山じゃないかと思うくらい。
結局一カ所十二人じゃ対応しきれなからフードで顔を隠した連中だけ追跡することのしたんだけどそれでも忙しかった、うん、他人のムフフを連日確認してから戻って来るのって、何か凄く虚しいのよね。
男共の私達を見る目が危なくなって来るし。
それも有って、隊長は昨日遺留品操作を決断して、発情ぎみの男共を迷宮に連れて行った。
うん、女性は全員地上勤務、中間管理職は大変だ。
ん、姫様に似てる気もするが勘違いだろう。
あっ違う、あいつ等は絶対に違う。
ここ数日良く見かける危ない馬鹿だ、男は貴族を真似て髪を白く染めて花を散らした模様の白衣を来ている。
さながら道化だ、本人は格好良いと思っているのだろうか、あれだけ白髪が似合わない奴も珍しいのに。
脛当ては安物だから白衣も安物なんだろう、全く見っとも無い。
あの娘もあの馬鹿の何処が良いのだろう、地味で真面目そうな黒髪の娘なのに。
地図役の地味なエプロンが良く似合っている。
ブーツの小さなお洒落がいじらしい。
ーーーーー
やっとケロニサロンのプセロという町に到着しました。
だけどネリウス国の人達はまたアムネリウスを見失ってしまったそうです、うーん、これでまた少し遊べる。
一生結界の塔に幽閉されるかと思っていたので良かったです。
宰相さんって、良い男の癖に度量が小さいのよねー、あんなに怒らなくても良いのに。
中年の恰好良いおじさんの宰相さんに近衛兵の若い子をくっ付けてみただけなの。
透明マントを着て鑑賞してたら、ばれちゃったのよねー。
でもあの近衛の子、初々しくて良かったなー。
さあ、宿の食堂に行って今日のターゲットを物色しよう。
うわー、迷宮の町だけあって、冒険者が選取り見取り、目移りしちゃうなー。
肉体派同士のぶつかり合いも魅力的だし、華奢な子をマッチョな人が苛むのも味があって良いのよね。
爽やかな親友同士って組み合わせの若い子が居る、十六歳くらいかな。
よし、今日は青い果実の瑞々しさを味わいましょう。
うっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、それじゃ二人の心に侵入して、そーよ、そう、うん、その調子。
さあ、新しい扉をお開けなさい。
あー、なんで男性同士のまぐわう姿って、こんなにも魅力的なのかしら。
ーーーーー
騎士を目指してる私のところになんでこんな話が舞い込むんだ、王族の義務だと、王族の地位なんて邪魔なので捨てた積りだったのに。
でもなー、殺せとか戦えって言うんだった解るけどなー、転移者とまぐわえって、一体なんなんだ、まったく。
女の私に男を強姦しろってことか、くそー、面白い、受けて立ってやろうじゃないか、畜生め。
空白地帯のネズミは今までのネズミと攻撃方法が異なっており、だいぶ足を囓られたので、脛当てを買おうと思ったのだ。
今までのネズミは集団でひたすら急所を狙う短期決戦型だったのだが、空白地帯のネズミは個で相手の戦闘力奪って行く、毛皮が厚い持久戦型なのだ。
俺は銀貨三枚で簾の様に木の板を繋ぎ合わせた脛当てを買った。
表面に金属板を貼り合わせたブーツが欲しかったのだが、金が足りなくて買えなかった。
アムに高級な岩蜥蜴のブーツを買われてしまったのだ。
銅とガラスの合金の薄板を挟んで縫い合わせてある、軽くて丈夫なブーツだ。
脇に赤や青や黄色の花模様が描かれており、どう見ても儀礼用なのだが欲しい欲しいの一点張りだったのだ。
以前ならば頭を一発張り飛ばしてお終いだったのだが、今はどうしても、犬歯を剥かれると此奴に甘くなってしまう。
食料を少し多めに買ってから、転送石を潜る。
懐が寒くなったので今日は少々気合いが入る。
今回は降り立った途端に脛をネズミに襲われた、脛当てを買っておいて正解だった。
噛まれても大丈夫と思うと攻撃に集中できる。
昨日よりも冷静にネズミを捌けているのだが、相手のネズミは昨日より強くなっている気がする。
昼飯を食った後、その日三十三枚目の扉を開けて飛び込んだらネズミが居なかった。
昨日通った部屋と考え他の二枚の扉を開けて確認する。
正解だった、両方ネズミは居なかった。
ならば左の壁沿いに進めば出口に辿り着ける筈である。
数部屋進んでパターンから現在位置を確認し、昨日までの地図に今日記録したマップを描き入れる。
出口近くに降りながら、逆方向に向かっていた自分に苦笑する。
ネズミが居なければ迷路内はスムーズに進める、リポップしないことも解っているので開けた扉は閉めないで開け放ったままにした。
階段の部屋へと一旦向かい、再び出口へと向かう。
出口に通じる扉を開けると、扉の向こうでは人が行き交っていた。
此方からは見えるが向こうからは見えないのだろう、なんか不思議な感じだ。
自分の場所が解っていると安心感が違う。
その日は出口近くの地図を少し広げておいた。
ーーーーー
「あーん、寝不足はお肌に悪いのよね」
今私はニーサと西出の転送石を監視している。
本国と繋がりのある商店の狭い屋根裏に寝泊まりしてだ。
姫があの男と転送石に飛び込んでから、すでに十日が経っている。
二人は迷宮に食われたと皆考えているのだが、証拠を持ち帰らないと国には帰れない。
昨日から方針を、出口監視から遺留品探しに切り替えて、西出の広場の監視に三人、東出の広場の監視に三人、そしてそれぞれの場所にある神殿の遺留品届出所の監視に三人残し、残りは全員迷宮に潜って遺留品を探している。
全員と言っても十六人、たったの二組のパーティーだ、今度も砂浜に落とした砂を探し求める様な厳しい作業だ。
「あたし計算してみたんだけどさ、この迷宮を縦横256マスの網目とすると全部で65536個の網目が出来るの。空白地帯が縦横64マスの網目だから4096個引くでしょ、すると残りは61440個所。二班が頑張って毎日三十個所づつ調べるでしょ、仮によ、仮に、同じ場所が重ならない前提でよ。それでも三年も掛かるのよ」
うん、判ってる、昨日帰って来た捜索隊の探索済み区域を見て二人で絶句してた。
二組入ったのに地図に書いてあるのはほぼ一本の線、ほぼ同じ所に飛ばされて同じ経路で前後して帰って来たのだ。
隊長が謝ってたから自覚が有るんだと思うけど、もの凄く優秀な人なんだけどこか運から見放されているのよね。
一昨日までの出口の監視でも、この町は大きな男と小さな女のアベックが特異的多くて大変だった、この町はロリコン連中の総本山じゃないかと思うくらい。
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それも有って、隊長は昨日遺留品操作を決断して、発情ぎみの男共を迷宮に連れて行った。
うん、女性は全員地上勤務、中間管理職は大変だ。
ん、姫様に似てる気もするが勘違いだろう。
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ここ数日良く見かける危ない馬鹿だ、男は貴族を真似て髪を白く染めて花を散らした模様の白衣を来ている。
さながら道化だ、本人は格好良いと思っているのだろうか、あれだけ白髪が似合わない奴も珍しいのに。
脛当ては安物だから白衣も安物なんだろう、全く見っとも無い。
あの娘もあの馬鹿の何処が良いのだろう、地味で真面目そうな黒髪の娘なのに。
地図役の地味なエプロンが良く似合っている。
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ーーーーー
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中年の恰好良いおじさんの宰相さんに近衛兵の若い子をくっ付けてみただけなの。
透明マントを着て鑑賞してたら、ばれちゃったのよねー。
でもあの近衛の子、初々しくて良かったなー。
さあ、宿の食堂に行って今日のターゲットを物色しよう。
うわー、迷宮の町だけあって、冒険者が選取り見取り、目移りしちゃうなー。
肉体派同士のぶつかり合いも魅力的だし、華奢な子をマッチョな人が苛むのも味があって良いのよね。
爽やかな親友同士って組み合わせの若い子が居る、十六歳くらいかな。
よし、今日は青い果実の瑞々しさを味わいましょう。
うっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、ふっ、それじゃ二人の心に侵入して、そーよ、そう、うん、その調子。
さあ、新しい扉をお開けなさい。
あー、なんで男性同士のまぐわう姿って、こんなにも魅力的なのかしら。
ーーーーー
騎士を目指してる私のところになんでこんな話が舞い込むんだ、王族の義務だと、王族の地位なんて邪魔なので捨てた積りだったのに。
でもなー、殺せとか戦えって言うんだった解るけどなー、転移者とまぐわえって、一体なんなんだ、まったく。
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