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高年期[二学期・後編]
何も変わらなかった?いや変わったのは・・・?
しおりを挟む「薫風様は今日1日こちらでお休みして頂きます。そして体の調子をみて家へお帰し致します。」
「っ!駄目だ。この家からは出さない・・・」
「公爵家のご子息とも在ろう御方が、監禁ですか?・・・はぁ、なんとも情けない。薫風様の人生を狂わすおつもりですか?」
「なっ!?監禁など」
「家から出さないなんて監禁の他に何と言うのですか?・・・なんとも情けない。しかもなんですか薫風様の身体の痣は!動物ですか!?あんなに・・・あぁお痛わしい薫風様・・・」
「くっ・・・!」
あの~眠いので寝かせてほしいのですが・・・
もう小一時間程お二人が言い合いをしているんですが・・・うん、執事さん、余程鬱憤が溜まってたんだね。主従関係はどこへやら・・・そして風間くん、少しはまともに反撃しなよ。執事さんの正論ばかりで主の立場が危うくなってますよ?
「~~~っ!薫風は、私の、ものだっ!契約書は破棄せん!」
「もう契約書類は破かれております。貴方が何を言おうと契約は破棄されましたよ。・・・いい加減お認めください。それに、あの契約書はそもそも必要ないかと存じます。」
「・・・?」
「薫風様は何故あんな反吐がでそうな内容に署名したのか、お考えください。・・・写しがございます。もう一度よくお読みください。そして・・・薫風様の提示した内容もお読みください。」
「・・・」
あーうん、やっぱ風間くんの提示内容は酷いよね~・・・内容はこうだ。
風間の要求
・休みの日は用がない限り風間家で過ごす。
・週に1度体を差し出す。
・私情を挟まない。拒まない。
・情事中、否定はしてならない。
・すぐに行為ができるよう予め準備をする。
・寝泊まりはしない。
薫風の要求
・不利益になるような事を他言しない。
・何か問題が発生した場合、話を合わせるなりして助ける。
・週に2日、昼食を共にする。
・風間家に向かう時は迎えを寄越す。帰りはその時による。
共通の要求
・互いに恋人ができるまでの契約とする。
・契約の1つでも違反した場合、罰または破棄する。
・仮であれ外で顔を合わせたら恋人のふりをする。
・口付けは禁止。
さっそく昨日契約違反してるけどね。口付け。ノーカンにはならないだろう。それにしたいからしたわけじゃないしね。口煩く僕が言ったから口封じに口付けされたんだし・・・
「あ、し、かが、さっ・・・んんっ!」
「薫風様、如何致しましたか?」
「薫風、私を頼りなさい。足利は私の執事だ。頼っては駄目だ。」
「・・・和彦様、昨日私に全て任せましたよね?それは私に薫風様の言うとおりに動けと言ってるのではなかったのですか?」
「・・・す、全て任せるとは言ったが・・・い、家に寝泊まりは契約違反だぞっ!」
「ですから契約違反の為、契約書を破棄しても宜しいですよね?」
「なぁっ!?」
・・・うん、執事さんの方が優勢ですね。さて、どうすればいいのかな?喉痛いし眠いし疲れたし腰痛いし・・・うん、自分優先にしよう。
「あ、の・・・眠いです」
「「!」」
「帰れと・・・ケホンッ、い、言うなら」
「いや!薫風はこのまま・・・いや、私の寝室で眠りなさい!」
「和彦様・・・薫風様は今、身体に負担を掛けてはいけません。このままお休みにさせた方がよろしいでしょう。ほら!お仕事を致しましょう!執務室へ。」
「お、おいっ・・・!」
言葉攻めの即行動。・・・さすがスーパー執事様!・・・いなくなったところで、はいお休みなさーい。
__________
「ん・・・んんっ!?」
な、なんか腹部に重りが・・・?
と、とりあえず動く頭を上げて腹部の方を覗き見る。・・・するとそこにはっ、
「かずひこ、さん・・・?」
「ん・・・」
「・・・」
なんとも無防備な顔。重いと思ったら僕の腹の上にうつ伏せで眠っていたようだ。いつの間に来たのだろう?
「お目覚めですか薫風様・・・」
「あ、足利さん・・・いつからこの状態だったんですか?」
「約一時間前程からです。・・・記憶を失っても薫風様への執着は変わらないようですね。」
「っ!あ、あの・・・足利さんは」
「はい。薫風様が前世の記憶持ちや、薫風様が和彦様に告白して真の恋人となった事など・・・全て覚えております。」
「!そうですか・・・さぞ和彦さんの態度に疑問を抱きましたよね。」
「はい・・・週の始めは、それはそれは幸せそうで・・・うんざりする程ノロケ話を聞かされました。・・・ですが次の日には、あの幼き頃の、なんて言うのでしょう・・・いつもつまらなそうな、作り笑いしかできない無愛想な子供の頃に戻ってしまわれた感じが致します。」
「・・・そんなに、ですか?」
・・・それから執事さんが昔話を話始めた。
風間くんが小学6年生の頃、親の事業が失敗し公爵家が没落寸前にまで陥った所から始まり、一人で家を立て直し新たに人脈を作りただただ仕事に没頭していたらしい。まだ12歳、成人してないにも関わらカリスマ性のある才能で親が領主していた時よりも改善し良い方へと導いたらしい。
あー確かに風間くんのプロフィールには「一度没落した家を継いで元に戻すという英才児。」とは書いてあったが・・・実際に没落しそうな家を持ちこたえ、さらに繁栄させるのは凄まじいことだよね。うん、風間くん凄い!
・・・驚いた事に、それは僕との出会いがあってこその事だと執事さんは何故か胸を張って語っていた。・・・え、そうだったの?何故に?思い当たるようなエピソードなんてないんですが・・・
そして僕が高校生になる時を狙って、ただ僕に会いたいという一心で理事長へと就任したらしい。・・・それ、執念じゃね?僕への執念が物凄く重い!改めて思うわ、風間くんの想いが重いです。
「・・・私は和彦様が幸せになれればと、ずっと傍で支えていました。それに親からの愛情を知らずに育った和彦様が心配で・・・ですが、ちゃんと誰かを愛せる方で良かったと。」
「・・・和彦さんが夏頃に、まだ小学生なのに学校を辞める程の何かがあったんだなとは思ってましたが・・・というか、何故和彦さんはそんなにも僕に好意を抱いてるのでしょうか?」
「それは本人のみぞ知る事ですが・・・私が思うに、唯一、和彦様を「風間和彦」として接してくれたから、ではないでしょうか。」
「ん?」
「みなさんは家柄と和彦様の容姿しかみてませんでしたから。」
「あー・・・よく、わかりました。ですが、僕からしたら普通なんですがね。まぁでも初対面で「目をつけられたくない」と思いましたけどね。何て言うか、本能的に?」
「ふふっ・・・それです。和彦様の周りにいない、和彦様を和彦様と見てくれる人。そして和彦様を変えてくださいました。薫風様にはとても・・・感謝致してます。」
「・・・」
執事さんにとって僕はどう映ってるんだろう?でも、まぁ悪い気はしないなぁ。いつも助けてもらってるし?
「・・・和彦さん、ここにいるって事は心配してくれて来てくれたって思っても、いいんでしょうか。」
「はい。記憶はなくとも、きっと身体は覚えて御出なんでしょう。執務中ずっとソワソワしておりました。」
「そう、ですか。・・・僕は、まだ和彦さんの事、想っててもいいの、かな・・・?」
「むしろ、こちらからお願い致します。私は和彦様には薫風様が必要と、今でも思っております。それに・・・」
「?」
あれ?急に執事さんの顔が険しくなったよ?え、どーしたの?
「和彦様の様子が変わった頃、ここの家の事情も変わってしまったようなのです。・・・そして和彦様が、もしかしたら理事長を辞任するかもと・・・」
「・・・は?」
「近々、和彦様の父上様が領主へとご帰還する予定なのです。それにより和彦様は入れ替わりに別宅へと行き休養したいとか・・・」
・・・・ん?
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