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高年期[二学期・後編]

風間家の事情。

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「理事長を・・・辞める?」

「正確には旦那様、和彦様の父上であるここの領主様に引き継がれる、というわけでございます。」




腹部で眠ってる風間くんを起こさないよう上体を起こし執事さんと対峙するよう身体を執事さんの方へと向ける。



それに気付いたのかソファーにあったクッションを僕の方へ持ってきて背中へと忍ばせ身体に負担がかからないよう背もたれを作ってくれた。ほんと気遣い屋さんですね。



話が長くなると悟ったのか執事さんも椅子をベッドへと持ってきて僕の近くに置き腰掛けた。






「・・・それで、和彦さんは別宅へと?何故そうなるんですか?」

「旦那様は・・・自分より優秀な息子が気に入らないのでしょう。・・・私を通して情報を得ていたようです。その点は記憶が曖昧なのですが、手紙のやり取りの跡があったので、私の父に確認した所、私は和彦様が領主代理になった時から事細かく情報を流していたようです。・・・そこで、和彦様をそろそろ代理を辞めさせ少し休めと言い別宅へと追いやろうと言う事なのでしょう。・・・なんとも愚かな。」

「・・・そ、う、なんですか・・・」

「・・・私の家の事情も変わりました。和彦様がお変わりになる前、我が家は風間家が没落すると見限り執事を辞め違う職場へと移っておりました。私は幼い頃から和彦様の傍にいて、幼い和彦様を支えたいと思い私だけこの家に残りましたが・・・今現在は、未だに足利家は風間家の執事を継続しており、何もなかったかの様な状況になっております・・・まさに青天の霹靂でした。」

「・・・そこまで変わってるなんて。・・・すみません、それは僕のせいなんです。」

「なん、ですって?」

「これは・・・銀徹さんもお話を聞く必要があります。時間を、作ってもらえますか?きっと・・・和彦さんに話をしても「信じられない」と言われて話を妨げになる可能性があるので、できれば3人で。」

「わかりました。・・・しかし、少しだけでも結構です、何故和彦様が変わった事に薫風様が関係するのですか?お聞かせくださいませんか?」

「そうですね。じつは────」







「んぅ?・・・ああ、薫風目が覚めたか」

「「っ!?」」

「なんだ足利、何故こんなにも薫風と密着しているんだ?」

「「・・・。」」




リセットの事を話そうとした所で風間くんが目を覚ましてしまった。



そして風間くんが見た光景は・・・執事さんが僕の方へと前のめりになっていたので風間くんから見たら密着?してるように見えるのかな?





「・・・すみません、僕はもう帰ります。」

「そうですね。私がお送り致します。立ち上がれますか?」

「あ、・・・いや、すみません。まだ・・・」

「ちょちょっ!待て、何故私が起きたら帰ろうとするのだ!?」

「え?あ、いや・・・もう用は済みましたよね?契約書も破棄しましたし。」

「薫風様、それでは失礼します。」

「は?・・・うわわっ!?」

「足利っ!」




きゅ、急に横抱きしないでいただけませんか執事さん!?・・・ってか執事さん細身に見えて物凄く筋肉質なんですよね。細マッチョさん。風呂場で微睡みながらもチラッと見てしまった二の腕と腹筋と胸元。カッコ良かったです、はい。そして横抱きされても安定感抜群。この落とされる事は絶対ないなっていう安定感。思わず胸元にしがみついてしまったがガッチリと包み込まれていて・・・うん、なんか安心する。




・・・だが今回は違った。執事さんと風間くんが僕を抱えるよう密着している。執事さんが僕を横抱きした瞬間、風間くんも立ち上がりサンドイッチ状態になり両肩に腕が2つ、折り曲げた膝の裏にも腕が2つ、そして掴まえてる手に力が込められ僕を通り越して二人で睨み合って・・・なんともカオスな状況。




「「・  ・  ・  ・        」」

「あ、あの・・・?」

「和彦様・・・お離しください。」

「いや、足利が離せ。薫風は私の寝室へと来てもらう。」

「え?な、何故?」

「・・・また無体なことを・・・?」

「ち、違う!・・・話が、したいのだ。」

「・・・」

「・・・」

「「「・  ・  ・        。」」」







なにこの無言。空気ヤバい。沈黙ダメ。なんか変な汗がでてきそう、いやでてる。・・・え~僕、どうしたらいい?え、やっぱ僕が発言すべき?え~・・・ガクブル




「あ、あの・・・かず、いや風間理事長?」

「名前でいい。薫風、話がしたい。一緒にきてくれるよね?」

「あの、寝室はちょっと・・・」

「・・・」

「当たり前ですね。・・・はぁ、では執務室へ行きましょうか。」

「はい。それでしたら・・・」

「それでは失礼します和彦さま。」

「っ・・・。」





さすが素早い行動。風間くんが怯んだ隙に一歩後退り完全に風間くんから僕と引き離してくれたようだ。それに風間くんは唖然としていた。・・・うん、昨日から凄く風間くんの威厳を感じないんですが大丈夫ですか?





・・・




とまあ執務さんの勧めで執務室へ。そこにあるソファーへと下ろされ素早くダウンを掛けられた。至れり尽くせり・・・有難うございます。




「足利、席を外してくれ。鍵は・・・開けておくから。」

「・・・承知致しましたか。くれぐれも無体なことを」

「しない。たとえ寝室でもするつもりはない。」

「失礼いたしました。何かあればお呼びください。お隣で待機しております。お車の方も。」

「車の方はいらん!薫風は帰らせない。」

「・・・」





グゥゥゥ・・・






「「・・・」」

「す、すみません・・・」






うわぁぁぁあ!なんてタイミングで腹の音が鳴るんだぁ!は、恥ずかしいし気まずい・・・あ、そーいえば今何時?





「申し訳ございません。そうでした、薫風様はまだお食事をしておりませんでしたね。」

「あの、今何時ですか?」

「夜の9時を過ぎている。・・・お腹空いたか?では話をする前に遅い夕食を準備しよう。」

「す、すみません・・・」

「いいえ私の気遣いが至らないばかりに・・・申し訳ございません、すぐ用意致します。」





あああ!そんな畏まらないでぇ!いや、確かにお腹は空いたよ?けどそんな気にする事じゃないから!




でも、まぁ・・・さっきまでピリピリしていた空気が穏和したから、これはこれで良かった、のかな?



そそくさ執事さんが出ていき風間くんと二人きり・・・あ、また気まずい空気に。






「・・・薫風。」

「は、はい・・・」

「今思えば、この恋人の契約書を書くのを求めたのは薫風だったよな・・・?何故今になって破棄したいと言い出したのだ?」

「・・・は?」

「あんなに懐いていたのに今更・・・もう半年以上続いた関係に何が不満なんだい?急に鳥羽くんを恋人になったと言い出したり、いつもしている行為を嫌がるし・・・本当に記憶喪失にでもなったのかい?」

「・・・は、はい?」






おかしい・・・話が読めない。あの、記憶喪失?になったのは風間くんであって僕はちゃんと記憶はしっかり持ってますよ?




てかその前に聞き捨てにならない事ばかり風間くんの口から聞こえるんですが?え、僕から契約書を申し出たの?しかも半年?半年って・・・入学して間もない時からって事!?さらに僕は情事事に積極的・・・?




やばい口が開いたまま閉じない。体かカッチンコッチンに固まったようだ。え、え?やばい思考までがフリーズしてる。





「・・・本当に何も覚えてないのかい?」

「・・・」

「はぁ~・・・そっか。なら急な事だし、否定しようとする気持ちはわかったよ。でも薫風・・・君は慣れてる様子だったよ?初めてじゃないような・・・」

「う、うそ・・・」

「・・・嘘じゃないよ。すんなり私を受け入れていたからね。」




う、受け入れ、て・・・?あ、いや考えたくない・・・。あぁうん、考えを放棄したい。もうキャパオーバーしてます。




・・・執事さんが軽食を持ってきてくれたんだけど・・・うん、空腹なんてどこえやら、完璧食欲失ったわ。




「あ、足利さん・・・足利さんもここにいて・・・?」

「え、あ、はい・・・」

「薫風、何故だ?足利は関係ないだろう」

「いえ、関係あります。お願いします足利さん。」

「・・・わかりました。宜しいですか和彦様。」

「・・・ち。薫風がそう言うなら構わない。だが私はこの話は二人で話したいのだが・・・」




ごめん風間くん、ここはゴリ押しさせて頂きます。だってこの話・・・執事さんも初めて聞くだろうから。衝撃的な事を聞かせられるだろうと想定できるからね。





・・・そして案の定、風間くんの話を聞いて僕と執事さんは愕然とした。


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