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高年期[一学期編]

閑話休題…幸福な時間 中編。

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やはり長くなりました。中編は子鷹狩くん家に薫風が行ってからの出来事を書きました。後半はほぼエロになりますm(__)m




**********






文化祭がが終わり代休を挟んだ次の日。



いつ始まるか未定の学校行事が始まった。まずは1年生が対象となり選ばれたのは鳳、花塚、そして薫風だった。・・・絶好の機会が巡ってきた。




新と相談して生徒会室で匿う案が出て薫風が近くに来るタイミングを計った。そして終了20分前に新が薫風を捕まえて生徒会室に引きずり込んだ。



そして放送が流れ鳳が捕まり残るは薫風のみとなった。









・・・今、薫風を捕まえれば確実に薫風を独り占めできる・・・






思い立ったらすぐ行動。急かさず支給された手錠を薫風の後ろから逮捕する。後に薫風が俺に捕まった事をしり新と政美から苦情が飛んだが早い者勝ち。顔には出さなかったが内面で歓喜を上げていた。よし!上手くいった。





捕まった事にショックを受けてるらしく呆然としてたので横抱きして理事長室へ。報告と手錠を外してもらうために。





・・・手錠の鍵が見当たらないとの事で薫風を置いて教室へと戻った。新に怨めしそうに睨まれたが無視するに限る。








そして当日。不覚にも薫風に朝起こされてしまった。嬉しさの反面、朝が弱い事を知られ複雑な気分になった。だが薫風は俺が朝が弱い事に対して何も言わなかった。



・・・薫風の姿は正に目の毒だった。確かにメイド服で来いとは伝えてあったが我が家のメイド服の様にシンプルでロングスカートだとばかり思っていたが・・・なぜか文化祭で着ていたような猫耳に尻尾のついた、短いスカートに胸元には飾りが散りばめられ可愛らしく作られていた。・・・確か薫風のクラスの女子が作ったとか?・・・上出来だ。休み明けに一言お礼を言おうか。





朝から裕福な時間を過ごした。ぎこちない手つきで俺に朝食を食べさせてもらい、その後は薫風に新な歌を歌ってもらい、温室へ行き談笑した。・・・そこに弟のこうがいなければ更に幸福感を得られたのだがな・・・




そして昼御飯は親も交えて採った。・・・両親、主に母親の方が薫風を気に入った様子が伺えた。だからはっきりと「薫風を伴侶にします」と言ったら薫風が驚き戸惑っていた。






それから母親が薫風を狙ってる雰囲気を出してきたので外出する事にした。




昼食の前に来栖に頼んでコンサートチケットを取りに行ってもらってたのでそのまま車に乗ってコンサート会場まで行く。




薫風は初めてだったのか多少前屈みになって集中して見ていた。薫風の目が輝いてるように見えてコンサートどころじゃなかった。・・・ずっと薫風を観察していたい。





コンサートはあっという間に終わり、夕飯までまだ時間があったので少し辺りを回った。薫風の好きな食べ物、好みの装飾品など好きな物を物色しながら薫風を知っていく。・・・新鮮だった。






そして何個か家族のお土産にと買い物を済ませ車に乗り移動した。目的地は高級ホテルのレストラン。・・・何故か煌が家に帰らず車に乗ってたのが気になるが・・・まさか、な。







そのまさかだった。何故か2人分の予約席を用意してもらってたはずが行ったら3人分用意されていた。煌も夕食を一緒にとるらしい。・・・せっかくの2人だけの時間を邪魔しやがって。





文句を言っても仕方のない事だと言い聞かせ食事を摂る。何度か薫風と煌が話をして苛ついたが薫風が楽しそうにしていたので我慢する。







・・・食事が進むにつれ薫風の様子が変わってきた。頬がほんのり赤くなり周りを気にして丁寧な口調で敬語を使ってたのが少しずつ砕け始め、そして身体を左右に揺らし始めた。






・・・そういえばこのグラスに入ってるの、果実酒だな。それに少量だがアルコールの入った料理も・・・?まさか酔ったのか?





俺は親に進められ少量ずつだが酒を飲んでたから別に気にはならなかったが薫風は酒に弱いらしい。最終的に子供の様な、片言ではないがタメ口で語尾を伸ばすような甘ったれな喋り方をし始めた。




何故か席を外し楽譜を書き始めスタッフに今現在演奏している人に弾かせたり、箏を弾きながら歌いたいとか言い出した。・・・まぁここのレストランにくる人は大抵が上級貴族ばかりだから余興としてある程度は目を瞑ってくれるだろうが・・・あんな状態で歌えるのか心配になる。





だがその心配は杞憂に終わる。トイレに行き化粧を落とし水を飲み少し酔いが覚めたのかハッキリとした口調に戻っていた。多少砕けてたが敬語にも戻っていた。これならヘマはしないだろう。





念のため髪をまとめさせた。前髪を上にあげ金髪の部分を目立たなくさせた。・・・金のメッシュは目印になるから今後の事を考え多少髪型を変えてやる。ステージの明るさなら影を作って薫風のネイビーブルーの瞳はそんな目立たないだろう。




ライトが薄暗くなり音合わせなど軽い予行練習を行い始めた。その間に特別ゲストとして匿名で歌を披露するとスタッフが軽く説明した。不愉快な場合は近くのスタッフにお申し付け下さい。とは言っていたが、まぁ十中八九その申し出は来ないなろうな。





ライトが明るくなり薫風が箏の前で鎮座していた。レストランにいる客は食事の手をゆっくり動かしながらステージの様子を伺っていた。もちろん俺と煌もステージの方へと注目する。






箏は・・・聞く機会がないため滅多に聞かなかったが、薫風の歌声があってなのか、音色に感動する。ピアノも相まって更に歌を引き立てた。





それは俺だけでなく煌も、レストランの客たちも同じ感想をもったのか皆が薫風のいるステージに釘付けだった。食事の手が止まっていた。





・・・スタッフも仕事をそっちのけにステージに魅入る。おい、それはどうかと思うが?







歌詞がとにかく心に響く。・・・『生きる事は旅する事。』か。俺は今はどうなんだ?今は親の言われた通りに家を継ぐ事を第一に考えている。・・・それでいいのだろうか?







ふと考え込んでる間に盛大な拍手が鳴り響いて歌い終わった事を知る。・・・勿体ない事をしてしまった。薫風の顔を見ると遠慮しがちの笑みを浮かべお辞儀をしていた。





「すみません!・・・もう一曲お願いできませんか?」





客の一人が遠慮しがちな、だがハッキリと聞こえる音量でステージの方へと叫んだ。薫風は驚いた顔をして、スタッフの顔を見て確認していた。スタッフの方には・・・おや、いつも居ないオーナーが今日は珍しく滞在していたらしくスタッフと話し合っている姿が見えた。まぁ俺としてはもう一曲聞きたいってのは賛成だな。





すると薫風はステージに上がったまま床で何か作業をしだした。・・・まさかまた楽譜を書いてるのか!?




オーナーとスタッフが話してる間に書き終わったのかピアノの演奏をしていた人に薫風は紙を何枚か手渡していた。・・・また歌うらしい。それに気付いたスタッフはオーナーに耳打ちをして行動に出た。その間にステージのライトが薄暗くなった。




『お客様のご要望につき、もう一曲匿名様のご好意で披露して頂く事になりました。しばし準備を致しますのでどうぞ、食事の方をご堪能くださいませ。』





放送が流れる。それからいつものような物静かな雰囲気に戻って徐々に食事が配られる。・・・まだ余韻に浸ってるのか話題は薫風の歌についての話がされている。話は聞こえて来ないが雰囲気でわかる。




「子鷹狩様、オーナーがお話があるとの事ですが、いかがいたしますか?」



スタッフの一人が話しかけてきた。大方薫風に歌い続けて欲しいという話だろうな。スタッフに日を改めて後日連絡すると返事を返す。いつ始まるかわからないのにオーナーと話す余裕はない。




「兄さん、話ってのは?あの、追い返して良いのですか?」

「・・・大方、薫風を今日に限らずまたステージで歌ってもらえないかという交渉だろう。そんな事、薫風の親にも話さなければならない話を今する話ではないと突っぱねただけだ。」

「あ、なるほど・・・薫風さん、凄く魅力的ですね。あの容姿であんな歌声を披露してしまえば注目がいきますよね。」

「・・・」





煌、今、薫風の事、魅力的だと言ったか?・・・今後煌に薫風と会わせるのを控えさせよう。




それから数分後、またライトが明るくなり今度はピアノと・・・ギター?薫風はギターを持って現れた。薫風は様々な楽器に手をつけてるらしいな。俺より年下なハズが何だか負けたような悔しい気持ちになる。





『私の身勝手な行動を咎めず、さらにアンコールを頂き恐悦至極に存じ上げます。ですがこの一曲で私は連れを待たせておりますのでお開きにさせていただきます。・・・では私の曲で有意義な時間を過ごせたと思ってもらえるよう精一杯歌わせていただきます。ご自由にお過ごし下さい。では・・・』





一言薫風は言葉を発し、ピアノとギターの演奏が始まる。









「ごめんね・・・どぉして・・・素直に言えないん、だろう・・・?」










一瞬謝罪の言葉にドキッとした。見透かされた気がした・・・。勝手に悔しい気持ちになったのに罪悪感を抱いてしまった。







やはり薫風の歌う歌は心に響く。






「口ベ、タな、とこ・・・背がた、かい、とこ・・・嫌い、じゃない、かな?・・・好きになって・・・くれるかな・・・?」






胸が高鳴る。ラブバラードだった。薫風が切ない表情や戸惑いながら笑顔をつくるその姿を見逃すことのないよう凝視する。





とても複雑な音程だがこれもまたピアノとギターと歌声がピッタリ合い魅了される。・・・それはまた聞いてる客やスタッフも同じ心境だった。








・・・曲が終わり薫風が一礼すると拍手喝采だった。薫風も嬉しそうだ。




薫風が席に着くと煌が薫風に感想を弾丸のような早さで喋り始める。薫風は照れた様子で相づちをうちながらお礼を言っていた。・・・ん?薫風また果実酒飲んでないか?お、おい!?あれ大丈夫か?





・・・やはり薫風は果実酒を酒だと気付かずグイグイ飲み机に突っ伏し寝てしまった・・・




「・・・はは!薫風はほんと・・・一緒にいて飽きないな。」

「うわっ・・・また兄さんが笑ってる。」

「俺が笑うのはそんなに珍しいか?」

「はい。兄さんが中学行き始めた辺りから無表情を貫いてた気がします。最後に見たのは兄さんが小学生の頃ですよ。」

「そんなに・・・か。まぁいい、とにかく家に帰るぞ。人の目が集中して居心地悪い。」

「はい。」





寝てしまった薫風を横抱きで抱え支払いを済ませる。





後に聞いた話、俺たちが帰った後、あの歌は何だとか歌った人は誰だとか質問が殺到したらしい。・・・あとで労いの言葉を送ろう。








家に帰り、すぐに自室へと行き薫風をベットに寝かす。



・・・整った顔で規則正しく寝息を立てていた。とりあえず何をするにも風呂が先だと考え風呂場へと行った・・・






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