上 下
4 / 11
始まり

脱ニート

しおりを挟む
 「此処は何処だ?」
 気が付けば俺は暗い場所に寝て居た。
 少し前まで自分の部屋にいたはずだが、周りを見渡すと見たこともない場所だ。
 付近は自宅の俺の部屋より全然暗い。
 広さは縦横共に10m前後で高さは3mぐらいか?
 床は黒っぽくて土のようにも見えるが、触ってみるとツルツルしてるので床はタイルのようなもので出来ているのかもしれない。
 物らしきものは何もないが、ドアというか扉が1つあるだけだ。
 もしかしたら2つというべきなのか? 
 アレって観音開きタイプの扉とでも言うのかな?
 そういえば俺には何故か、この暗い部屋の隅々まで良く見えている。
 他には、特にめぼしいものは何もない。

 「幻聴が聞こえた後に、いきなりこれか・・・・」
 幻聴に「君に決めた」みたいなことを言われた気がする。
 「つまりこれは拉致か?」
 しかしあの時は部屋には鍵がかかっていたし、起きている俺に一切気が付かれないように拉致なんて出来るのか?
 「拉致・・・ある意味では間違ってないかもしれないね」
 頭に直接話しかけてきた幻聴さんとは違う声が扉のほうから聞こえてきた。
 「こんにちは、僕はこのダンジョンのだ。この世界で君にとってパートナー見たいなものかな?」
 扉をすり抜けて、うっすら光るソフトボールぐらいの玉が飛んできた。
 「君は、この世界の馬鹿な神の一人に目をつけられて、この世界のに選ばれたんだよ」
 俺はダンジョンマスターに転職したようです。
 

 俺は伊達に自宅警備員をやってたわけじゃない。
 この手のファンタジー物を少しは読んだ事がある。
 その中でダンジョンマスターは人類の敵として命を狙われることが多かった。
 「なら俺は人殺しも厭わない覚悟が必要になるのか?」
 人を殺したくなんかないが、殺されるのはもっといやだ。
 いじめでもそうだったが抵抗しなければ、最悪の結果が待っている。
 「ぇ?君の世界のダンジョンでは人殺しするのが普通だったの?うわ~野蛮な世界から来たのか・・・・・正直引くわぁ~」
 あれ?
 「もしかしてダンジョンマスターって人殺しとかしなくてもいいの?」
 お互いのダンジョンに対する考えがずれているのかもしれない。
 「確かに古いダンジョンの中には殺伐としたダンジョンもあるけど、今の流行はお互いの総合利益を考えるダンジョンが主流だよ。僕がダンジョンコアをしてるダンジョンで折角来てくれたお客様に危害を加えるとかありえないからね?」
 俺の考えていたダンジョン感が崩れていく。


 それからしばらくコアとお互いの世界観や常識など、そしてもちろんダンジョンというものについても話し合う。
 話し合うとは言っても此処は俺の知らない世界なので、俺は基本的にこの世界の常識などをたずねたりして説明を聞いているだけだ。
 俺の中のダンジョンマスターは人類の敵みたいなものだったが、その価値観はこの世界では大きく変わる。
 そもそも神がこのままだと魔族に滅ぼされかねない人類の救済のために作り出したのがダンジョンとダンジョンコアらしい。
 ちなみにダンジョンマスターは神やダンジョンコアによって選定れる。
 この世界でのダンジョンは中に居るものからエネルギーの一部を分けて貰って(以降DP)に変換することが出来る。
 一部の古いダンジョンの中には侵入者を殺すことでエネルギー全てをDPに変換しているダンジョンもあるらしい。
 このやり方ではリピーターがほとんど現れないので結果的に経営難になり、このやり方をした多くの経営者はダンジョンを畳む事になった。
 今も残っているダンジョンのほとんどは、客寄せのために宝箱等のアイテムをダンジョン内に多く設置している。
 その宝箱を置くために多くのDPを消費しているので、宝箱に消費するDPと侵入者を倒して得るDPとの比率を考えたりと経営はかなり難しいらしい。

 基本的にダンジョンはDPを使って発展させる。
 ダンジョンに訪れてDPをくれる人=お客様。
 気に入って足繁く通ってくれるお客様=リピーター=金(DP)蔓。
 お客様が不快になる行為はしない=お客様を攻撃とかありえない。
 つまりダンジョンとは基本は客商売なのだ。
 俺がダンジョンマスターになったダンジョンも、お客様のことを考えたダンジョン経営を考えなくてはならない。

 ついこの間まで自宅警備員という名のニートだった俺には、この世界のダンジョン経営は難しそうだ。
 (自宅警備員→ダンジョンマスター?)





 ※今回は休日なのと前回が短いプロローグだけなので更新したけど基本は不定期更新です。
しおりを挟む

処理中です...