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15、昼間のお父様は
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「ダルスン、お前には母上の件で貸しがあるはずだ。代わりに一つ俺の頼みごとを聞いて貰いたい」
お父様にそう言ったアドニスのことを、私は見つめていた。
(頼みごとってなんだろう?)
そして、さっきアドニスが言っていたことを思い出す。
もし本当に、その事件にレオナール王子が関係をしているなら心配。
私が知っている『銀色の髪の王子と7人の貴公子 ~でも貴方だけに恋して~』の中では、もちろんレオナール王子も攻略対象の貴公子の一人。
ティアがレオナールと結ばれるルートだと、王国はレオナールが継ぐことになる。
アドニスはその途中で命を落としたり、国外に追放されたりする。
それに攻略っていうよりも、主人公のティアがレオナールに篭絡されるエンドって感じなんだよねいつも。
ちょっとエッチなシーンとか出てきて、ティアが徐々に落とされていくところが一部のファンに人気だった。
あのゲームってすごいリアルだから、まるで自分がレオナールに落とされている感じになるんだよね。
表面上は紳士なんだけど、実は野心家で強引なレオナール王子。
時々見せる怖いぐらい鋭い眼差しが、女心を射止めるみたい。
そこだけ繰り返してプレーする、レオルートマニアって呼ばれる子もいたぐらいだから。
でも、私はシャルロッテだから大丈夫だよね。
篭絡とか少しされてみたい気もするけど、やっぱり好きな人が相手じゃないと。
私はアドニスをチラリと見る。
(何アドニスを見てるんだろう私!)
真っ赤になっている私を見て、伯爵様が私の額に手を当てる。
大丈夫だよ! 熱はないよ、伯爵様!!
そういえば伯爵様からお借りしたハンカチ、まだ洗ってない!
どうしよう、疲れて眠っちゃったから。
私の鼻水、染みにならないよね? あとでメルファに相談しなきゃ。
私ににっこりと微笑む伯爵様の笑顔を見て、私はそんなことを考えていた。
ブロンドの狸はアドニスに尋ねる。
「頼みごととはどのようなことで御座いましょうか、アドニス殿下?」
「ああ、先ほど話した。野盗事件を解決する為に必要なことだ」
お父様が顎に手を当てて考える。
「野盗をでございますか? このダルスン、商人どもは束ねてはおりますが、それは軍や憲兵の仕事だと存じますが」
お父様の言葉に、アドニスは首を横に振る。
「何もお前に野盗を退治しろとは言っていない。お前の持っている商人ギルドの流通システムを利用したいのだ」
首を傾げる金髪の狸の前に、伯爵様がこの国の地図を広げた。
それを指さしながらアドニスは説明した。
「いいか、ダルスン。今まで支援物資の殆どは、王宮の備蓄庫から直接各地に運ばれていた」
「さようでございますな。聖王家からの尊い支援ということでございますから」
アドニスは地図の上で長い線を指でなぞっていく。
「王宮に近い場所ならば問題は無い。だが、王宮から離れた場所にある避難所に対しては補給路が長くなる」
(あ……)
アドニスの説明でやっと私にも分かった。
お父様も合点がいったという顔で頷いた。
「なるほど! それだけ危険が増しますな!!」
地図の上にはバツ印が打ってある。
あれが野盗事件があったところなんだろうけど、それは王宮から離れたところにある避難所の途中に集中していた。
「ダルスン、お前ならその各地に食料の備蓄を持つ商人を知っているだろう?」
「殿下! 無論知っておりますぞ。地元でとれた食料を扱う生鮮市が自慢の店もあれば、産地から運ばれた食料を貯蔵している大商人も我がドルルエの傘下にはいくらでも」
商売の話になると、王妃様の前で小さくなっていたのが嘘のように元気がでるお父様。
それを見てアドニスは笑った。
「殿下は各地の商人ギルドが協力をして、それぞれの地にある避難民の食料を確保し、運搬せよと仰るのですな」
「無論その金は王家が出す。まさか奴らも、昼の街中で食料を運搬する者は襲えまい。安全の為に王家から騎士を派遣する、俺に協力する商人達には指一本触れさせん」
そして真剣な眼差しになると、お父様に言った。
「ダルスン、お前の力を借りたい。俺にお前のその知識と知恵を貸してくれ」
それを聞いてお父様のからだが、プリンのようにブルッと震えた。
テーブルの上の手がギュッと握られる。
「……初めてですな、殿下がそのような目でこの私を見られるのは。宮中ではこのダルスンのことを、貴族をやめて商人になればよいと、中には商人公爵などと嘲る者もおります。失礼ながら、殿下もずっと私のことをそう思っているのだとばかり」
お父様がアドニスの手を握った。
「商人とは金の損得だけでは続きはしませぬ。相手との信頼があってこそ成り立つもの、殿下が私を信じて下さると言うのであれば、このダルスン、期待に必ず応えましょうぞ」
やだ……うちのブロンドの狸が少し格好良く見える。
幻覚かしら?
お父様はテーブルに置いてある鈴を鳴らして、執事のロートンさんを呼び寄せる。
そして、地図を指さして細かい指示を出していく。
やっぱりちょっと格好いい。
昼間のパパはっていう、例のあれかもしれない。
そして、お父様はアドニスを見つめると口を開く。
「アドニス殿下。先ほど殿下は、この私の知恵を借りたいと仰いましたな」
「ああ、ダルスン」
いつもとはちょっと違う我が家の狸は、アドニスに言った。
「失礼ながら、聖王家が今されている支援では民は救われませぬ。このダルスンに一つ考えがあります」
やめて! 調子に乗らないでお父様!!
王家を批判するような狸の言葉に、アドニスの顔が少し険しくなる。
狸と一緒に火あぶりなんてことにならないよね?
私は不安な気持ちでお父様を見つめていた。
お父様にそう言ったアドニスのことを、私は見つめていた。
(頼みごとってなんだろう?)
そして、さっきアドニスが言っていたことを思い出す。
もし本当に、その事件にレオナール王子が関係をしているなら心配。
私が知っている『銀色の髪の王子と7人の貴公子 ~でも貴方だけに恋して~』の中では、もちろんレオナール王子も攻略対象の貴公子の一人。
ティアがレオナールと結ばれるルートだと、王国はレオナールが継ぐことになる。
アドニスはその途中で命を落としたり、国外に追放されたりする。
それに攻略っていうよりも、主人公のティアがレオナールに篭絡されるエンドって感じなんだよねいつも。
ちょっとエッチなシーンとか出てきて、ティアが徐々に落とされていくところが一部のファンに人気だった。
あのゲームってすごいリアルだから、まるで自分がレオナールに落とされている感じになるんだよね。
表面上は紳士なんだけど、実は野心家で強引なレオナール王子。
時々見せる怖いぐらい鋭い眼差しが、女心を射止めるみたい。
そこだけ繰り返してプレーする、レオルートマニアって呼ばれる子もいたぐらいだから。
でも、私はシャルロッテだから大丈夫だよね。
篭絡とか少しされてみたい気もするけど、やっぱり好きな人が相手じゃないと。
私はアドニスをチラリと見る。
(何アドニスを見てるんだろう私!)
真っ赤になっている私を見て、伯爵様が私の額に手を当てる。
大丈夫だよ! 熱はないよ、伯爵様!!
そういえば伯爵様からお借りしたハンカチ、まだ洗ってない!
どうしよう、疲れて眠っちゃったから。
私の鼻水、染みにならないよね? あとでメルファに相談しなきゃ。
私ににっこりと微笑む伯爵様の笑顔を見て、私はそんなことを考えていた。
ブロンドの狸はアドニスに尋ねる。
「頼みごととはどのようなことで御座いましょうか、アドニス殿下?」
「ああ、先ほど話した。野盗事件を解決する為に必要なことだ」
お父様が顎に手を当てて考える。
「野盗をでございますか? このダルスン、商人どもは束ねてはおりますが、それは軍や憲兵の仕事だと存じますが」
お父様の言葉に、アドニスは首を横に振る。
「何もお前に野盗を退治しろとは言っていない。お前の持っている商人ギルドの流通システムを利用したいのだ」
首を傾げる金髪の狸の前に、伯爵様がこの国の地図を広げた。
それを指さしながらアドニスは説明した。
「いいか、ダルスン。今まで支援物資の殆どは、王宮の備蓄庫から直接各地に運ばれていた」
「さようでございますな。聖王家からの尊い支援ということでございますから」
アドニスは地図の上で長い線を指でなぞっていく。
「王宮に近い場所ならば問題は無い。だが、王宮から離れた場所にある避難所に対しては補給路が長くなる」
(あ……)
アドニスの説明でやっと私にも分かった。
お父様も合点がいったという顔で頷いた。
「なるほど! それだけ危険が増しますな!!」
地図の上にはバツ印が打ってある。
あれが野盗事件があったところなんだろうけど、それは王宮から離れたところにある避難所の途中に集中していた。
「ダルスン、お前ならその各地に食料の備蓄を持つ商人を知っているだろう?」
「殿下! 無論知っておりますぞ。地元でとれた食料を扱う生鮮市が自慢の店もあれば、産地から運ばれた食料を貯蔵している大商人も我がドルルエの傘下にはいくらでも」
商売の話になると、王妃様の前で小さくなっていたのが嘘のように元気がでるお父様。
それを見てアドニスは笑った。
「殿下は各地の商人ギルドが協力をして、それぞれの地にある避難民の食料を確保し、運搬せよと仰るのですな」
「無論その金は王家が出す。まさか奴らも、昼の街中で食料を運搬する者は襲えまい。安全の為に王家から騎士を派遣する、俺に協力する商人達には指一本触れさせん」
そして真剣な眼差しになると、お父様に言った。
「ダルスン、お前の力を借りたい。俺にお前のその知識と知恵を貸してくれ」
それを聞いてお父様のからだが、プリンのようにブルッと震えた。
テーブルの上の手がギュッと握られる。
「……初めてですな、殿下がそのような目でこの私を見られるのは。宮中ではこのダルスンのことを、貴族をやめて商人になればよいと、中には商人公爵などと嘲る者もおります。失礼ながら、殿下もずっと私のことをそう思っているのだとばかり」
お父様がアドニスの手を握った。
「商人とは金の損得だけでは続きはしませぬ。相手との信頼があってこそ成り立つもの、殿下が私を信じて下さると言うのであれば、このダルスン、期待に必ず応えましょうぞ」
やだ……うちのブロンドの狸が少し格好良く見える。
幻覚かしら?
お父様はテーブルに置いてある鈴を鳴らして、執事のロートンさんを呼び寄せる。
そして、地図を指さして細かい指示を出していく。
やっぱりちょっと格好いい。
昼間のパパはっていう、例のあれかもしれない。
そして、お父様はアドニスを見つめると口を開く。
「アドニス殿下。先ほど殿下は、この私の知恵を借りたいと仰いましたな」
「ああ、ダルスン」
いつもとはちょっと違う我が家の狸は、アドニスに言った。
「失礼ながら、聖王家が今されている支援では民は救われませぬ。このダルスンに一つ考えがあります」
やめて! 調子に乗らないでお父様!!
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