悪役令嬢だって恋したい! ~乙女ゲーの世界に迷い込んだ私が、火あぶりフラグを折りまくる!!~

園宮りおん

文字の大きさ
15 / 126

15、昼間のお父様は

しおりを挟む
「ダルスン、お前には母上の件で貸しがあるはずだ。代わりに一つ俺の頼みごとを聞いて貰いたい」

 お父様にそう言ったアドニスのことを、私は見つめていた。

(頼みごとってなんだろう?)

 そして、さっきアドニスが言っていたことを思い出す。
 もし本当に、その事件にレオナール王子が関係をしているなら心配。
 私が知っている『銀色の髪の王子と7人の貴公子 ~でも貴方だけに恋して~』の中では、もちろんレオナール王子も攻略対象の貴公子の一人。

 ティアがレオナールと結ばれるルートだと、王国はレオナールが継ぐことになる。
 アドニスはその途中で命を落としたり、国外に追放されたりする。
 それに攻略っていうよりも、主人公のティアがレオナールに篭絡されるエンドって感じなんだよねいつも。

 ちょっとエッチなシーンとか出てきて、ティアが徐々に落とされていくところが一部のファンに人気だった。
 あのゲームってすごいリアルだから、まるで自分がレオナールに落とされている感じになるんだよね。
 表面上は紳士なんだけど、実は野心家で強引なレオナール王子。
 時々見せる怖いぐらい鋭い眼差しが、女心を射止めるみたい。
 そこだけ繰り返してプレーする、レオルートマニアって呼ばれる子もいたぐらいだから。

 でも、私はシャルロッテだから大丈夫だよね。
 篭絡とか少しされてみたい気もするけど、やっぱり好きな人が相手じゃないと。
 私はアドニスをチラリと見る。

(何アドニスを見てるんだろう私!)

 真っ赤になっている私を見て、伯爵様が私の額に手を当てる。
 大丈夫だよ! 熱はないよ、伯爵様!!
 そういえば伯爵様からお借りしたハンカチ、まだ洗ってない!
 どうしよう、疲れて眠っちゃったから。
 私の鼻水、染みにならないよね? あとでメルファに相談しなきゃ。
 私ににっこりと微笑む伯爵様の笑顔を見て、私はそんなことを考えていた。
 ブロンドの狸はアドニスに尋ねる。

「頼みごととはどのようなことで御座いましょうか、アドニス殿下?」

「ああ、先ほど話した。野盗事件を解決する為に必要なことだ」

 お父様が顎に手を当てて考える。

「野盗をでございますか? このダルスン、商人どもは束ねてはおりますが、それは軍や憲兵の仕事だと存じますが」

 お父様の言葉に、アドニスは首を横に振る。

「何もお前に野盗を退治しろとは言っていない。お前の持っている商人ギルドの流通システムを利用したいのだ」

 首を傾げる金髪の狸の前に、伯爵様がこの国の地図を広げた。
 それを指さしながらアドニスは説明した。

「いいか、ダルスン。今まで支援物資の殆どは、王宮の備蓄庫から直接各地に運ばれていた」

「さようでございますな。聖王家からの尊い支援ということでございますから」

 アドニスは地図の上で長い線を指でなぞっていく。

「王宮に近い場所ならば問題は無い。だが、王宮から離れた場所にある避難所に対しては補給路が長くなる」

(あ……)
 
 アドニスの説明でやっと私にも分かった。
 お父様も合点がいったという顔で頷いた。

「なるほど! それだけ危険が増しますな!!」

 地図の上にはバツ印が打ってある。
 あれが野盗事件があったところなんだろうけど、それは王宮から離れたところにある避難所の途中に集中していた。

「ダルスン、お前ならその各地に食料の備蓄を持つ商人を知っているだろう?」

「殿下! 無論知っておりますぞ。地元でとれた食料を扱う生鮮市が自慢の店もあれば、産地から運ばれた食料を貯蔵している大商人も我がドルルエの傘下にはいくらでも」

 商売の話になると、王妃様の前で小さくなっていたのが嘘のように元気がでるお父様。
 それを見てアドニスは笑った。

「殿下は各地の商人ギルドが協力をして、それぞれの地にある避難民の食料を確保し、運搬せよと仰るのですな」

「無論その金は王家が出す。まさか奴らも、昼の街中で食料を運搬する者は襲えまい。安全の為に王家から騎士を派遣する、俺に協力する商人達には指一本触れさせん」

 そして真剣な眼差しになると、お父様に言った。

「ダルスン、お前の力を借りたい。俺にお前のその知識と知恵を貸してくれ」

 それを聞いてお父様のからだが、プリンのようにブルッと震えた。
 テーブルの上の手がギュッと握られる。

「……初めてですな、殿下がそのような目でこの私を見られるのは。宮中ではこのダルスンのことを、貴族をやめて商人になればよいと、中には商人公爵などと嘲る者もおります。失礼ながら、殿下もずっと私のことをそう思っているのだとばかり」

 お父様がアドニスの手を握った。

「商人とは金の損得だけでは続きはしませぬ。相手との信頼があってこそ成り立つもの、殿下が私を信じて下さると言うのであれば、このダルスン、期待に必ず応えましょうぞ」

 やだ……うちのブロンドの狸が少し格好良く見える。
 幻覚かしら?
 お父様はテーブルに置いてある鈴を鳴らして、執事のロートンさんを呼び寄せる。
 そして、地図を指さして細かい指示を出していく。
 やっぱりちょっと格好いい。
 昼間のパパはっていう、例のあれかもしれない。
 そして、お父様はアドニスを見つめると口を開く。

「アドニス殿下。先ほど殿下は、この私の知恵を借りたいと仰いましたな」

「ああ、ダルスン」

 いつもとはちょっと違う我が家の狸は、アドニスに言った。

「失礼ながら、聖王家が今されている支援では民は救われませぬ。このダルスンに一つ考えがあります」

 やめて! 調子に乗らないでお父様!!
 王家を批判するような狸の言葉に、アドニスの顔が少し険しくなる。
 狸と一緒に火あぶりなんてことにならないよね?
 私は不安な気持ちでお父様を見つめていた。
しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

よくある父親の再婚で意地悪な義母と義妹が来たけどヒロインが○○○だったら………

naturalsoft
恋愛
なろうの方で日間異世界恋愛ランキング1位!ありがとうございます! ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 最近よくある、父親が再婚して出来た義母と義妹が、前妻の娘であるヒロインをイジメて追い出してしまう話……… でも、【権力】って婿養子の父親より前妻の娘である私が持ってのは知ってます?家を継ぐのも、死んだお母様の直系の血筋である【私】なのですよ? まったく、どうして多くの小説ではバカ正直にイジメられるのかしら? 少女はパタンッと本を閉じる。 そして悪巧みしていそうな笑みを浮かべて── アタイはそんな無様な事にはならねぇけどな! くははははっ!!! 静かな部屋の中で、少女の笑い声がこだまするのだった。

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。

樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」 大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。 はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!! 私の必死の努力を返してー!! 乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。 気付けば物語が始まる学園への入学式の日。 私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!! 私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ! 所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。 でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!! 攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢! 必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!! やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!! 必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。 ※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。

もう我慢したくないので自由に生きます~一夫多妻の救済策~

岡暁舟
恋愛
第一王子ヘンデルの妻の一人である、かつての侯爵令嬢マリアは、自分がもはや好かれていないことを悟った。 「これからは自由に生きます」 そう言い張るマリアに対して、ヘンデルは、 「勝手にしろ」 と突き放した。

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

処理中です...