お姫様になってもいいですか?

卵丸

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水色のうさぎ

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僕は今、ダイニングで家族会議が行われていた。因みに僕は女装のままだ。

「晃、いつから女装をしていたの?」

由香里姉さんの問いに目を背けながら小声で言った。

「・・・・・高校からです。」

「アキくんお金はどうしてたの?」

「バイトの給料で服やメイクを買ってました。」

「どうして、私たちに言わなかったの!」

由香里姉さんに大声で言われて肩を震わせたが、応えなくちゃと思い、今までの事を話した。

「姉さん達が着てたり、髪に付けてた物が羨ましくて真似をしてたら、小学生の時に変だよとか揶揄われたりして皆の前では可愛い事が出来なくなって、趣味で一人で楽しもうと思ったんだよね」

「そうなんだ。でも、今日この格好で出掛けてたんだよね?」

和姉さんの問いに顔を俯かせてごにょごにょと小声で呟いた。

「・・・・僕の女装趣味に付き合ってくれてる先輩がいて、その人と遊びに行ったんだよね」

すると二人は僕に聞こえないように、耳打ちをして二人で頷き合うと、目を輝かせて予想外の事を言ってきた。

「「その先輩って恋人?」」

「・・・・・ちっち・・・違う違う違ーう!! 恋人とかじゃないからぁ!!」

二人の質問に顔を赤くして、両手をブンブン振って否定をしたが二人はニコニコ微笑みパニクってる僕を揶揄った。

恋人じゃないのね?応援はするよ、晃ファイト!!」

「また先輩の写真送ってね!!」

二人は勝手に盛り上がり、僕はため息をつくしかなかった。

『男性なんだけど・・・・・。』

盛り上がった後、由香里姉さんは僕を真剣に見つめて頷いていた。

「流石、兎菓子真里亜の弟なだけあって女装が似合うわね!」

「アキくん、私より可愛いから羨ましいな~」

二人の言葉に唖然とするしかなかった。

「・・・・・女装趣味の事、気持ち悪いと思わないの?」

すると二人はくすくす笑い由香里姉さんは立ち上がって僕の背中をバシバシ叩いた。

「別に何にも言わないわよ!だって晃が楽しんでるなら私は何も言わないわよ。」

「私もアキくんが我慢して苦しい想いをするなら自分のしたい事をすればいいと思うよ!」

二人の意見に気持ちがスッキリして僕は涙を流しながらお礼を聞にくい声で言った。

「・・・・・ねえ・・・さん・・たち・・・・・ありがどう  ・・ゔぅ・・・あぁ・・。」

「んもぅ、こんな事で泣くな!」

由香里姉さんは呆れながら僕の方にティッシュケースを置いてくれた。

「落ち着かせる為にホットミルクでも入れようかな。」

和姉さんが牛乳を入れる為に立ち上がった。

『良かった・・・・後は真里亜姉さんに伝えるだけか・・・・・。』

僕は和姉さんが入れてくれた、ホットミルクを飲んだ後自分の部屋でボロボロになった水色のうさぎのマスコットを手で遊びながら、真里亜姉さんにどう伝えるか考えていたが良い案が思い浮かばなかった。


それから、僕が考えた内容で映画の台本をリーダーが作ってくれて、夜遅くまで映画の練習をして遂に本番の日がやってきた。 今日は野々原先輩の別荘で映画撮影をして野々原財閥が仕切っている旅館にお泊まりする事になっていた。

「皆集まったな!じゃあ後は野々原さん頼む」

リーダーがのき野々原先輩がこれからの事を説明してくれた。

「まず、皆様には新幹線に乗って頂いてわたくしの別荘まで案内致しますわ。それから映画撮影をして皆さんに旅館を提供しますわね!・・・・これで宜しいでしょうか?」

「ありがとう。じゃあ皆、新幹線に乗るぞ!!」

これから映画サークルの皆で新幹線に乗り込んだが、僕は藤野先輩と乗りたかったのに、隣には八雲先輩がいたので、諦めた。

『まぁ・・・・一人でもいいや』

僕は窓側の席に座り、集合前に買ったそぼろ丼弁当を開けてる途中に影が僕を隠した。

「椎名君、隣いいかな?」

声がする方を見ると、僕に微笑んでいる柚木さんがいた。 僕は断る理由が無いので、少し戸惑ったが「どうぞ」と口にした。

「ありがとう」

柚木さんと話す事は無かったので、二人は駅弁を黙々と食べていたが、柚木さんが僕に話しかけてきた。

「椎名君って私の事・・・覚えてる?」

まさかの言葉に喉を詰まらせて、急いでペットボトルのお茶を開けてごくごく飲み落ち着かせた。

「はぁ~・・・ごめんなさい。覚えてないよ」

本当に覚えて無かった。どこで会ったのかも知らないから、何とも言えなかった。

「・・・斉藤 花恋さいとう かれんって覚えてる?」

「!!」

その名前に少し肩を震わせた。斉藤さんは僕のうさぎのマスコットを盗んだ子だからだ。

「・・・・・その子は覚えてるよ。」

僕の言葉に柚木さんは困った表情をして僕に話しかけてきた。

「私さ、花恋が椎名君から盗んだの見たんだけど、何も言えなくて黙ってたんだ。あの時花恋が捨ててる所を見て、どうして捨てたのか聞いたんだけどね、あの子泣きながら言ったんだよね」

『絶対私が持ってた方が良いと思ったんだけど、椎名の顔を見てたら罪悪感が出てきて、今更返せないから、捨てるしか無いじゃない!』

「・・って言って逃げたんだよね。その後、椎名君が来たから私も逃げちゃったけど・・・捨ててたマスコットを拾った椎名君を陰から見て胸が痛んだの・・・・それが言いたくて仕方なかった・・・・理不尽でごめんね?」

その言葉に僕は少し呆れてしまったが、柚木さんには少し文句を言った。

「斉藤さんの事だけど、勝手に盗んで、勝手に罪悪感があって、マスコットを捨てて我儘すぎるよ・・・もう終わった話だからいいんだけどね?」

「・・・・謝って欲しい?」

柚木さんの問いに僕は少し怒りながら言った。

「当たり前だよ!マスコットを作ってくれた姉さんに謝って欲しいぐらいだよ」

僕の言葉に柚木さんはスマホの画面を見せつけた。そこにはショートカットの茶髪のお姉さんが映し出されていた。

「・・・・・もしかして」

柚木さんが僕の耳に線がイヤホンを入れ込むと声が聞こえきた。

『久しぶりだね。椎名』

「・・・・・斉藤さん」

『話は全部聞いてたんだよ。本当にごめんなさい・・・後、椎名のお姉さんもごめんなさい・・・って言っても許されないことしちゃったしな・・・・・。』

「本当だよ。大人になってからマスコットの事を謝られるとは思わなかったよ」

『あはは・・・・そうだよね』

「・・・・・でも、人が持ってる物が欲しい気持ちは分かるかな・・・でも斉藤さんの場合それがダメだった訳で・・・・えっと・・・・つまり・・僕はもう気にしてないってこと!」

僕の言葉に斉藤さんは泣きそうになっていた。

『どうして泣きそうなんだろう?』

僕は気になっていたが斉藤さんは鼻声で話してきた。

『・・・気にしてなくて・・・良かった・・・ねぇ、私の事 嫌い?』

その問いに少し戸惑いながら応えた。

「嫌いじゃないよ?」

『良かった・・・その言葉で充分だよ・・・・改めて・・・私って好きな奴にちょっかいかけるどうしようも無い女だったかもね。』

斉藤さんは顔を赤く染めてボソボソ声で話したかと思うと、照れながら『じゃあね』と言ってテレビ電話を切った。

「・・・・・・・・・えっ?」

僕の間抜け面に柚木さんはクスクス笑い僕に斉藤さんの事を話した。

「あの子実は椎名君が気になっててマスコットを盗んだら気にかけてくれるかな?と思って取ったらしいよ。」

「・・・女心って分からない・・・・。」

「あの子不器用だからね・・・・・。」

今、冷静な顔をしているが僕は突然の告白に頭がこんがらがってしまってパニックになっていた。
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