君に噛み跡を遺したい。

小さな一歩

今後の事

隆志と裕一郎は幼稚園の近くにある、フラペチーノが人気のカフェに来ていた。平日だからか人は珍しくそこまで居なくてすぐに座れた。
隆志はキャメルのフラペチーノを頼み、裕一郎はホットのカフェラテを頼んだが二人は全く口につけず、無言のまま3分経過した。隆志は裕一郎を未だに険しい顔で見つめて裕一郎は俯いて真っ白いカフェラテを見つめていたがとっくに冷めていた。
気まずい空気の中先に隆志から話し出した。

「どうして要から逃げたの？」

その問いに裕一郎は肩を震わせたが何処から話せば良いのか分からずに黙っていると隆志は低い声で「おい」と言われ、ただ事ではないと気づき裕一郎はボソボソ小さい声で語り出した。

「・・・いつの間にか、要の事を襲いかかってて・・・気づいたらあいつは泣いてて終わってたんです。・・・あいつ、小学校の時にΩの性で虐められていても泣かない奴だったんだけど初めてあいつの涙を目にすると怖くなって・・・俺に会いたくないと思って俺の決断で縁を切ろうと思いました・・・。」

「・・・会いたくないって君の意見だよね？要は君から返事が来なくて心配していたし泣いてたよ。」　

隆志はそれを淡々と言うとフラペチーノを一口飲んで小さいが芯のある声で彼に囁いた。

「要に会ってくれないかな？」

「・・・・・・・え？」

その言葉に裕一郎は唖然としていると隆志は目を逸らさずに真剣な表情で裕一郎を見つめて力強く言った。

「それは結衣ちゃんのためでもあるんだ。」

「・・・結衣ちゃんですか？」

「今後のことを話さないと要と君が気まずくなるし、それに君は結衣ちゃんを見る度に苦しくなるんじゃないかな？・・・まぁ、君の無責任な行動のせいだけどね。」

「・・・うぅ」

「・・・会ってくれるよね？」

「・・・・・・・・・。」

裕一郎は戸惑って黙っていると隆志は大きいため息を吐くと真顔で鞄の中からスマホを取り出した。

「裕一郎君、「Talk」の交換をしよう。」

初めて名前を言われ裕一郎は慌てて自分のスマホを取り出し二人は「Talk」の交換をした。隆志はフラペチーノの蓋を取り外しそのまま縁に口付けてグイッと一気に飲み込むと少し噎せてから、やっと裕一郎の前でも困り眉だが笑顔になった。

「後は要に話すよ。・・・まぁ、あの子が話したくなければ終わりだけどね。」

「・・・そうですね」

「後、最後に聞きたい事があったんだ。」

隆志がまた険しい顔をしたので裕一郎は肩をビクビク震わせて驚きを隠さずに聞いた。

「なっなんでしょうか？」

「どうして他の人に噛み付いたの？」

隆志が発した後、二人の周りに重苦しい空気が漂った。裕一郎は隆志から目を逸らしながら小さい声で言った。

「・・・・話が長くなるのですが・・・・・」

「いいよ、言って」

裕一郎は落ち着かせるためにカフェラテを一口飲んでから最初に要の事を語り出した。