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第十五章
第四百二十八話 合流と装備
◆◇◆◇◆◇
「──ほ、本当に皇女様だ」
「黒剣姫の正体がレティーツィア皇女だっていう噂は本当だったんだな」
「噂ってか、新聞に載ってたぞ」
「それは知ってるけどよ。まさか皇女様がSランク冒険者だっただなんて記事、素直に信じるか?」
「俺は信じたけど?」
「私も信じたわよ?」
「コイツら……」
騒めき立つ団員達の中から、そんな会話が聞こえてきた。
ツヴァイブルクを囲む城壁の城門前に集まったヴァルハラクランの団員達の視線の先には、冒険者装備に身を包んだレティーツィアがいた。
レティーツィアはリーゼロッテと談笑しており、会話の内容に目を瞑れば二人の絶世の美女による絵になる光景だと言える。
「無理して来なくて良かったんですよ? あと一日ぐらい帝都でゆっくりしてきたらどうです?」
「用事を済ませて来たのだから無理はしてないわ。団員達の声が聞こえないかしら? 私の合流を歓迎していないのはリーゼだけよ?」
「歓迎していないわけではありません。既にクランにはSランク冒険者が六人もいます。今ですら戦力過多気味なので、レティが来ても活躍できる機会はありませんよ、という話なだけです」
「アークディア帝国の皇族として、そして婚約者としてリオンの超越者入りの瞬間に立ち会うのが目的だから、私の出番がなくても別に構わないわよ」
絶世の美女二人のやり取りから視線を外し、隣にいるユリアーネに顔を向ける。
「それで? 実際のところ、ちゃんと用事は終わったのか?」
「はい。先日お産まれになったレイム様のお世話をする者達の選定は無事に終わりました。母子共に安定しているのも確認できましたので、皇帝陛下より頼まれたレーネ様達のお手伝いを切り上げて此方に参った次第です」
「そうか。それなら良かった」
タイミング悪く、と言うと失礼だが、俺達の巨塔大遠征間近になってヴィルヘルムの第五側妃がレイム皇子を出産した。
第五側妃には有力な後ろ盾がないため、そのあたりの事情からヴィルヘルムの妹であるレティーツィアに話が回ってきた。
ヴィルヘルムの皇妃事情に対して動ける者達の中で、彼が最も信頼する者は同腹妹のレティーツィアであるのは間違いない。
次点か同列で信頼している実母のベアトリクスは皇太后の身なので、その立ち位置的に頼ると却って逆効果になる可能性があるらしく、レティーツィアが動くしかなかったそうだ。
レイム皇子の種族が冠魔族でなければレティーツィアが動く必要はなかったんだろうが、こればかりは仕方がない。
他の皇妃達に対する牽制も兼ねてレティーツィア直々に追加の使用人達の選出が行われ、それが終わったのが昨日の夕方頃だった。
それから俺が迎えを出して、レティーツィア達を連れて帝都からアルヴァアインに転移で移動して俺の屋敷で一泊させた。
レティーツィアの用事がいつ終わるか分からなかったので、彼女が大遠征に参加することは公表していなかった。
そのため、早朝から地上の人々にレティーツィアも参加することをアピールしてから巨塔に入らせた。
ダンジョンエリアに足を踏み入れてすぐに人目が無い場所へ移動し、そこからツヴァイブルクまで転移して今に至る。
「まぁまぁ、二人とも。その辺にしないと、これ以上時間を掛けたら予定が狂っちゃうわよ? あと、私はそろそろ帰るから、ちゃんとお見送りしてね?」
「……そうね。世話になったわ。ありがとう、フリッカ」
「どういたしまして。兄の頼み以外だと、二人の頼みなら出来るだけ聞いてあげるから、好きに呼んでね。あ、それと、レティはもっとリーゼと仲良くしなきゃ駄目よ。リーゼもレティとはもっと仲良くしてね?」
「努力するわ……」
「努力します……」
何か言いたげな二人の視線を分身体の身で笑顔で受け止める。
既に巨塔に入って数日経つ俺がレティーツィア達を迎えに行くわけにはいかないため、俺とは明らかに別人だと分かる女性体を派遣した。
公的には俺の妹であり、冠位魔女の一人〈黄金の魔女〉でもあるフリッカが来訪すると事前に知らせていたため、皇城に着くとヴィルヘルムをはじめとした多くの貴族達が待っていた。
金髪金眼のフリッカはレティーツィアに勝るとも劣らない容姿をしているため、その場に集まった者達の半数以上を自然と魅了する。
リオンの妹という付加価値を考慮すると、求婚してくる輩がいることが考えられたため、予防策としてその場で男には興味が無いことをアピールしてきた。
アピールといっても、レティーツィアとユリアーネに挨拶代わりに抱擁をしただけだが、察しの良い者達はそれだけで察してくれたことだろう。
「それじゃあ、また機会があれば会いましょう」
役目を果たしたフリッカを俺達がいる城門とは逆側の城門の方へと去らせる。
あとは適当な日数が経過した後に、巨塔から出ていって退場記録を付ければ大丈夫だろう。
「では、これで全員揃ったので、深層に向けて出発する。ここまでの道中と同様に全体が危機的状況に陥るか、ボス級魔物が現れない限りは基本的に俺は戦闘に参加しないので、心して進むように」
「「「はい!!」」」
「じゃあ、フェイン。あとの進行は任せた」
「了解。よし、全員ブリーフィングの内容は頭に入ってるな? まずは予定通り、このツヴァイブルクがある第五十六エリア帯に隣接する第六十エリア帯へ移動するぞ。隊列を組み次第出発だ!」
現場指揮を任せているフェインの号令に従ってヴァルハラクランの団員達が動き出す。
全体の動きを見ていると、目立つ美女二人組が此方に近付いてきた。
「リオンの女性体にはまだ慣れないわね……」
「アレ呼ばわりは酷いな。妹は血肉を分けた肉親だぞ」
「血肉と言うより魔力ですけどね。それはそうと、レティ達は何処に配置するのですか?」
「俺と同じ場所だな。リーゼが言ってたように過剰戦力だし、団員達も皇女がいたら戸惑うだろう。レティも後方待機で構わないだろう?」
「構わないわよ。ユーリは違うの?」
「私はまだAランクだから、シルヴィア様達のところに混ぜてもらうことになったわ」
ユリアーネには弓型神器〈迫り襲う刻血弓〉がある。
その基本能力【時界血覚】によって限定的に未来予知が可能なので、弓撃による後方支援だけでなく魔物の奇襲などにも事前に対処することができる。
ユリアーネと【時界血覚】の相性はそこまで良くないらしく、予知と言っても数秒先の未来までしか知覚できないようだが、それでも十分に役に立つ能力だ。
「そうなのね。あら? リオンの冒険者装備が変わったわね?」
「手袋のことか?」
「手袋もだけど、ベルトもよ。更新したの?」
「ああ。素材を加えて造り変えたんだ。手袋はまだしも、ベルトは殆ど見た目は変わらないのによく気付いたな」
「以前の私なら気付かなかったでしょうけど、今の私には〈天に輝く鬼剣〉があるから、同種のモノに気付けたんだと思うわ」
「なるほどな」
神器である〈天に輝く鬼剣〉を身に宿しているからベルトの変化に気付けたというわけか。
血液に同化する血鬼神器であるヒミングレーヴァならば、そういう副次効果があっても不思議ではない。
〈太母の魔王〉を倒して手袋型神器〈運命織り成す神手〉を獲得したことで、元々装備していた伝説級最上位〈精霊王の御手〉から神域級中位〈運命織り成す神手〉へと装備を変更した。
それによって浮いた〈精霊王の御手〉を何かに再利用出来ないかを考え、数日前に星鉄と【怒轟の欠片】を共に伝説級上位〈勇猛戦神の黄金腰帯〉へと組み込むことを思い付いた。
そうして完成したのが腰帯型神器〈雷轟戦神の神力帯〉だ。
モイライに引き続き、また一つ全身装備に神器を増やすことが出来た。
リーゼロッテが大遠征参加者にSランク冒険者が増えるのを戦力過多だと言っていたが、神器が増えるよりかは些細なことだ。
超越者になると〈世界〉より神器を得る権利が与えられるらしい。
超越者達は各々が今の自分に必要だと思う神器を自然と理解して選ぶそうだが、俺に必要な神器とは一体どんな神器だろうか?
その時になってちゃんと分かるといいんだが、現在の装備、並びに帰属神器一覧を見ていると少しだけ不安になった。
武器・刀・神域級中位〈財顕討葬の神刀〉
武器・刀・神域級下位〈龍喰財蒐の神刀〉
武器・剣・伝説級最上位〈無垢なる命喰の霊剣〉
武器・槍・神域級下位〈喰らい穿つ呪神槍〉
防具・上着・神域級下位〈黄金獅子の不滅外套〉
防具・下着・伝説級最上位〈妬み望む魔竜の王鎧〉
防具・手袋・神域級中位〈運命織り成す神手〉
防具・足甲・神域級下位〈大地神の偉大なる足跡〉
防具・上衣・伝説級最上位〈人理栄光の精霊王衣〉
防具・下衣・神域級下位〈星坐す虚空の神衣〉
防具・腰帯・神域級下位〈雷轟戦神の神力帯〉
装身具・腕環・伝説級最上位〈九頭龍王の宝環〉
装身具・腕環・神域級上位〈黄金星天の英勇神器・擬装〉
装身具・指環・伝説級最上位〈聖金霊装核〉
装身具・指環・叙事級下位〈炎環魔女の祝愛受けし指環〉
装身具・耳飾・叙事級中位〈氷刻魔女の祝愛受けし耳飾り〉
装身具・首飾・神域級最上位〈星統べる王の聖剣・擬装〉
その他・右眼・神域級中位〈天空神の霊眼〉
その他・左眼・神域級中位〈天空神の霊眼〉
その他・血液・神域級中位〈精霊なる魔女の器〉
その他・書物・神域級下位〈外界魔神創書〉
その他・領地・神域級下位〈天空神の聖域法晶〉
その他・霊物・神域級下位〈魔神の星霊神樹〉
その他・使い魔・神域級下位〈魔鎧王操従神人形〉
その他・器物・神域級下位〈貴貨罪貨の強欲の願宝器〉
その他・建造物・伝説級最上位〈精霊天宮ティルナノーグ〉
その他・鍵・神域級最上位〈血神宝物殿の鍵〉
その他・鍵・神域/伝説級最上位〈未完成の銀鍵〉
その他・聖杯・神域級下位〈生命礼賛の贖罪杯〉
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