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第十五章
第四百四十二話 Project Reverse
◆◇◆◇◆◇
他の神々に封神異界へ封じられたワタシは、残った力で生み出した次元の扉を通って神無き世界へ逃亡した。
その神無き世界で唯一の神となり、自ら生み出した下位神を統べて自分だけの神域を築いた。
悪を用意し、正義も用意する。
敵も味方も操ることで、人々から効率良く信仰を集め、神としての力を取り戻す。
その過程で別世界から召喚した異界人の一人、クロガネ・リオンに敗れた。
ヤツが発現した異能〈強欲〉によって魂を捕縛され、これまでヤツに敗れた者達と同じように吸収されるというところで、召喚時に仕掛けていた強制送還陣が発動した。
自分を害する者を追放するための万が一のセーフティとして用意していた術式だった。
召喚された異界人に自動的に仕込まれるので、用意したワタシ自身も存在すら忘れていた。
これまでは〈強欲〉の力が強すぎて跳ね除けられていたが、ワタシとの戦いで疲弊したことで自動発動に成功したらしい。
ただ運が良かった。
そう表現する以外に現状を表す言葉はなかった。
そうして魂が吸収される前にクロガネ・リオン共々地球へと送還され、ヤツの中で計画を練った。
条件が揃っていないクロガネ・リオンは、地球上で〈強欲〉をはじめとした力を振るうことは出来ない。
そのおかげで、魂だけの状態でもヤツの魂に寄生する形で存在を維持できた。
だが、それも長くは保たない。
地球という世界の理内にいる限りヤツはただの人間だが、その魂は偉大な神であるワタシを倒すほどの力を持っている。
システムの制限が完全には及ばない魂の領域で、本人が操らずともヤツの〈強欲〉が徐々にワタシの力を奪いはじめていた。
自我を維持できても既に魂が奪われていることには変わりなく、クロガネ・リオンの魂から離れることも出来ない。
このまま何もせずにいれば、来世において完全に喰われてしまうのは明らかだった。
どうしても離れられないならば、この状況を利用すればいい。
僅かでも神の力を取り込んだ影響か、不治の病という形でヤツの肉体は死に向かっており、来世での戦いに備えることにした。
魂だけの状態でも行使できる力を用いて、ヤツの魂内に残留する〈強欲〉以外の力を素材に新たな力を創造する。
スキル創造の際に細工を施し、スキル行使の最上位権限保有者をワタシに固定しておく。
最上位権限がワタシにあっても、スキルの所有者自体はクロガネ・リオンのままにするのも忘れない。
例えヤツの〈強欲〉であっても、自分自身の力を奪うことは出来ないため、この仕込みは絶対に必要だった。
そうでなければ、また奪われるだけなのだから。
〈強欲〉も造り変えたかったが、他の力よりも深く魂に根差しているため、〈強欲〉全体に干渉するのは不可能だ。
唯一できたのは、最も脅威な◼️◼️◼️の力を外側から封じ込めることだけで、それだけでワタシに残っていた力の殆どを消耗した。
魂の状態で力を行使し続けた所為で疲弊したが、ユニークスキルに成り変わり潜伏するには必要だった。
魂は弱体化してしまったが、転生先である昔ワタシがいた世界に残していた神器や、ワタシの力の欠片が散りばめられている。
それらをヤツが手に入れれば、すぐに回復できる。
あとは、ヤツがワタシが生み出したスキルを育てるように転生時に誘導するだけだ。
警戒心を抱かせないため、女神を彷彿とさせる姿は避けた方がいいだろう。
出来るだけワタシとは乖離した姿にするべきだから、非人型にしておく。
名前の方は……クロガネ・リオンの力と存在を奪う計画〈反転計画〉から取って、〈プローヴァ〉とでも適当に名乗ればいい。
ヤツを送り出すと同時に【造物主】へ成り変わり、後は時が満ちるのを待つだけ。
◆◇◆◇◆
「──分化しろ、エクスッ!!」
最上位神器〈星統べる王の聖剣〉の第三能力【変わり成す星の鋼】を発動させ、エクスカリバーを分身させる。
周囲に出現した無数のエクスカリバーを射出し、殺到する天使と悪魔の軍勢の猛攻を払い除ける。
ユニークスキル【神魔権蒐星操典】の【天悪顕現之書】で生成された天使と悪魔の大半は雑魚だが、中には〈魔王〉に匹敵する個体もいた。
魔王級はたったの二体だけだが、率いる下位種の軍勢の存在もあって今の俺にとっては厄介な相手だった。
【神魔権蒐星操典】には〈蒐〉という〈強欲〉に関連する概念が含まれているが、邪神に奪われている。
どうやら通常スキルとユニークスキルでは別の理が働いているようだ。
この二つの違いは、おそらく魂に根差しているかどうかだろう。
俺の魂に寄生している邪神の影響は、やはり魂の容量に収まっているユニークスキルの方が大きいらしい。
となると、一部のスキルだけとはいえ、俺の方に使用権がある【世界と精霊の星主】は、何故使えるのだろうか?
他のユニークスキルとの違いは……もしかして、称号か?
「結び付きの強度ってとこか。それにしても、魔王級を倒しても支配率は変わらないか」
無数の天使と悪魔の壁を突き抜け、魔王級の天使と悪魔を倒したが、頭上の黒き星のサイズに変化はない。
【災界顕現】で徐々に大きくなってはいるが、逆に言えばそれ以外では支配率を上げることが出来ていなかった。
「チッ。ダメージを受けたら、その分だけ奪い返される、と」
天使と悪魔を目眩しにして密かに近付いていた英霊騎士の一体が繰り出した神焉白槍が脇腹を抉る。
接近したエインヘリアルをグングニルごと【強奪権限】で処理して力を奪うが、得られるのは魔力だけでスキルは得られなかった。
奪った魔力で怪我を治しながら空を見上げると、今のダメージによって黒き星が僅かに小さくなっていた。
【強欲神ノ黄金神星煌躰】で肉体が強化されていなかったら、もっと小さくなっていただろう。
ここまでの情報から、邪神と俺によるこの空間の支配権の奪い合いは、互いの本体にダメージを与えることでしか変化しないのが確定した。
つまり、周りの生成体をいくら倒したところで意味はないというわけだ。
「絶対防御と神域城壁でしっかり守りを固めてやがる。近付いたら転移で距離を取るし、厄介だな」
周囲にいる全ての天使と悪魔による自爆攻撃をエクスカリバーの分剣達を大盾に変えて防ぐ。
〈権能〉を使えばもう少し楽になるが、殆どの魔力ソースと演算力を地上世界と接続することに注力しているため、コストの重い〈権能〉は使えない。
使えないわけではないが、一度使ったら対策される可能性がある上、今の俺が扱える魔力量は激減している。
そのため、〈権能〉の使いどころには慎重を期する必要があった
「太陽よ、在れ」
眼球一体化型神器〈天空神の霊眼〉の【戦威ノ太陽権】で上空に偽りの太陽を生み出す。
その太陽を触媒に腕環形態の神器〈黄金星天の英勇神器〉の【黄金神陽】を発動させ、この空間全体を照らし燃やし尽くす、万物を滅ぼす太陽光を照射させる。
【黄金神陽】のみで発動した時よりも強力になった太陽光が降り注ぎ、無限にも思える数の生成体が灰燼に帰していく。
滅びの光は術者である俺にも等しく降り注いだが、その光を神器〈星坐す虚空の神衣〉の【虚ろなる円環の蔵】で吸収して防いだ。
不可視の亜空間収納の渦へと周囲の太陽光を取り込むと、集束させた太陽光を【強奪権限】の力で黒く染め上げて〈太陽蒐束光線〉として邪神へ放つ。
【戦威ノ太陽権】の光熱強化能力も使って強化した漆黒のソーラーレイは、複数の防御能力をも貫き、邪神を射抜いた。
「グッ、おのれッ!!」
圧縮された黒い太陽光に貫かれてダメージを負った邪神が、全身に純白のオーラを纏う。
追撃に放ったソーラーレイが純白のオーラに喰われていく。
「あれは、源喰のオーラか」
邪神を守っていた純白のオーラが解放され、濁流のように迫ってきた。
【強欲神ノ虚空神星権圏】を発動させて空間に干渉し、【無限源喰の世界龍】の【源喰権限】による純白の攻性オーラを握り潰す。
このスキルは〈権能〉並みの性能だが、出力を微調整できるので最低限のコストで対処できる。
源喰のオーラを解き放った際に各種防御スキルを解除した邪神に向けて手を翳す。
邪神がいる座標へ向けて封印結界を展開した。
【強欲神ノ虚空神星権圏】を用いた結界術により、邪神を封じた球状の結界内が凍結する。
以前戦った〈血神〉が封じられた異界である〈血獄の封神殿〉を解析して得た封神異界の術式に、俺のアレンジを加えたものだ。
空間だけでなく時間も凍らせる簡易封神結界で邪神を足止めした隙に一気に作業を進める。
すると、簡易封神結界の内部から眩い銀色の光が放たれているのが見えた。
間もなく結界が内側から破壊され、邪神が再び姿を現した。
「忌々しい封神術をも使うとは……でも、残念だったわね」
「ああ、残念だったよ。一気に繋げたかったんだが、一先ず此処までだ」
邪神を封じた僅かな間に空高くまで移動した。
移動先は、俺のこの空間の支配率を表す黒い星の真横。
やはり、此処が最も外部と繋げやすいようだ。
「まさかッ!」
「秩序改竄──〈不転世界〉」
権能【秩序神域】の固有領域〈強欲神の秩序〉で『転移不可』という新たな秩序を空間内へ追加し、邪神の転移を封じる。
中位神器〈運命織り成す神手〉の【運命ノ紡手】で黄金神糸を生み出し、黒き星を縁取るように囲い込む。
黄金の円環に【叡智蒐神星髄】の演算力で解析した結果から編み出した術式を刻み、その内側の黒き星へと黄金神糸を放つ。
更に『目的地、目標に到達するための有形無形問わず凡ゆる道を看破する』【解決ノ糸口】で、地上世界にある下位互換の神器〈運命ノ環〉の一つと接続した。
「理想へ至れ──【願い望む星の杯】」
エクスカリバーの第七能力で一方通行の擬似的な召喚門を完成させる。
力を奪われた今の俺では呼び寄せることしか出来ず、限られた時間で繋げられたノルンは一つのみ。
此処に呼び寄せても問題ないのは二人いるが、俺と邪神の関係性に割って入れるのは一人しかいなかった。
「──当たって欲しくない予想が当たったわね、リオン」
「世の中そういうものだろ、ヴィクトリア」
黄金の召喚門より紅金色の長髪を靡かせながらヴィクトリアが姿を現した。
ヴィクトリアは邪神がいた前の異世界からの〈転生者〉であり、当時は俺と共に邪神の勢力と戦っていた。
邪神に邪魔されて未完の超越者である俺とは違って、〈世界〉より〈熾剣王〉の王権称号を与えられた本物の超越者だ。
今のヴィクトリアならば、邪神が相手でも十分に戦えるだろう。
「真っ白な場所ね」
「邪神にダメージを与えて、この世界を黒く染め上げれば俺達の勝ちだ」
「そういう場所なのね。分かったわ」
鞘から超越神器〈燦然たる熾天の煌星剣〉を抜いたヴィクトリアが前に進み出る。
加護を持つ〈炎神〉から賜った神鎧〈紅陽祭火の炎神衣〉も纏ったフル装備のまま、階層主戦の前から自宅に待機してもらっていた。
おかげですぐに呼び寄せることができたが、今の邪神は全てではないが俺が築いた力を行使する。
その力を前にヴィクトリアがどこまで戦えるかは未知数なので、出来るだけ急ぐとしよう。
「〈強欲〉以外の俺の力を使ってくるから気を付けてくれ。基本は俺が〈強欲〉の力を完全に取り戻すまでの時間稼ぎだ」
「別に倒してもいいんでしょう?」
ヴィクトリアを警戒して近付いてこない邪神を見下ろしながらの発言を聞きながら、分化していたエクスカリバーを一つに戻す。
「構わないけど、時間稼ぎ優先で頼むな。作業を邪魔されたくないから、出来るだけ引き離してくれ」
「仕方ないわね」
「気を付けろよ」
「安心してお姉さんに任せなさい」
前の異世界で出会ったばかりの頃の物言いに苦笑しつつ、召喚門の前で正面にエクスカリバーを構え、全ての力を地上世界との繋がりを確立させることに集中した。
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