アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第二章

第七十六話 人を見た目で判断してはいけないけど、大体は見た目通りだよね

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※前回までのあらすじ
 休暇で海へ向かっている最中、半グレ系超人勢力〈暗龍治焼武琉アンタッチャブル〉の構成員による襲撃を受けたマイン一行は、敵を返り討ちにした後、アンタッチャブルの拠点へと攻撃を仕掛けた。
 拠点であるスタジアムの入り口でソフィアとシオンと三手に分かれたマインは、スタジアム内に築かれた塔を登っていき多くの敵を倒していく。
 その末にアンタッチャブルのリーダーであるドラゴン男にも勝利したマインは、一つ上の最上階から感じる気配の正体を確かめるべく、上の階へと上がっていった。


 ◆◇◆◇◆◇


 最上階フロアに足を踏み入れると、そこは怪しい雰囲気に満ちた仄暗い場所だった。
 一言で表現するなら研究所が相応しいだろう。


「謎の液体に満たされた透明のカプセルとか、いかにもな感じの場所だな」


 室内に立ち並ぶ多くのカプセルの中には、様々なモノが入っていた。
 モンスターの死骸や臓器だけでなく、老若男女の人間の物もある。
 更には、肉体の一部が異形へと変化しているモノもあることから、超人の死体や臓器もあるらしい。
 どうやら研究所は研究所でも、此処はマッドサイエンティストの研究所のようだ。


「謎の気配はこれらからか──」

「おや。見覚えのない顔だ。そんな金属体は一目見たら忘れないから、新入りか?」


 カプセルの陰の向こう側から声を掛けられ、そちらに顔を向ける。
 そこには研究者風な白衣を着た優男が立っていた。
 優男の側頭部からは一対の角が生えており、ただの人間ではないことを現していた。
 異形なのは角だけでなく、背中からは蝙蝠のような翼が、腰の辺りからは表面が鱗で覆われた尻尾が生えているのが見えた。


「そういうそっちは悪魔みたいな見た目だな」

「実際悪魔だからな。ワタシのことを知らないとは、竜崎の奴は何も説明せずに此処へ通したのか。まぁ、別に構わないが」


 自称悪魔がブツブツと文句を垂れながら俺から視線を外して、手元の台の上にある何かを弄り始めた。
 手前に雑多に様々な物が積み上げられていて見えなかったので、移動してから台の上を覗き込む。
 そこには人間の男性が拘束された状態で横たわっていた。
 男性はただ横たわっているのではなく、身体の前面が切り開かれており、外科手術中のような有り様だった。
 何らかの臓器が動いているから生きているんだろうが、見た感じだと男性の意識は無いみたいだ。

 自称悪魔の優男は、男性の臓器の一部をメスで切り取ると、その部分に見るからに人間のモノではない何かの臓器を接合していった。
 周りに保管されているモノからも、その臓器が何の臓器かを推察のは簡単だった。


「それってモンスターの臓器か?」

「そうだ。次元変革現象以降、オマエ達人間ニンゲンはモンスターを狩ることで、その力の一部を自らに取り込めるようになった。これはある種の進化だが、その進化率には個人差が大きい」

「次元変革現象?」

「オマエ達人間ニンゲンが大異変と呼んでいる日に起きた出来事のことだ。簡単に言えばモンスターやゲートが出現するようになった事象のことを言う」

「なるほど。進化率ってなんだ?」


 自称悪魔の手が忙しなく動き、台の上の男性の臓器をモンスターの臓器に取り替えられていく。
 その様子を近くで眺めながら、色々なことを知っているらしい自称悪魔に質問を重ねていった。


「文字通り新たな種への進化の確率だ。より正しく言うなら、モンスターの力の吸収効率と、その力を自らに適合できる確率の複合だな。ようは、強くなりやすいか否かを示す指標だ」

「それらはどうやって見分けるんだ?」


 そう尋ねると、自称悪魔は俺を指差してきた。


「外見の変異率がモンスターの吸収効率で、変異後も元の姿へ戻れるかどうかが適合率を意味しているとワタシは考えている。その全身金属の肉体ならば八割以上の吸収効率だろう。それで元の人間ニンゲンの姿に普通に戻れるならば、オマエの進化率は最低でも七割を超えるはずだ」
 
「へえ。自由に元の姿に戻れる俺の進化率が高いなら、ここにいる連中は適合率が低いってことか」

「いや。奴らが元の姿に戻れないのは、その殆どがワタシの実験体だからだ。モンスターを倒すことなく超人へ進化できるかを試しているのだが、総じて見た目が魔の側に偏ってしまうのが難点だな」


 実験体か。となると、目の前のコレもその一つか。
 モンスターの臓器が移植されたことで治癒力が高まったのか、切開されていた身体の前面が独りでに塞がると、被験者の男性が目を覚ました。
 その目は虚ろであったが、やがて全身が肥大化し、その額から角が生えてきた。
 まるで鬼のような見た目から、移植されたのは鬼系統のモンスターの臓器なのかもしれない。
 

「さて、どうやらオマエは侵入者のようだな」

「流石に気付くか。非常に興味深い話だったぞ。礼として、悪魔を自称するその力をいただこう」

「自称ではなく本当なのだが……まぁいい。偶には人間ニンゲンと戯れるのも良いだろう」


 自称が台の上で起き上がった鬼男の背中に触れると、虚ろだった目が真っ赤に充血し、全身から発せられる気配が強くなった。


「う、ウガァあア、アッあァアぁーーッ!!」

「さぁ、存分に楽しむがいい」


 台の上から飛び出してきた鬼男の拳撃を躱わすと、こちらもカウンターで拳を振り抜く。
 多くの敵を殴打してきた金属の拳が鬼男の顔面に炸裂し、その頭部を一撃で粉砕してみせた。
 崩れ落ちた鬼男を一瞥してから自称悪魔へと向き直る。
 今の瞬殺劇を見ても自称悪魔の余裕のある表情は変わらず、俺が一歩踏み出して近付いても構える様子はなかった。


「言っただろ。存分に楽しめとな」

「……なるほど」


 背後からの物音に振り返ると、そこには頭部を再生させながら立ち上がる鬼男の姿があった。
 面倒だな、と思いつつ、再び拳を振り抜いて鬼男の頭部を破壊した。



 
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