アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵

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第一章

第三十二話 モチベーションって大事だよね

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 ◆◇◆◇◆◇


「ーーお兄さーん!」

「どうひたー?」


 チョココーヒー味の某有名チューブアイスを食べながら立体駐車場の屋上で能力検証をしていると、ソフィアが滑り棒を降りてやってきた。
 今年も暑いからか、随分と薄着な格好をしているソフィアを直視しないようにしながらグレイヴを振るうのを一旦止める。


「牛を狩りに行きまショウ!」

「揺れたな」

「何がデス?」

「いや、なんでもない」


 屋上に着地した瞬間、視界の端でソフィアの身体の一部が大きく揺れたことに煩悩が漏れ出てしまった。
 心頭滅却心頭滅却……煩悩退散煩悩退散……。


「それで? 牛を狩りに行きたいって?」

「ハイ!」

「一応聞いておくが、牛系モンスターのことであってるか?」

「あっ、そうデスそうデス。牛系モンスターを狩りに行きませんカ?」

「牛肉か?」

「ハイ。さっき録画してあったグルメ番組でやってたんデス。牛肉に近いそうなので、久しぶりに食べたいデス」


 世界変革前は牛肉なんて金額的に滅多に食べなかったな。
 一方で、お嬢様学校に通っていたり、義父の趣味が刀剣収集だったりなどの情報から、家が金持ちだったらしきソフィアは食べ慣れてそうだ。
 まぁ、あくまでもイメージだが。
 そう考えると、そんなお嬢様が一ヶ月以上もモンスターが徘徊する野外を一人で生き延びていたということに、彼女のバイタリティーの高さを改めて実感する。


「〈悪食か美食か〉で牛系モンスターを捌いてたのか?」

「ハイ。初めてみるモンスターでしたケド、色以外は普通の牛と殆ど変わりませんでしたヨ。そのモンスターが出現する場所も番組で言ってマシタ。ネットで調べたら他にも出現場所があったのデ、そっちに行けば混まないと思いマス。ちょっと遠出する必要はありますケド」


 具体的な場所を聞いたところ、番組で紹介された場所が此処から一番近かったのだが、ソフィアが言うように多くの人が集まって混みそうだ。
 ソフィアの調べによると隣の県でも目撃情報があり、そこが次に近い出現場所らしい。
 

「ただ、そこには目的の牛系モンスターだげじゃなくて、頭が牛の人型モンスターも出現するらしいデス。情報元の投稿にはボスに違いない、って書かれてマシタ」

「ゲームとかだと、頭が牛の人型でボスっぽいモンスターって言ったら〈ミノタウルス〉だよな。一体だけか?」

「投稿者が見たのは一体だけみたいデスネ」

「なら複数体いる可能性もあるわけか……」


 このミノタウルスとやらがどれほどの強さを持つのかが分からないな。
 スマホを開いてモンスター情報を集めたサイトで検索してみる。


「……お、あった。ふぅん、個体差はあるけど、基本的にオーガぐらいの強さみたいだな」

「まぁまぁ強いデスネ」

「あと、群れることもあるというからボスとかじゃないみたいだ」

「オーガ並みの強さで群れるとなると、少し厄介デスネ」

「ああ。でも今の俺達なら問題ないだろう。ただ、上位種らしき黒いミノタウルスはオーガを軽く屠れるほどの強さがあると書かれているな」

「……フラグデスカ?」

「……そうじゃないことを祈りたいな」


 この上位種の黒いミノタウルスの具体的な強さが分からないからな。
 オーガを軽く屠れるという評価だけでは分かり難い。
 俺とソフィアだってオーガを軽く倒せるという同じ評価になるけど、実際の強さには差があるしな。


「ま、牛肉の冷凍ストックも無くなってたし、牛系モンスターの〈クリムゾンブル〉を狩るのは賛成だ」


 情報サイトのミノタウルスの欄には、紅い牛系モンスターであるクリムゾンブルと一緒にいることもあると書かれていたので、牛系モンスターとはこのことだろう。


「牛系モンスターって紅いんだよな?」

「ハイ。レッドブーー」

「クリムゾンブルな」


 ブルというからには去勢していない雄牛なんだろうか?
 いや、去勢の有無についてはモンスターなので抜きにしても、雄牛なら肉は硬そうだが、ソフィアの話では番組では硬そうには見えなかったらしい。

 そういえば、世界変革の初めの頃はスーパーで調達した牛肉を食べたっけ。
 そのスーパーでオーガに殺されかけた俺が、牛系モンスターから肉を得るためにオーガ並みの強さらしきミノタウルスと戦う。
 中々感慨深いシチュエーションだな。


「今から行くと暗くなるから、明日の朝一で向かうか」

「分かりマシタ!」


 ミノタウルスからは運や適性があればパワー系の能力が手に入るみたいだし、是非とも遭遇したいところだ。
 上位種には出来れば会いたくはないが、エンカウントしたらしたで今の力を試すにはちょうど良い相手になりそうだな。



 
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