万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第三章

第百四話 封鎖地区の扱い

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 ◆◇◆◇◆◇


「──気配は無し、か。あれだけ身体をまさぐられても反応がないことからも、十中八九死体だろう」

「そういえば、少し前に封鎖地区に入った人達が未帰還だと協会の方が言ってましたね」

「そういや言ってたな。となると、あの死体は死後それなりに時間が経ってそうだな」


 目的地であるダンジョンのゲート前に屯っていたオーク達の足元には、人間の死体が転がっていた。
 身に付けている武器や防具から俺達と同じ探索者であることが窺える。
 オーク達はそんな同業者の死体の装備品を剥ぎ取ると、手に取ったそれらのアイテムを興味深そうに繁々と眺めていた。


「今みたいな暑い時期の死体にしては状態が良いですね?」

「覚醒者の身体には魔力があるからな。この魔力が覚醒者の身体を強靭にしている要素なんだが、死後魔力の大半は大気中に霧散してもある程度は体内に残留する。だから覚醒者の死体は腐敗し難いんだ」

「へぇ、そうなんですね」

「ちなみに遺体を火葬する際も、覚醒者は非覚醒者よりも灰になるのが時間が掛かるんだ」

「へぇ、死んだ後にも結構違いがあるんですね」


 木陰に隠れたまま披露した雑学に感心するマリヤとは違い、リリアは別のことが気に掛かっているようだった。


「……アビス産のモンスターは知性が高いのでしょうか?」

「と言うと?」

「ダンジョン産……ダンジョンの中で遭遇するモンスターは私達人間の物に対してあそこまで感心を示しませんから」


 俺達の視線の先では、装備品を出来るだけ壊さないように探索者達の死体から剥いているオークの姿があった。
 体格差から剥ぎ取った物を眺める様にはマヌケな印象を覚えるが、その実態を知っている身からしたら末恐ろしいものがある。


「通常、モンスター達はアビスやダンジョンといった箱庭の世界に行動も思考も制限されている。ダンジョンのモンスターがゲートから外に出ない理由でもあるんだが、その制限が不完全なのがアビスのモンスターだと言われている。そんな制限が緩いアビスのモンスターが地上に出て来たんだ。だから、ああいった反応を見せてもおかしくはないさ」


 確か、回帰前の未来では銃火器を操れるまでに学習したモンスターもいたっけ。
 現状、ブレイク後したアビスから溢れ出たモンスターは、初動の対応で殲滅出来なければ、この封鎖地区のように封じ込めた後は基本的に放置されがちだ。
 その理由は、単純に覚醒者の数が足りないのと、ダンジョン内のモンスター以上に情報が不足していること、モンスターの素材を除きダンジョンならば得られる各種資源が得られないこと、何よりボス宝箱といった宝箱の類が一切ドロップしないことが挙げられている。
 これら4つの理由が分厚い壁となって、封鎖地区内のモンスターの討伐と地域の解放は一向に進んでいなかった。

 未来では、封鎖地区内で勢力を拡大したモンスターが防壁を破り、世界中で多くの被害が出るまでこの現状維持の状態が続いた。
 そういえば、この封鎖地区も数年後にはそういうことが起きた場所だった気がする。
 世界中にある封鎖地区の7割が決壊したという統計がテレビで流れた際に、その一例で取り上げられていたのが此処の封鎖地区だったような……。


「人型のモンスターだから興味があるんですかね?」

「あるいは群れの長の指示かもしれないな。さて、都合良く気が逸れているし、さっさと倒してしまおうか」


 腰に佩いた鞘から伝説レジェンド級マジックアイテム〈堕天剣バラキエル〉を引き抜く。
 モンスター以外に生存者がいないならば、バラキエルを使っても問題ないだろう。
 モンスターに対してバラキエルを振るうのは今回が初めてなので、その攻撃力を実戦で確かめるのも初めてになる。
 伝説レジェンド級という等級な上に、破壊力のある雷属性という要素も合わさっているため、かなり攻撃力が高いんだろうという大雑把な予想しかついていない。
 なので、事故を防ぐためにもダンジョンに入る前に確認しておいた方がいいだろう。


「クロヤさん。彼らの遺体は回収しなくてもいいんでしょうか?」

「ん? 協会の規約上は犠牲者の遺体の回収は任意だから、どちらでもいいぞ。リリアは回収したいのか?」

「はい。彼らが何処の誰かは知りませんが、ご家族がいるかもしれませんので、回収できるならした方がいいと思いまして。遺体はクロヤさんに収納してもらうので申し訳ないのですが……」

「それは別に構わないんだが。まぁ確かに、遺族のことを抜きにしても、協会からの印象的にも回収した方がいいか」


 ずっと記録上は未帰還者のままっていうのも可哀想だしな。
 今は死体の状態は良いが、俺の攻撃に巻き込まれたら無事では済まないだろう。


「私がオーク達を引き寄せて、リリアが魔法で遺体を保護してから、リーダーが纏めて倒せば良い感じですね」

「それでいくか。じゃあ、マリヤは適当にオークを誘導してくれ。リリアが魔法障壁を張ったらバラキエルを振るう」

「分かりました。行ってきます!」


 物陰から勢いよく飛び出して行ったマリヤは、【挑発】スキルを発動させると同時に、装備している盾型マジックアイテム〈力天使の戦盾〉の能力【飛天重盾】を使用した。
 この盾は、今回の遠征の準備のために昨日集まった時にマリヤに渡したもので、先日の〈堕天の回廊〉での一件で倒した天使系モンスターの死体から創造したマジックアイテムだ。
 本体である〈力天使の戦盾〉に重なるようにして浮遊する盾型具現体を、マリヤはオーク達に向けて投擲する。
 振り被られた本体の動きが反映された浮遊盾は、マリヤの望み通りにオークの一体の頭部へと飛翔し、そのまま頭部を刈り取っていった。

 マリヤの元から離れたのは一時的に離れた浮遊盾を追いかける形で、残りのオーク達が駆けてくる。
 その際に投げ捨てられた探索者の遺体へと魔法障壁が張られたのを確認してから、マリヤを追いかけるオークの横合いから飛び出して、バラキエルを振るう。
 その漆黒色の剣身には、【雷聖剣煌】による破壊的な雷属性と聖なる光属性を内包したオーラが宿っている。
 オーバーキルなのはあきらかなので属性を分けて使用することも考えたが、初の使用なので制限無しに振るってみた。

 振り抜いた斬撃とその余波が放つ雷撃がオーク達を呑み込む。
 雷撃の眩い光が過ぎ去った後には、元がオークだと分からないほどに状態の悪い黒焦げの残骸があるのみだった。


「……遺体から引き離してから使って正解だったな」

「……本当ですね」


 伝説レジェンド級のバラキエルの雷撃は、ダンジョンに入る前に確認して良かったと強く思うほどに高火力だった。


 
 
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