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第三章
第百五話 痕跡
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オーク達が集っていた探索者達の遺体と遺品を回収した後、念の為オーク達の死体から剥ぎ取れる部位がないかを確認していった。
残念ながら全て体内まで消し炭になっていた。
「豚肉は犠牲になった。リーダーの新しい剣の性能テストの犠牲に……」
「豚肉じゃなくてオーク肉な。ま、バラキエルの火力を知れたから俺的には手に入らなくても問題ないんだが。2人はオーク肉は食べたことあるのか?」
「私は食べたことはありませんね。モンスター肉の専門店で買うと高いですから」
「私も食べたことないですね。一人暮らしには手が出し難い値段だし、ダンジョンで直接手に入れようにも、これまでに組んだパーティーで挑むにはオークが出るダンジョンは難しかったので行ったことないですねー」
「オークのダンジョンの難易度が高いのもあって、近所のスーパーに卸されていないほどに品薄ですからね。クロヤさんは食べたことあるんですか?」
「一応はな」
現在ではなく、回帰前の未来でだがな。
「昨日売った〈堕天の回廊〉の戦利品の稼ぎなら、2人共買えるんじゃないか?」
俺が気絶して【堕天の蔵】へ自動的に収納されたモンスター素材の中から、アイテム化に使えない分のモンスター素材は全て売却した。
高難易度である摩天楼ダンジョンのモンスターの素材なだけあって非常に高く売れたため、1人あたりの稼ぎも中々のものだ。
「確かに買えますけど……」
「私達にはリーダーみたいに副収入が無いので無駄遣いはできません。お金のやり繰りが大変なんですよ、1人暮らしの探索者って」
「いや、俺も1人暮らしなんだが……」
「リーダーは除きます」
「クロヤさんは例外です」
天城コーポレーションに委託していた鑑定宝玉の開発が成功したため、今後は鑑定宝玉の大元である鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の所有者兼データ提供者として、鑑定宝玉販売による収益の一部が得られる。
鑑定宝玉の発表も販売もまだなので、実際に権利者報酬が発生するのはまだ先のことだが、開発期間中の契約料で懐は潤っている。
そこに〈堕天の回廊〉での稼ぎが加算されており、2人とは文字通り桁違いの収入があるのは事実だった。
「……ゴホン。なるほど。それなら、今回の遠征が終わったらモンスター肉も取り扱う高級焼肉店で打ち上げでもするか? 先日の異常暴走解決の慰労も兼ねて、リーダーとして奢ろう……ん?」
「何をしてるんですか、リーダー!」
「遺体の回収は済んでるんですから早くダンジョンに入りましょう!」
声が聞こえてきたダンジョンのゲート前へ視線を向けると、そこには既に移動しているリリアとマリヤの姿があった。
異常暴走解決の打ち上げとはいえ、若い女性を焼肉屋に誘うのはどうかと思ったが、どうやら何の問題もないようだ。
「現金だな……おや、これは?」
ゲート前の地面をよく見ると、血溜まりがあるのに気付いた。
手で触れてみたところ固まっていなかったため比較的新しい血溜まりのようだ。
回収した探索者達の死体があった場所からは少し離れており、この血溜まりから何かを──たぶん、片足を引き摺ったかのような血痕が延びていた。
血痕は徐々に薄れていっていて分かり難いが、ゲートへと向かっているみたいだ。
「どうかしましたか、クロヤさん?」
「どうやら生き残りがいるかもしれない。ほら、これを見てくれ」
足元の血溜まりを指差すと、そこから延びる血痕を辿っていき、ゲートを指し示した。
「ダンジョンから出てきた、にしては逆向きっぽいですね」
「でもこの出血量って致命傷なんじゃないですか?」
「徐々に血痕が途絶えてるから止血はされてると思うが、確かに致死量っぽい血の量だな」
血痕からダンジョンに逃げ込んだと思われる探索者の状態を話しながらゲートへ向かう。
まだ生きているならば治療を施し、力尽きているなら他の探索者と同じ様に遺体を回収するとしよう。
ゲートを潜りダンジョンの中へと入る。
ダンジョンの中に広がるオーソドックスな森林フィールドを見渡し、負傷している探索者を探す。
「……ゲートの近くに気配は感じられないな」
「私の【気配察知】でも感じられませんね」
「魔法はどうだ?」
「『生命探知』……魔法の効果範囲にもいないようです」
普段は相手に探知魔法を使ったことが気付かれるため使わない『生命探知』でも感知できないとなると、対象が魔法の効果範囲外にいるか、既に死んでいるかになる。
【気配察知】のスキルで探知出来ない場合もまた同様だ。
「死体になっていたら気配も生命反応も感じられないだろうが……」
「隠密系のスキルで隠れている可能性はないのでしょうか?」
「負傷しているならあり得そうですね」
「その可能性もあったな……眼の力を使ってみたが、少なくとも近くには隠れていないようだぞ」
同化中の鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の空間認識能力で一定範囲内の空間の異常を探ってみたが、隠密能力で隠れている存在は確認出来なかった。
アーティファクトの力を上回るほどの隠密能力を持つならば探せないだろうが、流石にその点は考える必要はないだろうしな。
「取り敢えず足跡は……分からないから、匂いを辿るか。【光狼人化】」
ユニークスキル【万能通ず陽光王】の力で光の狼人に変身すると、先ほど血溜まりに触れた時に指先に付着した血の匂いを嗅ぐ。
【光狼人化】による身体能力の超強化は五感にも及んでいる。
だから猟犬のようなことができるのではと考えて試してみた。
「ワンちゃんです!」
「あれ? リーダーってオオカミじゃなかったっけ?」
「マリヤの発言は違う意味に聞こえるな……あっちだな」
俺の獣人スタイルを見て好き放題言っている2人を連れて、同じ血の匂いがする方へ向かって歩いていった。
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