万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
106 / 140
第三章

第百五話 痕跡

しおりを挟む


 ◆◇◆◇◆◇


 オーク達が集っていた探索者達の遺体と遺品を回収した後、念の為オーク達の死体から剥ぎ取れる部位がないかを確認していった。
 残念ながら全て体内まで消し炭になっていた。


「豚肉は犠牲になった。リーダーの新しい剣の性能テストの犠牲に……」

「豚肉じゃなくてオーク肉な。ま、バラキエルの火力を知れたから俺的には手に入らなくても問題ないんだが。2人はオーク肉は食べたことあるのか?」

「私は食べたことはありませんね。モンスター肉の専門店で買うと高いですから」

「私も食べたことないですね。一人暮らしには手が出し難い値段だし、ダンジョンで直接手に入れようにも、これまでに組んだパーティーで挑むにはオークが出るダンジョンは難しかったので行ったことないですねー」

「オークのダンジョンの難易度が高いのもあって、近所のスーパーに卸されていないほどに品薄ですからね。クロヤさんは食べたことあるんですか?」

「一応はな」


 現在ではなく、回帰前の未来でだがな。


「昨日売った〈堕天の回廊〉の戦利品の稼ぎなら、2人共買えるんじゃないか?」


 俺が気絶して【堕天の蔵】へ自動的に収納されたモンスター素材の中から、アイテム化に使えない分のモンスター素材は全て売却した。
 高難易度である摩天楼ダンジョンのモンスターの素材なだけあって非常に高く売れたため、1人あたりの稼ぎも中々のものだ。


「確かに買えますけど……」

「私達にはリーダーみたいに副収入が無いので無駄遣いはできません。お金のやり繰りが大変なんですよ、1人暮らしの探索者って」

「いや、俺も1人暮らしなんだが……」

「リーダーは除きます」

「クロヤさんは例外です」


 天城コーポレーションに委託していた鑑定宝玉の開発が成功したため、今後は鑑定宝玉の大元オリジナルである鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の所有者兼データ提供者として、鑑定宝玉販売による収益の一部が得られる。
 鑑定宝玉の発表も販売もまだなので、実際に権利者報酬ロイヤルティが発生するのはまだ先のことだが、開発期間中の契約料で懐は潤っている。
 そこに〈堕天の回廊〉での稼ぎが加算されており、2人とは文字通り桁違いの収入があるのは事実だった。


「……ゴホン。なるほど。それなら、今回の遠征が終わったらモンスター肉も取り扱う高級焼肉店で打ち上げでもするか? 先日の異常暴走スタンピード解決の慰労も兼ねて、リーダーとして奢ろう……ん?」

「何をしてるんですか、リーダー!」

「遺体の回収は済んでるんですから早くダンジョンに入りましょう!」


 声が聞こえてきたダンジョンのゲート前へ視線を向けると、そこには既に移動しているリリアとマリヤの姿があった。
 異常暴走スタンピード解決の打ち上げとはいえ、若い女性を焼肉屋に誘うのはどうかと思ったが、どうやら何の問題もないようだ。


「現金だな……おや、これは?」


 ゲート前の地面をよく見ると、血溜まりがあるのに気付いた。
 手で触れてみたところ固まっていなかったため比較的新しい血溜まりのようだ。
 回収した探索者達の死体があった場所からは少し離れており、この血溜まりから何かを──たぶん、片足を引き摺ったかのような血痕が延びていた。
 血痕は徐々に薄れていっていて分かり難いが、ゲートへと向かっているみたいだ。


「どうかしましたか、クロヤさん?」

「どうやら生き残りがいるかもしれない。ほら、これを見てくれ」


 足元の血溜まりを指差すと、そこから延びる血痕を辿っていき、ゲートを指し示した。


「ダンジョンから出てきた、にしては逆向きっぽいですね」

「でもこの出血量って致命傷なんじゃないですか?」

「徐々に血痕が途絶えてるから止血はされてると思うが、確かに致死量っぽい血の量だな」


 血痕からダンジョンに逃げ込んだと思われる探索者の状態を話しながらゲートへ向かう。
 まだ生きているならば治療を施し、力尽きているなら他の探索者と同じ様に遺体を回収するとしよう。

 ゲートを潜りダンジョンの中へと入る。
 ダンジョンの中に広がるオーソドックスな森林フィールドを見渡し、負傷している探索者を探す。


「……ゲートの近くに気配は感じられないな」

「私の【気配察知】でも感じられませんね」

「魔法はどうだ?」

「『生命探知ライフ・ディテクション』……魔法の効果範囲にもいないようです」


 普段は相手に探知魔法を使ったことが気付かれるため使わない『生命探知ライフ・ディテクション』でも感知できないとなると、対象が魔法の効果範囲外にいるか、既に死んでいるかになる。
 【気配察知】のスキルで探知出来ない場合もまた同様だ。


「死体になっていたら気配も生命反応も感じられないだろうが……」

「隠密系のスキルで隠れている可能性はないのでしょうか?」

「負傷しているならあり得そうですね」

「その可能性もあったな……の力を使ってみたが、少なくとも近くには隠れていないようだぞ」


 同化中の鑑定系アーティファクト〈月神の賢眼〉の空間認識能力で一定範囲内の空間の異常を探ってみたが、隠密能力で隠れている存在は確認出来なかった。
 アーティファクトの力を上回るほどの隠密能力を持つならば探せないだろうが、流石にその点は考える必要はないだろうしな。


「取り敢えず足跡は……分からないから、匂いを辿るか。【光狼人化ルー・ガルー】」


 ユニークスキル【万能通ず陽光王ルー】の力で光の狼人に変身すると、先ほど血溜まりに触れた時に指先に付着した血の匂いを嗅ぐ。
 【光狼人化ルー・ガルー】による身体能力の超強化は五感にも及んでいる。
 だから猟犬のようなことができるのではと考えて試してみた。


「ワンちゃんです!」

「あれ? リーダーってオオカミじゃなかったっけ?」

「マリヤの発言は違う意味に聞こえるな……あっちだな」


 俺の獣人スタイルを見て好き放題言っている2人を連れて、同じ血の匂いがする方へ向かって歩いていった。



 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アポカリプスな時代はマイペースな俺に合っていたらしい

黒城白爵
ファンタジー
 ーーある日、平穏な世界は終わった。  そうとしか表現できないほどに世界にモンスターという異物が溢れ返り、平穏かつ醜い世界は崩壊した。  そんな世界を自称凡人な男がマイペースに生きる、これはそんな話である。

異世界帰りの英雄は理不尽な現代でそこそこ無双する〜やりすぎはいかんよ、やりすぎは〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
<これからは「週一投稿(できれば毎週土曜日9:00)」または「不定期投稿」となります> 「異世界から元の世界に戻るとレベルはリセットされる」⋯⋯そう女神に告げられるも「それでも元の世界で自分の人生を取り戻したい」と言って一から出直すつもりで元の世界に戻った結城タケル。  死ぬ前の時間軸——5年前の高校2年生の、あの事故現場に戻ったタケル。そこはダンジョンのある現代。タケルはダンジョン探索者《シーカー》になるべくダンジョン養成講座を受け、初心者養成ダンジョンに入る。  レベル1ではスライム1匹にさえ苦戦するという貧弱さであるにも関わらず、最悪なことに2匹のゴブリンに遭遇するタケル。  絶望の中、タケルは「どうにかしなければ⋯⋯」と必死の中、ステータスをおもむろに開く。それはただの悪あがきのようなものだったが、 「え?、何だ⋯⋯これ?」  これは、異世界に転移し魔王を倒した勇者が、ダンジョンのある現代に戻っていろいろとやらかしていく物語である。

新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵
ファンタジー
 異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。  新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。  旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。  そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。  命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。  泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。  

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

この世界にダンジョンが現れたようです ~チートな武器とスキルと魔法と従魔と仲間達と共に世界最強となる~

仮実谷 望
ファンタジー
主人公の増宮拓朗(ましみやたくろう)は20歳のニートである。 祖父母の家に居候している中、毎日の日課の自宅の蔵の確認を行う過程で謎の黒い穴を見つける。 試にその黒い穴に入ると謎の空間に到達する。 拓朗はその空間がダンジョンだと確信して興奮した。 さっそく蔵にある武器と防具で装備を整えてダンジョンに入ることになるのだが…… 暫くするとこの世界には異変が起きていた。 謎の怪物が現れて人を襲っているなどの目撃例が出ているようだ。 謎の黒い穴に入った若者が行方不明になったなどの事例も出ている。 そのころ拓朗は知ってか知らずか着実にレベルを上げて世界最強の探索者になっていた。 その後モンスターが街に現れるようになったら、狐の仮面を被りモンスターを退治しないといけないと奮起する。 その過程で他にもダンジョンで女子高生と出会いダンジョンの攻略を進め成長していく。 様々な登場人物が織りなす群像劇です。 主人公以外の視点も書くのでそこをご了承ください。 その後、七星家の七星ナナナと虹咲家の虹咲ナナカとの出会いが拓朗を成長させるきっかけになる。 ユキトとの出会いの中、拓朗は成長する。 タクロウは立派なヒーローとして覚醒する。 その後どんな敵が来ようとも敵を押しのける。倒す。そんな無敵のヒーロー稲荷仮面が活躍するヒーロー路線物も描いていきたいです。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

異世界にアバターで転移?させられましたが私は異世界を満喫します

そう
ファンタジー
ナノハは気がつくとファーナシスタというゲームのアバターで森の中にいた。 そこからナノハの自由気ままな冒険が始まる。

処理中です...