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第三章
第百六話 特異性ダンジョン
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「──匂いで追跡するのは初めてとはいえ、一向に追いつけないな」
負傷した探索者は、森林フィールドに存在する獣道を道なりに移動するのではなく、その左右に広がる森の中を移動しているようだった。
草木の匂いが濃厚な場所での追跡は初心者には難しく、何度も立ち止まっては手掛かりである探索者の血の匂いを嗅ぐ必要があった。
「魔法の探知にも引っ掛かりませんね。一体どこまで移動したのでしょうか?」
「モンスターに追われてるんじゃないですか?」
「モンスターのものらしき匂いはしないが、このダンジョンだとあまり参考にならないな……」
「そういえば、このダンジョンはどういうダンジョンなのでしょう? ネットで調べてみたのですが、全く情報が見当たりませんでした」
「わざわざ遠くのこのダンジョンを選んだんですから、リーダーは知ってるんですよね?」
「ああ。ここは特異性ダンジョンだ」
「「特異性ダンジョン?」」
このダンジョンは封鎖地区内に出現している関係から調査が進んでおらず、今でこそ名無しのダンジョンだ。
だが、未来において封鎖地区が解放された後に調査が進み、その他のダンジョンにはない特異性から〈特異性ダンジョン〉に分類された。
モンスターを倒してもその素材を直接手に入れることはできず、その代わりにどのモンスターからも一定確率でアイテムがドロップするという、まるで遊戯のような法則が働いていることが、このダンジョンの特異性だ。
また、その特徴から未来では〈幻想遊戯〉と名付けられていた。
まさに幻想遊戯、端的に言えばRPGというわけだ。
未来では他のダンジョンには見られないゲームのような特異性から世間の注目を集め、目立つために挑戦した物好きによって、俺が狙っている〈財宝王〉シリーズのマジックアイテムがドロップすることが明らかになっていた。
このマジックアイテムが今回の遠征の目的である。
未来での出来事やダンジョン名やらは伏せてから、2人に特異性ダンジョンの説明を行う。
「と、いうわけで、ここではモンスターを解体することはできない。だから狙った素材を入手できるかは運次第だ」
「そんなダンジョンもあるんですね」
「そういえば、何処かの国に特殊なダンジョンがあると聞いたことがあった気がします」
「今の時だ、んン。おそらくはUS国の特異性ダンジョンだろう。あの国にも此処と同じタイプのダンジョンがあったはずだ」
「RPGですか?」
「RPG系だが、向こうはダークでヘヴィな内容のRPGだったよ。その分ドロップ報酬は良いけどな。あっちと比べればこっちのダンジョンはライトユーザー向けだな」
「まるで見てきたように言いますね」
「異能のおかげだ」
いつもの返しをして誤魔化していると、ちょうど木々の拓けた場所に出た。
すると、俺達とは反対側に広がる木々の中から3体のモンスターが突然飛び出してきた。
「今、いきなり反応が現れましたよ!?」
「魔法の探知でも同様です!?」
「いきなり敵と遭遇するのも、このダンジョンの特異性の一つだ。まぁ、目と鼻の先に転移してきて奇襲を受けることはないから安心していいぞ」
US国のRPG系特異性ダンジョンのモンスターは、いきなり目の前に出現してきて奇襲や暗殺をしてくるから油断できないんだよな。
「……このゴブリン達、武器を構えてますけど攻撃してきませんね?」
「この辺りはゲートからも近い場所だから難易度が低いんだよ」
「どういうことでしょうか?」
「俺達のターンってことだ。俺達が何かしらの戦闘行動を起こさない限りは向こうから動くことはない」
「……本当にゲームみたいですね」
「そうだろ? ちなみに、難易度が上がる深層は別だが、それ以外の場所なら目の前に出現するモンスターの数は、最大でも探索者側と同数だ」
まぁ、他の探索者が出現させた分が倒されていなかった場合は別なんだが、そのパターンについては今のところはいいだろう。
「それで、どうします?」
「倒していいぞ」
「では、『魔法の矢』」
リリアが放った魔法の矢が3体のゴブリンを瞬殺した。
すると、ゴブリンの死体が消え、その場には1つのアイテムだけが残っていた。
「木の棍棒……」
「ゴブリンが使っていた武器だな」
「弱いモンスターでも確定ドロップじゃないんですね」
「その点だけは厳しいんだよ。まぁ、ボスモンスターからの宝箱のドロップに関しては他のダンジョンと同様に確定だから安心だ」
「それなら確かに安心ですね」
「棍棒はどうします?」
「放置でいいだろう。このダンジョンのドロップアイテムは暫く放置していると勝手に消えるから気にする必要はない」
ただの木の棍棒は放置して追跡を再開する。
追跡を再開して間もなく、とある大樹の根元で身を守るように魔法障壁を張ったまま倒れている血塗れの探索者を発見した。
気配は感じるので死んでいるわけではないようだ。
追跡に使っていた【光狼人化】を解除すると、念のため周囲を警戒しながら探索者の元へと近付いていった。
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