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第三章
第百二十五話 煉獄ノ王
◆◇◆◇◆◇
宝物庫を守る2体のボスモンスターの片方を倒した俺は、もう一方のボスモンスターと戦闘中のリリア達と合流した。
「お待たせ」
「クロヤさん! 何ですか、そのカッコいい翼は!?」
「スキルの力だよ」
魔法を放って一息ついていたリリアに話し掛けると、そんな興奮しているような言葉が返ってきた。
そういえば、この黒翼のことは言ってなかったな。
常時体力を消費し続ける【堕天化】を解くと、頭上の黒い光輪と背中の黒翼が消滅する。
自然回復力を上回って体力を消耗させていたスキルを解除したことで、失われた体力が回復し出した。
A++スキルである【不滅聖核】には、体力と魔力の回復力を促進する効果がある。
この効果だけでも素晴らしいスキルだが、体力と魔力が減少すればするほど回復力が高まる効果まであった。
ユニークスキルとも呼称され、複数の異なる能力を内包しているSランク以上のスキル、そのスキルに単独で匹敵するA++ランクスキルなだけあって、ただ回復力を促進するだけのスキルではなかった。
このスキルの存在があるのも、使用コストの重い堕天形態:神ノ雷光を使うことを決断した理由の一つだ。
「エリー。体力を回復させてくれ」
「あ、クロヤ。戻ってきてたのね。『上級治癒』」
マリヤのサポートをしていて俺が戻ったことに気付いていなかったエリスから回復魔法を使ってもらう。
失った体力を一気に回復させると、その体力の一部を異能【万物変換】の第1層能力【魔生変換】で魔力へと変換する。
これで体力も魔力も7割まで回復できたので、俺も戦闘に参加するため前へと出る。
魔法金属製の全身鎧を身に付けている〈青生霊鎧の氷凍巨人スカジャダ〉は、その20メートル級の巨体と金属鎧からも分かるように耐久型のボスモンスターだ。
盾役のマリヤ、攻撃役のリリア、回復役のエリスという布陣で挑んでもらったが、実質的な火力担当はリリアのみなのも相まって、スカジャダの体力はまだ半分ほど残っていることが〈月神の賢眼〉で分かっている。
「俺も前衛での攻撃に参加するから、2人も引き続き頼む」
「分かりました」
「分かったわ」
俺が倒したボスモンスター〈堕ちた炎熱の精霊イラダム〉は霊体系のモンスターなので物理的な攻撃が効き難かったが、スカジャダはそうではないので使える手段に制限は殆どない。
なので、彼女達の支援のもとに俺が攻撃に集中すれば、スカジャダが耐久型であってもすぐに倒し切ることができるはずだ。
「氷の巨人か。なら、手に入れたばかりのスキルを試させてもらおう」
【光狼人化】への変身時に生み出せる攻防一体の球体型具現体〈光王珠〉を4つ全て具現化させると、それらを1つにしてから対巨人用に巨大な両刃斧を作り出す。
すぐ傍で浮遊する身の丈以上のサイズの両刃斧を手に取ると、先ほど手に入れたA++スキル【煉獄ノ王】を発動させた。
「黒い炎、か。まさに地獄の炎だな」
白銀の狼人の身体と両刃斧に宿った黒炎が俺を害することはない。
だが、俺以外の存在は焼き尽くすため周りに人がいる状況で使うには注意が必要だ。
発動した途端、その熱量から周辺の地面を覆っていた氷が瞬時に水蒸気へと昇華した。
ただの氷ならまだしも、ボスモンスターの魔力を内包した特殊な氷が、水という液体の状態を経て蒸発せずに、気体の水蒸気へと一気に昇華したことからも、この炎の危険性が窺える。
やはり、リリア達から離れてから発動させたのは正解だったな。
「マリヤ! ボスから離れろッ!」
「リーダーッ!?」
巨人のスカジャダよりも上方へと空中を駆け上がりながらマリヤへ声掛けをする。
俺の姿に気付いたマリヤが後ろに飛び退く。
スカジャダから離れたのを確認しながら降下する。
迎撃のために振り上げられたスカジャダの巨大な拳に向けて、黒炎付きの両刃斧を振り下ろす。
B+ランクスキル【身体強化】で身体能力を強化して膂力を更に上げ、Bランクスキル【強魔撃】とC+ランクスキル【剛撃】で斧撃の威力を増大させる。
そこへAランクスキル【不動反撃】も使い、拳撃との衝突の際に生じた衝撃を跳ね返し、これも斧撃へと重ね掛けした。
結果、振り上げられたスカジャダの拳に亀裂が入り、その裂け目に沿うように黒炎が纏わり付いていった。
「グァアアアーーッ!?」
「まだまだ」
両刃斧の刃と接する拳を基点にして前方へ一回転する。
【空間機動】も駆使して体勢を素早く立て直すと、両刃斧を振り被る。
「【光王ノ武戯】──第三王型〈殺戮の光王槍〉」
4つの光王珠で構成されていた巨大な両刃斧から1つの光王珠が分離する。
残った3つの光王珠は形状を変え、燃えるような色合いの穂先を備えた紅金色の槍と化した。
その穂先に【煉獄ノ王】の黒炎も付加すると、スカジャダの頭部の天辺から股下に向けてアラドヴァルを振り抜いた。
スカジャダの氷の巨体を左右真っ二つにする黒炎の軌跡が走る。
その軌跡から弾けるように、スカジャダの全身へと一瞬で黒炎が燃え広がった。
「オ、ガァ!? グゥ、オァア、アアアーーッ!!」
黒炎に巻かれて暴れるスカジャダから距離を取ると、全員で遠距離攻撃を行う。
駄目推しで【混沌魔手】による特殊属性魔力〈混沌〉の魔力弾を撃ち続け、スカジャダに〈混乱〉や〈自失〉などの状態異常を付与していく。
ボスモンスターなので抵抗されやすいが、そこは【耐性貫通】と数でカバーする。
再使用可能時間の終わっている【堕天の枷】も発動させ、スカジャダの行動を阻害しながら遠距離攻撃を続けていった。
それから数十秒後、スカジャダの体力が底を尽いたようで、黒炎の中で巨体が崩れていくのが見えた。
耐久型ボスモンスターなだけあって総攻撃でも中々死ななかったが、それも漸く終わった。
全体攻撃を封じるために部位破壊をしていなければもっと厄介だっただろうな。
── スキル【魔喰ノ精霊王】が発動します。
──筋力値が30ポイント増大します。
──耐久値が40ポイント増大します。
──精神値が15ポイント増大します。
──体力値が44ポイント増大します。
──魔力値が20ポイント増大します。
──スキル【氷禍の拳】を獲得しました。
──スキル【氷獄崩冠】を獲得しました。
──スキル【巨人の膂力】を獲得しました。
──スキル【氷獄の徒】を獲得しました。
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