万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

文字の大きさ
148 / 165
第四章

第百四十六話 ランク測定



「──エ、S級ですッ!! S級判定の覚醒者が現れました!」


 探索者協会のロビーからリポーターの声が聞こえてくる。
 密室というわけではないが、同じ屋内とはいえロビーから離れているランク測定室の中の声を拾うあたり、何かしらのスキルを使っているのだろう。


「王級、いえ、今後はS級でしたか。S級探索者認定された覚醒者は協会のホームページで公開されるそうですが、だからといって測定室内の音をロビーから盗み聞きできるのは問題だと思いますよ」

「も、申し訳ありません。その、他のS級の方からも同じようなご意見をいただきまして、測定室周辺の改装が決まったのが昨日でして……」

「そうでしたか。それなら、もう少し日を置いて測定に来るべきでしたね」


 続いて聞こえてくるロビーにいる人々の騒めきに耳を傾けつつ、申し訳なさそうな顔の協会の職員の案内でランク測定室から別室へと移動する。
 別室ではS級探索者が受けられる特権と義務について説明を受けた。
 基本的には回帰前の未来と同じ内容で、協会が所有する探索者用施設を格安で利用できたり、協会直下のアイテム取引所を利用する際に課される税の一部が免除されるなどの特権が付与される。
 義務の方はアビス発生時に、そのアビスの内外で起きる問題の解決に尽力するといった内容だった。
 内容的にはアビス発生時に大型ギルドが協会からブレイク阻止の協力を求められる場合の個人版と言えるだろう。
 だが、どこのギルドにも属していないため、アビスの内外に関わらず問題解決に動くとなると、他所のギルドの指揮下に入る可能性が高いという問題があった。


外神とがみさんは何処かのギルドに所属するつもりはありますか?」

「特に考えていませんが……S級ともなるとギルドを作った方がいいんでしょうか?」

「厳密には決まっていませんが、現在までにS級判定を受けた国内の方々は皆さん何処かのギルドに所属していますね。協会としましても、S級探索者の方がギルドに所属してくださった方が、何かしらの問題解決に協力を求める際に所在の確認などがスムーズに行えます」

「確かに、個人やパーティー単位よりもギルド単位の方が協会も管理がしやすいでしょうね」

「……」


 俺の言葉に対して、この支部でS級探索者への説明を担当している職員は何も言わなかった。
 冷や汗を流している担当者から視線を外して、手元の資料に目を通す。


「ギルドか……仮に作る場合は協会に一報入れればいいんですね?」

「はい。事前にご一報いただければ、ギルドのオフィスに使える不動産や建設会社をご紹介できます。探索者用のトレーニングルームを作られるなら、特殊な建設技術が必要です。その技術者を有するところは限られていますが、協会を通すと優先的に担当してくださいますよ」

「なるほど。これも特権ということですか」

「左様でございます」


 まぁ、今のところギルドを作る利点は薄いから、その特権を使うことは無いだろうな。
 それから幾つかの説明を聞いた後に、用意された複数枚の紙に記入を行なってからS級探索者用のIDカードを受け取った。
 最後にもう一度S級探索者の特権について確認を取ってから部屋を後にした。


「では、さっそく特権を使わせてもらうか」


 部屋を出てすぐの廊下で、異能【万物変換コンバート】の第7層能力【座標変換】を発動させた。

 S級の特権の一つに、ダンジョン外で使用を制限されている一部のスキルやマジックアイテムの能力の使用制限の緩和というものがある。
 この使用を制限されているスキルや能力とは、覚醒者ではない一般人がいるダンジョンの外で使用すると犯罪行為に使えてしまう類いの力のことを指す。
 一例を挙げると、透明化するスキルや能力などがそれにあたる。
 こういった力はいくらでも犯罪行為に使えるため、ダンジョン外の公共の場で使用した場合、状況次第では逮捕される可能性があった。
 だが、このS級探索者の特権によってダンジョン外でも公に使用することが許可されるようになった。

 事前に該当する力を所持していることを協会に届け出る必要があったりなど条件はあるが、以前よりも周りの目を気にせず力を使える点は間違いなく利点だろう。
 転移能力もそういったダンジョン外での使用を制限されている力の一つであるため、異能の力で転移が使えることを申告し、すぐに用意された書類にもサインをした。
 おかげで部屋を出てすぐに転移を行うことができ、ロビーで待ち構えている人々に捕まるのを回避できたというわけだ。


「ただいま、っと。何処からでもすぐに帰宅できるのは、転移の良いところだよな」


 ランク測定を実施している探索者協会支部の中で最も近いのが市内の支部だったとはいえ、自宅から徒歩数分の距離というほど近くはない。
 それだけの移動距離があると、ロビーから尾けてくる者もいただろう。
 探索者協会のサイトでS級探索者の顔が公開されるのは、特権を行使することもあって仕方ないと諦めがつくが、家バレだけは出来る限り避けたい。
 遅かれ早かれバレるだろうが、S級探索者になったその日にバレるのは流石に御免被りたかった。


「ダンジョンの等級測定も順次行われているけど、S級ならどのランクのダンジョンでも入場できるから関係ないしな。俺がパーティーリーダーならA級のリリア達も一緒に入場できるけど、何処のダンジョンに行くかな……」


 資源ダンジョン〈紅果の森〉でまた権果探しをするのも悪くないが、S級判定を受けた俺の動きは世間から追われるだろうし、権果の存在が明るみになるのが早まりかねない。
 ランク測定が終わるまでダンジョンに潜らずに休養していて身体が鈍ってるから、個人的には新しく手に入れた力のテストも兼ねて身体を動かせるダンジョンがいいな。
 そのあたりのことも考えつつ、リリア達と次のダンジョンについて相談するとしよう。




 
 
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンのある生活《スマホ片手にレベルアップ》

盾乃あに
ファンタジー
進藤タクマは25歳、彼女にフラれて同棲中の家を追い出され、新しい部屋を借りたがそこにはキッチンに見知らぬ扉が付いていた。床下収納だと思って開けたらそこは始まりのダンジョンだった。  ダンジョンを攻略する自衛隊、タクマは部屋を譲り新しい部屋に引っ越すが、そこにもダンジョンが……  始まりのダンジョンを攻略することになったタクマ。    さぁ、ダンジョン攻略のはじまりだ。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

俺のレベルが常人では到達不可の領域にある件について ~全ユーザーレベル上限999の中俺だけレベル100億いった~

仮実谷 望
ファンタジー
ダンジョンが当たり前のようにある世界になって3年の月日が流れてずっとダンジョンに入りたいと願っていた青年が自宅にダンジョンが出現する。自宅の押し入れにダンジョンが出現する中、冷静に青年はダンジョンを攻略する。そして自分だけがレベル上限を突破してレベルが無尽蔵に上がり続けてしまう。そうしていづれは最強への探索者として覚醒する青年なのであった。

新世機生のアポストル 〜Restart with Lost Relic〜

黒城白爵
ファンタジー
 異界から突如出現したモンスターによって、古き世界は終わりを告げた。  新たな世界の到来から長い年月が経ち、人類は世界各地に人類生存圏〈コロニー〉を築いて生き残っていた。  旧人類、新人類、コロニー企業、モンスター、魔力、旧文明遺跡、異文明遺跡……etc。  そんな様々な物が溢れ、廃れていく世界で生きていた若きベテランハンターのベリエルは、とある依頼で負った怪我の治療費によって一文無しになってしまう。  命あっての物種、だが金が無ければ何も始まらない。  泣く泣く知り合いから金を借りてマイナススタートを切ることになったベリエルは、依頼で危険なコロニーの外へと向かい、とある遺物を発見する……。  

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

俺の家に異世界ファンタジーガチャが来た結果→現実世界で最強に ~極大に増えていくスキルの数が膨大になったので現実世界で無双します~

仮実谷 望
ファンタジー
ガチャを廻したいからそんな理由で謎の異世界ガチャを買った主人公はガチャを廻して自分を鍛えて、最強に至る。現実世界で最強になった主人公は難事件やトラブルを解決する。敵の襲来から世界を守るたった一人の最強が誕生した。そしてガチャの真の仕組みに気付く主人公はさらに仲間と共に最強へと至る物語。ダンジョンに挑戦して仲間たちと共に最強へと至る道。 ガチャを廻しまくり次第に世界最強の人物になっていた。 ガチャ好きすぎて書いてしまった。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。