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第一章
第十七話 エリアボス
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地下にあるアリ系モンスターの巣の中の気配の数が、当初感じられた数の1割を切った頃。
突然、大きな気配を発するモンスターが索敵範囲内に入ってきた。
その気配がやって来たのが地下の方だったことから、このモンスターが【気配察知】の有効範囲外である巣の奥にいた個体であることは明らかだ。
おそらくはアリ系モンスター達のボスだろう。
【気配察知】はあくまでも人やモンスターが発する気配を察知するスキルであるため、地下に広がる巣の全体像までは分からない。
だが、今の状況から巣の奥から地上へと向かって来ているモンスターが巣の主であるのは間違いないはずだ。
「また奇襲攻撃を使うか」
〈隠者の祈り〉の【気配希薄】を発動させてから木の上に登って待機していると、間もなく巣の出入り口を封鎖していた木の根を突き破りながら1体のモンスターが姿を現した。
全高3メートルほどの巨大なアリといった見た目をしたモンスターであり、即座に同化させたアーティファクト〈月神の賢眼〉によると〈女王魔蟻ベラス〉という名前らしい。
個体名があることからも普通のモンスターではなく、ネームドモンスターに分類されるボスモンスターであるようだ。
「キィエエァァッ!!」
「ボスは叫ぶんだな」
そんなどうでもいいことを考えながら木の上から飛び降りる。
ネームドモンスターは基本的に同じ種族の名無しよりも強く、そのボスモンスターともなれば更に強い。
また、ダンジョンによっては討伐するとアーティファクトが出現する〈ダンジョンボス〉以外にも、〈エリアボス〉と呼ばれる中ボスのようなボスモンスターが存在する。
エリアボスは他に同族がいない唯一無二のモンスターでもない限りは、ネームドモンスターであることが殆どだ。
ダンジョンボスを倒したらアーティファクトが出現するように、エリアボスを倒した場合はマジックアイテムが入った宝箱が確定で出現するため、このベラスとかいうクイーンアントには期待できる。
前世で得た情報の中にはネームドであるクイーンアントの情報は存在せず、おそらくは情報が秘匿されていたのだろう。
他のダンジョンの中には、クイーンアントが存在しないアリ系モンスターの巣もあるため、特に気にしていなかった。
予定外の強敵であるため、確実にダメージを通すべく、〈宝納の指環〉の収納空間から戦利品である大剣を取り出した。
その大剣の切っ先を地上に向けてから落下していき、【剛撃】を発動させながらベラスの胴体の上へと突撃する。
「ギキィエェアアァァ!?」
「チッ、硬いな」
大剣の半ばほどまでしか刺さらなかったことに舌打ちしつつ、大剣を通してベラスに魔力を注ぎ込んでいく。
──異能【万物変換】を発動します。
──魔力属性を〈無〉から〈毒〉へと変換します。
──魔力属性の変換に成功しました。
俺には前世の知識がある。
その知識の中には他の覚醒者達についての情報もあり、そこには一部の者達が使う特殊な属性の魔力についての情報もあった。
この毒属性魔力は、とある毒使いの覚醒者が使っていた魔力属性であり、直接見たことがある──認識がある──魔力属性であるため第3層能力【属性変換】にて再現することができた。
「くっ、暴れるなッ」
背中に大剣が刺さった痛みか、毒属性魔力による苦しみかは分からないが、ベラスがその巨体を激しく振り回しながら暴れ始めた。
これまでに使ったことのある〈雷〉や〈破壊〉といった魔力属性に変換することも考えたが、この巨体にどこまで効果があるか見当がつかなかったため、配下のアリ達には毒が効いたことから〈毒〉の魔力属性を選んだ。
クラス〈破壊者〉を取得した際に取得特典として得た【耐性貫通】のスキルがあるので、どの属性を選んでも効果はあるだろう。
だが、費用対効果と倒した後の素材価値の観点からも毒属性魔力がマシだと判断した。
とはいえ、この毒属性魔力のみでベラスを倒すつもりはなかった。
「う、うお、おおっ!? 落ち、てたまるかッ!」
あまりもの暴れっぷりに振り落とされそうになるのを、アーティファクト〈支配の王環〉の念動力を使って大剣ごと俺の身体をベラスの背中へと押さえつける。
更に【植物支配】を発動させて周囲の草木を操り、暴れるベラスの身体を拘束させる。
暫くして、ベラスが毒属性魔力で弱体化したことで動きが緩慢になったのを確認すると、大剣の柄を握るのとは逆の手で収納空間から戦利品の長剣を取り出した。
その長剣を振るい、ベラスの頭部と胴体を繋ぐ境目を両断すべく何度も斬りつけた。
大剣が突き刺さっている甲殻部分ほど硬くはないが、それでも中々斬り裂けなかったため、長剣の刃を纏う魔力を破壊属性の魔力へと変換した。
ベラスの体内を侵すための毒属性魔力に続いて、頭部を斬り落とすための破壊属性魔力まで使用したことで魔力が尽きた。
第1層能力【魔生変換】で生命力を魔力に変換してから攻撃を継続する。
第2層能力【彼我変換】を使って生命力と魔力を奪えばいいのだろうが、格上から奪える量は微々たるものだ。
加えて、両手それぞれで別属性の魔力を操りながら、草木を操ってベラスを拘束し、念動力で身体を固定化しつつ剣を振るい、更には生命力と魔力も奪う作業を同時に行うような余力は俺にはなかった。
「全く、もどかしい、な!」
鬱憤を晴らすように、より強く破壊属性の魔力を込めてから長剣を振るうと、漸くベラスの頭部を斬り落とすことができた。
今のステータスと装備でボスモンスターを倒せるか微妙だったのでこんな倒し方になってしまったが、まぁ、終わり良ければ全て良しだよな。
「はぁ、疲れた。思ったよりしぶとかったな」
ボスモンスターを倒して一息ついていると、巣の中から地上に上がってくる数体のアリ系モンスターの気配を察知した。
しかも、同じタイミングで巣へと戻ってくるアリ系モンスターの気配も感じられた。
どうやら、まだまだ休むことはできないようだな。
いつの間にか近くに出現していた宝箱をそのまま収納空間へ収納すると、両手に〈八咫烏の三翅刀〉を持ち、新手のアリ系モンスター達を待ち構えた。
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