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第一章
第四十五話 クエストと覚悟
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「──どうでしょう? 似合いますか?」
「似合うと思うぞ」
「本当ですか! 良かったです」
魔法で生み出した水の鏡を使って全身を確認していたリリアが、俺に感想を求めてきたので素直の言葉を返しておいた。
ファッションに関心はないが、少なくとも変ではないはずだ。
そもそもファッション云々というよりも、探索者としての装備という認識なのでそこまで気にする必要はないだろう。
まぁ、それはそれこれはこれ、というのは分かるため口には出したりはしないけど。
○魔煌狐の羽衣
等級:遺物級。
とあるダンジョンで産出された上着型マジックアイテム。
・【魔法錬操】……使用する魔法の出力を強化する。消費する魔力量に変化はない。
・【五尾の守り】……装着者に対する認識外からの攻撃を最大で5回防御する障壁を自動展開する。防御できるダメージ上限あり。消費した防御回数は、1回あたり1時間で復活する。
リリアが新たに身に付けているのは、エリアボスの〈魔煌五尾狐サイラ〉を討伐したことで出現した宝箱からドロップしたマジックアイテムだ。
見た目はアイボリーに近い白っぽい色合いのカーディガンなので、普段使いをしていても違和感はないだろう。
明らかに女性用の装備だったのと、魔法使い用の装備らしい能力だったため悩むことなくリリアに譲った。
「んじゃ、ボスをアイテム化するぞ」
〈三獣領域〉で初めて確認されたエリアボスであるため、その素材の価値はかなりのモノだろう。
だが、つい最近ダンジョン攻略で目立ったばっかりなので素材を売却するのは止めておいた。
まぁ、ボス素材を売って得られる大金の代わりにマジックアイテムは得られるので、損をすることがないだけマシだな。
──アーティファクト〈貪欲の聖杯〉の【貪欲の手】が発動しました。
──対象物を財宝へ変異させることが可能です。
──変異先の財宝を選択してください。
──財宝が選択されました。
──対象物はマジックアイテム〈狐幻魔刀サイラ〉へと変異しました。
○狐幻魔刀サイラ
等級:叙事級。
とあるアーティファクトで生み出された刀型マジックアイテム。
・【魔煌気刃】……所持する魔法スキルの属性と同じ属性を有するオーラを刀身に宿すことができる。
・【幻魔の空蝉】……スキルや魔法の標的になった際に、当アイテム使用者の幻を生み出して回避する。
・【五煌刃尾】……実体のある幻の刀を周囲に5つ具現化する。幻刀を自律行動させるか思考操作するかを選べる。
サイラの巨体が消え去った後には一振りの刀があった。
選択できる財宝の中には他の武器種だけでなく防具やら装身具などもあったが、無難に刀剣を選択した。
防具は作ってもらったばかりの女王蟻の魔蟲装具セットがあるので選ぶ理由はなく、装身具もコレだと思うような惹かれるモノがなかったため選ばなかった。
武器に関しても既に白霊剣オルトレールがあるが、オルトレールとサイラでは得意な戦法が異なるので持て余すことはないだろう。
「綺麗な刀ですね」
「そうだな。せっかくだから帰り道はコレを使、っと敵みたいだな」
○クエスト『略奪者達を倒せ』
アーティファクトを狙う覚醒者達がダンジョン内に入ってきました。
略奪者達を全て討伐し、アーティファクトを守ってください。
対象となる略奪者の現在位置は〈広域マップ〉に表示されます。
⚫︎全て討伐
→倒した対象が持つ力の一部が異能所持者に変換されます。
・スキル【???】
・スキル【???】
・スキル【???】
・スキル【???】
・各種能力値ポイント+5
〈システム〉からのクエストは久しぶりだな。
記憶が確かなら上級覚醒者になってからは初めてだが、以前あった似たようなクエストの時よりも便利になりつつ不親切になっていた。
クエスト対象の敵の位置が〈システム〉の追加機能である〈広域マップ〉に表示されるのは有り難いが、代わりにクエスト成功報酬から敵のステータスを予測することが出来なくなっていた。
いや、まだ敵の姿が全く見えないほどに遠くにいるタイミングでのクエスト表示なのが理由かもしれないので、一概に代わりとも言えないか。
「敵ですか」
「まだ遠くにいるけどな。異能からの警告によれば、狙いはアーティファクトのようだ」
俺の発言を受けて警戒態勢をとるリリアを落ち着かせるように追加情報を告げた。
一人一人の力量は不明だが数は10人以上で、どうやら複数のグループに分かれてダンジョンに入って来ているみたいだ。
「10人以上ですか……」
「まだ距離はあるから、今ならリリアは撤退できるぞ」
「クロヤさんは?」
「俺は此処で迎え討つ。狙いが俺が持つアーティファクトなら、今逃げても変わりないだろうからな。アーティファクトと契約してるのは俺だというのはテレビで明かしたから、リリアの方には向かわないはずだ」
とはいえ、リリアだけを先に帰す場合は、安全のために他の覚醒者達が大勢いる場所で分かれた方がいいだろう。
人目があるから、略奪者達もわざわざリリアを狙ったりはしないはず……たぶん。
「……私も戦います」
「気持ちは嬉しいが、ほぼ確実に殺し合いになるぞ。アーティファクトなどの有用性の高いマジックアイテムを狙った殺人行為は珍しくないからな」
前世では今の時期だと、世間は2度目以降のアーティファクトの再契約がどれほど難しいかが分かっていなかった。
その所為でアーティファクトを狙った犯罪が世界中で多発していたため、ダンジョン攻略後にアーティファクト狙いで襲われるのは簡単に予想できた。
俺は前世でも現世でも対人戦闘による命の奪い合いは経験済みだから別に構わないのだが、リリアはそうではない。
そういった事態が起きたらリリアは逃すつもりだったが、どうやら彼女も此処に残るらしい。
「確かに人を討つ自信はありませんが、それでも私の能力だったらクロヤさんのお手伝いぐらいはできると思います」
「……本当にいいんだな?」
「覚悟の上です」
「……分かった。じゃあ、手伝ってくれ。正直言って敵の数が想定よりも多いからな。リリアの力があると非常に助かる」
「はい! 任せてください!」
ダンジョン攻略にリリアを巻き込んだことを少し後悔していたが、彼女自身が受け入れているならばもう何も言うまい。
こうなったら、2人で協力して全ての敵を倒し生き残るまでだ。
〈広域マップ〉で略奪者達の現在位置と数を確認しつつ、迎撃態勢を整えるべく俺達も行動を開始した。
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*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
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