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第二章
第六十三話 魔力石
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第2部隊との合流後、アビス攻略を再開した。
二手に分かれていた攻略隊が元に戻ったことにより、ガーベラギルドは大型ギルドならではの数的余裕を取り戻した。
その一方で、先に進むに連れて空間を満たす高い魔力濃度によって体調を崩す中級覚醒者が増えていっていた。
アビス深部の空間に満ちる高魔力に対して、何の対策も無しに耐えられるようになるのは上級覚醒者からだと言われている。
そして、大型ギルドには多くの上級覚醒者が所属しており、このこともアビス攻略が大型ギルドによって行われる理由でもあった。
「魔力に溺れている彼らには悪いけど、外気魔力が取り放題な点だけは最高よね」
「そうですね。そろそろ黒字ですか?」
「今収集している分でちょうど黒字かな。人的損失を抜きにすればだけど、ボスに挑む前に赤字は脱せられそうよ」
レイカ先輩の視線の先では、パッと見は冷蔵庫に似た見た目の機械が複数並んでいた。
あれは〈魔力製錬機〉と呼ばれる機械であり、大気中に漂う魔力を収集し、〈魔力石〉と呼ばれる一部のダンジョンで採取できる魔力資源を人工的に生成することができる装置だ。
アビスの深部ほどの魔力濃度でなければ中々魔力石が生成されないので、ダンジョンで使われることは殆どない。
機械自体が高額なのもあって、この機械を所持しているのはアビス攻略を実行でき、魔力製錬機を購入できるほどの資金力がある大型ギルドぐらいなものだ。
ここに到達するまで、小休止の時間の度に魔力製錬機を使用しており、高値で売れる魔力石が大量に生成されていた。
本来ならば、ボスモンスターを倒すことで出現するアーティファクトやモンスター素材、あとは名声ぐらいがアビス攻略によって得られる報酬だった。
今回のアビス攻略に合わせてガーベラギルドは魔力製錬機を購入しており、その購入費用も含めて無事に元が取れたようで何よりだ。
「あとは最後のボス戦でどれだけ被害を抑えられるか、ですね」
「ええ。これ以上死者は出したくないけど厳しいかもしれないわね。中にいるボスの強さが扉越しにも分かるわ。クロヤ君の推測した通りS級と考えて良さそうね」
俺達がいる場所から少し離れたところにある大扉。
その扉の先から発せられる気配はA級の括りではない。
多くのアビスのボスモンスターはA+級だが、そのA+級でもないことは回帰前の経験からも明らかだ。
「前の休憩時に話し合ったように、最低限の戦力として残す3人以外の全ての上級覚醒者達と高レベルの中級覚醒者達のみでボスに挑むわ」
「はい。作戦に変更は?」
「無いわ。ただ、相手の能力次第で変更するから、その時は臨機応変に対応してね」
「分かりました……いよいよですね」
「ええ、いよいよね」
魔力製錬機による魔力石生成が完了した音が次々と鳴っていく。
ボス戦前に生成されたのは個人携帯できる分では最も大きな魔力石だ。
魔力石の魔力は、覚醒者がスキルや魔法などを使用する際に消費される体内の内気魔力の代わりに使用することができる。
そのため、最後のボス戦に参加する全員に予備魔力として支給されることになっていた。
俺にも支給されるのだが、俺にはそれとは別に巨大な魔力石も支給されていた。
「うちの魔力製錬機で生成できる魔力石の中でも最大サイズのモノを用意したけど、問題なく使えそう?」
「……大丈夫そうです。作戦通りに使えます」
「それは良かった。じゃあ、その時が来たらお願いね」
片手で持つのが難しいほどに巨大な人工魔力石に触れて問題ないことを確かめると、その全てを〈宝納の指環〉の収納空間に収納していった。
これで最後の準備も完了だ。
「これよりアビスのボスと思われるモンスターとの戦いに移るわ。ボス戦に参加する者以外はここで待機。残る者達はここで退路の確保をお願い。海外では、ボス戦中にモンスターの新手が出現して挟撃された事例があるから決して油断しないように。いいわね?」
「「「分かりました!」」」
居残り組である3人の上級覚醒者と多数の中級覚醒者からの返事に頷きを返すと、レイカ先輩がボス戦参加組に向き直る。
「必ずボスを倒してアビスを消滅させるわよ!」
「「「おお!」」」
俺達へ掛ける言葉は非常にシンプルなものだった。
居残り組とは違って、俺達はボスモンスターを倒すことだけを考えればいいのだから、このシンプルさは最良だと言えるだろう。
居残り組の魔法使い系クラス持ちから様々な強化支援が付与されて、準備が整った俺達は遂にボスモンスターがいる空間へと足を踏み入れた。
これまでに通ってきた空間の中でも最大の広さの部屋の中央には、1体の巨大なモンスターがいた。
黄金色の獅子の身体と頭部を主体に、その左右に黒きドラゴンの頭部と悪魔のような山羊の頭部、美しい翡翠色である以外は猛禽類に似ている一対の翼、先端に三つ目の眼を持つ蛇の頭がある尻尾。
S級モンスター〈混幻魔煌獣王オグリティカス〉。
それが〈月神の賢眼〉にて明らかになった、このアビスの心臓部であるボスモンスターの名前だった。
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