万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第六十四話 アビスのボス 前編

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 ◆◇◆◇◆◇


 会敵したアビスのボス〈混幻魔煌獣王キマイラロードオグリティカス〉の第一声は、攻撃と共に放たれた。


「ッ!? 避けろッ!!」

「GLUOOOOーーッ!!」


 重厚感のある雄叫びと共に中央の黄金獅子の頭部が放ったブレスが、俺達がいるボス部屋の入り口へとあっという間に到達する。
 〈月神の賢眼〉の先読み能力による警告があっても躱わすのはギリギリで、避けるのが間に合わず2人がブレスにより消滅してしまった。
 魔法で時間を止めようとしたが、魔法が構築される前にブレスに呑まれてしまい間に合わなかった。

 ブレスが突き抜けていった入り口の先に視線を向け、気配を探る。
 予めボス戦による戦いの余波が室外にまで及ぶことは懸念していたため、ボス部屋の目の前には居残り組は待機していなかった。
 そのおかげもあって外の方には被害は出ていなかった。

 俺と同じように外の気配を探っていたマキナが全員に聞こえるように声を張り上げる。


「外の団員は無事です!」

「分かった! クロヤ君ッ!」

「真ん中の獅子と翼はブレス以外は遠近の物理攻撃系スキルと威圧系スキルですッ! 羽根を弾丸みたいに飛ばしてくるから注意を! 山羊頭は闇風雷炎の魔法持ち! くっ!? ドラゴンは、魔法は使いませんが、ブレスをはじめとしたドラゴン系のスキルは使ってきますから、獅子を強化してくるから気を付けてくださいッ! あと尻尾の蛇は毒と麻痺の魔眼持ちだから要注意ですッ!」


 レイカ先輩の声に応えて〈月神の賢眼〉によるオグリティカスの鑑定結果を簡潔に叫んでいく。
 全員に敵の情報を周知させている最中に、オグリティカスが背中の翼を羽ばたかせて【翅弾】スキルを使用してきた。
 近くにいるリリアとガーベラギルドの魔法使いが追加の防御魔法を展開しようとしているが、ここは防御ではなく回避するところだ。


「失礼!」

「キャッ!?」

「クロヤさん!?」

「あっぶな!」


 2人を咄嗟に両脇に抱えて飛び退くと、2人がいた場所を翡翠色の無数の弾丸が通過していった。
 徐々に減ってきたが未だ続く弾幕を躱していきつつ、2人に声を掛ける。


「悪いな。防御が間に合いそうになかったんでね」

「いえ、ありがとうございます」

「助かりました。あの威力と数だと今展開している分では耐えられませんでした」

「だろうな。ほら、あそこ」


 両脇に抱えている2人を促してボス部屋の一角に視線を向けさせると、そこには片腕を失い身体の各部を負傷した魔法使いを必死になって守り続けている長谷部クンがいた。
 あの【翅弾】の威力だと、防御力の低い能力値構成ビルドの魔法使いは急所に当たったら一撃で終わりそうだな。
 救助に向かうか、と考えていると、少し離れたところで攻撃を躱していたレイカ先輩がスキルを発動させる声が聞こえてきた。


「【氷城の軍勢グレイシャー・レギオン】」


 レイカ先輩を中心にボス部屋に冷気が吹き荒れる。
 その冷気と魔力が物質化し、数瞬後にはレイカ先輩の周囲に魔力の氷で作られた大量の氷の兵士達が出現した。
 王級覚醒者であるレイカ先輩のクラスは〈氷河の女帝グレイシャー・エンプレス〉。
 上級覚醒者になった時に得た〈女帝〉のクラスとの繋がりが感じられるこのクラスを取得した際に、自動的に獲得したクラススキルの1つが【氷城の軍勢グレイシャー・レギオン】だと聞いている。
 規模と汎用性に優れているスキルだが、燃費はそこまで良くはないらしく、今回のように魔力版外部バッテリーみたいな人工魔力石がなければ大規模展開は難しいそうだ。

 頑丈そうな分厚い氷の大盾を構えた氷の兵士達が、団員達を守るべく駆け足で移動していく。
 オグリティカスの【翅弾】にも耐えられる氷の大盾の陰に隠れて俺達3人も移動する。


「ふぅ。あ、お前はッ!」

「ハイハイ、長谷部クン。ちょっと邪魔だから退こうか」

「えっ、あ、ちょっ」


 氷の兵士が来て一息吐いていた長谷部クンが何か言おうとしていたので、無理矢理退かすことで黙らせた。
 片腕の欠損以外もボロボロな魔法使い系の上級覚醒者に対して『身体再生リジェネレイト』の魔法を行使する。
 今ここにいる魔法使いの中で、こういった回復治療系の魔法が使える【聖光魔法】のスキルを持つのは俺しかいない。
 他にも数名いるのだが、そのうちの1人は最初のブレス攻撃で死んでしまっているため、回復要員の数に余裕はなかった。


「た、助かった。感謝する」

「どういたしまして。それじゃあ、俺達は別に動くから、長谷部クンはこっちに向かってる団員の人達と頑張ってくれ」

「分かっている……気を付けろよ」

「え、なんか、長谷部クンに言われると何か背筋がゾワリと……」

「うるせぇッ!! 行くなら早く行きやがれ!」


 男のツンデレは取り扱いしていないのに長谷部クンが妙なことを言うから寒気がしたぜ。
 きっとこの寒気は周りが氷に囲まれていることだけが理由ではないはずだ。


「うーん、タイクロ、いやクロタイ……やっぱりちょっとナイですね」


 気になる──でも触れたくはない──ことを呟いているリリアを連れて、氷の兵士達を壁にしながらボス部屋を横切っていく。
 氷の壁の向こう側から響いてくる轟音を聞きつつ、気配を頼りにレイカ先輩の元へと移動した。


「お待たせしました。状況は?」

「ボスが獅子の身体による近接攻撃主体に動きが変わったわ。マキナとサブマスター達が正面でボスの気を引いているうちに、私が氷の騎士達で尻尾の排除を試みているところよ」


 レイカ先輩がいる場所からオグリティカスの方を見ると、マキナ達が氷の兵士のサポートを受けながら攻撃しているのが見えた。
 そこから離れた場所では、氷の兵士よりも性能の高い氷の騎士が数体、オグリティカスの蛇の尻尾と戦っていた。
 非生物である氷の騎士ならば蛇の尻尾の状態異常攻撃は効かないという判断のようだ。
 またいつ翼から羽根が飛ばされるか不安だが……先に優先すべきは蛇の尻尾だろう。
 そう判断すると、レイカ先輩に声を掛けた。


 

 

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