万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵

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第二章

第六十五話 アビスのボス 中編

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「──氷の騎士がマニュアル操作なようですけど、尻尾の破壊を優先しているからですか?」

「ええ。毒と麻痺の力がある蛇の尻尾はさっさと破壊しておきたいから、速く動かせるマニュアル操作よ」


 やはりそうか。
 術者の負担を考えると尻尾の方にいる氷の騎士以外の人形達は全て自動行動オートだろう。
 レイカ先輩の負担を減らすという意味でも先に対処する必要がある。
 元より俺の役目は遊撃なので、その役目を果たすとしよう。
 

「だったら、俺も尻尾を攻撃します」

「お願い」

「リリアは先輩の護衛と正面で戦う者達のサポートを頼む。ボスのヘイトを稼ぎ過ぎないように気を付けろよ」

「分かりました」


 レイカ先輩から聞きたいことを聞いた後、リリアへ指示を出す。
 初手のブレス攻撃からの【翅弾】の弾幕により、ボス戦参加組は分断されている。
 マキナ達一部の前衛は作戦通りにボスへの近接戦を開始できているが、後衛はまだ復帰できておらず前衛へのサポートは不十分だった。
 レイカ先輩の氷人形達がいるおかげで正面は今は保っている。
 だが、様子見をしているのか、今は動きが見えないドラゴン頭と山羊頭が能力を使い出したら一気に形勢は傾くだろう。
 それまでに厄介な能力を持つ三つ目蛇の尻尾を取り除く必要があった。

 逸る気持ちを抑えつつ、三つ目蛇の尻尾と氷の騎士達の戦いを注視する。
 ボスであるオグリティカスへの攻撃準備を済ませると、タイミングを見計らって異能【万物変換コンバート】の第7層能力【座標変換】を発動させた。
 三つ目蛇の尻尾が黄金獅子の胴体から伸び切り、即時の対応が難しいタイミングでの尻尾の付け根付近へと転移。
 使うのは手数と特殊性に秀でた〈狐幻魔刀サイラ〉ではなく、威力に秀でた〈白霊剣オルトレール〉。
 第3層能力【属性変換】で生み出した神聖属性魔力でオルトレールの能力【白聖霊起】の発動条件を満たし、身体能力を超強化させている。
 転移後は、モンスターという魔性への特効を持つオーラを剣身より発する【破魔剣気】を追加で発動することで攻撃力を強化した。


「ッ!?」

「反応が早いな。だが、もう遅い」


 振り下ろした白銀の剣刃が、俺の胴体よりも太い直径の三つ目蛇の尻尾を斬り落とす。
 身体能力の超強化に魔性特効を重ねてもなお感じられた強い抵抗感から、オグリティカスの耐久性の高さが察せられる。
 この感じだと、狐幻魔刀サイラの攻撃力では表面を傷付けるので精一杯だろう。
 アビスのボスに相応しい防御力を持つオグリティカスを攻めるには、やはりオルトレールをメインにした方が良さそうだな。


「GhisyaAAaaーーッ!!」

「斬り落とされても自律行動ができるのか。凄い生命力だ」


 斬り落としたばかりの三つ目蛇の尻尾が、その蛇の見た目を裏切らない鎌首をもたげた体勢を取り、俺を凝視する。
 オグリティカスの尻尾だった三つ目蛇は、胴体から離れても能力が使えるようで、麻痺の魔眼の効果を持つ三つ目が妖しい魔力を発していた。
 そんな魔眼に臆さず距離を詰めるために駆け出すと、三つ目蛇の口から毒液が吐き出されてきた。
 その毒液を空中へ飛び上がることで躱し、【天脚】のスキル効果で空中を駆けて三つ目蛇の頭部へと肉迫し、オルトレールを横薙ぎに振るう。


「そんな状態でよく避ける」


 オグリティカスの黄金獅子の胴体と繋がっていた部分から少なくない血を流しながらも、機敏に動いて俺の攻撃を回避した三つ目蛇に感心していると、たった今吐き出した毒液から発生した煙が俺を襲った。
 毒液は揮発性が高いようで、瞬く間に液体から気体となった毒が俺を侵そうとしてくる。
 だが、この毒も先ほどの麻痺の魔眼も俺を状態異常にすることはできない。
 先日戦ったウーを倒すことで獲得した【幻想壊皮】の効果によって、俺に状態異常の類いは効かなかった。
 実際に喰らってみるまで確信はなかったが、元は異能の力かつ今はA +ランクのスキルなだけあって、S級ボスモンスターの状態異常攻撃すらも無力化できた。
 まぁ、状態異常特化のS級モンスターの状態異常攻撃まで防げる確証はないので、そういったモンスターと戦う時は気を付ける必要があるだろう。


「『加速化アクセル』」


 無属性魔法の『迅速化ヘイスト』以上に速く動くことができる時間魔法『加速化アクセル』を発動させる。
 転移による奇襲とも先ほどの動きとも異なる速さで三つ目蛇に近付くと、相手が反応する間もなくオルトレールを振るった。
 今度こそオルトレールの剣刃が三つ目蛇を斬り裂いていき、2度と動くことがないように斬り刻んでいった。


「これで良し。さて、次は」


 どの部位を破壊するか、という言葉を掻き消すほどの破壊音が背後で鳴り響く。
 振り返った先では、地面を掬い上げるようにして振るわれた爪撃によって、前衛陣が吹き飛ばされていた。
 振るわれたオグリティカスの前足の爪へと〈月神の賢眼〉の鑑定能力を向ける。
 これまでは前衛陣でも敵の物理攻撃を受け止めたり受け流したりできていたが、今のオグリティカスは【竜ノ爪ドラゴンクロー】という強化スキルを発動していた。
 名前の通りドラゴン系の強化スキルであり、行使したのは黄金獅子の頭部の左隣にあるドラゴンの頭部だ。

 攻撃力を強化するという単純でありながら強力なスキルによって、壁役でもあった前衛陣が崩壊した。
 幸いにも即死した者はいないようだが、〈月神の賢眼〉の先読み能力によってオグリティカスが彼らを追撃しようとしているのが分かった。
 前衛陣を守るように巨大な氷の壁が生成されるが、一撃で簡単に破壊された。
 続けて振るわれた一撃は、いち早く体勢を立て直したマキナが双剣で弾いて防いでいた。
 先ほどまでは温存していた【剣爛舞闘】が発動しており、あの状態ならば攻撃力が強化されたオグリティカスの爪撃ともやり合えるようだ。


「流石は〈剣聖〉クラスだな。分断されてた戦力も合流したか」


 マキナの存在と後衛から放たれる支援攻撃が増えたのを確認している間に息が整った。
 時間魔法『加速化アクセル』は強力だが、自らに掛かる時間経過速度のみを加速化させるこの魔法は、魔法解除後に使用時間に応じた負担が身体に襲い掛かる。
 極短い時間しか使っていないため息が乱れる程度で済んだが、今のレベルではあまり多用はできない。
 ここぞという時に使うべき魔法であることを再確認すると、次の標的であるドラゴンの頭部へと顔を向けた。

 

 
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