15 / 28
第十五話 車中の出来事
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
「──俺が最後だったか? 依頼を受けてきたディアボロだ。俺の合言葉は『栄光は我らが掴む』だ」
「……確認した。ディアボロだな。探索者等級はどのくらいだ?」
未発見遺跡の探索依頼の当日。
待ち合わせ場所に向かうと、そこには既に同じ依頼を受けた探索者達が集まっていた。
今回のような探索者協会を通さない依頼を受ける場合、俺は本業である協会を通した探索者活動への影響を考えて、変装した上で偽名を名乗っている。
依頼を直接斡旋したエイラは当然正体を知っているが、依頼者は依頼の話を回した先がエイラであることを知らないため、依頼者が俺の正体へと辿り着くことはない。
どういう仕組みで依頼のは俺も知らないが、エイラがそう言うならそうなのだろう。
偽名は以前から使っているディアボロを名乗り、変装に関しては先日捕縛した賞金首キンバットの身包みを剥いだ際に手に入れたマジックアイテムを使っている。
賞金首であるキンバットが自分の正体を隠すために常に持ち歩いていた変装アイテムで、見た目は目鼻口に穴が空いている白一色の仮面だ。
装着すると予め設定した顔と声に変化する上、着用者自身が外さないと外れないという、素晴らしいマジックアイテムだ。
着用中は持続的に魔力を消費するが、微々たる量なので気にする必要はない。
「探索者ランクは2級。活動経験はそれなりにある」
変装アイテム〈無垢の白面〉で地味な顔と特徴のない平坦な声に偽っているが、力量に関しては偽らずに正直に話す。
力量を偽って申告した所為で依頼を失敗しては元も子もないからだ。
「そうか。よろしく、ディアボロ。俺が今回の遺跡探索隊のリーダーであるレイジ・フレングだ。ここに来たということは、事前に転送した契約書に同意したと看做すが、間違いないな?」
纏め役である顎髭金髪の男レイジ・フレングからの確認に対して頷きを返す。
「ああ。間違いない」
「では、確認の意味も込めて重要事項を口頭で言ってくれ」
「……1つ、遺跡探索中に見つけたアイテムは依頼主に帰属する。2つ、遺跡探索中は探索隊リーダーであるレイジ・フレングの決定に従う。3つ、上記2つに違反した者は遺跡探索を阻む障害と看做して、探索隊を追放、或いは敵として排除する。以上だ」
「よろしい。記憶力が良いようだな。これで全員が揃ったことを確認した。定刻より少し早いが、出発するとしよう。必要な物資は既に車積み込んでいるので全員乗り込め」
レイジの号令に従って探索隊のメンバーが大型装甲車両に乗り込んでいく。
探索隊のメンバーは全部で32人。
リーダーであるレイジ、依頼を受けた者が俺含めて14人、レイジの護衛が2人、3台の車両の運転手が3人、遺跡探索中の車両と野営地の警備が12人いる。
更に野営地の警備用に地上タイプの無人兵器を6機も連れてきており、金の掛け具合から依頼主の本気が窺える。
1台の大型装甲車両の荷台に依頼を受けた14人全員が乗り込むと、すぐに車が動き出した。
目的地まで暫く掛かるそうなので、今のうちに軽く寝ておこうかな。
「ねぇねぇ。お兄さん」
「……なんだ?」
そろそろ寝れそうというタイミングで横に座る女が声を掛けてきた。
肌の露出の多い格好をした20代ほどの外見をした長身の美女で、種族は新人類の1種である鬼人族だ。
額からは2本の紅い角が生えており、種族的に強力な身体能力を有しているので強化服を着ていないのだろう。
身に纏っている装備からは強い魔力を感じるので、おそらくはマジックアイテムだろう。
1つ1つの効果は分からないが、少なくとも刀型のマジックアイテムを用いて戦う姿であることは分かった。
綺麗な長い黒髪に整った容姿に加えて、悩ましい身体を惜しげもなく見せつける蠱惑的な格好をしているが、その姿に魅惑されたりはしない。
非常に眼福な女ではあるが、普段とは異なる地味な顔立ちを崩さず、興味の無さそうな表情を維持した。
「お兄さんの名前のディアボロって、確か悪魔を意味する名前の1つだよね。もしかして偽名?」
「そうだ。お前は?」
「あ、私はね、アザカ・サリーティスっていうんだ。さて、この名前は本名でしょうか、偽名でしょうか?」
「どちらでもいい。俺に迷惑をかけなければな」
「ふーん。クールなんだね。ま、そこは探索を開始してからお楽しみに。あ、迷惑をかけるなって、もしかして今の状況のことを言ってるの?」
「……」
その通りだ、という言葉を飲み込み、これ以上構われないように目を閉じて寝たフリをする。
このアザカとやらも気付いているはずだが、それを無視して変わらず俺に話しかけてくる。
「ねぇねぇ。これまでどんな依頼を受けてきたの? ねぇ、ってば──」
「おい、ウルセーぞデカ女ッ! 少し黙ってろや!」
しつこく俺に絡んでいるアザカの声が耳障りだったのか、反対側に座っているスキンヘッドの男が声を荒げてきた。
ウザ絡みをしてくるアザカが鬱陶しかったのは事実だが、声のボリュームだけで言えばこのスキンヘッドの方が煩かった。
周りに座っている他の者達も顔を顰めており、スキンヘッドの男へ非難するような視線を向けていた。
そのことに気付かないスキンヘッドの男は更に声を張り上げるのだが……。
「娼婦みたいな格好してんなら大人しく色街でガッ!?」
一瞬何かが視界を横切ると、スキンヘッドの男が大人しくなった。
スキンヘッドの男を気絶させたのはアザカで、自分の武器である刀を鞘に納めたまま素早く振るい、男の顎先を強打したのだ。
今の一瞬の動きからアザカの戦闘技量が非常に高いことが理解できた。
「はい、これで静かになったねぇ。それで話の続きなんだけど」
今の出来事で目を開けた俺の顔をアザカが覗き込んでくる。
何故こんなに俺に絡んでくるんだろうか?
理由の分からない現状に溜め息を吐きたい気持ちになりつつ、これ以上の犠牲者を出さないためにアザカの相手をすることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
僕だけレベルダウンな件〜敵を倒せば倒すほど弱くなるので、目立たずスローライフを目指します〜
小林一咲
ファンタジー
まったく数奇な人生である。
僕の名前は橋本 善。
正真正銘の日本人だが、今は異世界にいる。
理由なんてわかるはずがない。
死んだのか、はたまた何かの召喚に巻き込まれたのか。
僕には固有スキルがあった。
それは、スキル【レベルダウン】。
魔物を倒し、経験値を得るほどレベルやステータスがさがるというものだ。
だから僕は戦わない。
安心安全のスローライフを目指すんだ!!
氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!
本条蒼依
ファンタジー
氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。
死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。
大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる