23 / 28
第二十三話 荒野での捜索
しおりを挟む◆◇◆◇◆◇
探索者協会を通さない未発見遺跡探索の非正規依頼を終えてから1週間が経った。
コロニーへ帰還してからは、酷使した身体の休養のために探索者活動は休んでいた。
休養期間中に毎日食って寝てを繰り返していたおかげで、遺跡探索で大量に消費した機神粒子の数は、元通りになるどころか探索前を上回るほどにまで回復している。
この1週間の食事に掛かった金額は、大体150万エィンほど。
記憶違いとかではなく、本当に食費だけで150万エィンもの大金が消えていったのだ。
「……口座情報は嘘を付かない」
端末に表示された口座情報を見て黄昏つつ、今日も外出用の非常食である栄養バーを作るべく、食料合成機を稼働させる。
依頼主が報酬を支払ってくれるのが早かったおかげで一文無しは避けられたが、逆を言えば手元に金がある所為で歯止めが効かなかったとも言える。
元々の依頼報酬200万エィンの大半が失われてしまったが、戦利品を売却した金と、依頼主からの追加報酬のおかげで、最終的には約180万エィンが残った。
メタトロンの基本能力の【改造】を上手く使えば装備の修理に出す必要が殆どないため、修理代によって180万エィンから減ることはなかった。
尤も、メタトロンによって改造された装備を他人が修理できるか不明だし、そこからメタトロンの存在が露呈する可能性も踏まえると、メタトロン謹製の改造装備を他人に預けるのはナシだ。
「栄養材も少なくなってきたな。行きに買うか帰りに買うか……行きに買うか」
帰りがいつになるか分からないので行きに買っていくとしよう。
これでまた金が減るな……。
メタトロン使用の代償に何度目か分からない涙を流すと、完成した栄養バーをメタトロンの【亜空庫】に収納し、各種装備品を装着していく。
機巧腕から生身の腕に戻っているため、前回に引き続き腕には改造手甲〈閃殻闘手〉を装備する。
偽装身分であるディアボロとの繋がりを避けるため、閃殻闘手に限らず特徴的な外観の装備品はメタトロンの【改造】でデザインを多少変更している。
先日の俺の姿を見て生きているのは、レイジに寡黙男、そしてアザカなど一部の者達だけだ。
アザカが言っていた通り、遺跡の近くで待機していた地上部隊は殆ど全滅していた。
俺達が地上に出てきた段階で半数を切っており、彼らを救うために戦ったのも、体内の機神粒子が数を減らした理由の一つだ。
思ったよりも生き残っていたので、念のため装備品の見た目は変えておいた方が良いだろう。
◆◇◆◇◆◇
「2級探索者ベリエル・アウターだな。コロニーの外に出る目的は?」
「常駐依頼の荒野のモンスター退治です。モンスター退治は探索者協会で依頼を受けています」
「探索者協会に照会する。少し待て」
「分かりました」
目の前の軍人が手元の端末を操作する間、彼の背後に佇む門を見上げる。
スラム街以外の各門には、門の守護と検問を担当する軍人部隊である門番部隊が常駐している。
コロニーの正規部隊である門番部隊の軍人達の装備は、軍から支給されているだけあって非常に質が良い。
だが、俺のような2級探索者ともなればベテランの領域であり、門番部隊所属の軍人達よりも稼ぐため、各種装備の質は俺の方が上だ。
改造前でも少し上ぐらいだったが、今の改造装備は間違いなく上だと断言できるほどには質が良い。
軍人に手渡した探索者IDで探索者協会に照会した情報と全身の装備から、軍人の彼からは畏敬の念を向けられているのを感じる。
命懸けの探索者業で大金を稼ぐ者は、この世界では強者と認められている。
目の前の彼のような現場の軍人達は、コロニーを守る立場故に高位の探索者の存在価値を正確に理解してくれる。
逆を言えば、1等エリアという内地で働くキャリア組の軍人の中には、探索者を野蛮な奴らと貶す者達も珍しくない。
なので、同じ軍人でも接するならば現場組の者達の方が気が楽だった。
「確認がとれました。通行を許可します。お気を付けて」
「ありがとう」
門を潜り、荒野に足を踏み入れてから探索者協会で借りた魔導二輪車に跨りアクセルを回す。
今回の荒野行きは、先日の未発見遺跡のシステムをハッキングした際に得た情報の中にあった他の遺跡の座標情報を確認するのが目的だ。
荒野のモンスター退治は小銭稼ぎと、本来の目的である遺跡捜索の痕跡を隠すために受注しておいた。
「先ずは近くにある既に発見されている遺跡で位置座標で情報の精度を確かめるか」
ハンドルを切った先の進路上にある遠くの岩陰から、肉食獣系のモンスター〈サンドレオパルド〉が姿を現した。
砂を操るスキルを持つモンスターであり、近距離で戦うと砂だらけにされてしまう面倒なモンスターだ。
魔導バイクを走らせたまま耳に付けたイヤーカフス型モンスター討伐記録機〈Mメモリア〉を起動させると、ホルスターからハイドラを引き抜き、1度だけ引き金を引く。
発射された魔力弾はサンドレオパルドの額を穿ち、一撃でサンドレオパルドを倒してみせた。
Mメモリアから小さな電子音が聞こえ、ちゃんとカウントされたのを確認すると、そのままサンドレオパルドの死体の横を走り抜ける。
有用な素材が取れるモンスターなら止まるが、そうでなければ死体はそのまま放置していく。
どうせ死体は他のモンスターが食べて処理するだろうから気にする必要はない。
「出来ればレアなモンスターで大金を稼ぎたいところだな」
借金返済のためにもレアモンスターとの遭遇を願いつつ、最初の遺跡へと魔導バイクを走らせた。
0
あなたにおすすめの小説
僕だけレベルダウンな件〜敵を倒せば倒すほど弱くなるので、目立たずスローライフを目指します〜
小林一咲
ファンタジー
まったく数奇な人生である。
僕の名前は橋本 善。
正真正銘の日本人だが、今は異世界にいる。
理由なんてわかるはずがない。
死んだのか、はたまた何かの召喚に巻き込まれたのか。
僕には固有スキルがあった。
それは、スキル【レベルダウン】。
魔物を倒し、経験値を得るほどレベルやステータスがさがるというものだ。
だから僕は戦わない。
安心安全のスローライフを目指すんだ!!
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
異世界配信中。幼馴染みに捨てられた俺に、神々(視聴者)がコメントしてくるんだが。
葉月
ファンタジー
コルネ村で、幼なじみであり恋人でもあったユリアナと、ささやかな幸福を分かち合って生きていたロイド。
だがある日、ユリアナは女神の愛子として目覚め、国王の命により王都へと連れ去られる。
突然、日常を奪われ、運命に引き裂かれたロイドは、抗う術も持たぬまま、否応なく大きな流れへと呑み込まれていく。
これは、奪われたものを取り戻すため、そして理不尽な運命に抗おうとする、一人の少年の物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
構造理解で始めるゼロからの文明開拓
TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。
適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。
だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――!
――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる