僕は理不尽女神によって異世界というところへ無理やり転送され困ってます

カプ

文字の大きさ
7 / 9

7話

しおりを挟む
アンコーラの突然の変貌に、僕は目を疑った。さっきまで村を破壊し、僕に牙をむいていた魔王幹部のアンコーラが、今ではピンク色のフリフリした服をまとい、まるでアイドルのようにキラキラした笑顔で「アンコーラちゃん」と名乗っている。しかも「ピクシーアンコーラ」って……何それ!?

「え、ちょっと待って!インフィア、これどういうこと!?」  
僕は慌てて隣に立つインフィアに尋ねた。彼女は相変わらず神聖なオーラをまとったまま、冷静に答える。  

「ふむ、これはオーナメントウィザードの『浄化の魔法』の効果でしょう。アンコーラの邪悪な心が洗い流され、純粋で無垢な存在に変わったのです。……ただ、少々やりすぎた感はありますね。」  

「やりすぎって……このキラキラ感、やりすぎどころじゃないよ!」  

目の前では、アンコーラちゃん(?)がくるくる回りながら「ピクシー!ピクシー!」と歌い踊っている。村人たちも呆気にとられて見守っている中、さっきのフードの男――オーナメントウィザードらしい彼――がドヤ顔で近づいてきた。  

「ふっ、これが俺の力だ。漆黒の竜ベルギアの浄化の炎は、どんな悪も純粋な輝きに変える!」  
彼はフードを外し、自信満々に胸を張った。見た目は意外と若い、20代前半くらいの男だったけど、目がやたらギラギラしていて、確かに「中二病」って感じが漂っている。  

「いや、すみませんでした!ありがとう、助かったよ!」  
僕はとりあえず礼を言いつつ、彼から借りた重い剣を返した。手に持つだけで腕がプルプルするような剣だったけど、なんかカッコよかったな……。  

「感謝はいい。だがな、冒険者よ。お前、さっきの戦いでまるで準備不足だったぞ。盾を落とす、仲間を呼ばず突っ込む、挙句に武器も持たず魔王幹部に挑むなんて、命がいくつあっても足りんぞ!」  
彼の言葉に、僕は思わず肩をすくめた。  

「うっ、確かにその通りなんだけど……急だったんだから仕方ないじゃん!」  

「ふん、言い訳は聞かん。次はお前もちゃんと準備して戦え。でなきゃ、このオーナメントツリーの村を守るのは俺だけでいいってことになるぞ!」  
そう言うと、彼はカッコよくマントを翻して去っていった。……いや、めっちゃカッコいいんだけど、なんでこんな村にこんな奴がいるんだよ!  

「ねえ、インフィア、この村ってほんと何なの?浄化されまくってるじゃん。」  
僕はインフィアにぼやいた。彼女は少し微笑んで答えた。  

「オーナメントツリーは特別な場所です。この村には古くから聖なる力が宿っており、悪を浄化し、調和をもたらす力があるのです。私もここで清められたからこそ、今の私があるのですよ。」  

「うーん、でもさ、アンコーラがこんな……ピクシーアンコーラになっちゃうなんて、ちょっとやりすぎじゃない?」  
僕は目の前で「ピクシー!ピクシー!」と跳ね回るアンコーラちゃんを見ながら言った。すると、彼女(?)が突然僕に近づいてきた。  

「ねえねえ!キミ、冒険者だよね?アンコーラちゃんと一緒に冒険しない?すっごく楽しいよ!ピクシーパワーでなんでもできちゃうんだから!」  
彼女はウインクしながら、僕の手を握ってきた。めっちゃ柔らかい手!でも、なんかこのテンション、頭痛くなりそう……。  

「えっと、ちょっと待って、アンコーラ……ちゃん?さっきまで村壊してたよね?その辺、どうなの?」  
僕が尋ねると、彼女はキョトンとした顔で首をかしげた。  

「え?壊してた?うーん、覚えてないな!でも、今はアンコーラちゃん、村のみんなと仲良くしたいな!ね、ね、一緒にケーキ食べに行こうよ!」  

「ケーキ!?」  
急に話が飛躍しすぎだろ!でも、村人たちが少しずつアンコーラちゃんの周りに集まってきて、彼女の無邪気さにほだされている様子が見えた。さっきまでパニックだった村が、なんだか和やかな雰囲気に変わっていく。  

「ふむ、浄化の力は予想以上の効果を発揮したようですね。」  
インフィアが静かに呟いた。  

「予想以上って……これ、魔王幹部がこんなキャラになっちゃって、魔王どうするんだろうね?」  
僕が苦笑いしながら言うと、インフィアは少し真剣な顔になった。  

「魔王のことは……まだわかりません。しかし、アンコーラがこうなった今、魔王の勢力にも何らかの影響があるはずです。あなた様も、これからもっと気を引き締めて冒険を続けてください。」  

「う、うん、わかったよ。とりあえず、村が助かってよかった……。」  
僕はホッと一息ついたけど、目の前で「ピクシーダンス」を踊り続けるアンコーラちゃんを見て、なんだか複雑な気持ちになった。  

その時、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた。  

「おーい!サキ!無事か!?」  

振り返ると、キョウスケ、シークラ、ミサキさんが息を切らして駆けてくる。どうやらギルドの外で何か別のトラブルに巻き込まれていたらしい。  

「サキ!何だよ、このピンクのやつ!敵か!?」  
キョウスケが剣を構えながらアンコーラちゃんを指さした。  

「いや、待て待て!これは、えっと……元アンコーラ!今はピクシーアンコーラ、らしい!」  
僕が慌てて説明すると、シークラが目を丸くした。  

「は!?魔王幹部がこんな……キラキラしたやつに!?サキ、お前何やったんだよ!?」  

「いや、僕じゃない!オーナメントウィザードってやつが……!」  
僕が必死に弁解していると、ミサキさんがクスクス笑いながら言った。  

「ふふ、サキ君らしいね。いつも何かしらハチャメチャな展開になるんだから。でも、村が無事でよかったよ。」  

「う、うん、まあね……。」  
僕は照れ笑いを浮かべつつ、インフィアとアンコーラちゃんを振り返った。インフィアは静かに微笑み、アンコーラちゃんは相変わらず「ピクシー!」と跳ね回っている。  

「さて、これからどうする?このピクシーアンコーラ、ほっとくわけにもいかないよね?」  
僕がみんなに尋ねると、インフィアが一歩前に出て答えた。  

「彼女をこのまま村に置いておくのは危険かもしれません。浄化されたとはいえ、魔王の力が完全に消えたわけではない可能性があります。サキ様、彼女を連れて冒険を続け、魔王の動向を探るのが良いかと。」  

「え、連れてくの!?このキラキラを!?」  
僕は思わず叫んだが、アンコーラちゃんが目を輝かせて飛びついてきた。  

「やった!アンコーラちゃん、冒険者キミと一緒に旅するの超楽しみ!ピクシーパワーでバッチリ守ってあげるよ!」  

「うわっ、ちょっと離れて!近い近い!」  

こうして、僕の冒険には新たに「ピクシーアンコーラ」が加わることになった。魔王の次の動きは?オーナメントウィザードの正体は?そして、インフィアの女神パワーはどこまで本物なのか?  

なんだか、ますますハチャメチャな旅になりそうな予感しかしない……!  

(続く?)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...