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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
十二話『裏切られない幸せ』
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「義孝さんは、たくさんの優しさを私にくれました」
腕に抱かれながら、花は頬を染める。もう何度も抱き合っているていうのに、やはり慣れることが出来ない。
「今日だって、こんなに深い愛情を私にくださいました」
指に輝く指に、目を潤ませる。
「花さんだから、です。他に抱きたいと思った女性はいません」
「嬉しいです。あの、義孝さん」
「何でしょう、花さん」
花はもじもじする。
「えと、指のサイズはいつ?」
「ああ、それはこうして」
義孝は指を絡めるように、手を繋ぐ。
「あ」
(それは、初夜でのこと)
「まぁ、これで」
ちょっと、ほのかに義孝が頰を染める。
「なんか、すごいです。私は分からないので」
「店に同じくらいの太さの模型の手がありまして、それに」
花はぽぽと頬を染めた。
「それに?」
「花さんに『私を忘れないで』と言われましたからね」
「そ、そんなこと、言いましたか?」
なんと、恥ずかしいことを言ったのか。
「忘れた日は、ありませんよ。花さんを思わない日は、ありませんでした。写真を見て、『今、どうしていますか?』と」
「ーーー私もです。写真で顔が見られれば、淋しくはないかと。でも、実際は寂しさが増すばかりでした。声が聞きたい、触って欲しいって。欲が増えて」
ぐす、と洟を鳴らす。
「だから、嬉しいです。無事に帰ってきてくれて」
「花さんは、欲がないですね」
義孝が微笑んだ。
「いえ、欲張りです!義孝さんと出逢って、願いがたくさん出来ました」
「ほう?例えば」
「内緒です。願いは口にすると、叶わなくなるんですよ」
ふふ、て花は笑う。
「義孝さんは何か、して欲しいことはありませんか?まあ、できるかは内容にもよりますけど?」
「私が花さんにして欲しいのは、不安があるなら話して欲しいという事ですね。まあ、だいたいは杞憂ですから」
「分かりました」
「私が浮気とか、芸者遊びとか、まずあり得ませんから」
「・・はい」
頬が熱い。
「まあ、ヤキモチを妬く花さんは、可愛いですが」
「う、可愛いですか?私は、義孝さんがヤキモチ妬くと、ドキドキしますよ?なんかこう、目が色っぽくて」
あー、それは・・・と義孝が、苦笑いする。
「あれは、欲情ですね。どうイジメようか、あれこれと妄想していますから」
「あ・・・、イジメる?」
ふるっ、と花が目を潤ませる。
「ええ、まだ足りていないみたいなので、どう教えようか」
額にチュと、口づける。
「考えるとね、ドキドキしますよ」
「私、充分足りています。愛情なら、いっぱいに・・・あふれるくらいに。いつも、お腹いっぱいに」
「私は足りません。いくら抱きしめても、足りません。花さんはMですから」
「え、Mって、なんですか」
「海軍には隠語がありまして、Mはモテる、という意味です」
「モテる?私が?」
「ええ、花さんは可愛いですから。それに、最近はめっきり綺麗になりましたからね。色気もありますから」
「綺麗?モテる?義孝さんの杞憂です。私はモテませんし、第一に・・・触って欲しいのも、抱きしめて欲しいのも、義孝さんだけですよ。私の心は、いつだって義孝さんだけを見てるんです。いつだって、義孝さんでいっぱいなんです」
大きな目を潤ませ、花が見つめる。
「今は好きという恋慕じゃなくて、『愛している』という言葉が、しっくりくるように思います。恋慕なんて、幼い感情はありません」
泣きそうに、花は顔を歪める。
「分かりました。ならば、イジメるのはやめましょう。ジタバタ照れる花さんも捨てがたいですが、今の表情の方が、ずっと」
「ずっと、なんですか?」
ふるふると、不安げに目を潤ませる花に、義孝は口づけた。
閉じた瞼から、涙が流れ落ちる。
「んぁ」
小さく、全身が震える花。
「こんなに反応が素直なんて、可愛いですね。そんな顔、他で見せては駄目ですよ」
「ぁ」
涙が、幾筋も流れ落ちる。
コクコクと、花が頷いた。
「可愛いなんて、義孝さんにだけ言われたいです」
義孝が、目を細める。花の大好きな笑顔だった。
✣✣✣◇◇◇✣✣✣
翌日、朝食のあと。
花と義孝は、自宅の周辺を歩いていた。
「あれは、小学校ですか」
「はい」
木造平屋建ての建物が見える。
「私の母校です」
花が微笑んだ。
「いい感じの学校ですね」
「はい」
二人で坂道を歩く。
「花さんがいた教室は?」
「あの、左から二番目です。一番左は理科室」
「なるほど」
二人で校庭を歩く。日曜日なので、誰もいない。
「ここ、避難場所だったんです。空襲は、ここに集まるはずだったんです」
花が俯く。
「でも、誰も来ませんでした。学級生は誰も」
「花さん」
「当たり前ですよね?皆は学徒動員だので街に出ていて、私は屋敷で使用人の仕事をしていて」
小さく震える肩を義孝が抱く。
「・・・せめて、皆に会いたかった!」
楽しい思い出が詰まる学び舎も、花を傷つける存在だ。花と義孝が立ち去ろうと歩き出した時、誰かが「花ちゃん?」と呼んだ。
「霧島花?」
花が立ち止まる。
ーーー花ちゃん!
振り返り、声の主に目を凝らす。
「佳代?」
「花ちゃん、私・・・柿原佳代」
杖を手にした女性が、歩いてくる。
ーーー花ちゃん!
涙が幾筋も、女性の頰を流れ落ちる。花も、女性に向かいながら、涙を零した。
「佳代、佳代!」
杖を投げ出し、走り出す。
「花ちゃん!」
「生きてた!」
しっかりと、抱きしめ合った。
腕に抱かれながら、花は頬を染める。もう何度も抱き合っているていうのに、やはり慣れることが出来ない。
「今日だって、こんなに深い愛情を私にくださいました」
指に輝く指に、目を潤ませる。
「花さんだから、です。他に抱きたいと思った女性はいません」
「嬉しいです。あの、義孝さん」
「何でしょう、花さん」
花はもじもじする。
「えと、指のサイズはいつ?」
「ああ、それはこうして」
義孝は指を絡めるように、手を繋ぐ。
「あ」
(それは、初夜でのこと)
「まぁ、これで」
ちょっと、ほのかに義孝が頰を染める。
「なんか、すごいです。私は分からないので」
「店に同じくらいの太さの模型の手がありまして、それに」
花はぽぽと頬を染めた。
「それに?」
「花さんに『私を忘れないで』と言われましたからね」
「そ、そんなこと、言いましたか?」
なんと、恥ずかしいことを言ったのか。
「忘れた日は、ありませんよ。花さんを思わない日は、ありませんでした。写真を見て、『今、どうしていますか?』と」
「ーーー私もです。写真で顔が見られれば、淋しくはないかと。でも、実際は寂しさが増すばかりでした。声が聞きたい、触って欲しいって。欲が増えて」
ぐす、と洟を鳴らす。
「だから、嬉しいです。無事に帰ってきてくれて」
「花さんは、欲がないですね」
義孝が微笑んだ。
「いえ、欲張りです!義孝さんと出逢って、願いがたくさん出来ました」
「ほう?例えば」
「内緒です。願いは口にすると、叶わなくなるんですよ」
ふふ、て花は笑う。
「義孝さんは何か、して欲しいことはありませんか?まあ、できるかは内容にもよりますけど?」
「私が花さんにして欲しいのは、不安があるなら話して欲しいという事ですね。まあ、だいたいは杞憂ですから」
「分かりました」
「私が浮気とか、芸者遊びとか、まずあり得ませんから」
「・・はい」
頬が熱い。
「まあ、ヤキモチを妬く花さんは、可愛いですが」
「う、可愛いですか?私は、義孝さんがヤキモチ妬くと、ドキドキしますよ?なんかこう、目が色っぽくて」
あー、それは・・・と義孝が、苦笑いする。
「あれは、欲情ですね。どうイジメようか、あれこれと妄想していますから」
「あ・・・、イジメる?」
ふるっ、と花が目を潤ませる。
「ええ、まだ足りていないみたいなので、どう教えようか」
額にチュと、口づける。
「考えるとね、ドキドキしますよ」
「私、充分足りています。愛情なら、いっぱいに・・・あふれるくらいに。いつも、お腹いっぱいに」
「私は足りません。いくら抱きしめても、足りません。花さんはMですから」
「え、Mって、なんですか」
「海軍には隠語がありまして、Mはモテる、という意味です」
「モテる?私が?」
「ええ、花さんは可愛いですから。それに、最近はめっきり綺麗になりましたからね。色気もありますから」
「綺麗?モテる?義孝さんの杞憂です。私はモテませんし、第一に・・・触って欲しいのも、抱きしめて欲しいのも、義孝さんだけですよ。私の心は、いつだって義孝さんだけを見てるんです。いつだって、義孝さんでいっぱいなんです」
大きな目を潤ませ、花が見つめる。
「今は好きという恋慕じゃなくて、『愛している』という言葉が、しっくりくるように思います。恋慕なんて、幼い感情はありません」
泣きそうに、花は顔を歪める。
「分かりました。ならば、イジメるのはやめましょう。ジタバタ照れる花さんも捨てがたいですが、今の表情の方が、ずっと」
「ずっと、なんですか?」
ふるふると、不安げに目を潤ませる花に、義孝は口づけた。
閉じた瞼から、涙が流れ落ちる。
「んぁ」
小さく、全身が震える花。
「こんなに反応が素直なんて、可愛いですね。そんな顔、他で見せては駄目ですよ」
「ぁ」
涙が、幾筋も流れ落ちる。
コクコクと、花が頷いた。
「可愛いなんて、義孝さんにだけ言われたいです」
義孝が、目を細める。花の大好きな笑顔だった。
✣✣✣◇◇◇✣✣✣
翌日、朝食のあと。
花と義孝は、自宅の周辺を歩いていた。
「あれは、小学校ですか」
「はい」
木造平屋建ての建物が見える。
「私の母校です」
花が微笑んだ。
「いい感じの学校ですね」
「はい」
二人で坂道を歩く。
「花さんがいた教室は?」
「あの、左から二番目です。一番左は理科室」
「なるほど」
二人で校庭を歩く。日曜日なので、誰もいない。
「ここ、避難場所だったんです。空襲は、ここに集まるはずだったんです」
花が俯く。
「でも、誰も来ませんでした。学級生は誰も」
「花さん」
「当たり前ですよね?皆は学徒動員だので街に出ていて、私は屋敷で使用人の仕事をしていて」
小さく震える肩を義孝が抱く。
「・・・せめて、皆に会いたかった!」
楽しい思い出が詰まる学び舎も、花を傷つける存在だ。花と義孝が立ち去ろうと歩き出した時、誰かが「花ちゃん?」と呼んだ。
「霧島花?」
花が立ち止まる。
ーーー花ちゃん!
振り返り、声の主に目を凝らす。
「佳代?」
「花ちゃん、私・・・柿原佳代」
杖を手にした女性が、歩いてくる。
ーーー花ちゃん!
涙が幾筋も、女性の頰を流れ落ちる。花も、女性に向かいながら、涙を零した。
「佳代、佳代!」
杖を投げ出し、走り出す。
「花ちゃん!」
「生きてた!」
しっかりと、抱きしめ合った。
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