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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(新婚編)
十三話『ケーキを二個』
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「花ちゃん」
「佳代、無事だった」
しゃくり上げる花の涙を、佳代は拭いてやる。
「花ちゃん、無事だった」
「佳代、どうしていたの」
「脚、折っちゃって。で、助けてくれた人がいて・・・この春に結婚したの」
ーーーおーい、佳代!
杖を拾い、青年が駆けてくる。
「あれ、旦那様」
「ふふ、あれ?」
「ふふ、また会えるね。私、脚が治ったみたい。走れたぁ」
「そだね」
また、顔がぐしゃぐしゃになる。ひしっと抱きしめ合った。
「ありがとう、佳代。生きていてくれて」
「花ちゃんも、無事でありがとう」
涙が止まらない。
あまりに多くの人が死んだ。
「あ、佳代。こちら、うちの旦那様の・・・義孝さん」
「はじめまして」
「・・・もしかして、軍人さん?」
「そうだよ。よく分かるね」
「だって、うちの旦那の弟も、海軍だもん」
「え?」
花が目をぱちくりさせる。
「もしや、弟さんは」
義孝が訊ねる。
「はい、白勢大志です」
「あ、なるほど」
「弟が可愛いがっていただいているようで、ありがとうございます」
え?と、花は交互に見る。
「花さん。彼は私の部屋掃除をしている、水兵のお兄さんです」
「あ、前に言っていた、機転の効く水兵さん?」
「はい。小回りの出来る有能な青年ですよ」
「ありがとうございます。弟からよく聞かされます。疾風のみんなが、優しいって。楽しく働いているみたいで」
「ふふ、隆さんね。目を細めて、手紙を読んでるのよ」
弟が大切にされている。
兄としては、嬉しい限りですと隆は答えた。
「ね、花ちゃん。また会える?」
「うん。あのね、美沙ちゃんも来てるんだよ」
「美沙も?会いたい!」
「近いうちに、三人で話そう」
思いがけず、旧友と再会して花はご機嫌だった。
「良かったですね、お友達と会えて」
「はい。もしかしたら、まだ無事な子もいるかも」
「ええ、きっといますよ」
来た道を歩きながら、花と義孝は商店街に向かう。夕食と朝食の食材を購入する為に、魚屋や肉屋を覗いた。
「今日は茸ご飯にしましょうか。あと、主菜は」
愉しげに、花は献立を口にする。
「楽しそうですね」
「はい」
「いつも、そんな風に献立を考えてくれていたのですか?」
義孝を振り返り、トクンと心臓が鼓動する。
「義孝さんこそ、いつもそんなに優しい目をして」
「好きな人を見るのに、怖い目をする人はいませんよ」
「じゃあ」
花はおそるおそる訊ねた。
「私も?私の義孝さんを見る目も、義孝さんに、優しいですか」
ふっ、と義孝が微笑んだ。
「ええ、優しいですよ。とても、幸せな眼差しです」
「良かったぁ」
ふわり、と花が微笑んだ。
「私、継母や義妹に嫌われていましたから。あ、あの二人は鹿江達にも冷たいですけど。冷たい眼差しがどんな感じかは、分かります」
井戸水が温く感じる、冷たい視線だと花が説明すると、義孝が吹き出した。
「たしかに、そんな感じでしたね」
「え、知ってるんですか」
「ええ、百貨店を出た時に多分・・義妹さんでしょうか?見てましたよ」
「え!?」
花が怯え、カタカタと震え出した。
「大丈夫ですか」
義孝が抱きしめる。
「聡美が・・・あの場所に?」
「ええ、なんとなく。あ、でも目が合うと逃げて行きましたよ」
「・・・そう、なんだ」
花にとって、どれほどの辛い時間だったのか、今の花で理解出来た。
(名前を聞いただけで、辺りを気にしていた。青ざめて、震えだした)
土蔵に閉じ込められ、食事を抜かれた。鹿江達が常にいたわけではないから、彼女達が目を離した時にだろうか。
「い、いないなら、いいです」
「大丈夫ですか」
「はい」
コクコクと頷く。
「主菜は何にしましょうか」
「そうですね。昨日は肉でしたから、今日は魚にしましょうか」
「魚ですね」
笑顔になる。
(痩せた身体、青白い顔。鹿江さん達の話によれば、継母達の仕打ちは虐待だな)
「じゃあ、きょうは鰈の煮付けにしましょうか。肉厚な切身を探しましょう」
るん、と鼻歌を歌いながら、魚屋に向かう。
食材を買い、自宅に向かう。
「そう言えば、霧島家は使用人の人達も、一緒に食事するんですね」
「はい。ご飯は大勢で食べる方が楽しいですし、温かいものを食べられます。父が亡くなってから、それが許されなくなりました」
「なるほど」
「でも、私には皆が家族ですから」
賑やかに、すぐ馴染んだ。
賑やかに話しながら、皆が食事する霧島家。以前と少し変わったのは、時東家のちゃぶ台と長い四角い卓が使われるようになったこと。
箱膳ではなく、同じ卓でますます賑やかな食卓になった。
「大皿におかずを盛り付けて、取り皿に好きに取り分けるなんて。義孝さんと出逢って、知った方法です。それも、楽しいなと」
「うちは、あれが普通です」
「皆も楽しいみたいで、ふふ。食の細くなっていた鹿江も、少し食べられるようになったんです。やっぱり、寂しかったみたいで」
「淋しいと、味が感じませんからね」
「はい。味気ないです。あ、だから?」
ふと、ラウンジのケーキを思い出す。
「なんですか?」
「え、えと」
「花さん」
「ごめんなさい、ケーキを二個食べましたぁ」
ぽぽ、と頰を染めた花に、義孝は微笑んだ。
「佳代、無事だった」
しゃくり上げる花の涙を、佳代は拭いてやる。
「花ちゃん、無事だった」
「佳代、どうしていたの」
「脚、折っちゃって。で、助けてくれた人がいて・・・この春に結婚したの」
ーーーおーい、佳代!
杖を拾い、青年が駆けてくる。
「あれ、旦那様」
「ふふ、あれ?」
「ふふ、また会えるね。私、脚が治ったみたい。走れたぁ」
「そだね」
また、顔がぐしゃぐしゃになる。ひしっと抱きしめ合った。
「ありがとう、佳代。生きていてくれて」
「花ちゃんも、無事でありがとう」
涙が止まらない。
あまりに多くの人が死んだ。
「あ、佳代。こちら、うちの旦那様の・・・義孝さん」
「はじめまして」
「・・・もしかして、軍人さん?」
「そうだよ。よく分かるね」
「だって、うちの旦那の弟も、海軍だもん」
「え?」
花が目をぱちくりさせる。
「もしや、弟さんは」
義孝が訊ねる。
「はい、白勢大志です」
「あ、なるほど」
「弟が可愛いがっていただいているようで、ありがとうございます」
え?と、花は交互に見る。
「花さん。彼は私の部屋掃除をしている、水兵のお兄さんです」
「あ、前に言っていた、機転の効く水兵さん?」
「はい。小回りの出来る有能な青年ですよ」
「ありがとうございます。弟からよく聞かされます。疾風のみんなが、優しいって。楽しく働いているみたいで」
「ふふ、隆さんね。目を細めて、手紙を読んでるのよ」
弟が大切にされている。
兄としては、嬉しい限りですと隆は答えた。
「ね、花ちゃん。また会える?」
「うん。あのね、美沙ちゃんも来てるんだよ」
「美沙も?会いたい!」
「近いうちに、三人で話そう」
思いがけず、旧友と再会して花はご機嫌だった。
「良かったですね、お友達と会えて」
「はい。もしかしたら、まだ無事な子もいるかも」
「ええ、きっといますよ」
来た道を歩きながら、花と義孝は商店街に向かう。夕食と朝食の食材を購入する為に、魚屋や肉屋を覗いた。
「今日は茸ご飯にしましょうか。あと、主菜は」
愉しげに、花は献立を口にする。
「楽しそうですね」
「はい」
「いつも、そんな風に献立を考えてくれていたのですか?」
義孝を振り返り、トクンと心臓が鼓動する。
「義孝さんこそ、いつもそんなに優しい目をして」
「好きな人を見るのに、怖い目をする人はいませんよ」
「じゃあ」
花はおそるおそる訊ねた。
「私も?私の義孝さんを見る目も、義孝さんに、優しいですか」
ふっ、と義孝が微笑んだ。
「ええ、優しいですよ。とても、幸せな眼差しです」
「良かったぁ」
ふわり、と花が微笑んだ。
「私、継母や義妹に嫌われていましたから。あ、あの二人は鹿江達にも冷たいですけど。冷たい眼差しがどんな感じかは、分かります」
井戸水が温く感じる、冷たい視線だと花が説明すると、義孝が吹き出した。
「たしかに、そんな感じでしたね」
「え、知ってるんですか」
「ええ、百貨店を出た時に多分・・義妹さんでしょうか?見てましたよ」
「え!?」
花が怯え、カタカタと震え出した。
「大丈夫ですか」
義孝が抱きしめる。
「聡美が・・・あの場所に?」
「ええ、なんとなく。あ、でも目が合うと逃げて行きましたよ」
「・・・そう、なんだ」
花にとって、どれほどの辛い時間だったのか、今の花で理解出来た。
(名前を聞いただけで、辺りを気にしていた。青ざめて、震えだした)
土蔵に閉じ込められ、食事を抜かれた。鹿江達が常にいたわけではないから、彼女達が目を離した時にだろうか。
「い、いないなら、いいです」
「大丈夫ですか」
「はい」
コクコクと頷く。
「主菜は何にしましょうか」
「そうですね。昨日は肉でしたから、今日は魚にしましょうか」
「魚ですね」
笑顔になる。
(痩せた身体、青白い顔。鹿江さん達の話によれば、継母達の仕打ちは虐待だな)
「じゃあ、きょうは鰈の煮付けにしましょうか。肉厚な切身を探しましょう」
るん、と鼻歌を歌いながら、魚屋に向かう。
食材を買い、自宅に向かう。
「そう言えば、霧島家は使用人の人達も、一緒に食事するんですね」
「はい。ご飯は大勢で食べる方が楽しいですし、温かいものを食べられます。父が亡くなってから、それが許されなくなりました」
「なるほど」
「でも、私には皆が家族ですから」
賑やかに、すぐ馴染んだ。
賑やかに話しながら、皆が食事する霧島家。以前と少し変わったのは、時東家のちゃぶ台と長い四角い卓が使われるようになったこと。
箱膳ではなく、同じ卓でますます賑やかな食卓になった。
「大皿におかずを盛り付けて、取り皿に好きに取り分けるなんて。義孝さんと出逢って、知った方法です。それも、楽しいなと」
「うちは、あれが普通です」
「皆も楽しいみたいで、ふふ。食の細くなっていた鹿江も、少し食べられるようになったんです。やっぱり、寂しかったみたいで」
「淋しいと、味が感じませんからね」
「はい。味気ないです。あ、だから?」
ふと、ラウンジのケーキを思い出す。
「なんですか?」
「え、えと」
「花さん」
「ごめんなさい、ケーキを二個食べましたぁ」
ぽぽ、と頰を染めた花に、義孝は微笑んだ。
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