身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻

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身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される(その後)

四話『また、春が来て』

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 寒い冬が終わった。

 商店街の街路樹が蕾をつけ始めた頃、義孝達はまた深雪に戻る。
 戦争で沈んだ艦の残骸や、凡そ世界に六万発は沈んでいるという機雷の撤去をする為に出港する。

「あの、花見をしませんか」
「花見ですか」
 朝食の席で、花が訊ねる。
「はい。次の休みが終われば、また深雪に戻るんですよね。皆でお弁当を持って」
「・・・・いいですね」
 義孝が笑顔を見せる。
「良かった。では、また献立を考えますね」
 花が笑顔になる。

   ✢✢✢◇◇✢✢✢
「はい、今日のお弁当です」
「ありがとうございます」
 毎日、花は弁当を詰める。
 義孝の健康を考えた、優しい味わいの惣菜の数々は全て、花が考えたもの。

 そして、海軍で・・・深雪で出される食事が格段に美味しくなったのは、花が監修した献立が未だに採用されているから。

「苦労した捕虜の方々に、美味しいご飯を・・・」
 海軍省に頼まれて、花はは毎日違うメニューが選べるくらいに、レシピをノートに書いた。

「美味い、これが艦長の奥さんが作る飯かぁ」
「艦長がベタ惚れするはずだな」
「可愛くて優しくて、料理上手なんて・・・男の夢を叶えた存在じゃん」
 
 軍令部に時々、花が届け物に来るので、多くの軍人が花に接する。優しい声、ほっとする人柄に誰もが頷いた。
「か、可愛い」
「癒やされるぅ」
「いいなぁ、艦長」
 と、誰もが頷いたのだった。

 ともあれ、こうして花見の日程は今週の日曜と決まったのである。
    ✢✢✢◇◇✢✢✢
「やっぱり、卵焼きは外せませんね」
「あと三種のおにぎり、魚のたまり醤油焼き」
「鶏肉のザンギ、菜花のお浸しで彩り添えて」
「筑前煮も作りますか?」
 お弁当の内容を、皆で考える。
 そんな時間も楽しい。

「ふふ、じゃあ・・この内容で決まりね」
「楽しみですね」
「楽しみです」
 内容は決まった。

    ✢✢✢◇◇◇✢✢✢

「おかえりなさいませ、義孝さん」
「ただいまかえりました、花さん」
 優しい声と笑顔。
 むず痒く感じていた二年前とは違い、義孝の胸は心地よい温かさに満たされる。
(幸せとは、こういう感覚を言うのだろうな。花さんがいて)
 ふと、三春を抱いた千代が姿を見せる。

「ほら、お父さんが帰ってきましたよ」
「ただいま、いい子だったか」
「とっても。よく眠って、お乳もよく吸うし・・・」
「でも、あんまり泣かないわね」
 千代が言った。

   ✢✢✢✢◇◇✢✢✢✢
「ホントに、よく眠りますね」
「はい。お陰で私も、寝不足にはなりません」
「孝行な娘ですね」
「はい」
 経験者の話では、夜泣きで寝不足は当たり前で。毎日がぐったりしてしまうとか。
「花さん」
「はい」
 花は目を閉じる。
「私、義孝さんに頬を撫でられるの、好きです。優しくて、安心します」
「花さんの肌はどこも、すべすべで、もちもちですね」
 口づけられ、頬を染める。
「ん」
「花」
「・・・だ、めです、三春が起きて・・・」
 ふるっ、と花が涙目になる。
「嫌、ですか?」 
「嫌と言う訳じゃ・・優しく、して?」
「わかりました」
 灯りが消えた。
(・・・この日、私達は一年ぶりに仲良くした)

「起きませんね」
 花が頬を紅くする。
「起きるかと、思ったんですが。気配すらしませんね」
「・・・っ」
 義孝が感心している。
 花は全身が恥ずかしさで、真っ赤に染まる。

「義孝さんは・・余裕が、あるんですね」
 ふるふる、花は涙を浮かべる。
「え?」
「私は何も考えられない、のに」

 最初は三春を起こしてしまうとか、色々と心配だったが。途中から、何も考えられなかった。

「余裕など、ありませんよ。あなたをあいてに。心外ですね」
 ちゅ、と軽く口づけられる。
「お腹、空かないんでしょうか?赤ん坊はしじゅう、御乳を欲しがると考えていましたが」
「ですね、ふふ」
 未だに、目を覚ます気配なく、すやすやと寝息を立てていた。

「あと、四日ですね」
 ふと、花が呟く。
「はい」
「機雷撤去は危険ではないのですか?」
「機械を使って、誘発して爆させるので大丈夫です」

 抱きしめる腕に、花が指先を触れさせる。小さくふるふる震える花に、義孝は抱きしめる力を強める。
「!」
「泣かないで。戦争に征くわけじゃない」
「はい」
 涙声の花。
「日本は二度と戦争はしません」
「・・・はいっ」
 グスッと、鼻を鳴らす。
 分かっていても不安で、淋しいのだ。
「必ず、帰ります」
「はい」
 花は頷いた。

   ❖❖❖◇◇◇❖❖❖

 翌朝、東京は全域が晴天だった。花達は弁当を手に、花見へとくり出す。
 花と義孝、千代が桐島邸に引っ越して・・・一年半が過ぎた。
「今年は三春ちゃん。来年・・再来年には、また家族は増えているかしら、ねぇ?」
 千代が花に、いたずらっぽく目配せして、花はふしゅーっと茹で上がる。

(・・・まさか、夕べしたのが分かってる?)
 あり得ない、とは思うが。 
 隣で義孝が「そうですね」と、顎を触る。
「まぁ、今は花さんが忙しいので、二人目からは要相談で」
 
 ぼぼんっ!

 花は泣きそうに、顔を歪めた。
 
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