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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋
三十話『愛おしい女』
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「あの、すみません」
可愛らしい声が訊ねた。
「はい?」
和俊が振り返ると、そこには清華がいた。
「すみません、仁南寺にはどう行けば」
「清華?」
「え―――和俊くん?」
なぜ、ここに。
清華は鳳邸から出られないはず、そう和俊の知る清華は離れから出してもらえないはずだった。
「清華、あんなに綺麗になって」
愛されて、女は美しくなる。
許嫁だからと、安心していた自分が悪いのだ。
「駄目だ。長谷川鏡弥を消すなんて」
昭三が言っていた、不穏な計画は確実に清華を不幸にする。
「全ては、僕が悪いんだ。美作を出る勇気のない、僕の弱さが」
止めなくては、昭三を止めなくては。
でも、どうして?
―――――
「おかえりなさい」
笑顔で清華が駆け寄る。
「ただいま」
鏡弥が弁当箱と、小さな巾着を渡す。
「土産だ」
「え?」
「ちょっと、外に行くことがあってな。買ってきた」
「ありがとうございます」
開けても?
清華が見つめる。
「ああ、構わない」
紐を緩め、清華が笑顔になる。
「金平糖だぁ」
色々な色が入った巾着に、清華が笑顔になる。
「ありがとうございます、鏡弥さん。金平糖、大好きなんです」
うっすらと瞳に涙が浮かぶ。
「大好きか、良かった」
「むかし、父がよく私と母に買ってくれました」
幸せな夢。
でも、悲しい夢で最後は終わる。
「鏡弥さん。あの日、両親が殺された時なんですけど。皇居では話せなかったことがあります」
「わかった、夕食の後に聞こうか」
「はい」
和え物、味噌汁、香の物に白米に煮魚。清華の作る食事は和洋折衷、毎日違うメニューが作れるほどに種類が豊富だ。
「君は料理が得意だが、いつ習った?この一年近く、同じ物が出た記憶がないが」
「料理長の田所さんが教えてくれました。レシピも、皆が書いてくれました」
「そうか」
「旦那様に美味しいご飯を作るのが、私の夢でした」
得意と褒めてくれたということは、美味しいということ。
清華は嬉しそうに笑った。
食事を済ませ、鏡弥が風呂に入る間に片付けを済ませる。
「清華、湯が冷めないうちに」
「はい」
湯に入り、清華は寝室に向かう。皇居では誰が聞いているか分からず、話すことが出来なかった。
「鏡弥さん」
「で、話って?」
「はい、あの日――父や母を殺した人の中に、私を見逃してくれた人がいました」
「え」
「私、首領の人に存在を知られてないと思います」
知っていれば、生きていないはずだ。
「晃嗣様は私の存在を伏せたと言いました。なら、私のことは一部のひとしか」
「なるほど、昭三ではないということか」
「あの人に、頬に傷はありませんでした」
「傷?」
「揉み合ううちに付いたんじゃないかと。父は御前自衛だったくらいですから」
あの傷は、簡単には消えないはずだ。
「わかった、その事も含めて父に調べてもらおう」
「はい」
鏡弥に口付けられる。
「ん」
「清華」
押し倒され、帯がほどかれる。
「あの、明かりを」
「ああ」
明かりが消され、部屋が暗くなり、清華は目を閉じた。
可愛らしい声が訊ねた。
「はい?」
和俊が振り返ると、そこには清華がいた。
「すみません、仁南寺にはどう行けば」
「清華?」
「え―――和俊くん?」
なぜ、ここに。
清華は鳳邸から出られないはず、そう和俊の知る清華は離れから出してもらえないはずだった。
「清華、あんなに綺麗になって」
愛されて、女は美しくなる。
許嫁だからと、安心していた自分が悪いのだ。
「駄目だ。長谷川鏡弥を消すなんて」
昭三が言っていた、不穏な計画は確実に清華を不幸にする。
「全ては、僕が悪いんだ。美作を出る勇気のない、僕の弱さが」
止めなくては、昭三を止めなくては。
でも、どうして?
―――――
「おかえりなさい」
笑顔で清華が駆け寄る。
「ただいま」
鏡弥が弁当箱と、小さな巾着を渡す。
「土産だ」
「え?」
「ちょっと、外に行くことがあってな。買ってきた」
「ありがとうございます」
開けても?
清華が見つめる。
「ああ、構わない」
紐を緩め、清華が笑顔になる。
「金平糖だぁ」
色々な色が入った巾着に、清華が笑顔になる。
「ありがとうございます、鏡弥さん。金平糖、大好きなんです」
うっすらと瞳に涙が浮かぶ。
「大好きか、良かった」
「むかし、父がよく私と母に買ってくれました」
幸せな夢。
でも、悲しい夢で最後は終わる。
「鏡弥さん。あの日、両親が殺された時なんですけど。皇居では話せなかったことがあります」
「わかった、夕食の後に聞こうか」
「はい」
和え物、味噌汁、香の物に白米に煮魚。清華の作る食事は和洋折衷、毎日違うメニューが作れるほどに種類が豊富だ。
「君は料理が得意だが、いつ習った?この一年近く、同じ物が出た記憶がないが」
「料理長の田所さんが教えてくれました。レシピも、皆が書いてくれました」
「そうか」
「旦那様に美味しいご飯を作るのが、私の夢でした」
得意と褒めてくれたということは、美味しいということ。
清華は嬉しそうに笑った。
食事を済ませ、鏡弥が風呂に入る間に片付けを済ませる。
「清華、湯が冷めないうちに」
「はい」
湯に入り、清華は寝室に向かう。皇居では誰が聞いているか分からず、話すことが出来なかった。
「鏡弥さん」
「で、話って?」
「はい、あの日――父や母を殺した人の中に、私を見逃してくれた人がいました」
「え」
「私、首領の人に存在を知られてないと思います」
知っていれば、生きていないはずだ。
「晃嗣様は私の存在を伏せたと言いました。なら、私のことは一部のひとしか」
「なるほど、昭三ではないということか」
「あの人に、頬に傷はありませんでした」
「傷?」
「揉み合ううちに付いたんじゃないかと。父は御前自衛だったくらいですから」
あの傷は、簡単には消えないはずだ。
「わかった、その事も含めて父に調べてもらおう」
「はい」
鏡弥に口付けられる。
「ん」
「清華」
押し倒され、帯がほどかれる。
「あの、明かりを」
「ああ」
明かりが消され、部屋が暗くなり、清華は目を閉じた。
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