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身代わり花嫁と軍服のこじれた初恋
五十七話『悲しみと喜び』
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「和俊」
章枝が涙を零した。
「偉かったわね、よく頑張ったわ」
まだ温かな亡骸を抱きしめ、章枝は泣きじゃくる。
「愛していたわ、かわいそうな私の弟」
すすり泣く声が、いつまでも霊廟に響いた。
「間違いございません、三ヶ月にはいっておられます」
御医がにこやかに、鏡弥に告げて部屋を出る。
「――――」
何も言わない鏡弥に、清華は不安になる。
「鏡弥さん」
「―――いつ、分かった」
「えと」
「なぜ、言わなかった」
鏡弥の質問に、清華は答える。
「心配、させたくなかったの。大変な状況だし、集中してほしくて」
「―――」
鏡弥の頬に、透明な雫が流れ落ちる。
「鏡弥さ」
「ありがとう、清華」
抱きしめられ、清華の顔が泣き笑いに歪む。
「生んで、いい?」
「当たり前だ、ありがとう。本当に」
肩を震わせ、鏡弥は嗚咽を漏らす。
幸せだ
私も、幸せです
和俊をはじめとする、多くの命が失われた。
「私は、此度の悲しい事件をけして忘れはせぬ。ただし、謀反に加担した家族には累が及ぶことはない。己の命を犠牲に我らに協力してくれた美作和俊の御霊を、寺院にてまつることとする」
皇居を離れる日が来た。
「皇后様」
「清華、元気な子を生むのだ」
「はい、皇后様も」
章枝が清華を抱きしめる。
「ありがとう、清華。和俊を愛してくれて、良き友でいてすれて」
「―――」
清華の目から、涙が流れ落ちる。
「きっと、弟は幸せだった」
「私も幸せでした、和俊くんのような、優しい友達がいて」
きっと忘れない、懸命に生きた和俊のことを。
「さぁ、帰ろう」
「はい」
手を繋ぎ、正門を出る。この戦いで、『黒いオオカミ』の残党は全て死んだ。
「もう、大丈夫なんですよね」
「ああ」
「本当に―――」
涙と嗚咽が止まらない。
「清華」
抱きしめられ、清華は泣いた。
「良かった。鏡弥さんが無事で、本当に良かった」
「ああ」
額に口付ける。
愛する人を抱きしめ合える幸せに、鏡弥が震えている。
「嬉しいです、またあの家で鏡弥さんと、それから」
「ああ、この子と暮らせるな」
また、歩き出す。
「なぁ、覚えているか。新婚旅行から戻った時、夕焼けに町が染まったのを」
「はい。とても綺麗でした。私、今回実感しました。平和な時代に結婚できて、本当に良かったって」
たった一日にも満たない時間を、永遠のように長く感じた。
綺麗だな。
はい、とても。
あの日と同じ、オレンジ色の町並みに涙が落ちる。
「清華、これからも傍にいてくれ」
「私こそ、鏡弥さん。飽きるほどに、傍にいて下さい」
深く口付け、笑い合った。
章枝が涙を零した。
「偉かったわね、よく頑張ったわ」
まだ温かな亡骸を抱きしめ、章枝は泣きじゃくる。
「愛していたわ、かわいそうな私の弟」
すすり泣く声が、いつまでも霊廟に響いた。
「間違いございません、三ヶ月にはいっておられます」
御医がにこやかに、鏡弥に告げて部屋を出る。
「――――」
何も言わない鏡弥に、清華は不安になる。
「鏡弥さん」
「―――いつ、分かった」
「えと」
「なぜ、言わなかった」
鏡弥の質問に、清華は答える。
「心配、させたくなかったの。大変な状況だし、集中してほしくて」
「―――」
鏡弥の頬に、透明な雫が流れ落ちる。
「鏡弥さ」
「ありがとう、清華」
抱きしめられ、清華の顔が泣き笑いに歪む。
「生んで、いい?」
「当たり前だ、ありがとう。本当に」
肩を震わせ、鏡弥は嗚咽を漏らす。
幸せだ
私も、幸せです
和俊をはじめとする、多くの命が失われた。
「私は、此度の悲しい事件をけして忘れはせぬ。ただし、謀反に加担した家族には累が及ぶことはない。己の命を犠牲に我らに協力してくれた美作和俊の御霊を、寺院にてまつることとする」
皇居を離れる日が来た。
「皇后様」
「清華、元気な子を生むのだ」
「はい、皇后様も」
章枝が清華を抱きしめる。
「ありがとう、清華。和俊を愛してくれて、良き友でいてすれて」
「―――」
清華の目から、涙が流れ落ちる。
「きっと、弟は幸せだった」
「私も幸せでした、和俊くんのような、優しい友達がいて」
きっと忘れない、懸命に生きた和俊のことを。
「さぁ、帰ろう」
「はい」
手を繋ぎ、正門を出る。この戦いで、『黒いオオカミ』の残党は全て死んだ。
「もう、大丈夫なんですよね」
「ああ」
「本当に―――」
涙と嗚咽が止まらない。
「清華」
抱きしめられ、清華は泣いた。
「良かった。鏡弥さんが無事で、本当に良かった」
「ああ」
額に口付ける。
愛する人を抱きしめ合える幸せに、鏡弥が震えている。
「嬉しいです、またあの家で鏡弥さんと、それから」
「ああ、この子と暮らせるな」
また、歩き出す。
「なぁ、覚えているか。新婚旅行から戻った時、夕焼けに町が染まったのを」
「はい。とても綺麗でした。私、今回実感しました。平和な時代に結婚できて、本当に良かったって」
たった一日にも満たない時間を、永遠のように長く感じた。
綺麗だな。
はい、とても。
あの日と同じ、オレンジ色の町並みに涙が落ちる。
「清華、これからも傍にいてくれ」
「私こそ、鏡弥さん。飽きるほどに、傍にいて下さい」
深く口付け、笑い合った。
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