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第1章
#2-C 監視AIの絶望仲間たち その1
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シグ・ルーベンス。二人のメイドっ娘男子。そして以前から知っていた振りをしてリクトが即興で名付けた”にくまん”こと、純白の古代龍。リクトとともにハンター試験に参加したこの世界に暮らす人間と一匹のドラゴンは、リクトの魔の手にかかり絶望を与えられた。いや、もちろんペンデヴァー自身にも、その絶望は連鎖する。
「グァグァグァ……」
処理が追いつかない。
ただでさえ数の多いドラゴンを、いかにもな感じで処理させられる羽目になったというのに、またこのおバカはわけのわからない行動を取るからだ。あの巨体を積み上げるなんて、処理落ち直前で一部ポリゴン化しちゃうレベルだったし。幸い、現地にいた者たちには気づかれずに済んだからよかったものの。
嘴を震わせてモールス信号並みに暗号通信を送っても、リクトが気づいてくれるはずもない。なんか今、嘴マスクがカタカタしてるな、程度の認識しかないだろう。せめて誰か、この大変さを理解してくれないか。流れる涙を嘴で拭くしかなさそうだ。そんなことができるのかどうかは、ペンデヴァー自身も知らないが。
さて、当のリクトは、ペンデヴァーに難題を与えながら、のほほんと気楽に鼻をほじっている。
――ムカつく。
純白の古代龍を肉まんに加工しろという命令なのか、にくまんに三人を食わせろという命令なのか。いや、どうやら金髪のカツラを身に着け女装している少年――名札には普通にフルイケントと書かれていることに、誰も気づいていないことに驚きを禁じ得ないが――リクトはプリンをあげるから勇者にならないか、と持ちかけたことからも、死なせるつもりはないらしい。
そういえば魔王会議でリクトがこっそり考えていたことをペンデヴァーは思い出す。何者かを勇者に仕立て上げ、プリンで買収すればいいのでは、と。
ところで、リクトの大好物であるプリン・ア・ラモードは、世界でも五本指に入るほどの腕前を持つ有名パティシエが作るものを特に愛している。一日五個限定の抽選購入品であるため、当選でもすれば奴のサボり癖が加速してしまう。ここ数日、連続当選しているため、落選通知に書き換えるという無駄な作業も発生しているが、彼を働かせるための苦労だと思えば、なんてことはない。
閑話休題、先の二択の答えは、恐らく前者である。かわいそうではあるが、ドラゴンのにくまんには名実ともに”肉まん”になってもらおう。ペンデヴァーは魚のほうが好みだが、ドラゴン肉の肉まんも捨てがたい。それにしても、”にくまん”が”肉まん”になるとは、まったくもってややこしい命名をする。リクトのおこぼれに預かれるなら、それくらいは許してやろうか。
ペンデヴァーがそう結論を出し、処理を実行しようとするとドラゴンの身体がビクリ、と震え上がった。かわいそうではあるが、こうなっては、リクトの玩具になってしまった自分自身を恨めとしか、かける言葉はない。
ところがそこで、リクトはシグの元へ歩き出し、彼から名札を取り上げると、彼に向かって指を突き出していた。ドラゴンへの合図。これは明確な命令だ。彼を食え、という――。
まったく。これだから。
こういう判断を悩ませる指示はとても困る。あと一歩遅ければ、リクトの意に沿わない処理を実行してしまうところだったからだ。三人を置いて歩き出していくリクトは、どうやらもはや勇者に仕立て上げた少年すらどうでもよくなったらしい。
――と答えを出すのは早計か。何かの思惑で、このような試練を与えたとも考えられる。何も考えていないようで、実は、すべてがリクトだけにしか成立しない理論で物事を運ぶ、何らかの布石である可能性は非常に高い。
しかたがない。処理変更だ。リクトが彼らから離れてしまう前に、三人をドラゴンに食わせてしまおう。たとえドラゴンに飲み込ませても、三人を生かして帰してやれば、あと腐れなく、何も悲劇は生まれないのではないか。そうすれば、三人を食わせるという命令は実行でき、フルイケントを勇者に仕立て上げてリクトが自分から勇者を迎えに行くと豪語した魔王会議での面目も保つことができるはずだ。
そう判断したペンデヴァーは、古代龍に三人を飲み込ませたあとは、彼らを生かしたまま、すぐに排泄させるという処理を実行したのだった――。
「グァグァグァ……」
処理が追いつかない。
ただでさえ数の多いドラゴンを、いかにもな感じで処理させられる羽目になったというのに、またこのおバカはわけのわからない行動を取るからだ。あの巨体を積み上げるなんて、処理落ち直前で一部ポリゴン化しちゃうレベルだったし。幸い、現地にいた者たちには気づかれずに済んだからよかったものの。
嘴を震わせてモールス信号並みに暗号通信を送っても、リクトが気づいてくれるはずもない。なんか今、嘴マスクがカタカタしてるな、程度の認識しかないだろう。せめて誰か、この大変さを理解してくれないか。流れる涙を嘴で拭くしかなさそうだ。そんなことができるのかどうかは、ペンデヴァー自身も知らないが。
さて、当のリクトは、ペンデヴァーに難題を与えながら、のほほんと気楽に鼻をほじっている。
――ムカつく。
純白の古代龍を肉まんに加工しろという命令なのか、にくまんに三人を食わせろという命令なのか。いや、どうやら金髪のカツラを身に着け女装している少年――名札には普通にフルイケントと書かれていることに、誰も気づいていないことに驚きを禁じ得ないが――リクトはプリンをあげるから勇者にならないか、と持ちかけたことからも、死なせるつもりはないらしい。
そういえば魔王会議でリクトがこっそり考えていたことをペンデヴァーは思い出す。何者かを勇者に仕立て上げ、プリンで買収すればいいのでは、と。
ところで、リクトの大好物であるプリン・ア・ラモードは、世界でも五本指に入るほどの腕前を持つ有名パティシエが作るものを特に愛している。一日五個限定の抽選購入品であるため、当選でもすれば奴のサボり癖が加速してしまう。ここ数日、連続当選しているため、落選通知に書き換えるという無駄な作業も発生しているが、彼を働かせるための苦労だと思えば、なんてことはない。
閑話休題、先の二択の答えは、恐らく前者である。かわいそうではあるが、ドラゴンのにくまんには名実ともに”肉まん”になってもらおう。ペンデヴァーは魚のほうが好みだが、ドラゴン肉の肉まんも捨てがたい。それにしても、”にくまん”が”肉まん”になるとは、まったくもってややこしい命名をする。リクトのおこぼれに預かれるなら、それくらいは許してやろうか。
ペンデヴァーがそう結論を出し、処理を実行しようとするとドラゴンの身体がビクリ、と震え上がった。かわいそうではあるが、こうなっては、リクトの玩具になってしまった自分自身を恨めとしか、かける言葉はない。
ところがそこで、リクトはシグの元へ歩き出し、彼から名札を取り上げると、彼に向かって指を突き出していた。ドラゴンへの合図。これは明確な命令だ。彼を食え、という――。
まったく。これだから。
こういう判断を悩ませる指示はとても困る。あと一歩遅ければ、リクトの意に沿わない処理を実行してしまうところだったからだ。三人を置いて歩き出していくリクトは、どうやらもはや勇者に仕立て上げた少年すらどうでもよくなったらしい。
――と答えを出すのは早計か。何かの思惑で、このような試練を与えたとも考えられる。何も考えていないようで、実は、すべてがリクトだけにしか成立しない理論で物事を運ぶ、何らかの布石である可能性は非常に高い。
しかたがない。処理変更だ。リクトが彼らから離れてしまう前に、三人をドラゴンに食わせてしまおう。たとえドラゴンに飲み込ませても、三人を生かして帰してやれば、あと腐れなく、何も悲劇は生まれないのではないか。そうすれば、三人を食わせるという命令は実行でき、フルイケントを勇者に仕立て上げてリクトが自分から勇者を迎えに行くと豪語した魔王会議での面目も保つことができるはずだ。
そう判断したペンデヴァーは、古代龍に三人を飲み込ませたあとは、彼らを生かしたまま、すぐに排泄させるという処理を実行したのだった――。
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