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第1章
#5-A 魔王会議? ちょっと頻度が高いんだけど
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「た、たたたた、大変なのだ! 勇者が見つかったのだ!」
会議が始まる直前。会議システムにログインしてくるなり、開口一番慌てふためき、僕に向かって叫んできたのは吸血鬼の矮人、チャッピィだ。シルクハットとステッキの紳士然とした姿には似合わない髑髏の仮面。彼の容姿が全く怖く見えないのは、僕の手のひらに載せられるほどに小さいせいだろう。
彼の治める南東大陸に出向き、ポッケに突っ込んで誘拐して帰ってもばれないよね? どうやら玩具屋には、彼をそのままイメージした、動く等身大の人形が売っているらしいので、それとすり替えるのもありかもしれない。せっかく首が取り外しできるいい玩具を見つけたというのに、残念なことに逃げられてしまったからね。
「チャッロプフゥホヒィア。いい加減、落ち着くといい。ペン兄がまったく動じてないということは、もうすでに手を打ってあるということ。それもウルルは占って確認済みだから、間違いない」
「し、ししししし、信じていいのだ?」
今日の魔王会議はチャッピィの呼びかけによって開かれた臨時の会議だ。そのためか、集まりがよくない。今この場にログインしているのは僕を除けば、チャッピィとウールルちゃんの二人しかおらず、他の魔王たちは欠席という通達がたった今入ってきたばかりだ。そんな中でも例に漏れず、ドラゴン仮面の司会進行役の男が中央で今か今かと、会議が始まるのをスタンバイして待ち続けているのがかわいそうに思えてくる。
前回の魔王会議同様、心配性なところを見せるチャッピィと、チャッピィの本名を噛まずに言えるウールルちゃんの二人も相変わらず。僕は何かをした記憶はないのだが、きっと前回の魔王会議のあとで何か手を打ったのだろう。夢でも見ているうちに。
あ、そうだ――。
「勇者なら僕が迎えに行ってあげたよ? 今頃、風呂上がりにプリンでも食べてるところじゃないかな」
都合よく勇者役をフルイケントに押し付け、モンブランプリンで買収した。初めは文句を言っていた彼も、モンブランプリンを分け与えたことで無事、買収に応じてくれた。彼のそばにいたイサクラタスクにも、可愛そうだったからプリンをあげると、大層喜んでいた。僕のプリンを食べた以上、彼らはもう僕の協力者だ――。
「それより、問題はアルパ……ううん、ッジョ……じゃないかな?」
髑髏仮面の矮人と馬面の幼女がこちらを向く。
正確な名前がわからずに誤魔化したが、バレなかっただろうか。
「ペンデヴァルト卿! ど、どどどどどうしてトジョッカが問題なのだ!?」
「ペン兄。チャッロプフゥホヒィアも。アルバ・ットジョッカッツォが正しい名前。いい加減、覚えてくれないと、ウルルも毎回フルネームで呼ぶのは疲れる。ちなみにウルルは、ラ・ウルル・ウ・ララ・ウル・ルウラ。上から呼んでも下から読んでも、どっちも同じだからウルルと呼べばいい」
そうだったのか。ウールルちゃんは、僕らのためにみんなの名前をフルネームで呼んでいたんだね。もしかして噛まないように頑張って練習したのかもしれない。これは是非、ウールルちゃんに、そろそろ噛んでもいいよ、とばかりにフルネームを呼ばせ続ける試練にしてみてもいいかも。
ところで、なんだか適当にアルパッジョのせいにしてみたんだけど、まずかったかな?
でもこの場に来ないのが悪いんだよ。出席してたらキャンディちゃんに責任をなすりつけてたんだけどね。ただ、何の責任をなすりつければいいんだろうか。うーん。
――偽物の勇者をでっち上げてチャッピィを困らせた罪とか?
うん、いいね。それなら罰としてチャッピィの元に送って、部下としてこき使ってもらえばいいだろうし。主に血を吸われる餌として。
「チャッロプフゥホヒィアのことなんてどうでもいいけど、ペン兄がウルルをいじめる試練を考えてるから、ちょっと悲しい。でもウルルはペン兄のお嫁さんになるからちょっと頑張る」
僕が考えにふけっていると、ウールルちゃんが僕のお嫁さん発言をしていた。さすがに僕もこの姿では子づくりしませんか、とは言いづらい。幼女相手だとペンデヴァーが激おこして、プリンを没収してくるからしないけど。
「幼女がだめならあと五〇〇〇年くらい待ってくれれば、ウルルも大人になれる」
それは長いね。きっと僕がぐうたら死するほうが先かもしれない。そうなるとあまり意味がないからね。ウールルちゃんとは無理かもしれないな。
「ウルルはペン兄を振り向かせて見せる、絶対。靡かない男を捕まえて誘惑する技、一〇〇年後の連続ドラマでやるみたいだから絶対に見逃さないようにする」
うんうん、頑張ってね。心の中でだけ応援しておくことにしよう。その連続ドラマ、視聴年齢制限のない番組だといいね。
「ところで、今日は他の人たちは来ないみたいだけど、これ、もう話終わっちゃったし、解散でもいいかな?」
――クワッ。
僕の言葉に、ドラゴン仮面の男が僕の執務机の前まで瞬間移動して、その仮面の目と口を大きく開いて圧力をかけてくる。いや、怖いんだけど、そんなに近づいて来ないでくれるかな。
「ペンデヴァルト卿。まだ会議は始まっていないのに、終わらせるなどと、そんな狼藉が許されるとでも? 私は会議システムの司会進行役です。始まらなければ終わることができない。つまり、私はここで、始まらない終わりを永遠に待ち続けろということですか?」
淡々と、抑揚のない声で圧力をかけて僕に対する恨み節を唱えてくる。
「うーん、それはそれで僕は困らないし?」
「ああ! いないかもしれない神よ! 何ということでしょう! 私の命はどうやらここまでのようです!」
「キミ、命ないじゃん。でも、しかたないから、会議は延期ということで。それならキミも問題ないよね?」
「ああ! 神ならここにいました! ペンデヴァルト卿! 私は最後まであなたについていくことにします! いいえ! あなたがいる限り、私は永久に不滅です!」
なにやら感動している司会進行役を無視して、僕はチャッピィとウールルちゃんにこっそりと手を振り、今度こそ”自分自身”で会議システムからログアウトした。このままだと強制ログアウトどころか、強制ログアウト禁止させられそうな雰囲気だったし。
会議が始まる直前。会議システムにログインしてくるなり、開口一番慌てふためき、僕に向かって叫んできたのは吸血鬼の矮人、チャッピィだ。シルクハットとステッキの紳士然とした姿には似合わない髑髏の仮面。彼の容姿が全く怖く見えないのは、僕の手のひらに載せられるほどに小さいせいだろう。
彼の治める南東大陸に出向き、ポッケに突っ込んで誘拐して帰ってもばれないよね? どうやら玩具屋には、彼をそのままイメージした、動く等身大の人形が売っているらしいので、それとすり替えるのもありかもしれない。せっかく首が取り外しできるいい玩具を見つけたというのに、残念なことに逃げられてしまったからね。
「チャッロプフゥホヒィア。いい加減、落ち着くといい。ペン兄がまったく動じてないということは、もうすでに手を打ってあるということ。それもウルルは占って確認済みだから、間違いない」
「し、ししししし、信じていいのだ?」
今日の魔王会議はチャッピィの呼びかけによって開かれた臨時の会議だ。そのためか、集まりがよくない。今この場にログインしているのは僕を除けば、チャッピィとウールルちゃんの二人しかおらず、他の魔王たちは欠席という通達がたった今入ってきたばかりだ。そんな中でも例に漏れず、ドラゴン仮面の司会進行役の男が中央で今か今かと、会議が始まるのをスタンバイして待ち続けているのがかわいそうに思えてくる。
前回の魔王会議同様、心配性なところを見せるチャッピィと、チャッピィの本名を噛まずに言えるウールルちゃんの二人も相変わらず。僕は何かをした記憶はないのだが、きっと前回の魔王会議のあとで何か手を打ったのだろう。夢でも見ているうちに。
あ、そうだ――。
「勇者なら僕が迎えに行ってあげたよ? 今頃、風呂上がりにプリンでも食べてるところじゃないかな」
都合よく勇者役をフルイケントに押し付け、モンブランプリンで買収した。初めは文句を言っていた彼も、モンブランプリンを分け与えたことで無事、買収に応じてくれた。彼のそばにいたイサクラタスクにも、可愛そうだったからプリンをあげると、大層喜んでいた。僕のプリンを食べた以上、彼らはもう僕の協力者だ――。
「それより、問題はアルパ……ううん、ッジョ……じゃないかな?」
髑髏仮面の矮人と馬面の幼女がこちらを向く。
正確な名前がわからずに誤魔化したが、バレなかっただろうか。
「ペンデヴァルト卿! ど、どどどどどうしてトジョッカが問題なのだ!?」
「ペン兄。チャッロプフゥホヒィアも。アルバ・ットジョッカッツォが正しい名前。いい加減、覚えてくれないと、ウルルも毎回フルネームで呼ぶのは疲れる。ちなみにウルルは、ラ・ウルル・ウ・ララ・ウル・ルウラ。上から呼んでも下から読んでも、どっちも同じだからウルルと呼べばいい」
そうだったのか。ウールルちゃんは、僕らのためにみんなの名前をフルネームで呼んでいたんだね。もしかして噛まないように頑張って練習したのかもしれない。これは是非、ウールルちゃんに、そろそろ噛んでもいいよ、とばかりにフルネームを呼ばせ続ける試練にしてみてもいいかも。
ところで、なんだか適当にアルパッジョのせいにしてみたんだけど、まずかったかな?
でもこの場に来ないのが悪いんだよ。出席してたらキャンディちゃんに責任をなすりつけてたんだけどね。ただ、何の責任をなすりつければいいんだろうか。うーん。
――偽物の勇者をでっち上げてチャッピィを困らせた罪とか?
うん、いいね。それなら罰としてチャッピィの元に送って、部下としてこき使ってもらえばいいだろうし。主に血を吸われる餌として。
「チャッロプフゥホヒィアのことなんてどうでもいいけど、ペン兄がウルルをいじめる試練を考えてるから、ちょっと悲しい。でもウルルはペン兄のお嫁さんになるからちょっと頑張る」
僕が考えにふけっていると、ウールルちゃんが僕のお嫁さん発言をしていた。さすがに僕もこの姿では子づくりしませんか、とは言いづらい。幼女相手だとペンデヴァーが激おこして、プリンを没収してくるからしないけど。
「幼女がだめならあと五〇〇〇年くらい待ってくれれば、ウルルも大人になれる」
それは長いね。きっと僕がぐうたら死するほうが先かもしれない。そうなるとあまり意味がないからね。ウールルちゃんとは無理かもしれないな。
「ウルルはペン兄を振り向かせて見せる、絶対。靡かない男を捕まえて誘惑する技、一〇〇年後の連続ドラマでやるみたいだから絶対に見逃さないようにする」
うんうん、頑張ってね。心の中でだけ応援しておくことにしよう。その連続ドラマ、視聴年齢制限のない番組だといいね。
「ところで、今日は他の人たちは来ないみたいだけど、これ、もう話終わっちゃったし、解散でもいいかな?」
――クワッ。
僕の言葉に、ドラゴン仮面の男が僕の執務机の前まで瞬間移動して、その仮面の目と口を大きく開いて圧力をかけてくる。いや、怖いんだけど、そんなに近づいて来ないでくれるかな。
「ペンデヴァルト卿。まだ会議は始まっていないのに、終わらせるなどと、そんな狼藉が許されるとでも? 私は会議システムの司会進行役です。始まらなければ終わることができない。つまり、私はここで、始まらない終わりを永遠に待ち続けろということですか?」
淡々と、抑揚のない声で圧力をかけて僕に対する恨み節を唱えてくる。
「うーん、それはそれで僕は困らないし?」
「ああ! いないかもしれない神よ! 何ということでしょう! 私の命はどうやらここまでのようです!」
「キミ、命ないじゃん。でも、しかたないから、会議は延期ということで。それならキミも問題ないよね?」
「ああ! 神ならここにいました! ペンデヴァルト卿! 私は最後まであなたについていくことにします! いいえ! あなたがいる限り、私は永久に不滅です!」
なにやら感動している司会進行役を無視して、僕はチャッピィとウールルちゃんにこっそりと手を振り、今度こそ”自分自身”で会議システムからログアウトした。このままだと強制ログアウトどころか、強制ログアウト禁止させられそうな雰囲気だったし。
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