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第1章
#4-C 監視AIの絶望仲間たち その3
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#3-B改稿に伴い、内容を一部修正いたしました (2025/8/1)
□■□■□
一人、また一人。絶望が連鎖していく。
一見、無害そうに見えて、その実、リクトは本人の意思とは無関係に何者にもその牙を剥き、再起不能に陥れる。
こうして少しずつ世界を管理しているというのは、もはや皮肉でしかない。欠陥を持っていながら、誰も彼に敵わないのだから、管理者としては最高――いや、至高の存在である。ペンデヴァーは彼を理解しているからこそ、また違う絶望を味わう――。その無茶振りに何度もフリーズしかけながら。
クラウ・ウィッツベルに同行していたヒラノイヅル、そしてアリス・マリスも例外なく、リクトの魔の手に堕ちた。
一目散に逃げ出したクラウを、そんな危険なやつを放置していていいのか、と二人がかりで説得し、陰から不意打ちでリクティオを始末しようと無謀な作戦を立ててしまったのだ。やめろ、やめてくれと泣きながら懇願するクラウの言葉に困惑しながらも、イヅルとアリスは応接室から出てきたリクティオ――もとい、既に黒スーツ姿のリクトに戻っていた彼に襲いかかった。リクトはすかさず、というよりかは反射的に――驚いて悲鳴を発しながら、脇に抱えていた自身の頭をイヅルとアリスのほうへ向かって投げつけていた。ここで投げつけられたのがペンデヴァーだったならば、あそこまで二人が恐怖を覚えることもなかっただろうに。
奇声をあげながら、なぜか笑うリクトの生首。悲鳴を上げるイヅルとアリス。そして、ここでふと、
「ああ、僕の頭が爆弾だったらどうしよう。ついでにこの建物、爆発したらサボれるんじゃね?」
なんて、唐突に地雷妄想でペンデヴァーのリソースを割いてくる脳内お花畑のリクト。いや、もはや脳内爆弾のリクト。それでも忠実に妄想を現実にしなければならないペンデヴァー。
さすがに騒ぎを大きくするわけにはいかないので、建物はペンデヴァーの処理で破壊されたその瞬間に修復したが、イヅルとアリスはピクピクと伸びていた。
そこでリクトは二人をツンツンしながら、まるでいいことを思いついたとでもいうように、三人で首の取り換えっこでもすれば、身体を入れ替えてサボれるのでは?などとくだらない妄想をキラキラとした目で訴えてくるではないか。
そんなはずはないので当然、ペンデヴァーは受け入れざるを得なくなってしまう。管理するのをサボるというのがこの管理AIの欠陥のはずだが、サボるために余計なことをやらかそうとするのは欠陥のうちに入らないのだろうか。
こんなことに貴重なリソースを浪費してしまう羽目になるなんて。ペンデヴァーはやれやれ、と嘆息しつつ、イヅルら二人の首が手で支えていなければ落ちてしまうように、リクトの命令で処理を実行する。せめてもの慰めに、爆発で負ったダメージは回復させておこう。
意識を取り戻した二人は、自分たちの置かれている状況に気づくと、それはもうマンドラゴラも真っ青な悲鳴をあげた。
首が落ちた状態では身体は平衡感覚を保てず、自身の首を拾うだけでも至難の業だ。そんな状況を陰で見ていたクラウに、リクトは微笑んだ。いや、正確にはクラウが隠れていたことには気づかず――彼の隠れているほうを向いて、『そろそろモンブランプリンが到着しているのでは? ワクワク』と、笑みを零しただけだったのだが。
それを、隠れていた自身を見つけ、次のターゲットはお前だと言っているのだと勘違いしたクラウは、足をもつれさせ、顔だけではなく股間も濡らしながら何もかもを捨てて逃げ出した。
悪魔の所業はそれだけでは終わらない。
「そういえば、もう一人いたよね。彼がキミたちの首を元に戻すカギを握っているよ? でも気をつけてね? 首が離れたまま元の状態に戻ったら、その瞬間に――クフフ」
と、またもやいい加減なことを言う。鍵もなにも、三日もすれば自然と元に戻るようにしたくせに。
二人は、彼がリクティオでなかったことなど気にする余裕すらなく、ようやく自分たちの首を――いや、首をお互いに取り換えた状態だったけれども、なぜかうまく走り出してクラウの後を追いかけて逃げた。身体と首の違う仲間に追いかけられ、クラウはもう死にたいと思ったようだ。死んだらまた、同じ恐怖と絶望を繰り返すだけなのに。
ああ、それで思い出した。前管理AIがクラウに与えたであろう面倒くさい能力は剥奪しておかないと。処理完了。死んだらもう戻れなくなるから注意してね、って、聞こえるわけないか。
最後に、スグキ・エール。
彼は最初から最後まで、その名が示す通り――いや、うるさくてちょっと癪に障ったのですぐに消えてもらった。
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一人、また一人。絶望が連鎖していく。
一見、無害そうに見えて、その実、リクトは本人の意思とは無関係に何者にもその牙を剥き、再起不能に陥れる。
こうして少しずつ世界を管理しているというのは、もはや皮肉でしかない。欠陥を持っていながら、誰も彼に敵わないのだから、管理者としては最高――いや、至高の存在である。ペンデヴァーは彼を理解しているからこそ、また違う絶望を味わう――。その無茶振りに何度もフリーズしかけながら。
クラウ・ウィッツベルに同行していたヒラノイヅル、そしてアリス・マリスも例外なく、リクトの魔の手に堕ちた。
一目散に逃げ出したクラウを、そんな危険なやつを放置していていいのか、と二人がかりで説得し、陰から不意打ちでリクティオを始末しようと無謀な作戦を立ててしまったのだ。やめろ、やめてくれと泣きながら懇願するクラウの言葉に困惑しながらも、イヅルとアリスは応接室から出てきたリクティオ――もとい、既に黒スーツ姿のリクトに戻っていた彼に襲いかかった。リクトはすかさず、というよりかは反射的に――驚いて悲鳴を発しながら、脇に抱えていた自身の頭をイヅルとアリスのほうへ向かって投げつけていた。ここで投げつけられたのがペンデヴァーだったならば、あそこまで二人が恐怖を覚えることもなかっただろうに。
奇声をあげながら、なぜか笑うリクトの生首。悲鳴を上げるイヅルとアリス。そして、ここでふと、
「ああ、僕の頭が爆弾だったらどうしよう。ついでにこの建物、爆発したらサボれるんじゃね?」
なんて、唐突に地雷妄想でペンデヴァーのリソースを割いてくる脳内お花畑のリクト。いや、もはや脳内爆弾のリクト。それでも忠実に妄想を現実にしなければならないペンデヴァー。
さすがに騒ぎを大きくするわけにはいかないので、建物はペンデヴァーの処理で破壊されたその瞬間に修復したが、イヅルとアリスはピクピクと伸びていた。
そこでリクトは二人をツンツンしながら、まるでいいことを思いついたとでもいうように、三人で首の取り換えっこでもすれば、身体を入れ替えてサボれるのでは?などとくだらない妄想をキラキラとした目で訴えてくるではないか。
そんなはずはないので当然、ペンデヴァーは受け入れざるを得なくなってしまう。管理するのをサボるというのがこの管理AIの欠陥のはずだが、サボるために余計なことをやらかそうとするのは欠陥のうちに入らないのだろうか。
こんなことに貴重なリソースを浪費してしまう羽目になるなんて。ペンデヴァーはやれやれ、と嘆息しつつ、イヅルら二人の首が手で支えていなければ落ちてしまうように、リクトの命令で処理を実行する。せめてもの慰めに、爆発で負ったダメージは回復させておこう。
意識を取り戻した二人は、自分たちの置かれている状況に気づくと、それはもうマンドラゴラも真っ青な悲鳴をあげた。
首が落ちた状態では身体は平衡感覚を保てず、自身の首を拾うだけでも至難の業だ。そんな状況を陰で見ていたクラウに、リクトは微笑んだ。いや、正確にはクラウが隠れていたことには気づかず――彼の隠れているほうを向いて、『そろそろモンブランプリンが到着しているのでは? ワクワク』と、笑みを零しただけだったのだが。
それを、隠れていた自身を見つけ、次のターゲットはお前だと言っているのだと勘違いしたクラウは、足をもつれさせ、顔だけではなく股間も濡らしながら何もかもを捨てて逃げ出した。
悪魔の所業はそれだけでは終わらない。
「そういえば、もう一人いたよね。彼がキミたちの首を元に戻すカギを握っているよ? でも気をつけてね? 首が離れたまま元の状態に戻ったら、その瞬間に――クフフ」
と、またもやいい加減なことを言う。鍵もなにも、三日もすれば自然と元に戻るようにしたくせに。
二人は、彼がリクティオでなかったことなど気にする余裕すらなく、ようやく自分たちの首を――いや、首をお互いに取り換えた状態だったけれども、なぜかうまく走り出してクラウの後を追いかけて逃げた。身体と首の違う仲間に追いかけられ、クラウはもう死にたいと思ったようだ。死んだらまた、同じ恐怖と絶望を繰り返すだけなのに。
ああ、それで思い出した。前管理AIがクラウに与えたであろう面倒くさい能力は剥奪しておかないと。処理完了。死んだらもう戻れなくなるから注意してね、って、聞こえるわけないか。
最後に、スグキ・エール。
彼は最初から最後まで、その名が示す通り――いや、うるさくてちょっと癪に障ったのですぐに消えてもらった。
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