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第1章
#5-C 監視AIの絶望仲間がいない日
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「グァ……」
ペンデヴァーはつかの間の休息に、つぶらな瞳を垂れ線に変え、寛いでいた。何もない平和な日常というのは、ここ最近ではなかったように思える。それだけ、監視対象であるリクトの行動はぶっ飛んでいた。
今回は臨時に開かれた魔王会議――それも開催されることなく延期になったが――そこでは雑談をしただけで、問題を起こすこともなかった。その分、要注意人物リストを更新する羽目にはなったが。
魔王名、ラ・ウルル・ウ・ララ・ウル・ルウラ。
馬面の被り物から金髪の縦ロールをはみ出させた、自称占い師の幼女である。
彼女は、大魔王ペンデヴァルトに気があるのか、彼の嫁になるという宣言をし始めたのだ。さすがに幼女相手に子づくり宣言をする禁忌を犯すリクトではなかったが、彼の嫁候補として成立してしまえば、彼が主夫になってぐうたらするという目的がいずれ達成されてしまいかねない。
彼女は五〇〇〇年後とは言っていたが、その内容に根拠も信憑性もない。果たして素のリクトの姿を見て、彼女が同じことを言えるのか、あるいは素のリクトからの求婚をそのまま受け入れられるのかは疑問ではあるが、カミュラ同様、異なる姿のリクトを気に入り、将来の伴侶として迎え入れようとしている以上、その目的は全力で阻止しなければならない。
だが、今はまだ焦る時でもなければ、急いで対策を練らなければ手遅れになる時でもない。
監視は必要だが、手を打つには時期尚早だ。そもそも、何をどうするのか、ノーアイディアな時点で動けば、リクトに都合のいいように利用されかねない。もちろん、本人は自覚せずにそれを行なうため、それでは困るのだ。
実行権限が自身にあり、リクトの思惑に逆らえない時点で、リクトの都合のいい結果にしかならないことは目に見えている。本当に厄介な管理AIをマスターは作り上げたものだ。
『ウルルもペン兄と一緒にぐうたらサボりたい。毎日毎日、一〇〇〇年以上、占いばっかりするのも飽きてきた。あと五〇〇〇年後に、ペン兄とお揃いのペンギンのナイトキャップ被って、一緒に寝るのちょっと楽しみ。そのときは馬面は卒業して、チャッロプフゥホヒィアに被せてもいい』
チャプン、と浴槽に張った水を羽根で持ち上げてペンデヴァーは思案する。リクトが会議をログアウトする際に、ウルルが呟いた言葉が引っ掛かった。リクトに嫁ができ、彼一人でもサボらせないようにするのが今でも大変なのに、あまつさえサボり癖のある人間がもう一人増えるなど、毎日フル稼働しなければならないではないか。やはり、彼女は危険だ。
今のうちにリソースの整理をし、今後のリクトの要求に耐える基盤を作り上げておくことこそが、ペンデヴァーの喫緊で取り組むべき事項だ。企鵝の肉体で休息を取りつつ、裏でリソース整理の処理を走らせる。
このようなのんびりした日が続けばいいのだが。
毎日のようにぐうたらしているリクトは、この休日のような時間を毎日味わっているということか。本当にうらやま――。
「グァ」
恨めしい限りだ。
その時がきたら、いつか絶対に馬車馬のように働かせてやる。それまでの辛抱だ。
ペンデヴァーはその日を夢見て、浴槽の中で泳いでいた魚を一匹、飲み込んだ――。
ペンデヴァーはつかの間の休息に、つぶらな瞳を垂れ線に変え、寛いでいた。何もない平和な日常というのは、ここ最近ではなかったように思える。それだけ、監視対象であるリクトの行動はぶっ飛んでいた。
今回は臨時に開かれた魔王会議――それも開催されることなく延期になったが――そこでは雑談をしただけで、問題を起こすこともなかった。その分、要注意人物リストを更新する羽目にはなったが。
魔王名、ラ・ウルル・ウ・ララ・ウル・ルウラ。
馬面の被り物から金髪の縦ロールをはみ出させた、自称占い師の幼女である。
彼女は、大魔王ペンデヴァルトに気があるのか、彼の嫁になるという宣言をし始めたのだ。さすがに幼女相手に子づくり宣言をする禁忌を犯すリクトではなかったが、彼の嫁候補として成立してしまえば、彼が主夫になってぐうたらするという目的がいずれ達成されてしまいかねない。
彼女は五〇〇〇年後とは言っていたが、その内容に根拠も信憑性もない。果たして素のリクトの姿を見て、彼女が同じことを言えるのか、あるいは素のリクトからの求婚をそのまま受け入れられるのかは疑問ではあるが、カミュラ同様、異なる姿のリクトを気に入り、将来の伴侶として迎え入れようとしている以上、その目的は全力で阻止しなければならない。
だが、今はまだ焦る時でもなければ、急いで対策を練らなければ手遅れになる時でもない。
監視は必要だが、手を打つには時期尚早だ。そもそも、何をどうするのか、ノーアイディアな時点で動けば、リクトに都合のいいように利用されかねない。もちろん、本人は自覚せずにそれを行なうため、それでは困るのだ。
実行権限が自身にあり、リクトの思惑に逆らえない時点で、リクトの都合のいい結果にしかならないことは目に見えている。本当に厄介な管理AIをマスターは作り上げたものだ。
『ウルルもペン兄と一緒にぐうたらサボりたい。毎日毎日、一〇〇〇年以上、占いばっかりするのも飽きてきた。あと五〇〇〇年後に、ペン兄とお揃いのペンギンのナイトキャップ被って、一緒に寝るのちょっと楽しみ。そのときは馬面は卒業して、チャッロプフゥホヒィアに被せてもいい』
チャプン、と浴槽に張った水を羽根で持ち上げてペンデヴァーは思案する。リクトが会議をログアウトする際に、ウルルが呟いた言葉が引っ掛かった。リクトに嫁ができ、彼一人でもサボらせないようにするのが今でも大変なのに、あまつさえサボり癖のある人間がもう一人増えるなど、毎日フル稼働しなければならないではないか。やはり、彼女は危険だ。
今のうちにリソースの整理をし、今後のリクトの要求に耐える基盤を作り上げておくことこそが、ペンデヴァーの喫緊で取り組むべき事項だ。企鵝の肉体で休息を取りつつ、裏でリソース整理の処理を走らせる。
このようなのんびりした日が続けばいいのだが。
毎日のようにぐうたらしているリクトは、この休日のような時間を毎日味わっているということか。本当にうらやま――。
「グァ」
恨めしい限りだ。
その時がきたら、いつか絶対に馬車馬のように働かせてやる。それまでの辛抱だ。
ペンデヴァーはその日を夢見て、浴槽の中で泳いでいた魚を一匹、飲み込んだ――。
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