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逆襲

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 3000人と寡兵ながら、全ての準備は完了した。捕虜にした敵軍を連行する役目である、後方支援部隊にも、剣と背嚢リュックを支給した。

 軍司令は、ルーミハイム王国に残り、情報収集にあたる。我がルーミハイム侵攻軍は司令補佐であった私が指揮する事となった。ロドリゲス将軍が補佐してくれるが、不安で一杯である。

 『準備は整いました。ユリナ殿行きましょう!』

 私達は、国境に向けて出発した。

  国境ざかいの守衛は、私達の姿を見て一目散に駆けて行く。報告に行ったのであろう。数人の守衛が、私達を止めようとしても無駄であるので、賢明な判断であった。

 私達は素通りで国境を通って行く。

 国境ざかいの街を通り過ぎた時には、山賊を捕縛した事や、ポーションを売った店を思い出し感慨深く感じた。

 生まれ故郷に戻って来たのだ。

 しかしその時が来た。小高い丘に敵の大軍が陣取っているのが確認出来た。

 私達は、改めて隊列を整えた。

 『お前達、ここがどこだか分かっているのか?我が皇国を汚い足で踏みおって。お前達の腹わたを引き摺り出し、お前達の家先に投げつけてやる。』

 メガホン使いアルテニア皇国から、煽り言葉が飛んできている。

 私は、アイテムボックスから拡声器を取り出した。

 「アルテニア皇国の兵士よ。よく聞きなさい。」

 メガホンとは違い、拡声器のよく通る声にアルテニア皇国の兵士に動揺が走っているのが、遠目からもよく分かる。

 「アルテニア皇国は、ちょっとしたいざこざから、戦線布告をしてルーミハイム王国に侵略して来ました。大義も無くです。私達には正当防衛という大義があります。周辺国は貴方達アルテニア皇国の暴挙をどう見ているでしょう?先日、大軍を擁して攻め込んできたあなた達の同胞であるアルテニア皇国の兵士50000人は全て捕虜となっています。貴方達には勝ち目はありません。今すぐ武装を解きなさい。私達は、武力だけに頼る野蛮な者ではありません。繰り返します。今すぐ武装を解きなさい。」

 敵軍兵士からはザワザワした様子が伝わる。

 元より、口撃で投降するとは思ってはいない。敵軍の士気が下がれば充分である。

 『えーい!あんな子供の口車に乗るな!奴らを叩き潰すぞ!行けーーー!!!』

 敵軍が小高い丘から駆け降りてくる。せっかく地の利を取っているのに、無能な将だな……

 「シールド隊構え!バズーカを乗り越えた敵軍を捕らえよ!撃つわよ!」

 駆け寄ってくる敵軍に対して、麻痺弾を込めたバズーカ砲を撃ち続けた。
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