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新人冒険者

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 老婆は驚いた表情で果物飴を受け取った。

 初日こそ、そんなに売れなかったが、翌日から、果物飴の美味しさと、ホムンクルスが接客をするという奇抜さがウケて、長蛇の列となっていた。

 [マスター、材料が足りません。]

 製造するホムンクルスから、材料を補充を頼まれた僕は、街の店から材料となる果物を砂糖、串を買い集めた。

 ふぅー、これでなんとか品切れを起こさないだろう……

 と安心した時、長蛇の列の中に知った顔を発見した。

 特別魔法学校でクラスメイトだったクラウディアと、僕が魔法のコツを教えたミアとリリーだった。

 「ノア君!?」

 素知らぬ顔で横切ろうとしていた僕に3人は気付いたようだ。

 「ノア君でしょ?どうしてここに?あ!この屋台ノア君のお店?そうなの?」

 「ミア、リリーちょっと列並んでて!ノア君おいで!」

 僕は強引にクラウディアに袖を引っ張られ、人目が付かない路地裏に連れ込まれた。

 「あれ、ノア君の仕業でしょう?教官達は、実験中の事故で校舎が壊れたと言っていたけど、そんな訳ないじゃない。学校も辞めて一体何があったの?」

 相変わらずお節介だな……

 「いや、ただ学校が退屈だったんで、辞めただけだよ。」
 
 「ゲルパルト第3皇子も、あれはノア君の仕業だって吹聴してたわよ。A組の生徒はみんなノア君が校舎を壊したと気付いてるわよ。あのテストの時のとんでもない魔法を見てるんだもの。」

 しまった……教官達だけでなく、A組の生徒にも[忘却魔法]をかける必要があったか……

 「それで校長先生はじめ教官達は何か言ってた?」

 「それがおかしいのよ。教官達はノア君自体の記憶がないみたいなの。それでゲルパルトが学校で起きた状況をわざわざ自分の父親、つまり国王様に何通も手紙を書いて知らせていたわ。」

 あの皇子は余計な事をしてくれる……

 「この街にいるつもりなら、王様直属の近衛兵士も居るから用心した方がいいわよ。」

 「クラウディア!それは貴重な情報だ。助かるよ。ありがとう。」

 この街の中にのんびり居る事は危険かもしれないのか……

 店はホムンクルスに任せて、僕は街外に出る方がいいのかもしれない。

 街外に出るついでに出来る依頼があればいいなと、ギルドの依頼掲示板を何気なく見に行った。

 【復興の手伝い】
 ゴブリンの襲撃によって、大破してしまった村の復興を手助けしてくれる者を募集中。
報酬一日で銀貨10枚。

 これは、あの村じゃないか?そして報酬が安すぎる……せっかくゴブリンの巣穴から回収した財宝があったのに……これでは人は集まらないだろう。

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