とある王国の執事ですが男装しているのがバレ、好色侯爵からアプローチされました?!

曼珠沙華

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一章

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「ふわぁ~…、昨日から机仕事が多すぎて疲れちゃったよ…」


若草色の寝癖を揺らし、この国『アグリュセ王国』の王はあくびをした。

煌びやかな王宮の廊下を寝巻姿でてちてちと歩く王。
その王の目を、朝日の光が大理石にはめ込まれた宝石たちに反射し、貫く。

そんなこと毎日の様にあるので、王はすかさず寝巻の後ろ襟を頭のてっぺんへと上げた。


目のちかちかが緩和したところで、真後ろから大きなため息が聞こえる。


「貴女って人は…王だという自覚はあるんですか?」

男としては少々高く、女としては少々低い、中性的な声だ。


王は、その声にのびのびと「おはよぉ~…」と後ろを振り返った。


後ろにいたのは、ピシッとした燕尾服を着た男…おそらく男であろう執事が立っていた。
手足がすらりとしていて、燕尾服は彼の性格を表したかのように完璧な物だった。

ただ、おかしいところがあるとすれば、彼の頭部を覆い隠している四角い被り物。

まるでかのように存在するソレは、初めて彼を見る者からしたら異質そのものだった。
灰色の箱のおそらく正面であろうそこには、やる気のない顔まで描いてある。


「全く…せめて身支度を整えてから…」

「あぁ!!あれはゼリーの匂い…!!」

執事の言葉を最後まで聞かず、王は廊下を駆け出していってしまった。

「やれやれ…」執事は顔を横に振った。

















「わぁ~!!美味しそうなゼリー!!」

王は目の前に並べられた大量の料理の中から、プルリと今もなお振動し続けるゼリーに目を輝かせた。


「そんな菓子より、俺の作ったコンサート会場の方が光り輝いてるぞ!!」

王の目の前でそう叫んだ男。

ファッションが言葉通り光り輝いていた。


純金を布にしたのでは?と思う程の金色のカンドゥーラ。
宝石をはめ込み過ぎてミラーボールのようになっているアガル。
アガルに押さえつけられているカンドゥーラと同じくらい純金のグトゥラ。
グトゥラの隙間から覗く瞳は、ダイヤモンドのようにやる気に輝いていた。


「大臣、王の前ですよ…。」

そう言って、執事は王の皿に手早くゼリーをよそった。
王が食べようとスプーンに手を伸ばした時には、もうすでに王の周りには様々な料理が取り分けられていた。



「んあ?別にいいじゃねぇかよ。
 みるくから許可貰ったし、経費も俺が出す!!」



そっちじゃない。
執事は頭を抱えた。

王の前で…、しかも食事中に目の前で私事の話をするな。
と、執事は言ったのだが、どうやら通じてはいないらしい。



「…お前…、せめて王を呼び捨てにするな…。」


執事は今日何回目か分からない大きなため息を吐いた。











いつもと変わらない。

そう、の日常…______。
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