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一章
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メイドたちが居なくなったとおもいきや、ジール・ダルクはくるりと執事に向きを変えた。
「お前も着替えて来い。」
「は?」
執事はあからさまに嫌悪感を表した。
あのピンクのふりふりに。
ジール・ダルクの手には、あのピンクのメイド服がいつのまにか握られている。
そしてそれを執事に投げる。
「お前の分はこれだ。あと、吾輩のことはご主人様と呼べ。敬語もな。」
執事の反抗的な態度を面白くて仕方がないという顔だ。
そんな様子に執事は内心イラつきながらも、
「わかりましたー。ごしゅじんさまー。」
と、棒読みで言った。
悔しそうにする男にくるりと背を向け、執事はエントラスを後にした。
「してやったり」とほくそ笑みながら。
*****
自室であろう場所は、既に水着に着替え終えているメイドに聞いた。
あからさまに嫌な顔をされたが、しぶしぶ教えてくれた。
廊下を進み、木製の開き戸を押し開ける。
使用人専用の部屋は綺麗にされており、中にはバスルームにトイレも付いていた。
王国の自分の部屋よりは小さいが、設備はこの部屋の方が整えてある。
「おお…、風呂もトイレもついてるのか…。」
使用人の部屋だけならいい就職先で間違いなさそうだ。
まるで小さなホテルの一室のような部屋に、ジール・ダルクの心遣い感心する。
奴にとって"使用人"の価値観が人とは違っているのはひとまず置いておこう。
しかし右手に存在する違和感のせいで、そんな気持ちは一気に消し飛ぶのだった。
俺の主人(仮)に渡されたピンクのフリフリのせいで。
「クソッ…!」
右手を大きく振りかぶった。
しかし、それをぐっと耐える。
少々劣悪な環境と悪趣味な主人(仮)がなんだと言うのか。
王国…いや、王に仕える執事がこんな事にすら耐えられないなんて在り得ない。
執事の中のプライド・誇り・負けず嫌いの精神が燃え上がる。
みるくと大臣を支えていくには、ここで一度修行し直した方がいいのかもしれない。
こんな環境でも生き抜ける執事になれば、王国は安泰だ。
ふんすと逆にやる気に満ち溢れる執事。
「…こうなったら、とことん仕えてやる!」
そう言った手前、執事のやる気は右手のフリフリによって萎んでいく。
やはりフリフリは抵抗があるのか、執事は被り物の下で顔を歪ませた。
似合う似合わないの問題ではない。
着たい着たくないの問題である。
早くも大国に帰りたいという気持ちが逸ったが、脳裏にダイヤの剣がちらついてしまう。
「これも修行の一環だ…。」
執事はそう念仏のように唱えると、レースのついた袖に手を通すのだった。
「お前も着替えて来い。」
「は?」
執事はあからさまに嫌悪感を表した。
あのピンクのふりふりに。
ジール・ダルクの手には、あのピンクのメイド服がいつのまにか握られている。
そしてそれを執事に投げる。
「お前の分はこれだ。あと、吾輩のことはご主人様と呼べ。敬語もな。」
執事の反抗的な態度を面白くて仕方がないという顔だ。
そんな様子に執事は内心イラつきながらも、
「わかりましたー。ごしゅじんさまー。」
と、棒読みで言った。
悔しそうにする男にくるりと背を向け、執事はエントラスを後にした。
「してやったり」とほくそ笑みながら。
*****
自室であろう場所は、既に水着に着替え終えているメイドに聞いた。
あからさまに嫌な顔をされたが、しぶしぶ教えてくれた。
廊下を進み、木製の開き戸を押し開ける。
使用人専用の部屋は綺麗にされており、中にはバスルームにトイレも付いていた。
王国の自分の部屋よりは小さいが、設備はこの部屋の方が整えてある。
「おお…、風呂もトイレもついてるのか…。」
使用人の部屋だけならいい就職先で間違いなさそうだ。
まるで小さなホテルの一室のような部屋に、ジール・ダルクの心遣い感心する。
奴にとって"使用人"の価値観が人とは違っているのはひとまず置いておこう。
しかし右手に存在する違和感のせいで、そんな気持ちは一気に消し飛ぶのだった。
俺の主人(仮)に渡されたピンクのフリフリのせいで。
「クソッ…!」
右手を大きく振りかぶった。
しかし、それをぐっと耐える。
少々劣悪な環境と悪趣味な主人(仮)がなんだと言うのか。
王国…いや、王に仕える執事がこんな事にすら耐えられないなんて在り得ない。
執事の中のプライド・誇り・負けず嫌いの精神が燃え上がる。
みるくと大臣を支えていくには、ここで一度修行し直した方がいいのかもしれない。
こんな環境でも生き抜ける執事になれば、王国は安泰だ。
ふんすと逆にやる気に満ち溢れる執事。
「…こうなったら、とことん仕えてやる!」
そう言った手前、執事のやる気は右手のフリフリによって萎んでいく。
やはりフリフリは抵抗があるのか、執事は被り物の下で顔を歪ませた。
似合う似合わないの問題ではない。
着たい着たくないの問題である。
早くも大国に帰りたいという気持ちが逸ったが、脳裏にダイヤの剣がちらついてしまう。
「これも修行の一環だ…。」
執事はそう念仏のように唱えると、レースのついた袖に手を通すのだった。
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