55 / 65
No.55:お好み焼き屋さん
しおりを挟む
それから一週間が過ぎた。
私の心配をよそに、平和な日々が送れている。
例のオーシャンファイナンスからお父さんのところへは、全く連絡がなくなったらしい。
家に来られることもない。
もちろん東日本ファイナンスというところにローンが移行されたわけだから、当然といえば当然だけど。
お父さんも心なしか、表情が明るくなった。
学校ではPTAの臨時総会が開催されるという話も聞かない。
一つ気になるのは、美濃川さんの視線が変わったこと。
彼女とすれ違う時に、夏休み明けには不気味な薄笑いを浮かべていたのが、最近では睨みつけるような視線に変わった。
まるで親の敵でも見るような視線だ。
まあもちろん直接的な被害を受けたわけじゃないけど、あの視線が気になって仕方ない。
平穏な日々が、戻ってきた。
まったくあの騒動は何だったのか。
あの騒動自体が、夢の中だったんじゃないか。
そんな風に思えるぐらいだ。
私は宝生君に話をしようと思った。
話をしなくちゃいけない。
今まで何があったのか。
許してくれるかどうかわからないけど、正直に話すことが私の務めだと思う。
久しぶりに宝生君へLimeを送る。
華恋:こんばんは。話したいことがあります。一緒にお好み焼きか焼きそばを食べに行かない? 私が奢るから
今までのお礼も兼ねて、ささやかだけど私がご馳走したかった。
宝生君:わかった。楽しみにしている。
日曜日に彼と会うことにした。
私は今から緊張していた。
◆◆◆
「なるほどな。そんなことがあったのか。大変だったな」
「やきやき屋」というお好み焼き屋さんは、宝生君と一緒に行った映画館のすぐ近くにある。
その店内で、私と宝生君は向い合わせで座っていた。
「ううん、大変というか……でも結局は全部いい方へ解決したんだよ。でもいまだに、なんでそんな風に解決したのかわからないんだ。お父さんの借金といい、PTA会長のことといい……」
「確かにそうだな。でもまあ世の中いろんなことが起こり得るからな。ラッキーな偶然が重なったんじゃないか? あまり深く考えても答えは出ないぞ」
「そうかな……私はちょっと気持ち悪いよ」
「心配性だな」
「ていうかさ、後から『やっぱりお金、返して下さい』っていわれても困るじゃん」
「大丈夫だろ? その、なんだ、東日本ファイナンスだっけか? そこから来た書類が確かなものだったら、問題ないだろ?」
「うん、それは大丈夫みたい。お父さんも電話を入れて、確認してたから」
「なら大丈夫だ」
そうしているうちに、注文していたものが運ばれてきた。
私は焼きそば、宝生君はお好み焼きだ。
「お好み焼きなんて、久しぶりだぞ」
「うん、そうかなと思って。いやだった?」
「そんなことはない。それこそ花火大会の夜店で買って食べたとき以来だと思う」
「え? ということは小学校以来?」
「多分そうだな」
「そっか。うちは焼きそばが、お父さんの得意料理だからね」
そんな事言いながら、2人でいただきますをして食べ始める。
私の心配をよそに、平和な日々が送れている。
例のオーシャンファイナンスからお父さんのところへは、全く連絡がなくなったらしい。
家に来られることもない。
もちろん東日本ファイナンスというところにローンが移行されたわけだから、当然といえば当然だけど。
お父さんも心なしか、表情が明るくなった。
学校ではPTAの臨時総会が開催されるという話も聞かない。
一つ気になるのは、美濃川さんの視線が変わったこと。
彼女とすれ違う時に、夏休み明けには不気味な薄笑いを浮かべていたのが、最近では睨みつけるような視線に変わった。
まるで親の敵でも見るような視線だ。
まあもちろん直接的な被害を受けたわけじゃないけど、あの視線が気になって仕方ない。
平穏な日々が、戻ってきた。
まったくあの騒動は何だったのか。
あの騒動自体が、夢の中だったんじゃないか。
そんな風に思えるぐらいだ。
私は宝生君に話をしようと思った。
話をしなくちゃいけない。
今まで何があったのか。
許してくれるかどうかわからないけど、正直に話すことが私の務めだと思う。
久しぶりに宝生君へLimeを送る。
華恋:こんばんは。話したいことがあります。一緒にお好み焼きか焼きそばを食べに行かない? 私が奢るから
今までのお礼も兼ねて、ささやかだけど私がご馳走したかった。
宝生君:わかった。楽しみにしている。
日曜日に彼と会うことにした。
私は今から緊張していた。
◆◆◆
「なるほどな。そんなことがあったのか。大変だったな」
「やきやき屋」というお好み焼き屋さんは、宝生君と一緒に行った映画館のすぐ近くにある。
その店内で、私と宝生君は向い合わせで座っていた。
「ううん、大変というか……でも結局は全部いい方へ解決したんだよ。でもいまだに、なんでそんな風に解決したのかわからないんだ。お父さんの借金といい、PTA会長のことといい……」
「確かにそうだな。でもまあ世の中いろんなことが起こり得るからな。ラッキーな偶然が重なったんじゃないか? あまり深く考えても答えは出ないぞ」
「そうかな……私はちょっと気持ち悪いよ」
「心配性だな」
「ていうかさ、後から『やっぱりお金、返して下さい』っていわれても困るじゃん」
「大丈夫だろ? その、なんだ、東日本ファイナンスだっけか? そこから来た書類が確かなものだったら、問題ないだろ?」
「うん、それは大丈夫みたい。お父さんも電話を入れて、確認してたから」
「なら大丈夫だ」
そうしているうちに、注文していたものが運ばれてきた。
私は焼きそば、宝生君はお好み焼きだ。
「お好み焼きなんて、久しぶりだぞ」
「うん、そうかなと思って。いやだった?」
「そんなことはない。それこそ花火大会の夜店で買って食べたとき以来だと思う」
「え? ということは小学校以来?」
「多分そうだな」
「そっか。うちは焼きそばが、お父さんの得意料理だからね」
そんな事言いながら、2人でいただきますをして食べ始める。
1
あなたにおすすめの小説
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について
古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。
すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!?
「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ?
俺、君と話したことも無いんだけど……?
カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。
初恋♡リベンジャーズ
遊馬友仁
青春
【第五部開始】
高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。
眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。
転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?
◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!
第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)
【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。
東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」
──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。
購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。
それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、
いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!?
否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。
気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。
ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ!
最後は笑って、ちょっと泣ける。
#誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる