君に打つ楔

ツヅミツヅ

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48、潜んでいた影

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 結局、本宮には接近禁止命令が下された。
 これまでも手紙を入れた事を認め、今後美優には近づかない事を誓った。
 警察に行ってからの本宮はとても大人しく取り調べに応じたらしい。

「これでとりあえず一件落着かな?」
 壱弥の家でお疲れの宴を催す事になったので、また大量にビールやお摘みなどを買い込んできた。
 航生は缶ビールのプルタブを開けながら誰にともなく言った。
「うん、ありがとう、皆。皆のお陰でホントに助かったよ」
「いや、ストーカーなんて一人で対処出来る訳ないから」
 帆高もまた、缶ビールのプルタブを開けながら美優に笑った。
「普通に男に女がストーカーしてたって一人では対応出来ないと思うわよ?」
 穂澄は既に缶ビールに口をつけながら言った。
「おお、今日は奮発してIPAで良かったわ。美味い」
 ビールを口にした帆高が感想を誰にともなく言った。
「俺達の内の誰がこんな被害に遭っても同じ様に協力するんだから、気にしなくていいよ」
 壱弥はいつもの優しい笑顔で美優の頭を撫でた。
 そんな壱弥を美優はまじまじと見つめると先程の壱弥の科白が脳裏に過ぎる。
【相応しくないに決まってるだろ、俺もお前も】
 その時の壱弥の表情は今思い出しても無表情で、何を思っているのか感じ取れなかった。
「ん? なに?」
「ううん、何でもないの」
 何事も無かった様に壱弥はいつも通りの優しい笑顔で美優に接する。
 その壱弥の言葉の真意を掴み兼ねてずっと胸にもやもやとしたものが残った。

「まあこれで美優も家に帰れるわね。仕事始まる前に解決してよかったわ」
 ウィッグを取っていつもの栗毛色のロングヘアに戻った穂澄はそう言うとビールをぐいっと呷る。
「……あの、実は皆に言っておかなきゃいけない事があるの……」
「ん? なに?」
「その、就職ね、またダメになっちゃったんだ」
「え? なんでなんで?」
「全く美優に落ち度のない、理不尽な理由で切られたんだ」
 壱弥がビールを呷りながら不愉快そうに言った。
「は? なにそれ」
「店長がね、私の鞄漁ってて、それが発覚して、私の事恋人だったって言い出したの」
「はあ? 何言ってんの? その店長」
 帆高が眉間に皺を寄せる。
「それでね、私は否定してたんだけど、本部としてはどっちがホントの事言ってるかわかんないでしょ? だから白紙にしましょうって」
「……それってつまり美優ちゃんが店長利用して就職決めたと思われたって事?」
 航生の手には美優の母親がレシピに載せていたおつまみのチーズの焼きせんべいがある。
「うん……」
「なにそれ、その店長あり得ないんだけど」
「で、そんな風に言われたらやっぱり居づらいからバイトも辞めさせてもらったの。ホントツイてないよね」
 美優は努めて笑って見せた。何でもない事の様に、ニコニコ笑って、何も感じていないと思われるくらい。
 そんな風に笑う美優を穂澄が優しく抱きしめる。
「美優、大丈夫よ。そんな店長のいるとこに就職決まらなくて寧ろ良かったわ。私達と働きましょ? ね?」
「……うん。今からじゃどうしようもないから……棗さんの試合が終わったら忠也さんにお願いしようと思ってるの」
「そうね、今餓えた野獣みたいになってるなっちゃんに店長の事は聞かせられないわね」
「美優ちゃん、うちは緩い会社だけど、まあ業績も普通にいいしちゃんと事務職ちゃん達食わせて行けるよう俺らも頑張ってるから安心して?」
「うん、ありがとう。私も皆の役に立てるよう頑張る」
「俺にも仕事回してくれていいよ。美優がいるなら外注で受ける」
 一同が壱弥の方を振り返った。
「お前今まで絶対俺らと仕事しなかったのに何その手の平返し」
 帆高が冷やかす様に言った。
「でも壱弥が仕事してくれるんならWEB関連楽になるね」
「壱弥ってITの事も詳しいの?」
「ああ、俺たまにアプリ開発したりして、それが軌道に乗ったら売ったりもしてるんだよね」
「そうだったんだね」
「壱弥ってPC相当弄れるよ?」
「しかも色々資格持ちだし」
「そうなの?」
「自分一人で色んな仕事するから色々自分で出来る事増やしてたらなんかいつの間にか増えてたんだよね」
「宅建でしょ? 公認会計士でしょ? 行政書士も持ってたっけ?」
「うん、その辺の書類揃えるのに必要な資格とかは粗方取ったかも。人に頼むの面倒なんだよね。税金は手が回らないって判断したから舷太に外注してるけど」
「ああ、うちの会社も全部舷太に任せてるから、あいつ私達界隈の財政状況全部知ってそう」
 美優は改めて壱弥の有能さに驚く。自分は簿記2級でも時間をかけて勉強してやっと取れた。これだけの難しいとされてる資格をこの年齢でサラリといくつも取ってしまう壱弥はかなり有能だ。
 それなのに壱弥は自分の方が美優に相応しくないとはっきりと言った。美優にはそれが疑問で仕方ない。
 そんな疑問を胸に抱えながらも皆にリクエストされて母親のレシピの中からおつまみになりそうなものを何品か穂澄と二人で作った。
 楽しく一晩を過ごし、次の日の朝には皆帰っていく。

「じゃ、次はなっちゃんの試合でね、美優」
「試合終わったら忠也先輩に言うんだよね?」
「うん、そのつもり」
「一緒に働けるの楽しみにしてるよ」
「うん、よろしくお願いします」
「よろしくね。多分4月からになるんでしょうからそれまでゆっくりして?」
「うん、ありがとう」
「じゃ、帰るわ」
「ホントに皆ありがとう」
「じゃね~~」
 三人が出て行って扉が閉まる。
 部屋に二人きりになった美優は壱弥を振り返った。
「壱弥も本当にありがとう。助かったよ」
 壱弥は美優をぎゅっと抱きしめる。
「当然だからお礼なんて要らないよ」
 抱きしめられながら美優はずっと胸に過ぎる疑問をぶつけようか悩む。
 でも、あの時の壱弥の表情を思い出したらそれは何か触れてはいけない事の様に感じた。
 なのでじっと抱きしめられたまま、壱弥の背中に腕を回す。
「あのね、ストーカーの件もひと段落したし、私も家に帰ろうと思うの」
「……帰っちゃうの? このまま一緒に住んじゃえばいいのに」
「……そんなのダメだよ。家の事気になるし帰んなきゃ」
「……そっか、わかった。じゃあ、送ってく」
 壱弥があまりにしょんぼりとしているので美優は少し可笑しくなる。
 クスリと一つ笑って壱弥の頬に触れた。
「壱弥。そんなにしょんぼりしなくても大丈夫。また泊りに来てもいい?」
「うん、すぐ泊りに来てね?」
「うん、私も壱弥と一緒にいたいから近い内来るよ」
「約束だよ?」
 まるで置いて行かれる子供の様な顔で美優を見つめる。
「うん、約束する」
 そんな壱弥に美優は優しく微笑んでいつも壱弥がしてくれてる様に優しく髪を撫でてみた。
 壱弥はそれを瞳を閉じて受けている。
 美優は壱弥の気の済むまでずっと撫でてやった。

 その日の昼食は外食をして、その足で壱弥に自宅に送ってもらった。
 別れをとても惜しんでいた壱弥と離れるのは凄く可哀想な気がしたし、自分ももちろん寂しかったが、さすがに自宅を放っておくわけにはいかないので、後ろ髪を引かれる思いで壱弥を見送った。
 溜めていた洗濯物を洗濯機に放り込んで、埃を拭いて掃除機をかけていたら、いつの間にか夕方になっていた。
 また今日から一人で節約生活を始めないといけないので、食材を買いに出かける。
 もうストーカーの心配は無いので安心していつもの道のりを歩いた。
 歩いていると背後に気配を感じた。その気配は明らかに自分と歩調を合わせ、ぴったりと自分の跡をついて来ているのがわかった。
 頭の中に色んな思考が駆け巡るが、一番に思う事は『怖い』だった。
 本宮が接近禁止を無視して自分を付けて来ているのだろうか?
 それともただたまたま同じ方向の人なんだろうか?
 振り返るのが怖くて自然と早足になる。
 早足になった美優にどんどん近づいてくる気配。
 大きな通りまであと少しだからと必死で歩く。
 蛍光灯の切れた街灯がちかちかと点滅している。
 その街灯の傍までやって来た時、その背後の足音は美優の真後ろにぴったりとやって来て、美優の肩をぐっと掴んだ。
「!!!!」
 肩に触れられて堪らず振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。
「?! 高梁たかはし君?!」
 美優の肩を掴んでいたのは、中学の時に付き合っていた元カレの高梁裕たかはしゆたかだった。
 見知った顔ではあったけれど、付き合っていた当時よりも体系が変わっていてとても太っているし、何よりも目の奥が仄暗く、虚ろだ。
「……神崎……、俺がいるのになんで他の男家に上げたりすんの?」
「……え?」
「俺と付き合ってるのに他の男達と仲良くしてるの、あれ何なの?」
「……なに、言ってるの? だって、私達、とっくに……」
「俺がいるのになんで他の男とどっか行ったり泊りでどっか行ったりしてんの?」
 高梁が美優の肩を両手で掴む。
 美優は怖くなって何も言えなくなって、されるがままになる。高梁から目が離せない。 
「神崎……、反省するなら許してやるけど、次俺の事裏切ったら、わかるよね?」
「…………っ、たっ、高梁君が手紙、入れてたの……?」
 勇気を振り絞って質問をぶつけてみる。
「だって、神崎高校入ってからスマホ持っただろ? 俺には連絡先教えてくれないし、手紙しかないじゃん。俺、神崎があの時ちゃんと上手くやってくれなかったから反省して欲しくて様子見てたんだ」
「……なんで、今更……」
「神崎、俺がどんな気持ちで神崎が謝って来るの待ってたかわかる?」
「……わ、私、何したの? 全然わかんないよ……」
 高梁が目を見開いて激昂し、大声を上げた。
「俺に恥かかせただろ!!!! 上手くいかなかったのは神崎が全然協力してくれなかったからだっ!!!! 俺がどれだけ恥ずかしかったかわかるか?!!!! あれだけ男に恥かかせたんだから神崎からちゃんと謝るべきだろ!!!!!!」
 美優はそのあまりの剣幕に声も出なくなる。
 きっと高梁が言っているのは、上手くいかなかった初めての、あの日の事だ。
 高梁は元々クラスの中でも人気のあるサッカー部の男子で少し自意識の強い方だった。
 委員会で一緒になって話す様になり、告白された。そして付き合う様になったけれど、デートの行き先も何もかも高梁が決めていた。
 初めての時はなけなしのお小遣いを出し合ってホテルに入ったが、結果は上手くいかなかった。
 それ以来顔を合わせてもむっすりとして、口をきいてくれなくなって、美優も最初は一生懸命話しかけたけれど、一向に口をきいてくれない高梁はきっと自分の事を嫌いになったのだと理解して、そのままの状態で卒業を迎えた。
 何故今になって彼が美優の元にやって来てこんな事を言うのか全く理由がわからない。
 ぎゅっと鞄を抱きしめると手の甲にふわふわしたものが当たる。
 これは壱弥に贈ってもらったファーの防犯ブザーだ。
 これを使うべきか、悩む。
 悩んでいると路地裏に引き込まれた。
 ひっ!! っと声にならない詰まった悲鳴を上げる。
 肩を全力で押されて転んでしまう。
 高梁が美優の上に覆い被さって来た。
「……やっ! やだ……っ」
 引きつった悲鳴しか喉から出てくれない。
 もう迷う事無く防犯ブザーの留め具を引き抜いた。
 けたたましい音が辺りに響く。高梁が怯んだ隙に美優は高梁を押しのけて鞄を抱えたまま、全速力で走って家の方に向かった。
 彼は昔とても足が速かった様に記憶していたので追いつかれる恐怖で一杯だったが、必死で家まで走って逃げる。
 息を切らして全力で走り抜けて、全身で呼吸をしているが、今はそんな事どうでもいい。
 とにかくこの怖い事柄から逃れる事に精一杯だ。
 何とかマンションまで辿り着いて、エレベーターなど使わず階段を登った。
 自分の部屋に辿り着き、震える手で鍵を開ける。なかなか鍵穴に鍵が入らない。
 なんとか鍵を開けてすぐにドアの鍵とチェーンをかけた。
 安堵のあまり玄関のドアに凭れ掛かってへたり込んでいると、ドンドンっ!! とドアを叩く音がし始めた。
 ドアスコープを覗くと高梁がずっとドアを拳で叩いている。
 恐怖のあまりカタカタと震えている自分にも気が付かず、どうしようと、それだけしか考えられず鞄からスマホを取り出して、履歴の一番最初にあった壱弥に電話した。
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