大悪魔二人は頭の弱い淫魔を今日も溺愛する。

ツヅミツヅ

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15、騙してでも

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撮影は無事に終了して、人間界に戻っていつもの日常を取り戻す。

リルは今日もリビングの日当たりの良い場所で唄を唄っている。
その唄声をクロエはリビングのソファで、シュバルツはダイニングで座って聴いている。

その後は散歩に出かけ、公園に寄る。
時間が結構空いたのでそろそろほとぼりも冷めているだろう。
そして帰りには買い物をして帰る。

今日はリルは3人で行きたいと強請る。
断る理由もない。リルが喜ぶなら二人はその願いを叶える。

久しぶりに黒猫に会うと、子猫達は皆いなくなっていた。
リルによると、全てはぐれたり、人間の子供が連れて行ってしまったりしたらしい。
きっと元気に暮らしてるから気にしてないそうだ。
今まで産んだ子達も皆んなこんな風に別れたからと。

リルは黒猫に唄ってやる。
黒猫は別れを受け入れているのだろう。
静かにリルの唄を聞いていた。

険のある幼い声がぶつけられる様に響いた。
「やっと見つけた!あんた、大人の癖に何で祐太郎に告げ口するのよ!」
3人は声の方を見る。
声の主は悠香だった。悠香はやはり仁王立ちをして、リルを睨みつけてる。
黒猫はリルの隣に控える。
「あんたのせいで祐太郎と喧嘩しちゃったじゃないの!口も聞いてくれないんだから!絶対警察に言ってやるから!」

リルは激しい悪意をぶつけられて、戸惑う。
「…あの…ごめんね?」
リルはぽそりと謝る。
「ごめんで済んだら警察は要らないのよ!」

クロエがスッと悠香の前に立ち、その目線を合わせる様に屈んだ。

クロエはガラス玉の様な目で悠香を見つめた。
「…いいぞ、呼べ。何も遺さず消すだけだ」
クロエの瞳に一切の感情を感じられない。
人として対峙されず、物として見られているだけ…。そういう冷たささえ無い、人としての感情のこもらない瞳。
こんな瞳を向けられる事は初めてだった悠香は顔を引き攣らせる。

そしてそのまま後退りして、悠香は駆けて行ってしまった。

「お前なぁ。人間のガキ相手に何もそこまですんなよ」
シュバルツは呆れている。
「ガキだろうが関係ない。リルが傷つくのは赦さない」
クロエは真剣な表情でシュバルツに宣言した。

そこにゆうちゃんがやって来る。
「さっき三杉いただろ?おっさんが追い払ってくれたんだ」
ゆうちゃんはいつもの様に笑ってリルに話しかけようとした。

クロエはゆうちゃんに言い放つ。
「自分の女ぐらい自分でどうにかしろ」
ゆうちゃんは面食らう。
「あの女をどうにかするまでここに来るな」
「三杉はオンナなんかじゃないよ!ただのクラスの女子なのに勝手に彼女だとか言ってるんだよ!」
リルに会いたいゆうちゃんは、必死にクロエに申し開きをする。
「お前がどう思ってようが、女がその気になってんだよ。お前がベラベラリルの事をあの女に喋ったんだろうが」
「…っ!喋ったけど、ここまで来ると思わなかったんだ!」
「お前の見込みが甘い。あの女をここに怒鳴り込ませるな。それが出来ないならリルに会う資格はない。あの女を騙して、優しくして、受け入れてやるフリをしてでもどうにかしろ」
「なんで俺がそこまでしなきゃいけないんだよ!」
ゆうちゃんは涙を流す。
「ここでやると言わなきゃリルは絶対に連れて来ない」
クロエはキッパリと宣言する。

リルがフワリとゆうちゃんを抱きしめる。
「ゆうちゃん?イタイの?ないちゃダメだよ?」
にこりと微笑むリルを見て、余計にゆうちゃんは泣き出した。
「いいこだね。ないちゃダメだよ」
頭を撫でてやる。

クロエは更にゆうちゃんに突きつける。
「さぞ心地いいだろう?それがずっと欲しけりゃ、やれ」

ゆうちゃんは黙ってリルに抱かれている。
しばし、その状態は続き、ゆうちゃんは意を決した様に口を開いた。

「…やる」

「なら、猶予をやる。1ヶ月はここに来ない。その間にあの女どうにかしろ」

「…わかった…」

ゆうちゃんは、三杉悠香を騙す決意を固めた。
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