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18、ゆうちゃんの願い
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家財は全て新調するとクロエが言う。
この家を決めたのは急ぎだったので、クロエが適当に揃えたものだった。
3人で住むのであればもう少し拘りたいらしい。
クロエは賭博場で儲けた賞金を運用して人間界で暮らす為の資金には困らない様にしている。
それらは月城の提案だった。
クロエが組んだのは、月城の弟子、楽々浦颯太だった。
クロエが早く試合数を消化したい為に殆ど一人で試合をこなしてしまう形になり、全く楽々浦の特訓にはならなかったと月城は苦笑していた。
楽々浦はあまり真面目に訓練するタイプではないらしく、クロエが一人闘うならラッキーだとばかりにクロエに任せきりだった。
クロエは金銭的な所は全く頓着しないらしく、湯水の様に使う。
シュバルツが少し不安になり嗜めると、仮に無くなってもまた稼げばいいと涼しい顔で言う。
引っ越しは多少の衣類を持ってほぼ身一つで済んだ。
ソファだけは一番最初に選んで買った。
リルはリビングにいる事が一番多いので、居心地良く、座り心地の良いソファは、3人の生活にとって最も重要な物だった。
色々見て検討した結果、L字型のカウチソファを買う事にした。
後のものはそのソファと見合うものという基準になった。
一部屋増えて、リルにも一応部屋が出来たが、リルが自分の部屋を使う事は殆ど無い。
夜は必ずクロエかシュバルツの部屋で一緒に眠っている。
「このおうちとってもひろいね」
リルはニコニコと笑って今日も陽当たりの良いリビングの雪片柄の丸いラグの上に座って、唄を唄う。
クロエとシュバルツはそれを静かに聴いている。
最上階のこの部屋は見晴らしも良く、特に夜景は見応えがある。
この物件を安くで借りられるのは運がいいだろう。
そうこうしてる内にゆうちゃんとの約束の1ヶ月が過ぎる。
約束のひと月は過ぎたので3人で公園に行く。
リルが噴水の縁に座ってしばらくすると黒猫が現れた。
顔を擦り寄せて久々の再会を喜んでいる。
リルは黒猫に唄を唄ってやる。
黒猫はリルの横に座ってジッとしている。
そうして唄っているとゆうちゃんがやってきた。
「リル!」
リルの顔を見た途端、ゆうちゃんは走り出す。
そしてリルは立ち上がり、ゆうちゃんを受け止めてやる。
「ゆうちゃんだぁ」
にこにこと笑って頭を撫でると、ゆうちゃんの目頭にジワリと涙が浮かぶ。
「リル、俺頑張って三杉に優しくしたよ!」
リルはにこにこ笑ってゆうちゃんを見ている。
「それから、三杉もうここに来ないって!」
シュバルツが横から質問する。
「それ本当か?」
「うん、本当だよ。なんかリルの事黒猫と思ってるみたいだよ」
どうやら祓い屋の術と技とやらが役に立っている様だ。
「…優しくした方が言う事聞くんだね、女子って」
ゆうちゃんなりにこのひと月は苦労したらしく、学んだ事も多い様だ。
「友達と遊ぶ時間減って最初はウザいって思ったけど…優しくした分言う事聞くようになるんだ…女子って意味わかんねえ」
「そんなもんだ」
シュバルツがぽそりと同意する。
「理屈なんかどうでもいい。そうなるんだから使えるってだけだ」
クロエは腰に手を当ててシラッと言った。
「…ゆうちゃん…いっぱいがんばったね」
リルはゆうちゃんを優しく撫でてやる。
「リル…なんか唄ってよ」
ゆうちゃんはリルに唄をねだる。
「いいよ」
リルはすぅっと息を吸い込み唄を唄い出す。
唄声が響き渡る。
ゆうちゃんはリルの腕に縋り付く。
その場にいる者は皆リルの唄声に聴き入る。
通りすがりのお爺さんやお姉さんも聞き惚れている。
唄が終わると少し人だかりが出来ていた。
拍手が送られる。
リルは褒められてる事を感じて頬を染める。
「おら、帰んぞ」
シュバルツがリルの手を繋いだ。
「明日も来る?」
ゆうちゃんは3人の後ろ姿に投げかける。
「わからん」
シュバルツは振り返って簡単に答える。
部屋に帰ってシュバルツはクロエに言った。
「今日はなんで人だかりになったんだ…」
「感応の内容が人間にとって珍しくないもんだったのかもな」
クロエが淡白に答える。
強くなりたい、傍にいたい
大人になりたい、だけど甘えたい
大事な人との想い出を忘れたくない
別れを回避する為、奮起する、そんな願いの篭った唄だった。
この家を決めたのは急ぎだったので、クロエが適当に揃えたものだった。
3人で住むのであればもう少し拘りたいらしい。
クロエは賭博場で儲けた賞金を運用して人間界で暮らす為の資金には困らない様にしている。
それらは月城の提案だった。
クロエが組んだのは、月城の弟子、楽々浦颯太だった。
クロエが早く試合数を消化したい為に殆ど一人で試合をこなしてしまう形になり、全く楽々浦の特訓にはならなかったと月城は苦笑していた。
楽々浦はあまり真面目に訓練するタイプではないらしく、クロエが一人闘うならラッキーだとばかりにクロエに任せきりだった。
クロエは金銭的な所は全く頓着しないらしく、湯水の様に使う。
シュバルツが少し不安になり嗜めると、仮に無くなってもまた稼げばいいと涼しい顔で言う。
引っ越しは多少の衣類を持ってほぼ身一つで済んだ。
ソファだけは一番最初に選んで買った。
リルはリビングにいる事が一番多いので、居心地良く、座り心地の良いソファは、3人の生活にとって最も重要な物だった。
色々見て検討した結果、L字型のカウチソファを買う事にした。
後のものはそのソファと見合うものという基準になった。
一部屋増えて、リルにも一応部屋が出来たが、リルが自分の部屋を使う事は殆ど無い。
夜は必ずクロエかシュバルツの部屋で一緒に眠っている。
「このおうちとってもひろいね」
リルはニコニコと笑って今日も陽当たりの良いリビングの雪片柄の丸いラグの上に座って、唄を唄う。
クロエとシュバルツはそれを静かに聴いている。
最上階のこの部屋は見晴らしも良く、特に夜景は見応えがある。
この物件を安くで借りられるのは運がいいだろう。
そうこうしてる内にゆうちゃんとの約束の1ヶ月が過ぎる。
約束のひと月は過ぎたので3人で公園に行く。
リルが噴水の縁に座ってしばらくすると黒猫が現れた。
顔を擦り寄せて久々の再会を喜んでいる。
リルは黒猫に唄を唄ってやる。
黒猫はリルの横に座ってジッとしている。
そうして唄っているとゆうちゃんがやってきた。
「リル!」
リルの顔を見た途端、ゆうちゃんは走り出す。
そしてリルは立ち上がり、ゆうちゃんを受け止めてやる。
「ゆうちゃんだぁ」
にこにこと笑って頭を撫でると、ゆうちゃんの目頭にジワリと涙が浮かぶ。
「リル、俺頑張って三杉に優しくしたよ!」
リルはにこにこ笑ってゆうちゃんを見ている。
「それから、三杉もうここに来ないって!」
シュバルツが横から質問する。
「それ本当か?」
「うん、本当だよ。なんかリルの事黒猫と思ってるみたいだよ」
どうやら祓い屋の術と技とやらが役に立っている様だ。
「…優しくした方が言う事聞くんだね、女子って」
ゆうちゃんなりにこのひと月は苦労したらしく、学んだ事も多い様だ。
「友達と遊ぶ時間減って最初はウザいって思ったけど…優しくした分言う事聞くようになるんだ…女子って意味わかんねえ」
「そんなもんだ」
シュバルツがぽそりと同意する。
「理屈なんかどうでもいい。そうなるんだから使えるってだけだ」
クロエは腰に手を当ててシラッと言った。
「…ゆうちゃん…いっぱいがんばったね」
リルはゆうちゃんを優しく撫でてやる。
「リル…なんか唄ってよ」
ゆうちゃんはリルに唄をねだる。
「いいよ」
リルはすぅっと息を吸い込み唄を唄い出す。
唄声が響き渡る。
ゆうちゃんはリルの腕に縋り付く。
その場にいる者は皆リルの唄声に聴き入る。
通りすがりのお爺さんやお姉さんも聞き惚れている。
唄が終わると少し人だかりが出来ていた。
拍手が送られる。
リルは褒められてる事を感じて頬を染める。
「おら、帰んぞ」
シュバルツがリルの手を繋いだ。
「明日も来る?」
ゆうちゃんは3人の後ろ姿に投げかける。
「わからん」
シュバルツは振り返って簡単に答える。
部屋に帰ってシュバルツはクロエに言った。
「今日はなんで人だかりになったんだ…」
「感応の内容が人間にとって珍しくないもんだったのかもな」
クロエが淡白に答える。
強くなりたい、傍にいたい
大人になりたい、だけど甘えたい
大事な人との想い出を忘れたくない
別れを回避する為、奮起する、そんな願いの篭った唄だった。
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