人質同然だったのに何故か普通の私が一目惚れされて溺愛されてしまいました

ツヅミツヅ

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 その後、二人で王妃の間で夕食を摂った。
 その食事もやっぱり見た事もない豪華なものばかりで、量も多かった。
 それを伝えたら、陛下は明日から減らす様その場で侍女の方々に命じていた。

 食事を終えると陛下は湯浴みをしに自室に戻った。

 私もその間に湯浴みの準備が進んで、
 マリに手伝ってもらって全身を洗った。
 3日間の船旅でずっと潮に晒されていて、ベタついていたのでさっぱりした。

 バスルームを出てドレッサーに座る。

 マリは髪を丹念に拭いてくれる。
「ありがとう。もう大丈夫ですよ」
 私はマリにお礼を言う。
 マリは手を止めて、でも私に尋ねる。
「そうですか? もう少し拭いた方が乾きが早いかと思いますが。」
「ええ、でも魔法を使う方が早いから。ありがとう」

 マリは好奇心に火が着いた様で少し前のめりになった。
「魔法ですか⁉︎」
 私はにっこり笑って風の魔法を展開する。
 私の周りに優しい風が取り巻いて濡れた髪を瞬時に乾かした。

「す、凄いですね……初めて見ました……」
 私はそんなに魔力も高くないし、実は風魔法はそんなに得意じゃない。なのにこんなに感心されるとなんだか照れてしまう。
「全然大した事ないですよ?」

 マリは興奮した様子で問うた。
「いいえいいえ! 凄いです! 魔法って便利なんですね! 他には何か出来るのですか?」

「私は土魔法が得意だから、壁を作ったり大きな礫を飛ばしたり位は出来ますよ」
 土魔法以外の魔法も風魔法の様に多少ならば使える。

 マリが珍しがるのも無理はない。

 この大陸の魔法発動の条件は、[血と真名]だ。
 この大陸の純血である事、真の名前で神獣と契約する事だ。
 真名は魂に名付けられる名前で、神獣はその魂に魔法を貸してくれて、魔法の威力自体はその人の魔力に依る。それとその場所自体の魔力。

 神獣は私達原住の民にとても大切にされていて、マグダラスでは特に地の神獣が信仰されてる。

 マグダラスの王家、アルテーン家は、元は地の神獣を祀る巫女の家系だったと習った。
 今も年中行事に神獣を祀るものが幾つもある。

 異民であるマリには馴染みのないもので、凄く見えてしまうのだろう。

「ほう。魔法を見るのは初めてだ。」
 寝室から声がかかる。

「陛下」

「他には何が出来る?」

 ふとマリを見ると明らかに緊張した面持ちで控える。
 私はそれを不思議に思いながら陛下の質問に答える。
「私は魔力が高くないので大した事は出来ないのですが……例えば……」

 水魔法で水球を浮かして見せる。

「この様なものが創れたりします」

「不思議なものだな」

 陛下は興味深そうに水球に触れてみている。
「攻撃には使えぬのか?」

「大した威力は出ませんけど、多少は出来ます」

 実際オルシロン共和国の魔術師団は精鋭揃いで凄いと聞いた事がある。
 それに次いでシビディア王国の魔術師団も強いそうだ。
 マグダラスにも魔術師団はあるけど、総勢10数名の微々たるもので、とても有事に重用出来る戦力じゃない。

 でもコレも多分、国の威信を損なうし、軍事機密なのだろうから言っちゃいけない事なんだろうと考えて、黙っておく。

「では姫は多少の自衛は出来るのだな?」

「はい! 剣も多少は使えます。と言っても児戯の様なものですけど」

「そうか。姫はなかなかのじゃじゃ馬の様だな」
 陛下が笑う。そして私の頭をヨシヨシする。

「しかしこの国では魔法に頼る方が良い。
 この国の者は魔法に不慣れだ。
 魔法の間合いは探りながらになる。
 隙も出来るだろう」

「はい」
 陛下の助言が嬉しくなって、やっぱり笑みを抑えられずに返事した。
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