11 / 200
11
しおりを挟む
その後、二人で王妃の間で夕食を摂った。
その食事もやっぱり見た事もない豪華なものばかりで、量も多かった。
それを伝えたら、陛下は明日から減らす様その場で侍女の方々に命じていた。
食事を終えると陛下は湯浴みをしに自室に戻った。
私もその間に湯浴みの準備が進んで、
マリに手伝ってもらって全身を洗った。
3日間の船旅でずっと潮に晒されていて、ベタついていたのでさっぱりした。
バスルームを出てドレッサーに座る。
マリは髪を丹念に拭いてくれる。
「ありがとう。もう大丈夫ですよ」
私はマリにお礼を言う。
マリは手を止めて、でも私に尋ねる。
「そうですか? もう少し拭いた方が乾きが早いかと思いますが。」
「ええ、でも魔法を使う方が早いから。ありがとう」
マリは好奇心に火が着いた様で少し前のめりになった。
「魔法ですか⁉︎」
私はにっこり笑って風の魔法を展開する。
私の周りに優しい風が取り巻いて濡れた髪を瞬時に乾かした。
「す、凄いですね……初めて見ました……」
私はそんなに魔力も高くないし、実は風魔法はそんなに得意じゃない。なのにこんなに感心されるとなんだか照れてしまう。
「全然大した事ないですよ?」
マリは興奮した様子で問うた。
「いいえいいえ! 凄いです! 魔法って便利なんですね! 他には何か出来るのですか?」
「私は土魔法が得意だから、壁を作ったり大きな礫を飛ばしたり位は出来ますよ」
土魔法以外の魔法も風魔法の様に多少ならば使える。
マリが珍しがるのも無理はない。
この大陸の魔法発動の条件は、[血と真名]だ。
この大陸の純血である事、真の名前で神獣と契約する事だ。
真名は魂に名付けられる名前で、神獣はその魂に魔法を貸してくれて、魔法の威力自体はその人の魔力に依る。それとその場所自体の魔力。
神獣は私達原住の民にとても大切にされていて、マグダラスでは特に地の神獣が信仰されてる。
マグダラスの王家、アルテーン家は、元は地の神獣を祀る巫女の家系だったと習った。
今も年中行事に神獣を祀るものが幾つもある。
異民であるマリには馴染みのないもので、凄く見えてしまうのだろう。
「ほう。魔法を見るのは初めてだ。」
寝室から声がかかる。
「陛下」
「他には何が出来る?」
ふとマリを見ると明らかに緊張した面持ちで控える。
私はそれを不思議に思いながら陛下の質問に答える。
「私は魔力が高くないので大した事は出来ないのですが……例えば……」
水魔法で水球を浮かして見せる。
「この様なものが創れたりします」
「不思議なものだな」
陛下は興味深そうに水球に触れてみている。
「攻撃には使えぬのか?」
「大した威力は出ませんけど、多少は出来ます」
実際オルシロン共和国の魔術師団は精鋭揃いで凄いと聞いた事がある。
それに次いでシビディア王国の魔術師団も強いそうだ。
マグダラスにも魔術師団はあるけど、総勢10数名の微々たるもので、とても有事に重用出来る戦力じゃない。
でもコレも多分、国の威信を損なうし、軍事機密なのだろうから言っちゃいけない事なんだろうと考えて、黙っておく。
「では姫は多少の自衛は出来るのだな?」
「はい! 剣も多少は使えます。と言っても児戯の様なものですけど」
「そうか。姫はなかなかのじゃじゃ馬の様だな」
陛下が笑う。そして私の頭をヨシヨシする。
「しかしこの国では魔法に頼る方が良い。
この国の者は魔法に不慣れだ。
魔法の間合いは探りながらになる。
隙も出来るだろう」
「はい」
陛下の助言が嬉しくなって、やっぱり笑みを抑えられずに返事した。
その食事もやっぱり見た事もない豪華なものばかりで、量も多かった。
それを伝えたら、陛下は明日から減らす様その場で侍女の方々に命じていた。
食事を終えると陛下は湯浴みをしに自室に戻った。
私もその間に湯浴みの準備が進んで、
マリに手伝ってもらって全身を洗った。
3日間の船旅でずっと潮に晒されていて、ベタついていたのでさっぱりした。
バスルームを出てドレッサーに座る。
マリは髪を丹念に拭いてくれる。
「ありがとう。もう大丈夫ですよ」
私はマリにお礼を言う。
マリは手を止めて、でも私に尋ねる。
「そうですか? もう少し拭いた方が乾きが早いかと思いますが。」
「ええ、でも魔法を使う方が早いから。ありがとう」
マリは好奇心に火が着いた様で少し前のめりになった。
「魔法ですか⁉︎」
私はにっこり笑って風の魔法を展開する。
私の周りに優しい風が取り巻いて濡れた髪を瞬時に乾かした。
「す、凄いですね……初めて見ました……」
私はそんなに魔力も高くないし、実は風魔法はそんなに得意じゃない。なのにこんなに感心されるとなんだか照れてしまう。
「全然大した事ないですよ?」
マリは興奮した様子で問うた。
「いいえいいえ! 凄いです! 魔法って便利なんですね! 他には何か出来るのですか?」
「私は土魔法が得意だから、壁を作ったり大きな礫を飛ばしたり位は出来ますよ」
土魔法以外の魔法も風魔法の様に多少ならば使える。
マリが珍しがるのも無理はない。
この大陸の魔法発動の条件は、[血と真名]だ。
この大陸の純血である事、真の名前で神獣と契約する事だ。
真名は魂に名付けられる名前で、神獣はその魂に魔法を貸してくれて、魔法の威力自体はその人の魔力に依る。それとその場所自体の魔力。
神獣は私達原住の民にとても大切にされていて、マグダラスでは特に地の神獣が信仰されてる。
マグダラスの王家、アルテーン家は、元は地の神獣を祀る巫女の家系だったと習った。
今も年中行事に神獣を祀るものが幾つもある。
異民であるマリには馴染みのないもので、凄く見えてしまうのだろう。
「ほう。魔法を見るのは初めてだ。」
寝室から声がかかる。
「陛下」
「他には何が出来る?」
ふとマリを見ると明らかに緊張した面持ちで控える。
私はそれを不思議に思いながら陛下の質問に答える。
「私は魔力が高くないので大した事は出来ないのですが……例えば……」
水魔法で水球を浮かして見せる。
「この様なものが創れたりします」
「不思議なものだな」
陛下は興味深そうに水球に触れてみている。
「攻撃には使えぬのか?」
「大した威力は出ませんけど、多少は出来ます」
実際オルシロン共和国の魔術師団は精鋭揃いで凄いと聞いた事がある。
それに次いでシビディア王国の魔術師団も強いそうだ。
マグダラスにも魔術師団はあるけど、総勢10数名の微々たるもので、とても有事に重用出来る戦力じゃない。
でもコレも多分、国の威信を損なうし、軍事機密なのだろうから言っちゃいけない事なんだろうと考えて、黙っておく。
「では姫は多少の自衛は出来るのだな?」
「はい! 剣も多少は使えます。と言っても児戯の様なものですけど」
「そうか。姫はなかなかのじゃじゃ馬の様だな」
陛下が笑う。そして私の頭をヨシヨシする。
「しかしこの国では魔法に頼る方が良い。
この国の者は魔法に不慣れだ。
魔法の間合いは探りながらになる。
隙も出来るだろう」
「はい」
陛下の助言が嬉しくなって、やっぱり笑みを抑えられずに返事した。
10
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる